2010年7月19日月曜日

Cross-roads in sight now.

現在金融市場を二分するような議論は複数ありますが、個人的に極めて興味深いと思うのはそのテーマの多くが非常に根本的なことであり、その結論が明確に認識された時には相当大きな変化が起こるようなものが多いと言う事です。
例えば、ドル下落トレンドが明確な時にドルショートの対価を何にするのかというのは小さな議論ということになります。ドル安と言う大きなテーマの中で、EURなのかCHFなのかAUDなのかJPYなのかを議論するのは大した事ではありませんね。
 それに対して例えば今であれば、世界の2台リザーブ通貨であるUSDとEURの力関係がはっきりしません。元々USD安というテーマでEURが上昇してきた訳ですが今年は欧州経済が大幅失速し、しかもそれが米国と同じソブリン懸念であり、発端はギリシャ等のPIIGS諸国でしたが独仏などの中枢国や欧州連合の外側ですが英国なども財政危機が深刻であると言う事が急速に表面化した時点で市場参加者や特に自国の外貨準備をコントロールする各国中央銀行や政府系運用機関の多くはEURもUSDと大差のない通貨であり、USD偏重の外貨準備を必死にEURに振り替えて来た努力が実は同じ穴の中で狢を比べていたのだという事実に直面したことで一気にEUR売りが加速しました。
結局ここで資産の裏付けのない現在の通貨制度の脆弱性に疑問を持った勢力の資金が一気にGOLD市場に雪崩れ込んだ事で大変なGOLDの上昇相場が実現しました。
 少し歴史をおさらいすると、かつては金本位制という体制の下で各通貨は根源的価値の源と考えられていたGOLDとの交換比率が定められていました。換言すれば貨幣の価値はGOLDによって裏書されていたと言う事になります。全ての通貨は兌換(GOLDへの交換可能)通貨だったわけです。これが主に第二次世界大戦後の各国の疲弊により維持が難しくなるとブレンウッズ体制と言うものに移行します。これは最大の 金保有国であった米国は金本位制を維持し、他国は米ドルに自国通貨をPEGして間接的な金本位制を保つようなイメージです。
 これが諸事情あって1971年に米国が突然 このブレトンウッズ体制を放棄した事から直接、間接を問わず金本位制という概念は木っ端微塵に吹き飛びました。ここで全ての通貨は兌換(交換可能)通貨から不兌換、或いは不換通貨になったのでした。英語では前者がConvertible Currency,後者がFiat Currencyとなりますが、最近はこの両者(特に後者ですが)を色々な文献で見かける機会が急増しています。それは何故かと言うと、そもそもUSDもEURも全ての通貨が不換通貨であればこそGOLDが買われるのだという解説のためです。
金融危機の為に世界中の殆どの金融当局が財政を緩めて政府部門の赤字を増やし、殆どの中央銀行は低金利⇒超低金利⇒量的緩和という段階のどこかにあります。結果として外貨準備として保有する外国貨幣の多くが印刷機でがんがん刷り捲られる事になりこの通貨供給量の増加からインフレーション⇒ハイパーインフレーションというリスクシナリオに晒される事になりますので世界中の中央銀行はGOLDのBullion(金塊、延べ棒)で購入してきました。また機関投資家は多くが金関連株(Gold stock)と言う形で、富裕層を中心に個人投資家レベルでは金貨の購入が一大ブームとなっています。
class=thumbimage
 中国は国家戦略として資源を油田や鉱山ごと買収しまくっていますし、今年の金融危機の震源地である欧州では金貨の製造が追いつかない状況になっており、今ではドイツなどでは金貨の自動販売機があったりギリシャでは調達が間に合わない中で買い注文が殺到し、同国の金市場は市場価格を一時$500程も上回る1オンスあたり$1,700という以上価格まで出現しました。
そのGOLD価格がここに来て急落しています 。    

そしてここで冒頭に述べた大きなテーマに戻るのですが、実はここから起こる事はインフレーションなのかデフレーションなのかという論争があるのです。双方に言い分があり、その殆どが実に論理的で反論の難しいものなのです。これだけ主要国が量的緩和を長期間放置して従来はなかった紙幣を印刷機で刷り捲って世の中に放出し続けている限りインフレにならないわけがないという主張に対して、実は東京が大量に供給した資金は全く回転していない、流通も限定的で実質滞留しているのみなのでインフレにはならないというのがデフレーション派の論点です。実際に資金が回ってこないので不動産などの資産を売りに出しても世間が手元にプールしているお金を動かさないので中々買い手が付かないという事例を出されると、確かにそうかもしれないと思わされます。
 インフレ論者は金や銀の購入を事あるごとに推奨しており、事実そのように貴金属市場は上昇してきました。商品市場が不調でもGOLDだけは上昇すると言う現象は最早珍しくもなくなっています。そのGOLDの足元の大幅下落は調整以上の意味合いがあるのかどうか・・・・・
注目された米国企業の4月ー6月期の決算が非常に良好な内容でアナリストの事前予想を上回るものも目立っています。企業活動と収益性の活発化であればインフレーション派に有利な材料ですね。一方でこのようなミクロの好調に反してマクロは不調なのです。国全体の経済指標は総じて事前予想を下回るものが多く、消費者信頼感や消費者物価指数などは実際に数ヶ月連続で下がっているのでこちらは明らかなデフレーション兆候です。
OK,We are caught here....... マクロとミクロ、インフレとデフレ、ユーロとドル・・・・
これもそう遠くはないと思われる重要変化日に市場が答えを出してくれるのではないでしょうか。