2010年3月23日火曜日

Stocks hold the key.

色々な見方があるかとは思いますが、私は今年の1月―3月という期間は、少なくとも幾つかの点においては間違いなく異例な年であった2009年の後を引き受ける2010年が金融市場にとってどのような年になるのかという一大テーマに関する駆け引きが行われてきた期間ではないかと思っています。

金融市場にとって2009年はある意味で異例な年だったと言う事が出来るでしょう。2009年に起きた事を列挙してみると、そのうちの幾つかに関しては本来は同時には起こらない筈のことが同時に起きていたということに気が付きます。

2007年~2008年にはサブプライム問題~リーマンショックという未曾有の出来事がありました。それらを消化した後の2009年において最も意外だったのは2009年が所謂 市場好調期となったことでしょう。

 私も実は2009年度は当然世の中の混乱が継続し、混乱の火種はサブプライムの傷が米国よりも深く、且つレバレッジの掛け具合も米国以上と言われていた欧州に飛び火すると言うシナリオを想定していたものですが、実際の相場は4月からGreen Shoots等と言う言葉が跋扈する完全な投資家天国=市場好調期が継続しました。

市場好調期には、あらゆる資産市場がブルトレンドに入るためにCorrelationが上昇してVolatilityが低下するという現象が起こりますが、このVolatilityの低下と言う現象の広がりは一つの大きなトレンドを形成し、市場好調期であるが故にVolatilityが下落すると言うことに加えて、Volatility自体がベアトレンドを持ち、オプション市場でVolatilityが売られるが故に一層市場好調バイアスが強まるという循環をすら生み出していったと思われます。

また上述の本来は同時には起こらないはずが同時に起きていたと言うことの一例としては例えば通貨オプション市場において、為替がドル安円高方向に動きながらVolatilityが下落したり、円コールドルプットと円プットドルコールのVolatility表示の価格差(リスクリバーサルスプレッド)が縮小すると言う現象が挙げられます。これは大げさに言えば細川政権がクリントン政権の怒りを買ってドル円が一気に80円割れを示現した95年4月以来の「円高でVolatility上昇」という世の中の常識が覆ったとも表現出来る出来事でした。

市場参加者を分類する方法には無数の手法があると思いますが、先ずは実需と非実需に分けて後者を投資家とトレーダーに分けるとすると、投資家はVolatilityを嫌い、トレーダーはそれを必要とすると言うことが出来ます。2009年はその意味では投資家天国でトレーダーは干上がる流れとなった訳ですが、2010年の大きな論点は、上述のような2009年は異例な年であったのか、或いは長期間続く新たな世界の入り口であったのかという事でしょう。

ここで投資家コミュニティは明らかに後者のシナリオで動いており、2010年度版のGreen Shoots相場を作りに来ている事は間違いなさそうです。株価は52週高値、Vix指数は過去1年の最安値を更新しています。

ただし、この過去半年のVixのチャートを見ると明らかなように、Vix指数は最安値をつけた後は短期間で結構な反発をする傾向があります。これは株価が反落することを意味しています。

 今回Vix指数が最安値をつける過程では、今月に入り先週木曜日までダウが8連騰、また小反落した金曜日を入れても15営業日のうち12営業日で上昇という堅調振りでした。

これとパラレルなのが為替市場のドル円のオプション市場の動向です。先週はドル円の1ヶ月物のVolatilityが10%を割り込んで9%台に下落しましたが、Vix同様にこの水準まで下落するとドル円にトレンドが発生してVolatilityが反発すると言うジンクスがあります。

このところのドル円がどれだけ煮詰まっていたかはごらんの通りです。このチャートの右半分が3月の動きですが、殆ど立ち泳ぎ状態ですね。トレーダーとしては打つ手なしと言う状況でひたすらVolatilityが下がってきたと言う感じでしょう。

3月も最終段階に入りますが、この昨年同様に4月以降のGreen Shoots相場を示現したい勢力と欧州の混乱や世界中のソブリンリスクを材料にVolatilityの上下するTradableな市場を望む勢力の綱引が激化する可能性があります。そしてその主戦場はやはり米株市場と言うことになるでしょう。

株価が持ち堪えればGreen Shootsの芽が出てきますし、株価が反落色を強めるのなら4月以降は昨年とは違う流れが出やすくなり、ドル、円、Volatilityが上昇し、株、商品などは下落しやすい展開となりそうです。

ここからは特に株価に注目しましょう。