2010年10月24日日曜日

とんだ ”ちょうかん” 違い

先週後半には少し面白い動きがありました。

韓国のG20蔵相会議に臨む前の米国のガイトナー財務長官にインタビューしたWSJ(Wall Street Journal)紙の記者による解説(+憶測)記事を巡って相場が乱高下したのです。

インタビュー記事の目玉は二つあって、①米国はドルの減価を志向していない、②ユーロや円に対しては既に実現している以上のドルの減価は不要、と言うものでした。

①については、もう米国当局者による"強いドル政策”発言は米人カップル間で連発される”I love you"のごときものでとうの昔に文字通りの意味を失って久しいという事は皆知っていますので市場が騒ぐ事はありませんでした。

市場が大きく揺れ動いたのは②の方なのですが、これでドルは対ユーロや円に対して一時かなり買い戻されると言う現象が起こりました。事実米国の本音は今更欧州や日本を指差して不均衡問題を持ち出すことには何の興味も無いと思われ、むしろ欧州や日本とはスクラムを組んで対新興国に対して今や恒常化している為替介入(ドル買い/自国通貨売り)や資本規制などを撤廃させる圧力をかける事で自由な通貨市場における不均衡の調整弁としての通貨の役割を復活させたいと思っているはずなので市場も反応し易かったという背景もありました。

ところが実際にはガイトナー長官はユーロや円には言及しておらず、恒常的な介入や資本規制などで自国通貨にアンフェアなアドバンテージを与えている国々が問題と言う趣旨の発言をしている部分をWSJ紙の記者が行間を読む形でユーロや円を持ち出したという事だったようで、この話が伝わるとすぐに市場は対ユーロ、対円でドルを売りなおすという動きに回帰してしまいました。

この乱高下に巻き込まれた為替ディーラーは少なくなかったと思いますが、結果的にWSJ紙の言葉をガイトナー長官の言葉と取り違えてしまったと言う事なります。

とんだ、”ちょうかん”違いであり(長官、朝刊)、超勘違いとも言えるでしょう。