2009年7月12日日曜日

Opportunity or Opposite ?

今回の円高については非常に興味深い側面があります。

過去2年間のように2009年も金融市場が混乱して円高になると言う予想を立てていた勢力はGreen Shootsと言われた「春の芽吹き」的な堅調なアセット市場に押されて最早かつての恐竜のごとく絶滅寸前だった時にこの円高が起きた事に加えて、そもそも本来円高の前提条件と考えられてきたリスク市場の大幅調整と言うものが起きていない事です。

確かに原油価格や穀物あたりの商品市場には頭打ち感が強まっていましたが、株式市場は物凄い粘り腰を見せており、何度かあったピンチを切り抜けて週末の段階でも下落を拒否し続けている状況です。欧米株や日経平均だけではなく、中国やインドなどの新興国市場も一気に数パーセント下げる局面がありましたがその日のうちに大きく反発するなど円高の前提条件は中々再現しないのです。

私個人的にも、やはり過剰流動性というものが存在し続ける限り実体経済と金融経済のGAPは中々埋まらないのではないか、実体経済はBrown Weedsでも金融経済はGreen Shootsという状況が想像以上に長期間並存し得るのではないかと考えるようになっていました。

そんなタイミングで、突然の円高の発生にはあたかも原因を飛び越えて結果が出現したような感覚を覚えます。
 
面白い事に市場参加者が抱いている印象は結構二分しているようです。市場経験の長いベテラン勢は今回の原因不明な執拗な円高に大相場の匂いを感じ始めています。過去の円高にもこういう事が何度かあったと言う事ですね。
 一方で比較的若い世代は冷静で、原因、特に日本経済のファンダメンタルズを考えた時に円上昇を正当化するファクターが見当たらない事を理由に今回の円高は一時的な珍現象と捉える人達が多いようです。

相場という切り口で考えてみると、ファンダメンタルズ的には理解しにくい方向にテクニカル主導のトレンドが出てしまう時があります。ファンダメンタルズ的にはどうかと思うけどチャートは抜けてしまったと言うような状況です。大相場の幾つかはそんな風に始まるのも事実で、そうであればこそそれが継続した時に意外な大相場になるわけですが、そんな時には必ずどこかで正当化のプロセスが訪れます。

つまりテクニカルが先走っても、どこかでファンダメンタルズが追いついてくる、そしてそれを確認して相場が加速度的な展開を見せてトレンドが増幅すると言うプロセスです。

今回で言えば・・・・今回も類似の展開があるとすれば・・・・それはアセット市場の大幅調整やBRICSなど新興国の急減速、或いは米国同様の傷口を上手く隠し続けてきた欧州経済圏の膿が噴出すというあたりでしょうか。

トリガー候補は・・・
13日(月)にユーロ圏でトリシェECB総裁講演
14日(火)に米国で小売売上高とドイツでZEW景況感調査
15日(水)に米国で鉱工業生産やCPI(消費者物価指数)、7月NY連銀製造業景気指数、
ユーロ圏で消費者物価指数
16日(木)に米国で対米証券投資やFOMC議事録、
7月フィラデルフィア連銀製造業景況指数
17日(金)に米国で住宅着工件数、ユーロ圏・5月貿易収支
といったたりでしょうか。

結果が原因を追い越してしまったような現状は、どのような落とし前を見るのでしょうか。