2008年11月30日日曜日

Black Friday brought a "black" ending of the week.

先週は、木曜日がThanksgiving休暇(感謝祭)で北米市場が休場だったこともあり各市場とも週を通して比較的小刻みな値動きが続きました。

そんな中で幾つか目立った動きをピックアップすると、週を通して株式市場が底固い展開を維持した事、投資家のConfidence改善を示唆する動きを背景に週前半はドル売り、円売り圧力が先行した事、特に米国の金利低下基調が鮮明化した事、週の後半には欧州経済の失速も鮮明となり対ドル、円で上昇していた欧州通貨が大きく落ち込む格好で週を終えている事、等が目を引きます。

このうちの幾つかを詳しく見てみましょう。

1 底固さを見せた株式市場

先週の米株市場は感謝祭休日の木曜日以外は全営業日でプラスとなり、先々週の金曜日から先週の金曜日まで5営業日連続のプラス。且つ21日(金)~26日(水)までの4営業日の上昇幅の合計は連続する4営業日合算ベースでの上昇幅で記録更新となりました。Black Fridayと呼ばれる感謝祭明けの金曜日も文字通りの「黒字」を記録して終了です。

2 米国金利の低下 : 資本流入が止まらない米債市場

これも重要な動きです。金融業界、自動車業界と米政府によるBail-Outの対象は拡大を続け、流動性供給スキームを拡充する連銀のバランシートも受け入れ対象資産を学資ローン、自動車ローンを担保とするABSにまで拡大する事になりました。


今後湯水の如く米ドルが金融システムに供給されるという環境整備が行われている訳ですが、そのうち誰も米国債を買わなくなるという恐怖シナリオが跋扈する中で実際のマネーフローは米国債市場に津波のように流入すると言う皮肉な動きが鮮明化しています。

以下のグラフからも明らかなように米国の長期金利は低下傾向を鮮明にしています。



一方で、実際に金融機関同士が市場で短期、中期で資金を融通し合うLIBOR金利はG20当局の思惑ほどの低下は実現していません。

FRBFF金利を下げて、信用市場が一定の改善を示してもある時点からは実際の調達コストは下げ渋っています。次のチャートはFF金利と3ヶ月、6ヶ月のLIBORの動きを示しています。
















週明けから12月に入りますが、年末越えの資金繰り懸念が再燃して銀行間の取引レートが急上昇する展開にでもなれば、市場実勢金利とT-BONDイールドの乖離幅の拡大や資金調達圧力による短期金利の上昇と米債購入による長期金利の低下によるイールドカーブの歪みが新たな市場混乱をもたらすリスクも否定出来ません。

3 欧州通貨の失速

週前半であれだけ堅調だった欧州通貨ですが、米国の感謝祭明けの金曜日に発表された欧州圏のインフレが急低下していた事で週末に大幅反落と言う展開となりました。

11月の欧州圏のインフレ指標が10月の3.2%から2.1%まで急低下しており、この低下幅は1991年以来最大の下落になります。これを受けて週前半を1.30半ばで折り返したユーロの対ドル相場は1.27割れまで下落していますが、来週のECBによる値下げの注目度が急上昇と言う流れとなりました。

4 円の気迷い

気迷い的なSWING相場に入った感のある円ですが、欧米要因で円高圧力、国内主要企業の業績の急ブレーキや政治の迷走は円安要因、機関投資家の外国投資の引き上げ圧力の上昇は円高圧力、M&A戦略による生き残りをかけた国内企業の外国企業買収は意外と根強い円安圧力となっており、12月はこれらの奇妙なバランスが崩れればちょっとしたVolatilityの上昇局面があるかもしれません。

どんな年末になるのか、興味深いところです。

2008年11月24日月曜日

Great American Mind ...lost?

それにしても公的資金による救済を要請している米国自動車業界のBig3(GM,Ford,Chrysler)のCEO達が議会との公聴会で行った言動の評判がよくありません。

自分たちが、Too big to fail であり、自分たちが破綻するとどれだけの雇用が失われるのかと言うことを強調してあたかも議会を脅すかのような内容が目立つことに加えて、3名のCEO達が全員専用JET機でワシントン入りした事も物議を醸しました。

議員の一人から、今後は民間機で移動することにしてCEO専用JET機の売却によるコスト削減をする気があるCEOは挙手をしてくれと言う質問が出ても手が挙がらず、失望した議員が議事録の速記係に対して、「誰も手を挙げなかったことを間違いなく記録して置くように」という指示をするシーンがメディアでも報道されていました。

後ほど3社のうちの2社はセキュリティ上の理由から自社のCEOに専用機での移動を義務付ける規則を設けていたことが明らかになっていますが、公的資金での救済を求める企業のありようとしてはいささかの違和感を禁じ得ません。

さらにかつてリー・アイアコッカ氏がクライスラー社の社長として自らの年棒を$1.00として公的援助も取り付けて背水の陣で業績を立て直した事例を引いて、CEOの年棒を$1.00として建て直しに当たる気はあるかと言うやや意地悪な(?)質問に対しても、自分達はすでに減給を受け入れてきた等と回答し、依然として数千万ドル(=数十億円)規模の年収に固執する回答をするなど、公聴会の内容は総じて議会と国民の理解を得るには程遠い内容でした。(流石にクライスラー社のCEOだけは$1.00を受け入れる用意があると回答していますが)

これは既に公的資金の注入を受けているWall街の金融機関のほぼ全てが例年並のボーナスバジェットを用意して世間の批判を浴びている事等にも通じる話なのですが、危機感の欠如に加えて何かアメリカ魂というような気概までもが風化してしまっているような寂しさを覚えます。

Big3にしても組合が強いのはわかりますが、社員の平均年収が約7万ドルと米国内で事業展開をする外国籍の自動車企業(勿論含む日本企業)の社員の平均年収の約4万ドルを大きく上回っており、役員クラスの高給やCEOの専用JET等も考えれば、救済するに値する企業なのかと言う声が出ても当然のような気もします。

Great American Spirit has been lost.

日本の武士道精神も然りですので偉そうな事は言えませんが、非常に寂しい話です。

Struggle for Existence

先週の金融市場も色々見せてくれました。


  * 実体経済減速を裏付ける経済指標


        ↓

* 自動車業界Big3GM,Ford,ChryslerCEOによる議会への公聴会の不評


        ↓

* 株価下落、金利低下、円、米ドルへ資本還流


        ↓

* オバマ政権の閣僚人事への期待で株価反発


        ↓

* 週末にオバマ次期大統領による追加の景気刺激策と雇用創造計画の発表


        ↓

* 今週の市場による評価に注目

大体イメージとしてはこんな感じでしょうか。


1 実体経済減速を裏付ける経済指標

世界中どんぐりの背比べ状態ですが、先週の米国の主だった物のみ拾ってみましょう。

10CPIが前月比▲1%(予想は▲0.3%)、1947年の同指標の計測開始以来最大の下落。

・コアCPI も▲0.1%でコアの前月比マイナスは1982年以来。

10PPIも ▲2.8%1947年の計測開始以来最大の下落。

11Empire State 製造業指数が史上最低の▲25.4に下落。(ただし予想よりはよかった)

11Philly Fed index 1990年以来最悪となる▲39.3 まで下落。

11NAHB builder confidence10月の最安値14から新最安値となる9まで下落。

10月住宅着工 が4.5%減の年換算791千件となり1959年の計測開始以来最低を更新。

・建設許可件数も12%減少の708千件で、少なくとも1960年以来最低。

・新規失業保険申請件数は1992年以来最大の542千件に上昇。

・継続申請件数は1982年以来初となる4百万件を超過。


欧州も似たような物であり、英国も116日に150bpの利下げを行い政策金利を1955年以来最低となる3.00%まで引き下げていますが、その後の議事録では200bpの利下げまで議論されていたことが判明して史上を驚かせています。スイスも100bpの緊急利下げを行うなど欧州経済も米国経済と歩調をあわせるように縮小の一途を辿っています。

2 自動車業界のBig3GM,Ford,ChryslerCEOによる議会への公聴会の不評

先週行われた米国自動車業界の所謂Big3GM,FORD,CHRYSLERCEOを召集して行われた米議会によるヒアリングは大きな注目を集めましたが、公的資金による救済を求める3社に対する大きな疑問と反感を残して終了した格好となり、一歩も二歩も後退してしまった印象があります。

3 株価下落、金利低下、円、米ドルへ資本還流

このような寂しい状況を受けて先週はS&P500$752.4411年振り最安値まで下落。Dow$8,000のサポートを割り込んで$7450台まで急落しました。原油価格も1バレル$50のサポートを割り込んで再び資産市場のImplosionが進行しました。為替市場では“Money back to centers”の潮流が復活して米ドルと日本円が上昇してドルインデックスが88.46の高値を取り、今回も円の強さが米ドルのそれを上回ったためにドル円は9355銭まで上昇しました。

19日の原油の$50割れというのも印象的です。1バレル当たり$150突破寸前から折り返して短期間で$50割れですからある意味ではこれが最もこの1年数ヶ月の出来事を象徴している市場の一つなのでしょう。この日にガソリン先物も200510月に指標が現在の計算方法に改定されて以来の最安値を更新しています。

4 オバマ政権の閣僚人事への期待で株価反発

金曜日の終わり方次第では世紀末的な雰囲気が一気に拡大した可能性があり、実際に日中は非常に危ない局面も多々ありましたが、オバマ次期大統領の下で注目される閣僚人事においてNY連銀総裁のガイトナー氏の財務長官就任が濃厚との報道を好感した株式市場が大規模な反発を見せて終了しました。ダウが$500弱の反発を見せて鬼門の$8,000も回復し$8,046.02で終了しています。

ガイトナー氏は40台でオバマ氏と同世代であり、これまでもNY連銀総裁としてWall Streetの事情にも詳しく、ベアスターンズやリーマンブラザーズの処理にも辣腕を振るった人物であるところが好感されていると思います。オバマ陣営の経済顧問チームの首領的な存在である元FRB議長ボルカー氏の就任が有力視された時期もありましたが新しい米国を印象付ける意味でもガイトナー氏の就任は個人的にも期待したいところです。

 週末にオバマ次期大統領による追加の景気刺激策と雇用創造計画の発表

因みにアジア外交におけるスタンスも気になるオバマ政権ですが、ガイトナー氏はアジア通であり、中国語は不自由なく、日本語もほぼ問題なしと言う事ですので大いに興味ありですね。他にもどうやらヒラリー・クリントン女史が国務長官を受けそうな流れですし、オバマ政権は実力のあるスタッフを集めることが出来そうな期待が高まっており、希望を紡ぐ事により米国の士気を高め、維持することが出来るかもしれません。(多分に期待込みですが・・)

さて、オバマ政権は週末の間に追加の財政出動による需要の創造を発表しています。公共事業的な社会インフラ整備を基本に教育改革などにもお金を注ぎ込み、住宅オーナー支援、大規模な雇用創造、そして先週株価急落による危機に見舞われたCitiグループへの200億ドルの追加の資本注入も合わせて発表しており、週明けの金融市場でこれらがどれだけ好感されるかに大きな注目が集まります。

6 今週の市場による評価に注目

現状は世界経済も金融市場も土俵際まで追い詰められた状態と考えられます。


20日の木曜日には、S&P 500 の構成銘柄のうちの実に101銘柄が$10を割り込むという1980年以来となる寂しい状況となりました。馴染みの深いところでもCitiグループ、スターバックス、モトローラなどのかつてのスター銘柄が$10未満のグループに含まれています。特にCitiグループは木曜日に$5割れ、金曜日に$4割れとなっています。

金曜日と週末の材料により今週は前半に市場は一息付きそうな気がしますが、金融市場の主要な潮流は資産市場の縮小と投資資本の逆流(還流)による円高、ドル高の断続的な加速にあると考えています。

米国の自動車、金融のみならず世界中で各国の繁栄を象徴し代表するような産業や企業までをも巻き込んだ生き残りをかけた生存競争が始まりました。

2008年11月17日月曜日

A Battle for a New Order.

ビジネスの世界では一般に仕組みを作ったものが勝利者となります。確かそのような題名の書物も複数出ていたと思います。


今の金融市場主導の経済モデルという仕組みは米国で誕生したと言い切っても異論は出ないでしょう。米国はその仕組みをWall街で実験し、その成功を国内そして世界に普及させて行くことで金融主導の経済発展という繁栄モデルを作り上げたと言う事になります。


エンジニアリングの世界で、Unit Operation(単位操作)という小さな概念を実験室⇒工場⇒大型プラントという順番でスケールアップさせて行く過程と全く同じです。


米国の繁栄を見た事で主要な欧州系金融機関の多くは経営コンセプトを米国型に切り替えて、今では名前を見れば欧州系だと分りますが中身は米銀と変わらないところも多く、実際に幾つかは実質的にWall街の投資銀行と言っても過言ではない印象すらあります。


ネット証券をどこにしようか、或いは外為証拠金取引の口座をどこに作ろうかと言う時に画面(Platform)の使い易さや分り易さが重視されると思いますが、まさに取引や決済の仕組みを我々はPlatformと表現する事が少なくありません。


その意味で私は米ドルをPlatform通貨、英語をPlatform言語と呼んでいるのですが、米国はこの二つを手に入れた事で地球上における絶対優位を確立したと言ってよいのではないでしょうか。世界中どこへ行っても自国語が共通言語であり、国際間取引では自国通貨が決済通貨であればどれだけ楽でしょうか。


私はグローバリゼーションと言うのは、米国から世界中へのPlatformの輸出だったと思っており、この普遍的Platformを通じて米国から世界中に積極投資が行われたことで経済繁栄という福音が広がっていったと考えています。このPlatform上で米国は世界中から物を買い、対価として世界の決済通貨である米ドルが世界中に供給されて行きました。マクロ経済学で見た時に大きな問題であり続けた米国の莫大な経常赤字が米ドル暴落に繫がらなかったのは米ドルがPlatform通貨として世界中に需要且つ受容され続けたからです。原油や小麦などを購入するのに必要なのも米ドル、米国以外の国々の間での貿易の決済も殆どが米ドルという事実があった訳です。


ここまでは実に美しい絵だったと思うのですが、この鉄壁のPlatform上に新たな空間次元を付与し始めていた金融工学というエンジンの故障により資金の流れが逆流しており、Platformを通して世界中に需要され、供給されて来た米ドルが本国の資本不足とDe-leveragingと言う業容縮小の為に本国回帰しているのです。


米国発の金融混乱による米ドル上昇と言う図式は今でも各方面で消化不良を起こしていると思います。



この米ドルの本国回帰によるドル高は上のグラフの通り10月中旬から失速し、高値も安値も収斂していく三角保合いの状態を保っていましたが、ドルインデックスは先週遂にこの三角形を上に抜け始めた様に見えます。


Platformの話に戻りますが、今回の米国の急減速を好機と捉えたライバル国からはこのPlatformを崩して自国に有利な新たな世界秩序や経済の仕組みを再構築しようと言う動きが出ています。今回のG20緊急サミットでも英国のブラウン首相が第二のブレトンウッズ的な枠組み構築を持ち出し、フランスのサルコジ首相は米ドルは最早唯一の基軸通貨ではないと断言し、ロシアからも足並みを揃えるような提言も出て米国に揺さ振りを掛けています。


そんな中で米ドル以上に上昇している日本円の更なる復権に動くことも可能だった日本ですが、麻生首相は米ドルを基軸通貨とする体制の維持を主張して混乱の収拾が最優先であるという大人の対応を呼びかけています。また機能強化が急務であるIMF改革に対しても既に米国に次いで2番目となる3200億ドルを出資している日本として今回更に1000億ドルの追加出資を表明した事と合わせて日本は今回のG20 で一定の存在感を示す事が出来たのではないかと思っています。


就任後の総合評価ではやや期待外れの麻生政権ですが、今回はよくやったというのが正当な評価だと思います。


日本は将来の新たなPlatformにおいてもその一角を担う十分な資格と資質があると思われるので将来は意外な形での武士道の復権があり得ると期待したいですね。

2008年11月16日日曜日

Walking on a thin ice...

出張や体調不良などで間が空いてしまいましたが、その間に発表された世界中の経済指標や金融市場の乱高下を見ながら、世界経済は待ったなしの状態まで追い詰められていると言う思いを強くしていました。


新興国市場は再び大きな資本流出の波に洗われており、複数の金融当局が市場介入で自国通貨の下落を必死に食い止めています。アイスランドを筆頭に複数の国がIMFに緊急援助を要請していますが、現在のIMFの資金量には限界があるのは明白である為、投機筋も手を緩めていない感じです。


一方でIMFを支える筈の先進国にも全く余裕は無い状況です。先週も木曜日には欧州の中心であるドイツの第3四半期GDPが予想外の縮小となり少なくとも過去12年で最悪のRecession入りとなり、欧州全体も15年振りのRecessionに突入しました。


 米国もこれまで経済を支えてきた個人消費と不動産市況の急速な減速が一層明らかになっています。過去の景気減速時には全くと言ってよいほど影響を受けていなかった別天地であるNY市の減速も目を引くのですが、特にQueens地区の不動産の下落が加速していると言うデータがあります。NY市は15個のZip Code(郵便番号)を持ちますが、同地区は実にそのうちの12個を占める地区であり、いよいよ本丸のManhattan島の攻防が開始されそうな気配です。雇用の悪化に関しても木曜日の失業保険申請件数では1週間以上継続して就職活動をしている人の数が1983年以来と言う高水準になっています。


このような状況を受けて既に多くの国々が①預金の全額保護、②金融緩和、③金融機関への資本注入、④その他財政出動を打ち出していますが、既にボーダーレス化の進んだ国際経済を立て直す鍵は国際協調が握っていると言っても過言ではなく、その意味で間もなく始まる今週の市場動向は、この週末にワシントンで行われたG20緊急サミットの成果に対する金融市場の審判が注目されます。


1010日にLiborが最高値を付け、Dow8千ドルを割り込んでから暫く市場は調整的な回復過程にありましたが、先週は再び株価が下落傾向を強めて、投資資本の中央回帰圧力により日本円と米ドルが押し上げられるパターンが復活しています。



G20ですが、全体と部分でかなり見え方が違うと言う印象を持っています。


結論からすると20もの参加国の間にある危機認識の温度差を詰めきるのは難しかったかなと言う印象ですが、総論では国際協調姿勢を打ち出しながらも各論部分では今後のIMFや世銀の役割強化、金融市場の監視・規制強化の部分では足並みの乱れが目立ちますし、これを絶好の機会とばかりに米国と米ドルを中心とした世界経済及び金融市場のあり方に揺さ振りをかけようと言う動きも随分目立ちました。


最低ラインというか、一応の及第点は確保したかに見えるG20金融サミットですが、週明けの動きから注目していきましょう。

2008年11月5日水曜日

Presidential Election

いよいよ米国の大統領選挙が始まりました。

今回も長い戦いの過程では色々なドラマがありましたが、いよいよクライマックスです。

民主党はヒラリーが出てくると思いましたが、オバマ候補が凌ぎ切り、その勢いで共和党のマケイン候補との戦いもリードを守ったまま投票日を迎えた格好ですね。

感慨深いという表現が適切かどうか分りませんが、1つ象徴的だと思うことがあります。

今の欧米型の金融ビジネスの土台を築き、その大部分を支配していたのがロスチャイルド家という一族なのですが、実は共和党のマケイン候補はその末裔に当たるようです。所謂本家と言うものではなく分家のようではありますが、その金融危機に端を発した実体経済の混乱はマケイン候補に逆風となり、オバマ陣営には追い風になったことは明らかでしょう。

ロスチャイルド家末裔のマケイン候補が遂に掴んだ大勝負の機会に、先祖が作った金融の混乱が主因となって一敗地にまみえるとしたらまさに象徴的な出来事ですね。

一方で黒人初の大統領となることが有力視されるオバマ候補ですが、実はこちらも"庶民"と言うわけでもないようで、実はあの故ダイアナ妃とも遠縁となる高貴な血筋なのだそうです。

そんな切り口で見てみる事もちょっと面白いですね。

2008年11月3日月曜日

The Last Samurai ?

これだけ個人投資家も無視出来ない勢力となっているので、今後は変わって行くのかも知れませんが、外国為替市場はある種無法地帯だと言えます。

投資家保護の概念が薄く、風説の流布でも何でもありなのがこの市場と言えるでしょう。

先日は、何故か為替市場だけにあのトムクルーズが映画の撮影中に事故死したという金融市場と直接関係の無いデマまで流れるなど、殆ど遊ばれていると言う感じすらしてきました(笑)
とんだTRICK OR TREATだと思っていたら、ハロウィーンパーティで見つけました!

トムクルーズではありませんが、ラストサムライ(?)です。

日本でも徐々にハロウィーンは浸透してきている感じがしますが、あのランタン用のカボチャは一個3千円と言う事でしたので購入を断念しました。もう一段の円高を期待したいところ(?)ですね。









Trick or Treat ?

ゲ、ゲ、ゲ……マジですか?


と言う感じなのですが、早くも11月ですね。

よく米国発の金融混乱が世界中に拡大したという事が言われますが、より大きな枠組みで見れば、金融市場の混乱が実体経済や政治を含めた従来の世の中の仕組みそのものを揺さぶり始めたというのが2008年の潮流だったような気がします。


10月も非常に密度の濃い月だったと思いますが、世界中の金融当局が一応の協調姿勢を見せた事、預金の全額保護、金融緩和(協調利下げもありましたね)、国有化も含む金融機関への資本注入に動いた事で足元には一定の安定がもたらされた様に思います。


先々週末と先週末の各市場の終値を比較すると嫌になるほどの乱高下を消化しながら金融市場全体に正常化(少なくとも沈静化)のバイアスがかかって来ている事が分ります。特にLIBOR(銀行間Cash取引レート)やクレジット市場の沈静化は金融経済の動脈硬化が改善してきている事の証左ですね。


株式市場も活況でした。世界株式市場全体の通信簿とも言えるモルガンスタンレーの
MSCI World index9.8%の回復。週を通して共に10%以上の回復を見せた米国のDOWS&P
5001974年以来の上昇幅で両者とも先々週の2003年以来の最安値から立ち上がってきました。Europe's Stoxx 6002001年以来となる12%の上昇。MSCI Asia Pacific Indexは日経平均と一緒に6.9%の回復となりました。


FRBBOJの利下げもあって日本円と米ドルの暴力的否上昇に調整が入った為替市場ではCommodity通貨が反発を見せており、先頭ランナーとなったAUD円が11%弱、CAD円、NZD円も9%弱の上昇を見せています。



上記はDXY(ドルインデックス)のチャートですが、8月初めから上昇したドルは9月中旬に折り返して半値弱の戻しをした後に再度上昇に転じて一気に走り抜け、先々週末には対CAD4年振り、対GBP6年振りの高値に到達しましたが、日本円がその米ドルに対して実に13年振り高値となる9087銭まで上昇していた事も特筆に価することです。


GlobalAsset市場の崩壊、信用の傷付いた投資家や信用創造体力の後退した金融機関の業容縮小(De-leveraging)による米ドルと日本円の急上昇は、如何にそれ以前の世界資産バブルの中で両者の果たしていたリスクマネーの供給源としての役割が大きかったかと言う事の証左以外の何物でもないでしょう。


原油価格の上昇は投機ではなく実需だと言う主張も、金融危機の回避に莫大な公的資金を含む流動性が供給される以上将来のハイパーインフレーションは不可避だと言う主張もこのDe-leveragingという現象の前に木っ端微塵に砕け散ってしまいました。特に後者のシナリオでドル売りとGoldSilverの買いに動いた勢力は断崖絶壁から突き落とされたような展開となっているのですが、最近では1929年当時の世界大恐慌(Great Depression)に対してGreat
De-leveraging
という表現が使われ始めている事にも大いに注目したいところです。


バブルが何時弾けるかは弾けるまで分らないというのが定説であるように、逆バブルとも言えるこのDe-leveragingという現象が何時まで続いて、どういう形で終了するのかも現時点では誰にも分らないのだと思います。1つだけ言える事は、国際協調を含む当局の懸命の努力によって足元には一旦沈静化の兆しがあるということでしょう。


今週も主要国の金融政策に注目が集まります。豪州RBA、欧州ECB、英国BOE50bp0.5%)の利下げが有力視されていますが、どの程度株式市場を持ち上げる事が出来るでしょうか? また何と言っても米国の大統領選挙、そして雇用統計も控えています。


抜本的な万能薬が見つからない未曾有の世界経済危機の中で、当局が矢継ぎ早に繰り出す大きな対症療法(Band-Aid)と奥深い所にある病巣との鬩ぎ合いの時間帯に入っています。


丁度Holloweenが終わったところではありますが、金融の世界ではまさにTRICK OR TREATが継続していると言う訳です。何が仮装で何が実態なのかの見極めが肝要ですね。