While the music is playing, we have to dance.
現在進行形の金融混乱の諸悪の根源とされるサブプライム住宅ローン問題が指摘され始めたごく初期の頃に当時のシティグループのCEOが発したこの言葉は今では随分と有名になっていますが、この言葉の背景に、「毒を食らわば皿まで」という覚悟が在ったのだとすれば、それは全く想像を絶するほどの猛毒だったと言う事になるでしょう。
多くのFinancial Giantsが皿ごと毒を食らい、伝染性の猛毒を撒き散らしながらのた打ち回る地獄絵巻の中で、金融市場と実体経済が断末魔的な乱高下に共鳴現象を起こしていると言うのが今の状況だと思います。
先週の動きだけを見てもまさに象徴的ですね。
先ずはBOAによる電撃的なMerrill救済合併で、宙に浮いたLehmanが破産処理となりましたが、この米国の第3位と第4位の投資銀行の同日消滅の規模は、わかり易く言えば日本最大の証券会社である野村證券が約7個=要するに世界第二位の経済である日本の証券業界が消滅したと言うくらいの規模感です。
これで業界第1位と第2位のGoldmanとMorganStanleyの株価も急落、後者首脳の合併を視野に生き残り策を検討中との発言がこれに拍車を掛けました。
グローバルに金融市場を牛耳ってきた金融巨人の多くが日々の資金手当て(Funding)にも苦労し始める中で、週央には米国のみならず恐らく世界最大と言ってよいAIG保険がFRBに緊急融資の申し込みをしたことで混乱の火の粉は投資銀行から保険会社へ、マンハッタンのWall Streetからコネチカット州にも飛び火した格好になり、投資運用会社のPutnamのMMF元本割れによる清算という騒ぎにより更に火の手が拡大しました。
これを受けて週の後半は米国金融当局と金融市場の待ったなしの駆け引きが展開されましたが、FRBおよび財務省はAIGの公的資金によるテコ入れ救済と世界各国中銀と協調した大規模な米ドルの資金同時供給を実施。さらに金曜日には金融機関の不良資産買取処理の包括的なスキームをまとめて実に$700bio(7千億ドル!)を投入する用意があると発表、更に約800銘柄もの金融株の空売り規制の実施と公的なMMFの元本保証スキームも発表しました。
この矢継ぎ早な対応はある意味で見事なものであり、先週の金融市場は序盤が超悲観モード、中盤が疑心暗鬼モード、そして終盤が希望的観測モードとなって各市場共に乱高下となっています。
ダウ平均株価は月曜日に約505ドルもの下落。これは単日では2001年9月11日の同時テロ以来の下げ幅。一方で木曜、金曜の二日間では約700ドルの急反発となり、こちらは2日間の上昇幅で1987年以来という復活振りを見せました。
世界経済全体への悲観からバレル当り91ドル水準まで売り込まれた原油は100ドル台を回復し、同様に金はオンス当り779ドル水準まで下落した後週央には資産防衛の駆け込み現象で一気に約84ドルも上昇し、後半は株価上昇を受けて数十ドル下落と言う大きな値幅を示現しました。
ユーロドルは前半で1.4073まで下落、週央に1.4543まで上昇、一旦1.41台まで落ちて1.44台後半で終了。ユーロ円は152円台から147.01まで下落して155円台までJUMPして終了・・・これも凄いですね。
ドル円は週初が107円台、週央に103.54まで円高となり金曜には108円まで戻って107円台で終了というバンジージャンプでした。
米国発のグローバルな実体経済の変調が金融市場を破壊し、今金融市場が必死に回復しようとしていますが、これで実体経済が修復される可能性は決して高いとは言えません。
冒頭の言葉で言えば、一度鳴り止んだMusicはそう簡単には再開しないと言う事でしょう。金融市場の安定化とリスクアセットの回復は比較的短期間で頓挫するリスクが無視出来ません。基本的にはまだ数ヶ月は資産は増やすのではなく防衛するという目線で物事を見ていく必要があると考えています。
ここは手堅く乗り切りましょう。
2008年9月21日日曜日
2008年9月15日月曜日
The fact gets even stranger than fiction.
ある程度の金融恐慌が不可避である事、そしてある程度の業界の再編劇が不可避である事は予想していましたが、今の世界経済及び金融市場は予想よりも速いペース、且つ予想したよりも劇的な道筋でその過程を歩んでいる事は間違いありません。
米当局の希望的観測では、先週末のフレディ・マックとファニー・メイの政府系金融住宅公社2社の事実上の国有化の発表を持って金融恐慌を回避する為の大きな山場を乗り切ったという認識だったのではないでしょうか。この話の詰めの段階で人生で初めて眠れぬ夜を過ごしたと言う財務省のPaulson長官の述懐には一種の安堵感もあったはずです。
その後市場の関心(ターゲット)は、米国第4位の投資銀行Lehamn Brothersにシフトしましたが、飽くまでも民間の金融機関と言う事で米政府・金融当局は公的な救済はしない方針を固め、既に交渉中であった複数の金融機関との合併交渉を後押しすると言う方針を取ったのですが、この後事態は急展開する事になりました。
一度はWashington Post紙が既に条件面でも合意に達した事実上の仮調印状態とまで報じたBank of Americaへの事業売却が何故か撤回され、あろう事かBank of Americaはこの週末にLehman Brothersの隣人である米国第3位の投資銀行Merril Lynchの買収を発表してしまいました。
先週は月曜日から金融恐慌回避ムードが徐々に強まり、木曜日にはテクニカル分析上も株価とクロス円の下落に反転を示唆するシグナルが点灯。そして金曜日には週末にもLehman救済の動きが表面化するとの思惑から時間切れ的なポジション縮小から株式市場と為替市場のクロス円の買戻しが席巻した金融市場ですが、週末のドンデン返しには大きく翻弄される事になりました。
月曜日は東京市場が休場ですが、為替市場ではドル円、クロス円が急落。大規模な買戻しにより大きく上昇した金曜日の取引レンジと週明けの現時点までの非公式取引レンジを比較してみましょう。
ドル円 金曜日 106.72 - 107.97 ⇒週明け 104.55-106.90.
ユーロ円 金曜日150.60 - 153.56 ⇒週明け 148.57-152.90.
まさに大どんでん返しですね。
取り残された格好のLehman Brothersの破綻処理は不可避であり、同じような立場の複数の金融機関が火曜日以降も市場の攻撃に晒される可能性は極めて大きいと言わざるを得ません。
映画卒業の有名な最終シーンでは、恋人の結婚式に駆けつけた彼氏の元に花嫁が走り去り、スパイダーマン2でも主人公の恋人である花嫁が花嫁衣裳のまま式場から走り去りました。
この週末の出来事は、当日に教会のバージンロードを歩いてきたのは、花嫁の1つ上の姉だったというような大混乱だったと思います。
兎に角、大変な事になってきました。Paulson長官は睡眠不足が続きそうです。
米当局の希望的観測では、先週末のフレディ・マックとファニー・メイの政府系金融住宅公社2社の事実上の国有化の発表を持って金融恐慌を回避する為の大きな山場を乗り切ったという認識だったのではないでしょうか。この話の詰めの段階で人生で初めて眠れぬ夜を過ごしたと言う財務省のPaulson長官の述懐には一種の安堵感もあったはずです。
その後市場の関心(ターゲット)は、米国第4位の投資銀行Lehamn Brothersにシフトしましたが、飽くまでも民間の金融機関と言う事で米政府・金融当局は公的な救済はしない方針を固め、既に交渉中であった複数の金融機関との合併交渉を後押しすると言う方針を取ったのですが、この後事態は急展開する事になりました。
一度はWashington Post紙が既に条件面でも合意に達した事実上の仮調印状態とまで報じたBank of Americaへの事業売却が何故か撤回され、あろう事かBank of Americaはこの週末にLehman Brothersの隣人である米国第3位の投資銀行Merril Lynchの買収を発表してしまいました。
先週は月曜日から金融恐慌回避ムードが徐々に強まり、木曜日にはテクニカル分析上も株価とクロス円の下落に反転を示唆するシグナルが点灯。そして金曜日には週末にもLehman救済の動きが表面化するとの思惑から時間切れ的なポジション縮小から株式市場と為替市場のクロス円の買戻しが席巻した金融市場ですが、週末のドンデン返しには大きく翻弄される事になりました。
月曜日は東京市場が休場ですが、為替市場ではドル円、クロス円が急落。大規模な買戻しにより大きく上昇した金曜日の取引レンジと週明けの現時点までの非公式取引レンジを比較してみましょう。
ドル円 金曜日 106.72 - 107.97 ⇒週明け 104.55-106.90.
ユーロ円 金曜日150.60 - 153.56 ⇒週明け 148.57-152.90.
まさに大どんでん返しですね。
取り残された格好のLehman Brothersの破綻処理は不可避であり、同じような立場の複数の金融機関が火曜日以降も市場の攻撃に晒される可能性は極めて大きいと言わざるを得ません。
映画卒業の有名な最終シーンでは、恋人の結婚式に駆けつけた彼氏の元に花嫁が走り去り、スパイダーマン2でも主人公の恋人である花嫁が花嫁衣裳のまま式場から走り去りました。
この週末の出来事は、当日に教会のバージンロードを歩いてきたのは、花嫁の1つ上の姉だったというような大混乱だったと思います。
兎に角、大変な事になってきました。Paulson長官は睡眠不足が続きそうです。
2008年9月7日日曜日
The fact is stranger than fiction.
事実は小説よりも奇なり。
今の金融市場で起きている事を見ていると、何度もこの言葉が頭を過ぎります。
例えばこの大規模なドル高を正しく説明出来る人がどれだけ存在するのか? 更にその中で事前にドル高を予想していた人がどれだけいるのか? そしてこれだけの規模でそれが起こる事を予想していた人は?
9月8日(月)の早い時間に米国財務省からFreddie MacとFannie Maeへの公的資金注入の発表が行われる見込みです。前者が連邦住宅金融抵当公庫、後者が連邦住宅公庫と訳されますが違いは重要ではなく、要するに日本の住宅金融公庫のようなものですね。
金曜日には、注目の8月の雇用統計の発表があありましたが、非農業部門新規就業者数が予想を上回る8万4千人の減少、そして失業率は5.7%から6.1%への予想外の大幅上昇となりました。
米国経済の悪化は明らかに継続中であり、これは多くの人々の予測するところでした。違うのはこれが導く金融市場の動向ということになります。米国の経済は悪化を続け、大規模な資金流出による米ドルの暴落こそが世間の予想であり、昨年のサブプライム問題以降そのような本も多数出版されています。
勿論そうなる可能性はまだ残っていますが、それ以前に先ずは米ドルが急反発すると言う流れは専門家ですら殆ど予想出来ていなかったのではないでしょうか。
やはりここは、今現在岐路に立たされているGlobalizationと言うものの本質を再度確認する事で答えが見つかるものと考えています。
Globalizationという過程は、Global Standardと言うものが世界中に共有されるプロセスでしたが、この共有されるStandardを表現する言葉にPlatformという概念があります。狭義のPlatformは例えば証券会社などが提供するオンライントレードのPlatformのようなものがありますが、ここではGlobal Standardを構成するもの全般を広義のPlatformとして考えています。要するに世界中がそれを使用する、必要とする、それに準拠するようになるもの・・・これがPlatformです。
ビジネスに世界では、このPlatformの奪い合いが行われ、仕組み(Platform)を作った者が勝ち組となります。ビデオの世界では、VHSがPlatformとなりベータは退場しました。DVDではブルーレイ陣営がPlatformを獲得し、敗者となった東芝がDVD業務撤退を表明したのは記憶に新しいところです。
世界経済のGlobalization とは何だったのでしょうか? 答えは欧米流のビジネス慣行、ビジネスルールでありますが、もっと言ってしまえば欧米と言うよりも米国というビジネスモデルだったと考えてよいでしょう。米国が自国経済のフロンティアの拡大を目指し、同時に世界中が米国型の市場経済主義経済と繁栄を欲したと言う相思相愛のプロセスだったと思います。
その中で、米ドルは完全なPlatform Currencyとなり、国際貿易や商品市場など世界経済の決済通貨となりました。実は、米国があれだけの経常赤字を持ちながら米ドルが暴落しなかったからくりはここにこそあると思います。米国の巨額の貿易赤字の裏側では世界中に米ドルが溢れかえりましたが、Platform Currencyとしての米ドルは使い道が豊富であり、且つ外貨準備として備蓄する必要すらあったために米ドルは暴落しなかったと言うのが重要なポイントです。
Global化された経済の中で世界中には大規模な米ドル需要があり、貿易赤字等で供給される米ドルはその需要にマッチする水準まではドル安要因にならないという図式が出来上がっているわけですね。
米国経済は急速に減速し、住宅価格の下落や雇用の悪化を背景に経済の原動力である家計消費、個人消費は急速に減少しており、輸入の減少から貿易赤字が急速に減少しています。
これは、貿易赤字という形で供給されて来た米ドル減少を意味するのですが、Platform Currencyとしての米ドル需要は供給減少分を金融市場で取りに行くという現象が起きており、世界中の金融市場で米ドルの調達コストが上昇しており、為替市場でも米ドルの取り圧力から予想外の米ドル上昇が起きていると言う訳です。
これが需要サイドから見た米ドル上昇要因です。世の中結局Platform(仕組み)を制した者が勝組なのだという話ですね。
The fact is stranger than fiction.
今の金融市場で起きている事を見ていると、何度もこの言葉が頭を過ぎります。
例えばこの大規模なドル高を正しく説明出来る人がどれだけ存在するのか? 更にその中で事前にドル高を予想していた人がどれだけいるのか? そしてこれだけの規模でそれが起こる事を予想していた人は?
9月8日(月)の早い時間に米国財務省からFreddie MacとFannie Maeへの公的資金注入の発表が行われる見込みです。前者が連邦住宅金融抵当公庫、後者が連邦住宅公庫と訳されますが違いは重要ではなく、要するに日本の住宅金融公庫のようなものですね。
金曜日には、注目の8月の雇用統計の発表があありましたが、非農業部門新規就業者数が予想を上回る8万4千人の減少、そして失業率は5.7%から6.1%への予想外の大幅上昇となりました。
米国経済の悪化は明らかに継続中であり、これは多くの人々の予測するところでした。違うのはこれが導く金融市場の動向ということになります。米国の経済は悪化を続け、大規模な資金流出による米ドルの暴落こそが世間の予想であり、昨年のサブプライム問題以降そのような本も多数出版されています。
勿論そうなる可能性はまだ残っていますが、それ以前に先ずは米ドルが急反発すると言う流れは専門家ですら殆ど予想出来ていなかったのではないでしょうか。
やはりここは、今現在岐路に立たされているGlobalizationと言うものの本質を再度確認する事で答えが見つかるものと考えています。
Globalizationという過程は、Global Standardと言うものが世界中に共有されるプロセスでしたが、この共有されるStandardを表現する言葉にPlatformという概念があります。狭義のPlatformは例えば証券会社などが提供するオンライントレードのPlatformのようなものがありますが、ここではGlobal Standardを構成するもの全般を広義のPlatformとして考えています。要するに世界中がそれを使用する、必要とする、それに準拠するようになるもの・・・これがPlatformです。
ビジネスに世界では、このPlatformの奪い合いが行われ、仕組み(Platform)を作った者が勝ち組となります。ビデオの世界では、VHSがPlatformとなりベータは退場しました。DVDではブルーレイ陣営がPlatformを獲得し、敗者となった東芝がDVD業務撤退を表明したのは記憶に新しいところです。
世界経済のGlobalization とは何だったのでしょうか? 答えは欧米流のビジネス慣行、ビジネスルールでありますが、もっと言ってしまえば欧米と言うよりも米国というビジネスモデルだったと考えてよいでしょう。米国が自国経済のフロンティアの拡大を目指し、同時に世界中が米国型の市場経済主義経済と繁栄を欲したと言う相思相愛のプロセスだったと思います。
その中で、米ドルは完全なPlatform Currencyとなり、国際貿易や商品市場など世界経済の決済通貨となりました。実は、米国があれだけの経常赤字を持ちながら米ドルが暴落しなかったからくりはここにこそあると思います。米国の巨額の貿易赤字の裏側では世界中に米ドルが溢れかえりましたが、Platform Currencyとしての米ドルは使い道が豊富であり、且つ外貨準備として備蓄する必要すらあったために米ドルは暴落しなかったと言うのが重要なポイントです。
Global化された経済の中で世界中には大規模な米ドル需要があり、貿易赤字等で供給される米ドルはその需要にマッチする水準まではドル安要因にならないという図式が出来上がっているわけですね。
米国経済は急速に減速し、住宅価格の下落や雇用の悪化を背景に経済の原動力である家計消費、個人消費は急速に減少しており、輸入の減少から貿易赤字が急速に減少しています。
これは、貿易赤字という形で供給されて来た米ドル減少を意味するのですが、Platform Currencyとしての米ドル需要は供給減少分を金融市場で取りに行くという現象が起きており、世界中の金融市場で米ドルの調達コストが上昇しており、為替市場でも米ドルの取り圧力から予想外の米ドル上昇が起きていると言う訳です。
これが需要サイドから見た米ドル上昇要因です。世の中結局Platform(仕組み)を制した者が勝組なのだという話ですね。
The fact is stranger than fiction.
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