2010年10月31日日曜日

Off to an event-packed week 2

米中間選挙、FOMCが終了して週後半に入るといきなり日銀政策決定会合があります。実は日銀は10月28日に政策決定会合を終えたばかりなのですが、そこで「包括緩和」の一環としてETFやJリートなどの買取も行うと言う意向を表明するとともに次回の会合の開催を大幅に早めてFOMC直後の11月4日(木)からの二日間に前倒ししてきました。

為替では不可能と思われた日米協調介入ですが、ともに量的緩和に突っ走る日米の中央銀行が協調して何かを企んでいる可能性を感じさせる動きですので、中身の有無に関わらず市場には大きな影響を与える事だけは間違いないでしょう。

そして11月5日(金)のNY時間には10月の雇用統計が控えており、更にその週末にはギリシャの地方選挙があるはずです。これはさほど騒がれていませんが、緊縮財政で事実上の生活水準の切り下げを強いられている有権者の与党支持率の低さが与党の大敗北を齎す可能性があり、追い込まれた与党が解散総選挙に打って出る事になれば欧州不安の再燃にもつながりかねない話です。

このように週後半にもイベントが盛りだくさんということになるので金融市場からも全く目が離せない時間帯が続きそうです。

Off to an event-packed week 1

今週から11月なのですが、いきなり11月2日(火)に注目の米中間選挙があります。日本は11月3日(水)が文化の日で休日なのですが、場合によっては結構相場が動いてしまうかもしれませんね。

先進国はどこも景気が悪いので、共通した問題として与党の支持率がどうしても落ちますが、今回の選挙も民主党の苦戦は不可避な状況で勢い付く共和党には下院で過半数を制する可能性があり、最も強気の予想によれば上院をも制する可能性があるとの事です。

9月末時点での支持率で41%対51%と共和党に10ポイントのリードを許していた民主党は必死の巻き返しにより10月に入ってその差を5ポイントに縮めてきているようなのですが、肝心のオバマ大統領の支持率が40%後半を推移しており、更にTea Partyと呼ばれる保守勢力の著しい台頭により民主党に逆風が吹いていると言う状況です。

Tea Partyと言う勢力はやや複雑で”小さな政府”のコンセプトを掲げているので基本的には共和党よりなのでしょうが、実態はこの勢力を利用して指示を伸ばす民主党議員も少なくなく、寧ろ超党派的な保守勢力の結集というイメージに近いようです。

ところで共和党が結果的に勢力を伸ばし、上院、下院ともに議会を牛耳るとすると二つの可能性が浮上してきます。

一つはアジアへの影響です。これは読みにくいのですが、従来から基本構図としては民主党は親中反日、共和党は新日反中的なアジア戦略を取ってきました。その意味では民主党のオバマ政権において既にギクシャクし始めている米中関係は明確に対立の図式を強める可能性があるでしょう。

もう一つは米ドルです。現在支持を伸ばしている共和党のリーダー格の主力議員の多くはオバマ政権やFRBが推し進める米ドルの価値を暴落させかねない経済政策、金融政策を強く批判してきました。中間選挙で共和党が圧勝でもしようものなら翌3日から始まるFOMCで発表されるQE2(追加の量的緩和策)の規模感にも微妙な影響を与える可能性が否定できないでしょう。

週前半の米中間選挙とFOMCは歴史的な転換点にすらなり得る注目イベントと言えるでしょう。

Top FX Movers Last Week.

先週は市場の実働ベースで10月最終週である事や11月に第一週からBig Eventが集中している事などから全般的に調整的な値動きが先行し、後半から週末にかけては為替市場は乱高下を繰り返す難しい展開になりました。

一応最終的な週を通したパフォーマンスは以下のランキングになります。

 通貨ペア 先週終値 前週終値 変動幅(pips) 変動率(%)


①NZDCHF 0.7523       0.7291       +232     +3.08%


②GBPCHF 1.5752       1.5323       +429     +2.72%


③EURNZD 1.8186       1.8679       -493     -2.71%


④NZDUSD 0.7660       0.7464      +196     +2.56%


⑤AUDNZD 1.2828      1.3153      -325     -2.53%


⑥EURGBP 0.8693       0.8894      -201     -2.31%


⑦GBPUSD 1.6038       1.5683      +355     +2.21%


⑧GBPAUD 1.6305      1.5956      +349     +2.14%


⑨NZDCAD 0.7807     0.7657      +150     +1.92%


⑩CHFJPY 81.81         83.26        -145     -1.77%

この上位10ペアのうちで、上昇する通貨としての登場回数はNZD 5回、 GBP 4回、 JPY1回です。 一方で下落する通貨の登場回数はCHF 3回、 EUR2回、 USD2回、 AUD2回、 CAD1回でした。

非常に調整的な斑模様の相場展開だったことがわかりますが、AUDの脇役だったNZD, EURやCHFの脇役だったGBPの反発が顕著である事は11月入りを前に市場参加者がポジションを縮小してきていた事の証左だと思われるのと、基調としては米ドルに下落圧力、円には上昇圧力が掛かっている事がわかります。
 ひたすら金利低下が続いてきた金利市場にも調整圧力が強まっており、株式市場も上昇トレンドの継続には悲観的な材料が目立ち始めていますので為替市場で感じられる警戒感は金融市場全体を覆っていると言ってよいでしょう。

11月は第一週から重要イベント目白押しですので展開次第では久し振りの規模でVolatilityが上昇する可能性がありそうです。

2010年10月25日月曜日

A rare race that everyone does not like to win.

現在の金融市場の興味深いテーマは幾つかあるのですが、特に私は以下の二つに強い興味を感じています。

①我々が直面しているリスクは、ハイパーインフレーションなのかデフレーションなのか。

②通貨切下げ競争の仕掛け人且つ下手人は米国なのか中国なのか。

この二つのテーマは中々結論の出ないものですが、私の周りでも意外な人から意外な見解が飛び出したりする事も非常に多いと感じています。

G20財務相会議が終了したばかりですので今回は②の方を取り上げて見ましょう。

私が知る米国はずっと貿易赤字です。財政は黒字だった時代も知っていますが貿易収支はずっと赤字でした。米国自身は貿易赤字の解消は輸出を伸ばして輸入を減らす事しかないので米ドルは貿易黒字国の通貨に対してもっと下落するべきだと言う見方を堅持してきました。事実米ドルは長期的にずっと減価して来ましたが米国の貿易赤字をこれだけで大きく改善するほどの下落はしていません。従って米国人の中には米ドルの下落を阻む問題を取り除こうと言う短絡的な考えに走る人々も少なくありません。事実通常の二国間を考えると貿易赤字国の通貨を獲得した貿易黒字国はその通貨を売って自国通貨にExchangeするので為替市場では黒字国の通貨が上昇し、赤字国の通貨は下落するのですが米ドルの場合は何故か下落し難いと言う事情がずっと多くの人々を悩ませて来ました。

ここに"基軸通貨”の特殊事情があります。米ドルは泣いても笑っても事実上の世界の基軸通貨なのです。世界中どこに行こうが、裏路地のようなところに入って行こうが、米ドルの威力は絶大です。これを受け取ってもらえない事は極めて稀と言ってよいでしょう。
 また原油にしても金などの貴金属にしても殆どのコモディティ価格は米ドルで建値されるので世界中のどこの誰であっても国際市場でコモディティを調達するには先ずは米ドルを調達する必要があるのです。こうなると多くの人は他国への輸出で獲得した外貨は売却して自国通貨に転換しても米国への輸出で獲得した米ドルは備蓄するなり使用するなどして売却しないケースが増えていきます。つまり、米国の貿易赤字は世界中の地域や人々への事実上の基軸通貨である米ドルのマネーサプライのような役割を担って来たという事になります。

こうしてずっと基軸通貨である米ドルを備蓄してきた国々は米国が自国経済の事情のみで量的緩和を行って事実上米ドルの価値を低下させる政策を取る事に強い疑問を感じる事になります。通貨安戦争の仕掛け人は米国であると言う論拠はここにあります。

一方、中国ですが、こちらは米国のドル安容認による人民元高により自国の輸出産業が打撃を受ける事のないようにずっと人民元の価値を米ドルにリンクさせてきました。これがかつてのペグ製です。その後は米ドルやユーロを中心とした複数通貨のバスケットに連動させるように制度変更をしていますが、その詳細は明らかにしていない状態で、実は特段大きくは変えていないのではないかと言う見方も有力です。こうなると中国と”世界の工場”ステイタスや”安価なで優秀な労働力”で競合関係にある多くのアジア諸国が四六時中為替介入(ドル買い・自国通貨売り)によって自国の競争力を維持するという行動に出ますので本音では米ドルの秩序だった段階的な減価を望む米国の神経は大いに逆撫でされることになります。

アジア諸国が対中国での自国産業の競争力維持を目標にして為替介入を行っている以上、中国が人民元の切り上げなどを行えば、他のアジア諸国も対抗措置としての為替介入はしなくなるだろうと言うのが米国の読みと言う事になりますが、米ドルが世界の基軸通貨の役割を果たしてきた事に背中を向けて量的緩和で段階的な減価を仕掛けるのは無責任だと言うのがカウンターオピニオンということになります。

為替市場は通貨間の保蔵価値の競争と言う事になりますが、皆が自分の通貨には負けて欲しいという他にはあまり例の無いCompetitionということになりますね。

今の米中は、非常に微妙な関係にあるわけですが、韓国で行われたG20財務相会議の後に米国のガイトナー財務長官が中国に乗り込んで人民元と米ドルの問題を討議するという計画が明らかになっているので注目しています。誰もが勝ちたくない、出来れば負けたいという通貨レースの中で米中の”引き分け”の地点を探りに行くものと考えられます。中国からは人民元レートの変動柔軟化の前倒しか加速策、米国側からはQE2の段階化、予定規模の縮小などが交渉カードになるのでしょうか。

2010年10月24日日曜日

G20=G二十 or G二重 ?

さて、注目度の高かった週末のイベント、韓国南部の慶州という所で開催されていたG20財務相・中央銀行総裁会議が23日に終了しました。


採択・発表された声明文の評価は色々あるようで、その評価と実効性を巡る思惑が今週の金融市場の大きな材料となる事は必須でしょう。

どういう事が合意されたのでしょうか? ちょっと声明文をの骨子を見てみましょう。

・The G20 countries agreed to "move towards more market determined exchange rate systems"

・And "refrain from competitive devaluation of currencies."

・Agreed to be "vigilant against excess volatility and disorderly movements in exchange rates"

・Such actions would "help mitigate the risk of excessive volatility in capital flows facing some emerging countries." 

・The G20members will "pursue the full range of policies conducive to reducing excessive imbalances and maintaining current account imbalances at sustainable levels".

・There will be indicative guidelines to be agreed on current account balances to be rolled out at the meeting of 
G20 leaders in Seoul next month. 

以上の部分がポイントという感じかと思います。

①市場本位の通貨制度への移行。
②自国通貨切下げ競争の回避。
③通貨市場における過度の変動や無秩序な動きを監視する。
④新興国が直面する過度の資本流入・流出による過度な変動リスクの軽減。
⑤広範な政策を駆使して国際不均衡を維持可能な水準に維持し、減少に向かわせる。
⑥今後その推進及び評価のためのガイドラインを策定する。

と言うのが合意事項というところでしょうか。米国が今回の議長国である韓国を抱込んで共同提案した黒字国も赤字国も2015年までに経常収支をGDPの4%以内に抑えていこうと言う数値目標の設定は合意には至りませんでした。経常収支は大部分が貿易収支ですので内需・外需のバランスを取って貿易収支の勝ち負けを抑制すると言うガイドラインは、巨額の貿易黒字による外貨準備の備蓄を武器に軍備を増強し世界中の資源を買い集める中国を強く牽制する意図があるのは明白であり、当然ながら中国が最後まで強く反発した結果のようです。
 また準備不足からでしょうか、同様に貿易黒字国である日本やドイツも慎重姿勢を示したと言う事ですので11月のG20首脳会議(サミット)での合意も容易ではなさそうです。実際に財政収支は政府部門の話ですが一国の経常収支というのは民間部門の経済活動の結果ですのでこれをコントロールするのは容易でないのは事実でしょうね。

現時点では、「強制力は無い」、「抽象的」、「中身は乏しい」というような評価が目立っている印象ですね。ただし、軽視出来ないのが歴史的に見て結局はG7会合が転換点となって大きな潮流が変わってきたと言う事例が少なくないと言う事でしょう。新興国の台頭によりG20と形を変えていますが、その時々で同じように実効性が疑問視されても世界のリーダー達が示した方向性は大きな意味を持ち、有形無形の影響を市場に与えてきたのは事実です。

今週の市場は短期的な評価で動くでしょうが、中長期的な評価は市場に任せるしか無いのかもしれません。

新興国の経済発展を受けてG7からG20という形になって今年で5回目なのですね。通貨問題なども明らかにCO2排出問題と同じで、”先進国vs新興国” という構図になっている事が明白です。

世界の構造があらゆる切り口で先進国/新興国という二重構造化してきていると思うのですが、このG20の20というのも”二十”というよりは”二重”と読めるような気がする昨今ですね。

とんだ ”ちょうかん” 違い

先週後半には少し面白い動きがありました。

韓国のG20蔵相会議に臨む前の米国のガイトナー財務長官にインタビューしたWSJ(Wall Street Journal)紙の記者による解説(+憶測)記事を巡って相場が乱高下したのです。

インタビュー記事の目玉は二つあって、①米国はドルの減価を志向していない、②ユーロや円に対しては既に実現している以上のドルの減価は不要、と言うものでした。

①については、もう米国当局者による"強いドル政策”発言は米人カップル間で連発される”I love you"のごときものでとうの昔に文字通りの意味を失って久しいという事は皆知っていますので市場が騒ぐ事はありませんでした。

市場が大きく揺れ動いたのは②の方なのですが、これでドルは対ユーロや円に対して一時かなり買い戻されると言う現象が起こりました。事実米国の本音は今更欧州や日本を指差して不均衡問題を持ち出すことには何の興味も無いと思われ、むしろ欧州や日本とはスクラムを組んで対新興国に対して今や恒常化している為替介入(ドル買い/自国通貨売り)や資本規制などを撤廃させる圧力をかける事で自由な通貨市場における不均衡の調整弁としての通貨の役割を復活させたいと思っているはずなので市場も反応し易かったという背景もありました。

ところが実際にはガイトナー長官はユーロや円には言及しておらず、恒常的な介入や資本規制などで自国通貨にアンフェアなアドバンテージを与えている国々が問題と言う趣旨の発言をしている部分をWSJ紙の記者が行間を読む形でユーロや円を持ち出したという事だったようで、この話が伝わるとすぐに市場は対ユーロ、対円でドルを売りなおすという動きに回帰してしまいました。

この乱高下に巻き込まれた為替ディーラーは少なくなかったと思いますが、結果的にWSJ紙の言葉をガイトナー長官の言葉と取り違えてしまったと言う事なります。

とんだ、”ちょうかん”違いであり(長官、朝刊)、超勘違いとも言えるでしょう。

Top FX Movers Last Week

先週の為替市場の主要通貨ペアの値動き(変動率ベース)のランキングです。

総括すれば週末に韓国で開催されるG20蔵相会議において国際不均衡是正に向けた新たな国際通貨協調が議論されるとの思惑を巡る神経質な相場でしたね。


通貨ペア  先週終値  前週終値  変動幅(pips) 変動率(%)
GBPJPY    127.58       130.23        -265          -2.08%
CHFJPY    83.26         84.93          -167          -2.01%
GBPUSD    1.5683      1.5990        -307          -1.96%
USDCHF    0.9768       0.9587        +181         +1.85%
EURGBP   0.8894       0.8738        +156         +1.75%
EURCHF   1.3631      1.3399        +232          +1.70%
CADJPY    79.27         80.60         -133            -1.68%
USDCAD   1.0258       1.0100       +158           +1.54%
EURCAD   1.4314       1.4114       +200           +1.40%
NZDJPY     60.71         61.55        -84            -1.38%


円が最強通貨という週でしたが、95年4月以来の80円台まで円高が進んでいるUSDJPYはランクインしていません。USDも殆どの通貨に対して上昇しているので円高は主にクロス円で顕著に信仰したことになりますね。上昇した通貨は円が4回、ドルが3回、ユーロも3回、下落した通貨では、GBPが3回、CHFが3回、CADが3回、NZDが1回という構成になりました。

G20に向けたポジション調整と新たな通貨協調合意の可能性の動きの中でドル、ユーロ、円というG3通貨が気を吐いたと言うのは面白いですね。世の中がG7だけでは動かせなくなり、新興国に自覚と責任ある役割を果たしてもらうスキームを構築しないと立ち行かなくなっていますが、実際に今回の会議でも欧州がIMFの議決権を2つ手放して新興国に譲ると言う象徴的な出来事が起こる中でG7の中核を担って来たG3通貨が最後の(?)輝きを放ったという事だったのでしょうか。

2010年10月17日日曜日

Top FX Movers Last Week

先週の金融市場は前週末の雇用統計、IMF、G7という重要指標・イベントを消化して引き続き米国のQE2(追加金融緩和)の時期や規模に対する思惑を中心に動いていたと言えるでしょう。

さらに、Currency Warだの通貨戦争だのという言葉がメディアを賑わせるようになっており、国債不均衡是正に向けた正面切っての議論が遂に始まろうとしている可能性もあります。1985年のプラザ合意並みの出来事(これは米ドルの切り下げでした)を予感させるような動きも確かに出ている事は事実ですので何か世の中の仕組みを変えるような変革が起こる可能性もゼロでは無いと言う意識で今後数ヶ月の転回を注視したいところです。

先ずはいつものように為替市場の変動率基準のTop Moversを確認しましょう。

通貨ペア  先週終値 前週終値 変動幅(pips)変動率(%)

①AUDUSD        0.9905        0.9846         +59                   +0.60%
②USDJPY          81.45          81.92           -47                    -0.58%
③AUDNZD        1.3094       1.3024         +70                    +0.53%
④NZDJPY          61.55         61.87           -32                     -0.52%
⑤AUDCAD        1.0005       0.9954         +51                    +0.51%
⑥CADJPY         80.60         80.99            -39                     -0.48%
⑦NZDCHF        0.7242       0.7271          -29                     -0.40%
⑧GBPAUD        1.6136       1.6200          -64                     -0.40%
⑨USDCHF         0.9587      0.9625          -38                     -0.40%
⑩GBPJPY          130.23      130.73           -50                    -0.38%

この上位10ペアの組合せの中身を見ると上昇する側に登場するのはたったの3通貨です。AUDが4回、JPYが4回、CHFが2回です。AUDは終値こそ0.9905ですが先週遂に対ドルでのParity(等価)超えを達成して1.0003という高値をつけています。同じくJPYは前週のG7でMOF/BOJの介入行為に対して同情と一定の理解は得られたものの同意や支持は得られなかった事が明らかになっており、USDJPYは遂に80.88という安値をつけた後週末のショートカバーで81円半ばまで戻して引けた格好です。CHFは抜群の安定感を保っていますが、足元は完全な安全資産として資金流入が続いています。

一方で下落サイドの登場回数は、USDが3回、NZDが3回、CADが2回、GBPが2回となっています。

現時点で米ドルの先安感は払拭しがたく、ドル売り相場が継続している事は間違いありませんが、個人的には少し潮目の変化も感じているところです。漠然としていますが、ドルの全面安から選択的なドル安相場にギアがシフトしており、一部の通貨に関しては調整が入り始めていると言う印象です。特に中長期の目標ゾーンへの到達を達成したEUR(1.4を回復)、AUD、CAD(ともに対ドルで等価(Parity)を達成)等には調整も入り易いという要因もあるので今週の動きにも引き続き注意していきたいところですね。

2010年10月11日月曜日

Short $ extremes beget extremes.

まさに、Short, Shorter,Shortestという感じで市場参加者の保有するドルショートポジションが拡大中です。

CFTC(Commodity Futures Trading Committee=商品先物取引委員会)の発表するIMMの建玉は週次での公表となりますが、9月28日の週で2008年6月以来となる$22bioものドルショートポジションが注目を集めましたが、10月5日に発表されたデータでは、その規模は更に拡大して$30bioを越えた水準になっています。

FRBが11月か12月にもQE2(第二次量的緩和)に踏み切る姿勢を明確にして以来、世界の基軸通貨である米ドルの先安感が強まっており、既に外貨準備などで大量の米ドルを保有している世界中の中央銀行や機関投資家の間にドルの保有を減らしたり、ユーロなどへの分散を加速する動きが出ている事などが背景です。

更に中国が見せかけの制度改革を繰り返しつつ実質的には人民元を米ドルに連動させたままの状態を維持しているために米ドル安=人民元安と言う事になるので対中国での輸出競争力を維持するのに躍起となっている他のアジア諸国が大量の自国通貨売り+ドル買い介入を繰り返しており、この行為で増加した米ドルをユーロや円などに振り替える動きが止まりません。

欧州危機を経ても尚、こうなると米ドルの代替候補の一番手となるのがユーロなのですが、ユーロは5月に1.1875まで下落した後、今月に入りまさかの1.40台回復を実現し、1.4030を高値にこれを書いている時点で1.39台後半での取引となっています。

このIMM市場の建玉のユーロロングのサイズですが、9月28日のデータでは約35千コントラクトとなっており、前週の約5千コントラクトから一週間で7倍もの激増をしていたのですが、これが10月5日のデータでは更に増えて48千コントラクト強となっています。先物市場におけるユーロの買い持ち規模は2週間で10倍弱になっているというのがこのデータのキモであり、これはやはり尋常ではないと言わざるを得ないのではないでしょうか。

参考にその他の通貨の先物市場でのロングポジションの推移は以下の通りです。
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通貨 9月28日データ  10月5日データ


円 28,666 contracts    49,206 contracts


GBP  -2,194 contracts       9,403 contracts 
(これはショ-ト⇒ロングですね)


CHF   19,993 contracts       22,599 contracts


CAD   27,870 contracts       42,678 contracts


AUD   11,866 contacts        12,835 contracts


NZD   17,270 contracts       16,334 contracts
(これはロング減少)


MEX  66,591 contracts        85,764 contracts
(南米も新興国。メキシコペソも人気ですね)
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今の状況を見ていると、Beget(生み出す)という動詞が心に浮かびます。

Money begets money. Enthusiasm begets enthusiasm.というのはバブルの発生過程です。お金がお金を生み、熱意が熱狂を生む。リスクの傾きは尋常ではなくなるのですが、ここはもう降りたもの負けのチキンゲームのようになってきているかもしれません。Extremes beget extremes.というやつですね。

勇気ある恐怖心を持ってきっちりリスク管理をしたいところです。
A brave( wise) fear begets care.!!

2010年10月10日日曜日

Top FX Movers Last Week

先週は主要国の金融決定会合が目白押しで、週初からBOJ,RBA,BOE,ECBと続き、経済指標としては金曜日に米9月雇用統計の発表、そして直前になって俄然注目度を増したイベントとしてワシントンでIMF,G7会合が開催されると言う材料目白押しの週でした。

先ずは結果が全てと言う事で、先週の主要通貨ペアの変動率Top10を並べてみましょう。

通貨ペア  先週終値 前週終値 変動幅(pips) 変動率(%)


①USDJPY          81.92         83.22           -130                  -1.59%
②NZDUSD        0.7555       0.7439         +116                 +1.54%
③AUDUSD        0.9846       0.9722         +124                 +1.26%
④USDCHF         0.9625      0.9735          -110                  -1.14%
⑤EURUSD        1.3937       1.3790         +147                  +1.05%
⑥GBPUSD        1.5960       1.5817         +143                  +0.90%
⑦USDCAD       1.0107       1.0194           -87                    -0.86%
⑧CADJPY         80.99         81.58             -59                   -0.73%
⑨NZDCAD       0.7636       0.7583           +53                  +0.69%
⑩GBPJPY         130.73      131.60            -87                    -0.67%

ある意味で情け無いの一言のような気もしますが本邦当局の介入も虚しくドル円の下落がトップになってしまいました。実はAUDやEURは円よりも走っていたのですが、週末の調整時に結構値を戻してしまっており、週の終値ベースではこのような順位になっています。つまりドル円はEURやAUDなどがドル売りで突っ走る時にはそれなりに下値が持ち堪えているのですが、ドルが調整的な反発に転じてEURやAUDが後退するような局面においても円売りはあまり出ないと言う状況なのです。実際にチャートなどで見ても明白なのですが、ひたすらダラダラと下げていると言う印象です。

週初のBOJ会合ですが、これはPositive Surpriseという評価が多いですね。実質的にゼロ金利政策に回帰してバランスシートの拡大や時間軸の長期化と考えられたカードを出し惜しみせずにセットで切って来たと言う結果となっており、金融政策の美学を優先して実体経済への危機感が欠如していると言う批判が強かった白川総裁体制下のBOJとしては出色の出来だったと言う評価になっています。市場はこれで一旦は円安に振れましたがその日の高値が83.99と84円すら回復出来なかったという失望感が週末の81円台への序曲となってしまいました。

RBAは利上げ期待を裏切る据え置きで、AUDが大きく反落しましたが、その後の雇用データが予想を大きく上回る強い内容であったことと米雇用統計の不調を受けて大きく復活して終了しています。BOEはバランスシート拡大せずという内容でGBPが買われ、ECBも量的緩和に走る日米とは一線を画す内容でEURが対ドルで1.4台を回復する局面もあるほどの上昇をしています。

今の為替市場はある意味で極めて単細胞的な動きをしています。経済実態を考えると金融緩和が正しいと思われる先進国が多いのが実態なので、利下げなり量的緩和なりと踏み込んだ国の方が景気回復が期待出来るという側面があるのですが、今はそれを躊躇して緩和をしない国の通貨が強いと言う流れです。金融政策の方向性や弾力性ではなく単純な目先の金利に最も反応しているという事ですね。

ここから暫く市場は結構Volatileになりそうです。

2010年10月3日日曜日

To intervene in MOF/BOJintervention.

月末に公表された日銀の介入データが注目されています。

これによると9月の介入規模は2兆1249億円でした。

9月15日の介入規模は下馬評で2兆戦程度ではないかと考えられていたので、市場参加者の予想比では大きな数字だったと言う評価です。
当局は9月15日には市場介入の事実を公表したものの、その後は沈黙を保っているのですが、今回の数字を見て当局はその後も水面下では小規模に介入を継続していたのではないかと言う憶測も浮上しているようです。

この介入の回数が明確になるのは数ヶ月先の話になるのですが、私個人的には恐らく9月の介入は15日の1回だけだったのではないかと見ています。またその後も水面下での介入努力(=覆面介入などと言われます)をしていたとしても、していないにしても結局は多くの輸出企業の半期決算を大きく左右する9月末の為替レートを防衛し切れなかった事は実需筋の市場参加者にとっては大きな失望となった可能性を危惧しています。(是非論は別として)

前項にも書いたとおり、先週末時点でドル円は83円20銭レベルになっています。9月15日には83円を割り込んだところで介入が断行されて一気に86円超え寸前まで押し戻す事に成功した訳ですが、今週は介入効果がほぼ帳消し状態でスタートすることになり、週初から始まる日銀の政策決定会合の結果や財務省の介入スタンスなどが新たな円高圧力によって試される展開が不可避となっています。


USDJPY DAILY










中央の大陽線が9月15日の大規模介入です。その後はダラダラ下げ続けてしまい、先週末時点で殆ど全戻ししてしまっているのがわかると思います。ちょっとまずい・・・そんな感じです。

FX Top Movers Last Week.

先週も米ドルが続落する展開でした。

9月の後半は本邦当局が6年半の沈黙を破って円高是正目的の円売りドル買い介入を断行しましたが、それ以上に米FOMCが必要があれば11月にも量的緩和第二段に打って出るという意向を明確にした事が金融市場にとっての大事件になっています。

この米国の量的緩和第二段ですが、二発目の量的緩和(Quantitative Easing)と言う事でQE2と表記される事が多くなってきました。これが金融市場に与えたインパクトは想像以上だったと言えますが、その理由はこのQE2のSpeed感とScale感にあります。
Scaleに関しては既に1兆ドル規模を超える可能性も出ているのですが、1ドル=85円として85兆円規模と言う事になります。更にQE2はLSAP方式(Large Scale Asset Purchase)という方法で行われる可能性が高いのですが、これは広範なリスク資産を大規模に買い上げる方式ですので資産効果を経由した経済活力浮揚効果は相当なものになるはずです。Speed感でもこれを1年程度でやっていこうと言う事ですので物凄い事です。

日本の9月15日の為替介入規模が約2兆円で、1国の中央銀行が単独で行った介入としては史上最大でした。これで市場に放出された円資金を日銀が全く吸収しないという前提(=介入資金の非不胎化)で考えて、それを42.5回やるイメージが85兆円です。毎月3回~4回あれだけの規模の介入をやると言う事になったらまさに経済システム内を円資金の津波が駆け巡ると言う事になるでしょうが、まさにFRBは米ドルでそれをやろうとしている事になります。

これを受けての米ドル下落、資産価格上昇という動きが進行中なのですが、通貨毎に見てみると対米ドルでの上昇規模や速度にはかなりのばらつきも出始めています。

以下が先週の主要通貨ペアの変動率ベースTop10です。


 通貨ペア  先週終値 前週終値 変動率(%) 変動幅(PIPS)                        
EURGBP          0.8715     0.8524          +191    +2.19%

EURUSD           1.3790           1.3488               +302     +2.19%

EURCAD          1.4057           1.3809               +248     +1.76%

GBPAUD          1.6262           1.6491               -229     -1.41%

NZDUSD          0.7439           0.7336               +103     +1.38%

GBPNZD          2.1248           2.1541               -293     -1.38%

AUDUSD          0.9722           0.9590               +132     +1.36%

EURCHF           1.3426           1.3260               +166     +1.24%

GBPJPY           131.60           133.22               -162     -1.23%

USDJPY           83.22              84.20                  -98        -1.18%

欧州復活には程遠い状況だと思っていますが、とにかくEURが強いです。この通貨は対ドルのみならずあらゆるクロス取引で売り込まれてきただけに、新たな米ドル下落シナリオの台頭を受けて先ずは物凄い勢いで買い戻されているという背景がありそうです。

また9月15日には市場に強烈なメッセージを送る事に成功した本邦金融当局による円売りドル買い介入でしたが、上記の通り先週は83円割れ寸前のところまで反落して終了しており、本邦介入後に出てきた米国のQE2という材料によってドル円の水準もほぼ本邦の為替介入実施時点の円高水準にまで戻って来てしまいました。

今週からは、足元のドル安の動きの中で、大規模な介入努力が水泡に帰した格好の本邦当局の介入姿勢にも大きな注目が集まる事になります。