2008年8月24日日曜日

Start & End

今、北京オリンピックの閉会式を見ています。

多くのドラマを内包した実に壮大な、凝縮された1つの国際イベントが無事に且つ成功裏に終息していく様子には一種の安堵感を覚えます。

このオリンピック期間は、多くの金融機関のディーリングルームで普段はニュースをチェックしているTV画面で競技の映像が流れ、市場そっちのけでそこに人が集まると言う光景も結構見られたようですが、今週からは通常の職場風景に戻るのではないでしょうか。

終わりと始まり……

オリンピックからバトンを引き継ぐかのように、足元の金融市場の最大のテーマは、まさにこの“終わりと始まり”と言う事になると思います。


  • 何が始まっているのか?

  • 何が終わっているのか?


日本語と比べると、言葉の組合せによる意味の広がりに特徴のある英語の世界には面白い言い回しが沢山ありますが、「終わり」と「始まり」というプリズムで今の金融市場を表現すると面白いと思います。

1. A beginning of the end of USD regime? 米ドル支配の終わりの始まり?

2. An end of the beginning of USD demise?  米ドル崩落過程の一服?(序章の終焉)

3. Market correction ended before it had begun? 市場の調整は尻切れトンボか?

4. The ending in the disguise of beginning? 始まりと思えたものは終焉だった?

3つ目の、直訳すれば始まる事無く終わってしまったという表現は、非常に呆気なかったとか尻切れトンボだったという時の言い回しですが、先週の原油価格の週央までの大反発と金曜日の呆気ない切り返し(大幅下落)を表現するのにも使用されていました。

出会った瞬間に運命を感じたと言うラブソング、゛I knew I loved you before I met you"を思い出させる表現ですね。

一時は壊れかけているかとも思えた金融市場内の相関関係は大方修復されており、例えば米ドルと原油や金などの商品市場の間の逆相関は、過去数週間の米ドル復活による商品市場の下落の後、先週は一旦潮流が逆転し商品市場の大幅反発と米ドルの大幅反落が先行し、金曜日には再び流れが米ドルに向かい原油価格が崩れ落ちると言う激しい展開を見せました。 

  • 何が始まっているのか?

  • 何が終わっているのか?

市場参加者の多くがこのテーマの主語を絞り込めていない事による混乱が起きているのが今の状況なのだと思います。米国中心の経済、米ドル中心の市場なのか、原油、貴金属などの商品バブル(?)なのか、米国の代替としての欧州の存在なのか、Decoupling理論の旗手としてのアジア+新興国経済なのか・・・・

今、中盤に差し掛かっていると思われる北京オリンピックの閉会式にあのジミーペイジが登場して顕在振りを示していますが、これは何かを暗示しているのでしょうか?

7月中旬からの米ドル復活は大規模なものでした。(チャートはドルインデックス)

オリンピック期間中は、トップアスリート達が死力を尽くして金メダルを競い合う一方で、金融市場では投資家がこぞって金を投売りするという奇妙なコントラストが非常に印象的でした。今週からの金価格の動向も極めて重要です。

実は今、私の夏休みも終わろうとしています。月曜日から何が始まるのか、しっかり見てみましょう。

2008年8月18日月曜日

Things happen when least expected. : USD has legs.

“Things happen when least expected”と言いますが、8月に入ってからの金融市場の動きはこの言葉そのものと言う事になるのではないでしょうか。

米ドルの下落、商品市場の上昇がメインシナリオであり、その逆は短期的な調整で値幅も浅いと言う認識が世界を覆い尽くしていたと言っても過言ではないという状況であったが故に実際に起きている調整以上の値動きは、時間軸上でも価格軸上でも圧倒的な猛威をふるっています。

月初の81()の雇用統計後のドル高を考慮しないで翌週の4()8()の動きを見ても米ドルは圧倒的な底力を見せ付けています。

  1. 1週間のドルインデックスの上昇が過去3年半で最大規模。

  2. ライバルのユーロは1週間で過去3年最大の下落。

  3. 8()のユーロの下落幅は、欧州統一通貨誕生以来単日で最大の下落。

  4. 1週間のカナダドルの対米ドルでの下落幅が1971年以来最大。

  5. 週の終値でGBPが対米ドルで21ヶ月振り安値。

  6. 豪ドルの対米ドルでの週ベースでの連続下落期間が1980年以来最長。

これらの動きは先週も継続されましたが、先週は寧ろ商品市場の下落が米ドル上昇を演出していたと言う印象があります。

金価格はSPOT市場で1オンス$845のサポートを崩して一気に$772.60まで下落し、原油価格も1バレル$120の攻防戦で敗北し、$111.34水準で週の取引を終えています。

ドルインデックスの日足のチャートがこうなっています。

完全なる上抜けですね。

一方で対称として豪ドルの日足チャートを見てみると・・・

こちらは完全な、底抜けですね。

ところで、我々が見逃してはならない動きとしてドル円の110円回復という出来事があります。

 冒頭の”least expected”という意味においても過去約9割の確率で円高ドル安となっていた8月において今回も円高シナリオで動いていた勢力は非常に沢山ありました。

 確かに当初は米ドル上昇のうねりの中で日本円は大健闘をしており、結果としてAUD円、GBP円という所謂個人証拠金取引のスター選手達が大きく下落を始める動きに海外投機筋の多くも高金利通貨売り+日本円買いのポジションメイクに動意して、”Mrs.Watanabe殺し”が市場のサブテーマになりかける局面がありました。

一時高齢層や主婦層が証拠金為替取引で計上した多額の収益を確定申告していなかった事が大きく報道されたせいか、日本の為替証拠金トレーダーは、海外では”Kimono Trader”とか”Mrs.Watanabe”等という呼称が使用されるようになり、最近では後者が定着しつつあるようです。個人的には前者は呉服屋さんみたいで、後者は何故渡辺さんなのかという違和感がありますが、ま~それはこの際良しとしましょう()

この米ドル上昇が更なる上値余地を秘めていると仮定した時に、既に大きく対米ドルで下落している他の主要通貨に対して、日本円の下落は始まったばかりと言う相場観が先週後半から大きく広がってきている事は間違いありません。

今週はお盆休暇明けの本邦勢の動向が大いに世界中の注目を集める事でしょう。

予想される調整が110円を大きく割り込むことなく米ドルの勢いが維持されるようだと月の中盤から終盤に掛けて、ドル円の見せ場が訪れるのかもしれません。

週初はちょっと涼しい今週ですが、相場は熱気を維持できるでしょうか?

Things tend to happen when least expected.

What have you expected, by the way?

2008年8月10日日曜日

8.8.8 was GR8 for the $ !


世界経済を破壊するとまで恐れられた原油価格が遂に1バレルあたり$150手前から折り返し、$120ドル割れで粘っていましたが金曜日の終値は$115台。

1オンスあたり$1,000超えは時間の問題とも思われた金価格が$900を割ってからも下落を続け金曜日の終値は$855台。

過去10年で9回が下落という”円高ドル安の8月”が話題になったドル円は、107円台で底固めをして不気味な上昇を繰り返し、金曜日の終値が110円台。

3月に95円台(95.77)まで下落したドル円が鬼門の110円を回復したのは実は規模が小さい部類で、為替市場における米ドルの復活は、実に広範且つ大規模なものです。

米ドルは1985年から1987年の大暴落に匹敵する下落の渦中にあり、2002年度から始まっている今回の下落は後数年続くと言う予想が圧倒的に市場を支配しています。

米国経済のファンダメンタルズが注文どおり劣化を続ける中での米ドルの大復活は今後大きな注目材料となるでしょう。米国の失速、劣化、或いは没落を背景とした米ドル下落と言うメインテーマに対して、米国経済好調でドル安、米国失速ならドル高という他国では成立しないアンチテーゼが遂に実現するのでしょうか?

ドル円が107円台⇒110円台、ユーロが1.56台⇒1.49台、GBP1.98台⇒1.91台、AUD0.94台⇒0.88台、NZD0.73台⇒0.69台…..等実質1週間での米ドルの上昇は実に圧巻でした。このアンチテーゼの中身と可能性はまた別項で考察したいと思います。

実はこのアンチテーゼと無関係ではないのですが、米ドルと原油の関係も実に奇妙な軌跡を辿っています。

1 サブプライム問題以降今年の3月のドルインデックス最安値まで ⇒ 逆相関

2 3月のドルインデックス最安値~7月の原油最高値まで ⇒ 相関なし or 正相関

3 7月の原油最高値以降現在まで ⇒ 逆相関に回帰

1の期間で急速なドル安、原油高。

2の期間でドル乱高下で最安値は更新せず。原油は44%も上昇。

3の期間(現在進行形)で原油が急落、ドルが急騰。

いよいよ日本はお盆休みに入るのですが、金融市場はちょっとした突風が吹き荒れてきました。米ドルの上昇、各主要通貨の下落、原油、金などの商品価格の下落などは30日、60日、90日そして200日と次から次に長期移動平均(=トレンドライン)を突破して加速してきました。

さて、北京オリンピックと金融市場と来週はどちらを中心に見ましょうか?

日本でも漢字の八を末広がりと言って歓迎しますが、中国でも87よりも縁起がよいとされているそうで、2008年の88日を五輪の開会式にしたそうです。8.8.8ですね。

英語の略字で、Greatを発音からGR8と短縮して書く事がありますが、まさに金曜日はドルにGR8な日となりました。

2008年8月4日月曜日

A turn of a month ; making things turn with it ?

月替わりですね。2008年度ももう8月です。毎日のように続く"真夏日”には本当に手を焼きますが金融市場の方も熱と湿度でちょっと煮つまったような状況になっています。

7月後半の金融市場の煮詰まった状況を打破する第一候補がいきなり81(金曜日)の米国雇用統計でした。

実は私はこの数字が出る時には数名の市場関係者と立ち食い屋台のような場所にいたのですが、ユーロショートの友人が相場をチェックしてガッツポーズをし、どうやら米国の雇用統計が市場予想よりは良い内容だったのだろうと詳細をチェックしてみると非農業部門新規雇用者数が7ヶ月連続のマイナスを記録し、マイナス幅も市場の事前予想と対して変わらない水準。さらに失業率が5.7%まで上昇と言う冴えない内容でした。

Dennis Gartman曰く、悪い材料で下がらなければ弱気相場ではない」という名言がありますが、この雇用統計の後米ドルは上昇、米株は下落と言う煮え切らない展開となり、しかも米ドルの上げ幅も米株の下げ幅も小幅に留まって週を終えると言う相変わらずスッキリしない週越えとなりました。

さて……

雇用統計でConvincingな方向感が出なかったとは言え、ゆっくりと且つ着実に幾つかの市場が反転の可能性を強めている事は無視出来ない事実です。

この原油、金、そして豪ドルの動きを見て下さい。綺麗な相関を保ちながら反落しています。


次は、この金や原油と足並みを揃えるコモディティ通貨の代表格の豪ドルと米ドルの最大のライバルである欧州統一通貨ユーロの相関を見ましょう。

おやおや、綺麗に重なっていますね。

実は商品市場では注目度の高い原油や金だけではなく、コーンや小麦などの食料も反落傾向を強めているために商品市場全体の動向を表すCRBインデックスもこのような大幅な下落をしています。

これで米ドルがレジスタンスを上抜けでもしていてくれると米ドル上昇シナリオのドアが開くのですが、米ドルの強さを表すドルインデックスは一旦割れたサポートを何とか回復して従来のレンジの中に復帰した程度であって依然予断を許さない状況なのです。

これでは盛り上がりませんね。

7月21日に書いた「スッキリしないSKIT(寸劇)」は8月も続く可能性が大です。

経験上、こういう双方向の動きが出ながらどちらも大きな流れを作れないと言う状況の時は何をやるかよりもどうやるかが大事です。WhatよりもHowが大事と言う事です。

丁度ヘッジファンド業界の大物、Stanley Druckenmiller氏が名言を残しています。

It is not whether you are right or wrong that is important, but how much money you make when you are right and how much money you lose when you are wrong.

私自身はよくこれとセットでMartin Luther King,Jr. の以下の言葉も反芻しています。

When you are right, you cannot be too radical; When you are wrong, you cannot be too conservative.

Druckenmiller氏には数回会った事がありますが、何か悪い事をして尋問を受けているような気にさせられた事を良く覚えています。瞬間接着剤で固めたかのような全く表情が変わらない人で、やはり凡人ではないと言う事なのでしょうか。我々とは比較にならない修羅場を経験してきた人なのですがやはり言う事も立派ですね。お孫さんが寄り付かないのではと変な心配もしてしまいますが・・・

上記の二つの名言を合わせたエッセンスは、通常は慎重に且つ勝負どころでこそ大胆であれという感じではないかと思っています。

暑いですが、とにかく8月も頑張りましょう!!