2008年9月7日日曜日

The fact is stranger than fiction.

事実は小説よりも奇なり。

今の金融市場で起きている事を見ていると、何度もこの言葉が頭を過ぎります。
 例えばこの大規模なドル高を正しく説明出来る人がどれだけ存在するのか? 更にその中で事前にドル高を予想していた人がどれだけいるのか? そしてこれだけの規模でそれが起こる事を予想していた人は?

9月8日(月)の早い時間に米国財務省からFreddie MacとFannie Maeへの公的資金注入の発表が行われる見込みです。前者が連邦住宅金融抵当公庫、後者が連邦住宅公庫と訳されますが違いは重要ではなく、要するに日本の住宅金融公庫のようなものですね。
 金曜日には、注目の8月の雇用統計の発表があありましたが、非農業部門新規就業者数が予想を上回る8万4千人の減少、そして失業率は5.7%から6.1%への予想外の大幅上昇となりました。

米国経済の悪化は明らかに継続中であり、これは多くの人々の予測するところでした。違うのはこれが導く金融市場の動向ということになります。米国の経済は悪化を続け、大規模な資金流出による米ドルの暴落こそが世間の予想であり、昨年のサブプライム問題以降そのような本も多数出版されています。

勿論そうなる可能性はまだ残っていますが、それ以前に先ずは米ドルが急反発すると言う流れは専門家ですら殆ど予想出来ていなかったのではないでしょうか。

やはりここは、今現在岐路に立たされているGlobalizationと言うものの本質を再度確認する事で答えが見つかるものと考えています。

Globalizationという過程は、Global Standardと言うものが世界中に共有されるプロセスでしたが、この共有されるStandardを表現する言葉にPlatformという概念があります。狭義のPlatformは例えば証券会社などが提供するオンライントレードのPlatformのようなものがありますが、ここではGlobal Standardを構成するもの全般を広義のPlatformとして考えています。要するに世界中がそれを使用する、必要とする、それに準拠するようになるもの・・・これがPlatformです。

ビジネスに世界では、このPlatformの奪い合いが行われ、仕組み(Platform)を作った者が勝ち組となります。ビデオの世界では、VHSがPlatformとなりベータは退場しました。DVDではブルーレイ陣営がPlatformを獲得し、敗者となった東芝がDVD業務撤退を表明したのは記憶に新しいところです。

世界経済のGlobalization とは何だったのでしょうか? 答えは欧米流のビジネス慣行、ビジネスルールでありますが、もっと言ってしまえば欧米と言うよりも米国というビジネスモデルだったと考えてよいでしょう。米国が自国経済のフロンティアの拡大を目指し、同時に世界中が米国型の市場経済主義経済と繁栄を欲したと言う相思相愛のプロセスだったと思います。

その中で、米ドルは完全なPlatform Currencyとなり、国際貿易や商品市場など世界経済の決済通貨となりました。実は、米国があれだけの経常赤字を持ちながら米ドルが暴落しなかったからくりはここにこそあると思います。米国の巨額の貿易赤字の裏側では世界中に米ドルが溢れかえりましたが、Platform Currencyとしての米ドルは使い道が豊富であり、且つ外貨準備として備蓄する必要すらあったために米ドルは暴落しなかったと言うのが重要なポイントです。

Global化された経済の中で世界中には大規模な米ドル需要があり、貿易赤字等で供給される米ドルはその需要にマッチする水準まではドル安要因にならないという図式が出来上がっているわけですね。

米国経済は急速に減速し、住宅価格の下落や雇用の悪化を背景に経済の原動力である家計消費、個人消費は急速に減少しており、輸入の減少から貿易赤字が急速に減少しています。
 これは、貿易赤字という形で供給されて来た米ドル減少を意味するのですが、Platform Currencyとしての米ドル需要は供給減少分を金融市場で取りに行くという現象が起きており、世界中の金融市場で米ドルの調達コストが上昇しており、為替市場でも米ドルの取り圧力から予想外の米ドル上昇が起きていると言う訳です。

これが需要サイドから見た米ドル上昇要因です。世の中結局Platform(仕組み)を制した者が勝組なのだという話ですね。

The fact is stranger than fiction.