2009年8月9日日曜日

That kind of Friday again,it was.

この時期には夏祭りや花火大会という類のイベントが多く、足元の景気動向などに関係なく大いに盛り上がるものですが、金融市場における毎月初第一金曜日に発表される米国雇用統計の盛り上がり(Volatility)はちょっとそれに通じるところがあります。

各種経済統計において最も事前予想が困難とされるこの指標は、実際に著名エコノミストや金融機関の出す予想と大きく乖離する水準で発表される事も多く、それが故に発表済みの過去データの修正頻度や修正幅の大きさも時として市場動向に思わぬ影響を及ぼしてきました。

著名投資家の中にも「予想する事事態が虚しい」として予想を出すのをやめてしまうところ(Dennis Gartmanなど)やこの指標の発表日だけはリスクを最小化してお祭りには参加しないと決めている勢力もあるほどですが、事実私の記憶の中でも米国雇用統計の歴史はまさに裏切りの歴史という印象があります。

さて、7月末以来Green Shootsユーフォリアが完全に市場の主導権を握る中で7()に発表された7月の米雇用統計ですが、直前になって強気の予想が増えてきていた事を割り引いても良好な内容でした。非農業部門雇用者数は当初市場予想の▲350千人が直前になって▲300千人を割り込む予想も出されるようになりましたが最も強気な予想をも上回る▲247千人という数字となりました。

更に事前に(何故か・・)オバマ大統領を含めて米国政府筋から繰り返し悪化予想のシグナルが送られていた失業率も9.4%に改善(低下)しており、過去月の数字の上方修正も含めて全ての面で市場にUpside Surpriseを与える結果となりました。

金融市場の反応ですが、①株上昇、②米金利上昇(債券下落)、③商品市場下落、④為替市場はドル高、円安という動きとなりました。

一見どれもそれらしい動きなのですが、よく見ると幾つか気にしておくべきポイントがあります。これまでの経済指標は金融混乱期のような弱い数字ばかりと言う状況ではなくっていましたが斑模様と言う評価が精一杯で、引き続き米国の雇用と住宅市場が米国そして世界経済のアキレス腱だと指摘されてきました。

そんな中で金融市場は過剰流動性を背景に新興国や資源国への投資や米国など先進国でも雇用なき景気回復(Jobless Recovery)等という楽観論が台頭してリスク資産が大きく上昇すると言う図式が定着していました。

従来このGreen Shoots, Risk-onモードの環境下では、経済指標が改善するとRisk Apppetite(リスク選好度)の上昇からリスク資産が上昇。その対価として米ドルと日本円が下落すると言う流れとなり、経済指標が悪化するとその反対の動きからリスク資産市場が下落して米ドル、日本円が上昇するという相場が続いてきました。

 この流れの中では、金曜日の雇用統計後は指標の予想外の改善を受けたリスク選好度の上昇からリスク資産価格が上昇して米ドル、日本円は売られると言う動きが予想されるのですが、実際には上記の通り①株上昇、②米金利上昇(債券下落)、③商品市場下落、④為替市場はドル高、円安・・でした。

一言で言えば金曜日の激震はRisk-onの動きとは一線を画するものだったと言う事です。①は良しとして、後はRisk-onの図式にははまり難く、敢えて入れ物というかコンセプトで括ろうとするならば、株、金利、通貨の上昇という米国復活モードということになると思います。

実体経済を置き去りにしたRisk-onモードに違和感を感じていた人は少なくないでしょう。しかし米国復活モードというのはそれ以上に違和感のある動きかもしれないですね。

8月相場は基本コンセプトの転換を齎す事になり、金曜日の雇用統計は乱暴にそのトリガーを引いたと言う事になるのでしょうか?

週明けはアジア市場から始まります。ウェリントン市場、シドニー市場で高金利通貨は下落するのか?、東京市場では米ドルからDecoupleして売り込まれた日本円は続落の圧力に耐えられるのか?、その鍵を握る可能性のある日経平均は米株に追随して上伸するか?

週明けからの動きで金曜日の動きが単なる夏祭り、花火大会的な一過性現象だったのかどうかを見ていく事になります。