2008年11月17日月曜日

A Battle for a New Order.

ビジネスの世界では一般に仕組みを作ったものが勝利者となります。確かそのような題名の書物も複数出ていたと思います。


今の金融市場主導の経済モデルという仕組みは米国で誕生したと言い切っても異論は出ないでしょう。米国はその仕組みをWall街で実験し、その成功を国内そして世界に普及させて行くことで金融主導の経済発展という繁栄モデルを作り上げたと言う事になります。


エンジニアリングの世界で、Unit Operation(単位操作)という小さな概念を実験室⇒工場⇒大型プラントという順番でスケールアップさせて行く過程と全く同じです。


米国の繁栄を見た事で主要な欧州系金融機関の多くは経営コンセプトを米国型に切り替えて、今では名前を見れば欧州系だと分りますが中身は米銀と変わらないところも多く、実際に幾つかは実質的にWall街の投資銀行と言っても過言ではない印象すらあります。


ネット証券をどこにしようか、或いは外為証拠金取引の口座をどこに作ろうかと言う時に画面(Platform)の使い易さや分り易さが重視されると思いますが、まさに取引や決済の仕組みを我々はPlatformと表現する事が少なくありません。


その意味で私は米ドルをPlatform通貨、英語をPlatform言語と呼んでいるのですが、米国はこの二つを手に入れた事で地球上における絶対優位を確立したと言ってよいのではないでしょうか。世界中どこへ行っても自国語が共通言語であり、国際間取引では自国通貨が決済通貨であればどれだけ楽でしょうか。


私はグローバリゼーションと言うのは、米国から世界中へのPlatformの輸出だったと思っており、この普遍的Platformを通じて米国から世界中に積極投資が行われたことで経済繁栄という福音が広がっていったと考えています。このPlatform上で米国は世界中から物を買い、対価として世界の決済通貨である米ドルが世界中に供給されて行きました。マクロ経済学で見た時に大きな問題であり続けた米国の莫大な経常赤字が米ドル暴落に繫がらなかったのは米ドルがPlatform通貨として世界中に需要且つ受容され続けたからです。原油や小麦などを購入するのに必要なのも米ドル、米国以外の国々の間での貿易の決済も殆どが米ドルという事実があった訳です。


ここまでは実に美しい絵だったと思うのですが、この鉄壁のPlatform上に新たな空間次元を付与し始めていた金融工学というエンジンの故障により資金の流れが逆流しており、Platformを通して世界中に需要され、供給されて来た米ドルが本国の資本不足とDe-leveragingと言う業容縮小の為に本国回帰しているのです。


米国発の金融混乱による米ドル上昇と言う図式は今でも各方面で消化不良を起こしていると思います。



この米ドルの本国回帰によるドル高は上のグラフの通り10月中旬から失速し、高値も安値も収斂していく三角保合いの状態を保っていましたが、ドルインデックスは先週遂にこの三角形を上に抜け始めた様に見えます。


Platformの話に戻りますが、今回の米国の急減速を好機と捉えたライバル国からはこのPlatformを崩して自国に有利な新たな世界秩序や経済の仕組みを再構築しようと言う動きが出ています。今回のG20緊急サミットでも英国のブラウン首相が第二のブレトンウッズ的な枠組み構築を持ち出し、フランスのサルコジ首相は米ドルは最早唯一の基軸通貨ではないと断言し、ロシアからも足並みを揃えるような提言も出て米国に揺さ振りを掛けています。


そんな中で米ドル以上に上昇している日本円の更なる復権に動くことも可能だった日本ですが、麻生首相は米ドルを基軸通貨とする体制の維持を主張して混乱の収拾が最優先であるという大人の対応を呼びかけています。また機能強化が急務であるIMF改革に対しても既に米国に次いで2番目となる3200億ドルを出資している日本として今回更に1000億ドルの追加出資を表明した事と合わせて日本は今回のG20 で一定の存在感を示す事が出来たのではないかと思っています。


就任後の総合評価ではやや期待外れの麻生政権ですが、今回はよくやったというのが正当な評価だと思います。


日本は将来の新たなPlatformにおいてもその一角を担う十分な資格と資質があると思われるので将来は意外な形での武士道の復権があり得ると期待したいですね。