2008年9月21日日曜日

The music stops and so does the dancing.

While the music is playing, we have to dance.

現在進行形の金融混乱の諸悪の根源とされるサブプライム住宅ローン問題が指摘され始めたごく初期の頃に当時のシティグループのCEOが発したこの言葉は今では随分と有名になっていますが、この言葉の背景に、「毒を食らわば皿まで」という覚悟が在ったのだとすれば、それは全く想像を絶するほどの猛毒だったと言う事になるでしょう。

多くのFinancial Giantsが皿ごと毒を食らい、伝染性の猛毒を撒き散らしながらのた打ち回る地獄絵巻の中で、金融市場と実体経済が断末魔的な乱高下に共鳴現象を起こしていると言うのが今の状況だと思います。

先週の動きだけを見てもまさに象徴的ですね。

先ずはBOAによる電撃的なMerrill救済合併で、宙に浮いたLehmanが破産処理となりましたが、この米国の第3位と第4位の投資銀行の同日消滅の規模は、わかり易く言えば日本最大の証券会社である野村證券が約7個=要するに世界第二位の経済である日本の証券業界が消滅したと言うくらいの規模感です。

これで業界第1位と第2位のGoldmanとMorganStanleyの株価も急落、後者首脳の合併を視野に生き残り策を検討中との発言がこれに拍車を掛けました。

グローバルに金融市場を牛耳ってきた金融巨人の多くが日々の資金手当て(Funding)にも苦労し始める中で、週央には米国のみならず恐らく世界最大と言ってよいAIG保険がFRBに緊急融資の申し込みをしたことで混乱の火の粉は投資銀行から保険会社へ、マンハッタンのWall Streetからコネチカット州にも飛び火した格好になり、投資運用会社のPutnamのMMF元本割れによる清算という騒ぎにより更に火の手が拡大しました。

これを受けて週の後半は米国金融当局と金融市場の待ったなしの駆け引きが展開されましたが、FRBおよび財務省はAIGの公的資金によるテコ入れ救済と世界各国中銀と協調した大規模な米ドルの資金同時供給を実施。さらに金曜日には金融機関の不良資産買取処理の包括的なスキームをまとめて実に$700bio(7千億ドル!)を投入する用意があると発表、更に約800銘柄もの金融株の空売り規制の実施と公的なMMFの元本保証スキームも発表しました。

この矢継ぎ早な対応はある意味で見事なものであり、先週の金融市場は序盤が超悲観モード、中盤が疑心暗鬼モード、そして終盤が希望的観測モードとなって各市場共に乱高下となっています。

ダウ平均株価は月曜日に約505ドルもの下落。これは単日では2001年9月11日の同時テロ以来の下げ幅。一方で木曜、金曜の二日間では約700ドルの急反発となり、こちらは2日間の上昇幅で1987年以来という復活振りを見せました。

世界経済全体への悲観からバレル当り91ドル水準まで売り込まれた原油は100ドル台を回復し、同様に金はオンス当り779ドル水準まで下落した後週央には資産防衛の駆け込み現象で一気に約84ドルも上昇し、後半は株価上昇を受けて数十ドル下落と言う大きな値幅を示現しました。

ユーロドルは前半で1.4073まで下落、週央に1.4543まで上昇、一旦1.41台まで落ちて1.44台後半で終了。ユーロ円は152円台から147.01まで下落して155円台までJUMPして終了・・・これも凄いですね。
ドル円は週初が107円台、週央に103.54まで円高となり金曜には108円まで戻って107円台で終了というバンジージャンプでした。

米国発のグローバルな実体経済の変調が金融市場を破壊し、今金融市場が必死に回復しようとしていますが、これで実体経済が修復される可能性は決して高いとは言えません。

冒頭の言葉で言えば、一度鳴り止んだMusicはそう簡単には再開しないと言う事でしょう。金融市場の安定化とリスクアセットの回復は比較的短期間で頓挫するリスクが無視出来ません。基本的にはまだ数ヶ月は資産は増やすのではなく防衛するという目線で物事を見ていく必要があると考えています。

ここは手堅く乗り切りましょう。