立派に見えても壊れる時は脆い物の例えに「カードの家」という言葉があります。
トランプのカードを上手くバランスさせて積み上げて建物のような形にしたものを思い浮かべればよいでしょう。昨年の夏に表面化した米国のサブプライム問題に端を発した米国経済の急速な冷え込みを表現するのに、以下のような表現が頻繁に使用されていました。
House of cards is finally falling apart.
これで2007年秋から2008年3月までは米ドル売りと言う津波が金融市場を席巻しましたが、その後数ヶ月の猶予を経て、遂には世界経済全体もがA big house of cards だったと言う事が判明し、一旦は米国から欧州、オセアニア、新興国に逃避していた投資資金が一斉に米国に還流する形で米ドルが一大復活を遂げる展開となりました。
House of cards というのは言いえて妙で、まさに米国経済の土台を支えてきたのはHousing
Marketだった事は周知の事実です。
今や全世界に飛び火した経済の混乱を考察する時に、その引き金を引いた米国のサブプライムローンの延滞が何故2007年度に入って急上昇したのかを再確認する事が必要だと思います。
日本にも、親子二世代ローンや将来の収入増を当てにしたステップ返済型の住宅ローンがありますが(住宅金融公庫ですらありますね)、要するにサブプライムローンというのは殆どが5年後位から急激に返済予定額が上昇すると言うスタイルのローンだった事と、その多くがFRBが2001年度の同時多発テロによる景気後退を受けて継続的に金融緩和をしていた2002年度に契約したものであった為に、2007年に入り急上昇した返済額を払えなくなった債務者が急増したと言う事実があります。
以下はこのステップ返済型(Adjustable Rate Mortgage=ARM)の返済額上昇時期の到来予定のチャートですが、明らかに今後の期限到来=延滞予備軍が長期に渡って展望される為にこれらを束ねて証券化した債権に対する値段が付かずに市場が麻痺してしまっているわけです。
週末のG7会合の評価は現時点では微妙ですが、危機感を募らせる欧州当局が週明けの欧州市場オープニングに先駆けて抽象的との批判も大きかったG7合意の具体化を発表した事で市場は好意的な反応を示していますが、火曜日以降の東京市場や北米市場の動向こそが大きな鍵を握ると言う事になりそうです。
House of cards is tearing apart ?
窮地に立つHousing市場のテコ入れ先に次のCardは切れるのでしょうか?
住宅市場同様に景気回復の鍵を握るのが個人消費と雇用問題ですが、実は不安なデータがあります。
所謂NFP(Non-Farm Payroll:非農業部門新規就業者数)ですが、2001年度以降の新規雇用創造の実に43.15%が住宅・建設・不動産分野での雇用増でした。
最早公的部門による前例の無いようなカードが切られない限り、世界景気の早期回復は望むべくも無いという状況のようです。
ここは当局者の英知と英断に期待したいところですね。躊躇せずにカードを切って欲しいものです。