2009年1月25日日曜日

Reverse-Beauty Pageant.

それにしても2009年度は苦難の船出と言うか、「世界経済待ったなし」という状況が日に日に明らかになってきている状況ですね。

敢えて世界経済としたのは、これまでは米国経済の悪化に注目が集まる中で上手くその影に隠れてきた米国以外の地域の悪化が明るみに出ることが目に見えて多くなってきているからです。

ちょっと最近の状況を纏めてみるとこんな感じではないでしょうか。

1 米国が傷んでいるので積極的にドルは買えない。

2 しかし世界経済成長への大口資本の提供者が米国と日本であった為に米国と日本の失速は、日米への資本還流を齎して円高、ドル高となっている。

3 そこにアジア、新興国の失速が表面化してリスク回避モードが更に上昇し、円とドルの上昇を加速させている。

4 アイスランド、アイルランド、スペイン、イタリアと欧州各地の悪化が表面化して国際決済通貨としての米ドルの代替機能が期待されるユーロの足元にも火がつき始めている。

5 失速著しい新興国市場へのエクスポージャーに関しては米国よりも欧州の方がかなり大きいという認識が広まるにつれてユーロも積極的な買い材料に乏しい通貨となっている。

6 英国経済の根深いダメージが次々に表面化しており、2007年にサブプライム問題が表面化した直後の米ドル下落では最大の受益者の一つであった英国ポンドが急落している。

7 米国経済も引き続き悪化しているものの、金融市場は一旦織り込んだ米国経済の悪化への市場の反応は鈍く、むしろ新鮮味のある英国や欧州の問題に対してネガティブな反応をし易い傾向を強めている。

8 通貨市場の不美人投票的な状況が強まるにつれて、通貨のライバルである商品市場に底入れの気配が出始めている。

先週の動きを振り返ると、GBPが対ドルで23年振り安値、対円では史上最安値まで下落しましたが、週末時点での下落幅が対ドルで936pips、対円で1129pips(11円以上!)という暴落状態でした。米ドル回避を主張し続けてきたコモディティのグル、ジムロジャース氏も「UK is finished」という物騒な宣言をして英国ポンド建て資産を全て売却したことを明らかにしています。英国は米国と似ていて不動産市場と金融ビジネスで繁栄していたのですが、破綻したアイスランドを含む世界中からの資本流入が逆流している中で唯一の頼みが北海原油と言う状況に陥っており、これが世界に数ある油田の中で最初に枯渇すると予想される油田の一つである事や最近の原油価格の不振などが先行きに暗い影を落としています。

そのジムロジャース氏の推奨通貨が日本円なのですが、こちらは急騰しており、対ドルで87円台まで上昇した他、ドル以外の通貨に対しても全面高となりました。特に世界中の株式市場が下げ足を早めた週の半ばにかけて円高が加速し、オバマ政権発足と新財務長官に就任したガイトナー氏による本邦当局への介入牽制発言などを通して一時はそのまま走り切る気配さえ見せていました。週末には株価が下げ渋ったためにやや失速して取引を終えていますが当分円高加速は要注意でしょう。

ところで、英国のデイリーメール紙に” We are a nation on the brink of going bankrupt”という記事が出ていましたが、英政府の失敗は、昨年10月に公金投入を中心とする金融救済策を打った際、米国と歩調をあわせて銀行の株を買って国有化するとともに、政府が銀行に無制限の保証を行うことを決めたことだと断定しています。また英大手銀行のうち、ロイヤル・スコットランド銀行グループ(RBS)一つだけで、英国の経済規模の2倍以上の2兆ポンドの債権を持っているなど抱え込むリスクも半端ではありません。事実同銀行グループが2008年度決算で$41bioの損失を計上し、ブラウン首相が政府は金融機関救済の為に追加で$142bioもの資金を投入する用意があると表明したところ上述の通り英国ポンドは急落し、RBS株が68%、Lloyds TSBグループ株が54%,Braclays銀の株が40%も急落しました。先週末発表された指標では2008年第4四半期の英国経済は1980年以来最大となる規模で縮小していた事が明らかになっており英国の失速は当分続きそうです。

混乱はユーロ圏にも飛び火していますが、欧州統合のコンセプトは攻めに強く守りに弱いという側面を露呈しており、景気後退時には好調時には表面化しなかった様々な「統合の歪み」が表面化しています。先週後半にはギリシャの国債は同じ条件のドイツ国債よりも300ベーシスポイント(要するに3%)も高い利回りとなっており、このスプレッドは1999年の欧州統合以来最大の開きです。

また、よく実は米国よりも欧州の方がハイレバレッジ状態にあるという指摘がありますが、具体的に金融セクターの負債合計とGDPの 比率はこのようになっています。

Banking System Liabilities to GDP:

Eurozone  335% [約 $41 trillion]
United States  65% [約 $9.8 trillion]

このレバレッジドマネーは特に新興国や準新興国へ投資されているようで, あるデータによればこれら経済圏の負債合計$4.8bioのうちの実に$4.4bioが欧州からの投資であると言う試算もあるようです。

さて・・・

米国、英国、欧州と問題が山積している中で不美人投票的な円高が進行していますが、日本経済も経済指標の悪化や雇用問題の深刻さは例外ではありません。

ポジティブな評価を競う美人投票ではなく、減点主義的な不美人投票でスタートした2009年ですが、年内にイメージを転換させることに成功して不美人集団から抜け出す美人が登場するかどうかが今年の大きなテーマとなりそうです。

結局それはGoldを代表とする貴金属だろうというシナリオが幅を利かせているのですが、これについても近々掘り下げてみたいと思います。

金だけに、掘り下げます・・・というのは下手な洒落のようですが。