2008年10月27日月曜日

Volatility in uncharted zone !!

狂乱の一週間。

オプション市場のVolatilityは軒並み98年のロシア危機とそれに続くLTCM崩壊時の水準を越えて上昇しており、事実上史上最高値を更新したと言ってよいでしょう。

世界中の資産価格が暴落し、リスクキャピタルの中央回帰による米ドルと日本円の上昇が続いています。説明の必要は無いかと思いますが、米国や日本が買われているわけではなく両国の投資家による敗戦処理的なRepatriationも加わり、両国の株式市場が世界の株式市場の下落を先導している状況です。

大相場の予感はありましたが、最早金融の枠組みを超えた世界秩序の破壊と再構築と言う歴史の転換点に差し掛かっているのだという思いが確信に変わってきています。


歴史を見て気が付くのは、気の遠くなるような時間を要するダーウィンの進化論に代表される生物学とは違い、人類の文化、文明の転換は実に短期間で寧ろ唐突に起きているということでしょう。


 ・大きな変化は極めて短期間に起こる。

 ・大文明の終焉は時として滑稽ですらある

この2点を頭に入れて行きましょう。

さて、Volatilityの代表選手と言えば米株市場のVIX指数です。これは過去に50という数値を超えた事は18回ありましたが、毎回一ヵ月後には大幅に下落をしていました。


 それが今回は10月初旬に57台の史上最高値を更新してから50台を割り込むことは無く、遂に80台まで上昇してしまいました。


通貨オプションでもドル円の一ヶ月物が45%で取引されて98年当時の40%を越えてきていますし、最も動きの激しい通貨の1つである豪ドルの短期物は3桁のVolatilityで取引されるようになりました。これは大変な事です。


商品市場も大混乱で、先週直近の最安値を更新した銘柄は、copper, aluminum, nickel, zinc, tin, gold, silver, platinum, palladium, crude oil, propane, lumber, sugar, coffee, cocoa, oats, canola, and live cattle・・・・となっており、商品市場全体のインデックスとドルインデックスのクロスレートのWeeklyチャートは断崖絶壁状態です。

目先の注目点は各国の金融当局の行動であり、特に世界レベルでどういう協調行動が取れるのかに注目が集まります。

最早アイスランドは破綻し、東欧は壊滅状態。資源価格高騰を背景に大国復帰かと思われたロシアですら最早見る影は無く、同国の債務のCDSCredit Default Swap)の水準はアイスランドがIMFに支援を要請する前の水準を遥かに上回るレベルです。

年末に向けて相当数のヘッジファンドの破綻も不可避と思われる中、勝ち逃げ組やダメージの浅いファンドの中には全て現金化した上で年内は休業するという連中も出始めています。

金融市場は一時的な安定や調整的な反発を消化しながら相当期間の混乱が続く事を覚悟する必要があるでしょう。

ここからは我々も現金比率を高める事で機動力の確保を優先するべきです。そして次には勇気ある戦略的な決断をする時を待ちましょう。

この未曾有の混乱の後には未曾有の投資機会が待っていると確信しています。


グローバル化の頓挫の後に来る新しい世界秩序をどう読むかですね。

2008年10月20日月曜日

The invisible continent is sinking.

よく日本のMusicianなどが海外公演を成功させたとか、海外でもCDを出すなどという話があります。アジア域内では実際に日本人の活躍は目覚しいものがあるし、同時に国内でも韓流ブームが起きるほどアジアの音楽、映画などが受け入れられていますが、欧米では一部あるいは一時的な例外を除けば実態は今ひとつという感じではないでしょうか。

活動の場をNYやLAに移したなどと言われながら実は時折寿司屋や蕎麦屋で目撃される意外は現地のメディアに取り上げられることも無い人達や世界のXXと言われ、CDが世界同時発売等と宣伝されながら実際には相当大きな音楽店ですらそのCDとやらを一度も見たことも無い”大御所”も居ます。

ま~この辺りはプロモーションの関係で必ずしも当人たちには責任は無いケースも多いのでしょうしファンの人達にしてみれば実質その程度のことは百も承知で応援しているので大きなお世話と言ったところでしょう。

逆に日本で思われている以上に世界で名前が知られていると言う芸能人や文化人も居るわけですが、その代表的な人物の一人に大前研一氏が居ます。私は、この人が元々外資系の経営コンサルタントだったことや一時平成維新の会なるものを作って政治活動をしていたという程度の知識しかありませんでしたが米国に居る間にこの人の”世界度”を知るようになりとても驚きました。

この人は最初から世界に向けて英語で論文や著書を発表することが多く、日本で出版されている彼の書籍はその翻訳本だったりする位なのですが、私も彼の洞察力には何度も目から鱗が落ちる思いをしてきました。

米国の巨額の赤字は米ドルを暴落させるという通説があります。ほとんど宗教のようにこれを信じる人々が多い中で、過去数十年それが実現していないと言う事実はかつて相当長期間大いに私を困惑させ続けていました。①巨額の赤字だけでは米ドルは暴落しない(必要条件だが十分条件ではない)、②何か米ドルを支える別の要因が存在する、③その両方、④そのどれでもない・・・・・という自問自答が私の脳味噌を激しく循環し続けていました。

この何故米ドルは暴落しないのかという疑問と、そもそもグローバリゼーションと言われる過程の本質は何なのかという二つの命題に明確な回答と深い洞察力を提示してくれたのは大前スパゲティ、いや大前研一氏でした。ともに分厚いのですが、彼の新資本論や新経済原論は自信を持ってお勧め出来ます。

彼はグローバル化により出現する新たな経済空間というか世界的な経済連合体を The Invisible Continent (見えない大陸)と名付けて分析していますが、結局は世界の金融当局者たちはこの見えない大陸への対処に苦労し、有効な処方箋を見出せないまま新興経済圏ではPlainな経済バブル、先進経済圏ではややExoticな金融バブルを発生させて、それらを弾けさせてしまいました。

先進国経済には成熟した安定を、新興国経済には貧困の除去と生活水準の抜本的な引き上げを同時にもたらす導管体(Conduit)として機能するはずだったこの”見えない大陸”と言う架け橋(あるいは新世界秩序)は今荒海の果てに沈没しようとしているかのように感じます。

米国経済が混乱しても世界経済は大丈夫と言うDe-coupling論は既に影を潜めており、その反対のRe-coupling論をベースにDe-leverageやRe-patriationという否定や逆流の接頭辞を付されたキーワードが溢れるようになりました。

要するにGlobalization の頓挫なのだと言うことで、私はずっとDis-globalizationという造語で一連の混乱を説明しようとしているのですが、このような単語を使用するたびに私の頭の中では、ますます見えにくくなる”見えない大陸”が霧の彼方に遠ざかっていくようなイメージが浮かびます。

このLighthouseから、この大陸を照らし出して行きたいと思うのですが、この遍く福音をもたらすことが期待出来た見えない大陸の可視化は少なくとも年単位での時間軸の修正を余儀なくされてしまったようです。

まだまだ混乱は続きそうですね。

金融市場の混乱はトレーディングで乗り切る事が出来ますが、実体経済の大規模な衰退は治安の悪化や歴史的にはテロ行為、社会動乱から最悪のケースとして国際紛争につながることがあるのでとても心配しています。

Please protect yourselves at all time. May you all be protected by God.

2008年10月14日火曜日

This coin also has two sides.

本邦証券業界最大手の野村証券が破綻したリーマンブラザーズ証券のアジア、中東、欧州部門を買収し、最大手のメガバンクである東京三菱UFJがモルガンスタンレー証券に大口の出資をして同社の筆頭株主となるという大きな勝負に打って出ました。同社はその後のモルスタ株の急落にも姿勢を変えず、出資金の払い込みを前倒しして行った旨を公表してG7後でもある週明けの北米株式市場をサポートする姿勢を見せています。


何故壊れたビジネスモデルを買うのか?


市場にはそのような懐疑的な声も上がっているのですが、私は個人的に本邦の証券、銀行の最大手の両社の決断は数年後には喝采を浴びている可能性があると思っています。


ただ、業界関係者にもそのような懐疑論や悲観論が蔓延する位、金融界はまさに激震に襲われたことは間違いありません。


まさかと思うような企業がまさかと思うような事態になっているのですが、Wall街の一角のベアスターンズ証券の行き詰まり以降も風雲急を告げる世の中の変わりようです。




一体何があったのか?


業界のインサイダー的な話になりますが、そこには複雑な背景があります。


Complianceは、法令遵守と訳されますが、特に金融業界に関していえば遵守の対象は法令だけではありません。そこには様々な国際規約のようなものもあるのですが、その中のひとつにBaselⅡと言われる自己資本ルールがあります。これは簡単に言えば、保有する資産の質に従って追加資本を積み増すというルールです。


米国は突出した消費国家ですが、欧州やアジアの大部分は高い貯蓄性向を持っており、金融機関は必ずしも貸出余剰(預金残高<貸出残高)では無く、何か割りのよい運用方法を探しています。


 そこにサブプライム等の高金利ローンも組み込んだ利回りのよい証券化商品がありました。国内企業に貸出をするよりも余程高金利です。問題はBaselⅡ規約による追加資本金ですが、ここに一つの抜け穴がありました。CDS(Credit Default Swap)と呼ばれるものです。


このデリバティブ商品の説明は省略しますが、CDSの購入=売り手の保障がつくという事であり、この売り手がAAA格の金融機関であれば購入する証券化商品は事実上の安全資産となり、BaselⅡ規約の資本金の積増し義務が大幅に緩和される(時として無くなる)事になりますので、この運用手法は爆発的に世界中に広がりました。

  1. 高利回りの証券化商品を買う。

  2. CDS市場で保障を買う。

という事なのですが、世界中の金融機関がこの“②CDS市場で保障を買う”という時に最も安価な保障を提供し続けて来たのがAAA格の世界最大の保険会社でした。そうです、AIGだったのです。


前回の投稿で述べたとおり、2007年度から急激にサブプライムローンの延滞が増加しますが、多くの金融機関はAIGから購入したCDSのお陰で資産の劣化を防ぐ事が出来ましたが、一方でAIGは世界中の金融機関から損失を輸入した格好となり、バランスシートが急速に劣化していきます、


雪崩が起きたのは先月、9月の中旬でした。


格付け会社が一斉にAIGを格下げしたのです。同社が大きな困難に直面したことは直ぐに分ることですが、世間が見落としているのがBaselⅡ規約です。


 CDSの売り手であるAIGAAA格を失った瞬間に、世界中の金融機関の資産査定が劣化してBaselⅡにより資本金の大幅な積み増しの必要性に迫られたのです。


CDSというクレジットデリバティブ取引を通してAIGが世界中から損失を輸入し、逆にこのスワップ取引を通してAIGの格下げは世界中に資本増強の必要性(そしてBaselⅡによる義務)を輸出することになりました。


これで世界中の金融機関による狂乱のファンディング圧力の高まりが銀行間の資金取引を枯渇させ、銀行間取引レートであるLiborLondon Interbank Offered Rateが急上昇します。金利市場でドル資金が取れなくなった市場参加者が為替先物や通貨スワップ市場で足元のドル需要を調達する動きが活発化したことからこれらの市場にも異様な歪みが生じてしまい国際金融市場がパンク寸前となり、それがさらに体力の無い金融機関の経営を圧迫するという悪循環が生まれた訳です。


実はここで衝撃的な事実が表面化しました。一つの謎が解けたという表現がなされてもいますが、大きく経営が傾いたAIGのポートフォリオの中でこのCDS取引の最大のカウンターパーティは名うての海外金融機関勢を抑えて国内はWall街の本丸と目されるX社であったというのです。


同社の独り勝ちの構図は業界の中では長年の謎でしたが、同社が他社のような大規模なWrite-offや資本増強の必要性に迫られなかった背景の一端が明らかになり、米国金融当局はAIGLehmanのように破綻させる訳には行かなくなりました。世界中の主要金融機関と国内最大の投資銀行に引導を渡すという選択肢はあり得ないからです。


こうしてAIGは事実上の国有化となり、X社Warren Buffet氏から大規模な出資を受ける事となりました。


ここでも事実は小説よりも奇なりです。BaselⅡのような規制の無い事実上の無法地帯だったCredit
Derivative
市場にメスを入れた時に、副産物として(?)Wall街の長年の謎が解けたという訳です。


誤解と批判を恐れずに私見を述べれば、主要メディアを含む世間が完全に見落としている事の一つに、「米国発の混乱」という表現は正しいとしても、それ以前にあった世界経済や世界的な資産市場のバブル的な繁栄自体が、そもそも「米国発」のものだったという事実があるのではないでしょうか。


Let us always make sure that we are looking at both sides of the coin.


いずれにしてもこうして9月にルビンコン河を渡った以上、第4四半期も大きな時代の潮流がうねる事になりそうです。

2008年10月13日月曜日

A HOUSE OF CARDS...

立派に見えても壊れる時は脆い物の例えに「カードの家」という言葉があります。


トランプのカードを上手くバランスさせて積み上げて建物のような形にしたものを思い浮かべればよいでしょう。昨年の夏に表面化した米国のサブプライム問題に端を発した米国経済の急速な冷え込みを表現するのに、以下のような表現が頻繁に使用されていました。


House of cards is finally falling apart.


これで2007年秋から20083月までは米ドル売りと言う津波が金融市場を席巻しましたが、その後数ヶ月の猶予を経て、遂には世界経済全体もがA big house of cards だったと言う事が判明し、一旦は米国から欧州、オセアニア、新興国に逃避していた投資資金が一斉に米国に還流する形で米ドルが一大復活を遂げる展開となりました。


House of cards というのは言いえて妙で、まさに米国経済の土台を支えてきたのはHousing
Marketだった事は周知の事実です。


今や全世界に飛び火した経済の混乱を考察する時に、その引き金を引いた米国のサブプライムローンの延滞が何故2007年度に入って急上昇したのかを再確認する事が必要だと思います。


日本にも、親子二世代ローンや将来の収入増を当てにしたステップ返済型の住宅ローンがありますが(住宅金融公庫ですらありますね)、要するにサブプライムローンというのは殆どが5年後位から急激に返済予定額が上昇すると言うスタイルのローンだった事と、その多くがFRB2001年度の同時多発テロによる景気後退を受けて継続的に金融緩和をしていた2002年度に契約したものであった為に、2007年に入り急上昇した返済額を払えなくなった債務者が急増したと言う事実があります。


以下はこのステップ返済型(Adjustable Rate Mortgage=ARM)の返済額上昇時期の到来予定のチャートですが、明らかに今後の期限到来=延滞予備軍が長期に渡って展望される為にこれらを束ねて証券化した債権に対する値段が付かずに市場が麻痺してしまっているわけです。


週末のG7会合の評価は現時点では微妙ですが、危機感を募らせる欧州当局が週明けの欧州市場オープニングに先駆けて抽象的との批判も大きかったG7合意の具体化を発表した事で市場は好意的な反応を示していますが、火曜日以降の東京市場や北米市場の動向こそが大きな鍵を握ると言う事になりそうです。


House of cards is tearing apart ?

窮地に立つHousing市場のテコ入れ先に次のCardは切れるのでしょうか?

住宅市場同様に景気回復の鍵を握るのが個人消費と雇用問題ですが、実は不安なデータがあります。


所謂NFPNon-Farm Payroll:非農業部門新規就業者数)ですが、2001年度以降の新規雇用創造の実に43.15%が住宅・建設・不動産分野での雇用増でした。


最早公的部門による前例の無いようなカードが切られない限り、世界景気の早期回復は望むべくも無いという状況のようです。


ここは当局者の英知と英断に期待したいところですね。躊躇せずにカードを切って欲しいものです。

2008年10月5日日曜日

The reversal of once irreversible process looks irreversible.

大荒れの金融市場。

各市場とも大荒れと言う展開ですが、最もドラマティックな動きをしている物のひとつが米国株式市場でしょう。


特に激しいDow Jones Industrial Averageの最近の動きを振り返ると今でも眩暈を覚えるようです。

  • 915日(月)⇒2001年9月のテロ以来最大となる$504.48もの大幅下落。

  • 918()19日(金)⇒2日間で$700以上の反発。連続する2営業日の上昇幅として1987年以来最大。

  • 929()⇒$777.68もの史上最大の大暴落。2001917日の下落幅$684を大幅に更新。

  • 930日(火)⇒$485.21の大幅反発。

  • 10月1日()2()3()と続落し、先週は結局$817.75の大幅下落で終了。

米国財務省のPaulson長官が起案した総額$700bio規模の経済救済案が土壇場で下院で否決された事で市場が完全に壊れてしまった事が発端ですが、驚愕した民主党、共和党、財務省が一部修正をした法案を今度は上院が可決。再度下院送りとなった法案が3()に下院で可決されましたが一度壊れてしまった市場心理は最早修復不可能で、株価の回復には繫がりませんでした。


天のシナリオ”とでも言うべきでしょうか。少なくとも週初に$700bioの救済案が下院で予定外の否決という事態になっていなければ、法案の円滑な可決を好感して先週の株価は一旦かなり上昇していた可能性があると思うのですが、結果的に上院、下院を通過したとはいえ一旦は下院で否決され、歴史上最大の下げ幅を示現したことで、その後の市場心理も株価も全く修復はされませんでした。


天が予め定めたシナリオなのでしょうか・・・以前も書いたとおりグローバリゼーションという名で呼ばれる米国型市場経済の世界的拡大とレバレッジを掛けたリスクマネーの拡散は急速に頓挫し、足元の資金繰りすら苦しくなった運用主体によりリスクマネーは雪崩を打って米国に還流しています。


例えば・・・・・


欧州エマージングの旗手として10%を越えるCD等で世界中の余剰資金の受け口となっていたアイスランドからも資金流出が止まらず、アイスランドの通貨(アイスランドクローネ)が急落しています。以下は米ドルがアイスランドクローネに対して急上昇しているチャートです(米ドルの急上昇=アイスランドクローネの急落です)。グローバリゼーションのなかで2000年以降大きく下落(米ドル下落、アイスランドクローネ上昇)していた相場の2008年に入ってからの反転は尋常ではありません。







次は、米ドルの唯一の代替としての地位の確立が不動のものとも思えた欧州統合通貨ユーロの対ドルの動きを見てみましょう。以下の通り完全にサポートを割り込んでいます。









ユーロは1.37台で週末を迎えていますが、個人的にはここから短期間で最低でも1.33台を試すものと考えています。


兎に角、物事の進行速度が予想以上の急展開を見せています。一時は完全に不可逆な動きと思われたグローバリゼーションの動きでしたが、ここへ来て勢いを増しているその逆行のプロセスこそが、今は不可逆なプロセスだと感じられます。