2009年4月29日水曜日

Bulls and Bears are slaughtered by........

今週の金融市場は、豚インフルエンザの影響に振り回される展開になっています。先週の金曜日に米銀各行に通知されたストレステストの結果が主役になると思われましたがまさに伏兵登場と言う感じの流れになりました。

この新種インフルエンザに正式に認定された豚インフルエンザですが、最大の問題はその不透明さにあります。

1 先ずはこの病気の致死性がどの程度なのかが不透明。

世界中で感染者が出続けていますので、その感染速度の速さは疑う余地も無いのですが、これまでは医療や衛生面では後進国と言わざるを得ないメキシコでしか死者が出ていない事や、先進国ではメキシコ帰りの人々が発症はしても投薬で回復しているようなので致死性は低いようにも思えます。

2 情報の交錯

また感染の中心と思われるメキシコからの情報がやや交錯しているようで、火曜日の海外時間には週初に新種インフルエンザの警戒レベルをそれまでの3から4に引き上げたばかりのWHOがClarificationとして発表したこの病気による死者の数がそれまでの160名弱から一気に7名にまで減少した事で混乱に拍車が掛かっています。

3 市場の乱高下

豚インフルエンザに関する市場の反応は週初のアジア時間では楽観されていました。リスク回避から株式が売られると言うよりも製薬会社の株式が買われるという動きから市場は堅調でした。しかし欧州時間の早い段階からソフトコモディティから値崩れが始まり、やがて株式市場全体が売り込まれる流れとなりました。火曜日には為替市場で円とドルが買われる動きが鮮明となりましたが、これが上述のWHOによる死者数の大幅下方修正により東京休日の水曜日には一気に逆流しています。

金融市場では昔から一部で牛(ブル)でも熊(ベア)でもない人間、つまり相場観の無い人間をブタと呼んで馬鹿にする風潮があり、「お金をもうけるのは牛と熊、ブタはひたすら殺される」という格言(?)もあるのですが、今はブタの猛逆襲で牛や熊が殺されている状況ではないでしょうか。

それにしてもこの不透明感には困ったものです。時にはブタになる事が必要なのでしょうか・・・・・


2009年4月20日月曜日

Interesting Enigma

投資やトレーディングの世界には色々な分析手法が跋扈しています。ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析はその代表格ですが、もう一つの軸として時間軸の分析というものがあり、サイクル理論や波動分析というような手法がこれに入ります。

大きな流れをファンダメンタルズ分析で把握して、テクニカル分析で現状のSnapshotを確認すると言うのが最大公約数的なアプローチかと思うのですが、サイクル的に時間軸的な視点からトレンドが加速や転換しやすい時間帯を意識しておくことも重要です。

何故こんな事を書いているかと言うと、実は影響力のあるサイクル分析のレポートがこの週末から今週にかけて金融市場がちょっとした変化の時間帯に入るという予測を出しているからです。

「星占い?」などと馬鹿に出来ない実績と影響力を誇るMサイクルがその一つなのですが、もう一つ気になる話がありました。

ロバートヘンリーの頭は大丈夫かと思われてしまいそうですが、実は90年代にプリンストン債なる債券を主に日本の投資家に売りまくって大穴を空けて、最後は悪魔の囁きを聞いてネズミ講的な運営に陥って破綻したマーチン・アームストロングという人がいるのですが、この人のサイクルモデルがやはり変化のタイミングに来ていると言う話があります。

そういう人間のモデルなど信用出来ないだろうと普通は思うのですが、現在も獄中にいる彼のオフィスから押収された研究と独自に解明した変化の周期分析には多くの専門家が感銘を受けており、資料として研究内容が押収された事で明るみに出たサイクル理論は彼が獄中にいる間も株式市場、商品市場、為替市場の重要変化のタイミングを当て続けて来たという話があります。正確には、彼のロジックで計算される変化日に何かしらどこかの市場で変化があったという事になります。

このモデルの変化日予測に関しては、彼自身「市場の特定は出来ないが、原則その時点で最も強いトレンドと認識されているところに変化が起こる可能性が高い」という解説をしており、我々が今そのタイミングに入ったと言うことならば現在最も顕著なトレンドとして認識されてきたものは何かを考える必要があります。

ま~そんな事を一応頭に入れながら市場を俯瞰すると・・・

1 米ドルが中立地帯から上に抜けて来た。
2 金は下に抜けて来た。
3 米株は堅調だが日経平均は失速感があるなど株式市場はバラ付き始めた。
4 米長期金利が上昇に転じ始めた。
5 欧州通貨の下落可能性が上昇している
6 ドル円は中途半端だがクロス円はベア転の印象が強まっている。

というあたりに気が付きます。

この中の幾つかが持続性のあるトレンドに進化していくのでしょうか。先週末に一部のポジションは作ったのでちょっと期待して待ちたいと思っています。

実はこのアームストロング氏のホームページは私にとっては教科書的なものだった時期がありまして、問題が起きたことは明らかですが彼がただの詐欺師ではないことは疑いの余地はありません。

彼の“I know too much”(自分は知り過ぎている)という意味深な発言や押収出来ずに行方不明のPC一台と回収出来ていない可能性のある一部の資金、そしてそんな彼の出所を米国内外の多数の”団体”が様々な思惑で待っているために当局が刑期が終了して尚、様々な理由をつけて彼を拘束し続けている可能性があるなど映画にでも出来そうなEnigmaがそこにはあります。

いずれにしても現時点では、We know too little. ですので今週の市場を注視していきましょう。

ドルインデックスは90狙いでしょうか・・・

2009年4月6日月曜日

When "SAFE" is not safe.


それにしても所謂 安全資産 と考えられてきたものの下落が顕著です。

1 米国債 (10年債)

グラフ中央の大陽線は先月のFRBによる長期債購入表明時の債券価格の暴騰ですが、その後はじりじりと下げ続けて先週の木曜日と金曜日の大陰線は非常に印象的です。大規模な各種Bail-outによる債券増発懸念などもありますが、実は単純なリスク意欲の上昇による商品市場や株式市場の復活こそが米国長期金利上昇の鍵なのではないでしょうか。

 

2 Gold

1オンス当たりの価格で1000ドル越えが確実視されていた金ですが、一転900ドルを割り込んできました。商品市場全体は好調なのですが、牽引役は原油などのエネルギー系が中心で、それまで安全資産として気を吐いてきた金は市場の修復とリスク許容度の上昇をもって需要の減少が見込まれると言うところでしょうか。

3 日本円

ドル円は年末年始の需給を消化して金曜日に遂に100円台回復をして終了しました。ローソク足で言えば髭ではなく実態部分で200日移動平均を上回ると言うのが2008年の930日以来初めてとの事ですが、今回の42日といい6ヶ月サイクルというか何というか・・・・もし事業年度の年末年始に本当の実需が利いているのだとしたら? まだまだ円安トレンドは始まったばかりなのでしょうか。

This is when “safe” is dangerous. 


リスク許容度の回復は、一度は壊れた市場間の相関も修復し始めており、安全資産からリスク資産への資金シフトも予想外の勢いのようです。

2009年4月5日日曜日

A 180 degree turn ?

ここへ来て金融市場のRisk sentimentのベクトルは180度転換したとする見方が随分と台頭してきました。Risk Aversionが大きく後退して明らかなRisk Appetiteが台頭して来たようです。

先週は本邦勢が2008会計年度末、海外勢も2009年第一四半期末を消化してそれぞれに新たな時間軸での勝負が始まりました。しかもこのタイミングに合わせるかのようにECB金融政策決定会合、G20会議、金曜日のオオトリは3月の米雇用統計というイベントが待ち構えていると言う実に盛り沢山の時間帯でした。

イベント的には、ECB50bpの利下げ予想に対して25bpしか利下げせずというサプライズはありましたが、一応その後の声明などで当局が追加利下げや今後の量的緩和の可能性を示唆した事からサプライズも何と無く終息し、G20も予想通り具体性には欠けましたが世界経済再生に向けた各国の前向きな姿勢は確認できた事で金融市場には徐々に正常化バイアスが強まってきたようです。金曜日の米3月雇用統計が非農業部門新規就業者数及び失業率が弱い数字ながらほぼ市場の事前予想通りの内容であったことから意外にも大きな材料とはなりませんでした。実は1月の数字などはかなり下方修正されていたりしてひどいものなのですが市場がそれを無視したという事実をもって市場心理が持続的な修復過程にあるというより大きな流れが確認されたと考えるべきなのかもしれません。

Risk Appetiteの復活によりそれまでのRisk回避アセットであったGold、米ドル、米国債、円などが大きく後退する一方で、かつての希望の星達とも言える新興国通貨、株式市場、コモディティ市場、コモディティ通貨などが大復活を遂げて週の取引を終了しました。

本格的な持続的回復が始まったと考えるのはあまりにも楽観過ぎますが、非常に大きな下落の後であるだけに、たとえ調整でしかなかったとしても先週確認されたベクトルは結構な持久力を証明する可能性があります。

株式市場の代表格であるS&P500インデックスの200日移動平均線からの乖離率をPlotしたものが以下のチャートです。


これが調整し始めたとしたら、例え長期トレンドは下向きだとしても足元の株価は相当上昇できますよね。

コモディティ市場の総合指標であるCRBインデックスでも20日移動平均が50日移動平均を上抜くというBullish Crossover(Golden Crossと呼ばれるやつですね)が確認できます。


こうなるとドルは完全に守勢に回るわけです。

以下はS&P500とドルインデックスの逆相関を表すチャートです。


最後に重要な事を付け加えると・・

遂に先週は米国が世界に先駆けて市場流動性に脆弱性がある一部の資産に関してのみですが時価会計基準の適用を緩和すると言う動きに出ており、今後これが世界的な潮流となる可能性があると同時に間もなく始まる金融機関の決算が相当改善すると言う憶測があります。

金融緩和に財政出動、そして遂にゲームの終了後にルールまで変えて世の中の底上げを図ると言う動きに対する結果が現在進行形の市場センチの回復だとすれば、少々複雑な気持ちにもなりますが、市場自身が実態と認識している物よりも肉眼で見える物により大きく反応してしまうという構図が変わらないのであれば、歴史は繰り返すとか、人類は学ばないと言う言葉の重みも感じてしまいますね。

我々はそれに即した動きをするのみではありますが。We want to be the ones that learn.