日本では金融ビッグバンの一環としての所謂ペイオフの解禁と言うやつで、金融機関が破綻した場合に預金保険機構から保障される金額の上限が2002年4月以降1千万円とその利息のみという形で預金者の自己リスクが明確化されていますが、米国にはFDIC⇒Federal Deposit Insurance Corporation(連邦預金保険会社)と言うものがあり、一口座当たり10万ドルまでの預金が保護される仕組みとなっています。
このFDICですが、今年が設立75周年と言う事のようで多くの主要紙に"お陰様で75周年"と言うようなフルページの広告を出しているのですが、金融市場にリスク回避バイアスが復活し始めている中で様々な憶測を呼んでいます。
“FDIC protects depositors up to the basic insurance amount of $100,000 per account and retirement accounts, such as IRAs, to $250,000.”
FDICは、預金者の皆様を口座当り10万ドルまで、非課税の老後年金運用口座なら25万ドルまでを保護します・・・・と再確認をした後に、つまり全てを保護するということではないですからね・・・という念押しを太字で掲載しているのです。
昨年のサブプライム問題発生以降の大規模な連続利下げと流動性の供給は明らかに金融機関救済に軸足を置いた応急措置だったわけですが、ここへ来てドル安と原油高等によるインフレの弊害が国民生活を過度に圧迫し始めたと言う認識が当局者の間でも強まる中で、ここからはドル安の是正と金融緩和姿勢の見直しを行いますよと言うシグナルのようにも思えないでしょうか?
ただしこれを断行すると・・・実は中小の地銀レベルも多い米国では結構な金融機関が収益性を圧迫されて資金繰りなどにも問題をきたし、業界再編が加速すると言う可能性があるので、このタイミングで国民に保護の上限と自己責任の原則を再確認させているのではないかという憶測が持たれているという訳です。
ただの75周年のアナウンスなのか・・・・方針転換の憶測もあるFRB直前のシグナルか・・・・
旧約聖書ダニエル書のバビロニア王国の滅亡の章で、王国の滅亡を予言する不思議な文字が壁に現れたという件があることから、"The writing on the wall" は不吉な前兆と言う意味で使用されるのですが、私もこのタイミングでのFDICの75周年広告には少々深読みをしたくなってしまいます。
"I saw the writing on the wall" というチープトリックの曲がありましたが、もしこの広告が実際に庶民への警告の意味で出されたものだとしたら・・・・それこそチープなトリックのような気もしますね。
どういう決断をしても、市場のほぼ半分を裏切る、失望させるのならば・・・・・FRBは本当に難しい舵取りを求められているのでしょう。