先週は完全にドル安の週でした。テクニカルやモメンタムを見る限りドルの下落はまだ続く可能性が高いのですがドル下落の背景には幾つかの解釈が併走している感があります。
1 投資活動の活発化によるドル安
これは楽観的な解釈と言う事になりますが、先行き不透明感を嫌気して投資ポートフォリオの現金比率を高めていた投資家が再び世界中の株式市場、商品市場、不動産市場に広範に投資活動を再開した事により一旦現金化(=ドル化=ドル上昇)されていた資金が一斉に移動したことによるドル売りと言う事です。
この動きをサポートする材料としては主に以下の動きがあります。
①VIX指数の低下・・・これは簡単に言えば株式市場のVolatilityであり不安指数なのですが、株式市場が好調だった2003年~2007年までは20未満の水準で推移していましたが、サブプライム問題以降水準が上昇し2008年のリーマン破綻以降は50を割る込む事はありませんでした。これが先週は50を割り込んだ事で投資家の投資意欲の回復が加速しました。先々週末の選挙結果を好感してインド株が週初から17%上昇していた事も大きく影響したと思われます。
②Baltic指数の上昇・・・これは物資の移動を数値化した一種の海運指数なのですが、リーマンショック以降1466まで下落していたこの数字が先週は昨年10月以来となる2644まで回復した事で世界的な経済活動回復を印象付けました。
③TEDスプレッドの縮小・・・これは3ケ月物のT-bill金利とLibor金利の差額なのですが、クレジット市場が不調だとLibor金利の上昇からこの数値が拡大します。リーマンショック後の昨年10月はこの差額が450bpを超えていましたが、先週はこれが長期平均の50bpを下回る48bp水準にまで低下しており、常識的な調達コストでお金が経済システムの中を移動し始めたと言う解釈が広がりました。
2 米国売り的なドル安(米国トリプル安シナリオ再燃)
これは特に週の後半に台頭してきたシナリオでもあるのですが、S&P(格付け機関)が英国の格付け見通しを安定的からネガティブに引き下げた事から英国ポンドが売り込まれる動きがありましたが、最終的にこれが双子の赤字を抱える米国の格下げが近いと言う思惑に発展した事から市場は一気に米国売りに動いたと言う展開です。週後半はこれで米債下落(長期金利上昇)、米株売り、米ドル売りが加速しました。
3 インフレーション(ハイパーインフレーション)懸念
これは上記の二つのシナリオとも関係するのですが、これまでは世界経済の修復の為に世界中が将来のインフレリスクを承知で足元の景気後退やデフレーションの芽を摘むべく大胆な金融緩和を行い、経済システムの中に莫大な資金供給を行ってきました。
一旦景気が回復し始めれば加速度的なインフレが発生するので出口政策の舵取りが非常に困難とされる政策に敢えて打って出ざるを得なかった訳ですが、予想外に早くこのシナリオが実現してきたと言う解釈があります。
インフレ=物価上昇=通貨価値下落と言う意味ではどの通貨にも弱味はあるわけですが、最も莫大且つ世界中に大量供給されて来た米ドルに対する売り圧力が急上昇するのはある意味宿命的なものがあります。
今週はいきなり月曜日が海外休場で調整先行との見方もありますが、このドル安のマグニチュードがどういう展開を見せるかが最大の注目点となります。
以下はユーロドルの日次チャートですが、先週分として綺麗な陽線が5本並んでおり、高値を更新して伸びて来た様子が分ると思います。
ドル安待ったなし・・・? Stay tuned.