ここへ来て金融市場のRisk sentimentのベクトルは180度転換したとする見方が随分と台頭してきました。Risk Aversionが大きく後退して明らかなRisk Appetiteが台頭して来たようです。
先週は本邦勢が2008会計年度末、海外勢も2009年第一四半期末を消化してそれぞれに新たな時間軸での勝負が始まりました。しかもこのタイミングに合わせるかのようにECB金融政策決定会合、G20会議、金曜日のオオトリは3月の米雇用統計というイベントが待ち構えていると言う実に盛り沢山の時間帯でした。
イベント的には、ECBが50bpの利下げ予想に対して25bpしか利下げせずというサプライズはありましたが、一応その後の声明などで当局が追加利下げや今後の量的緩和の可能性を示唆した事からサプライズも何と無く終息し、G20も予想通り具体性には欠けましたが世界経済再生に向けた各国の前向きな姿勢は確認できた事で金融市場には徐々に正常化バイアスが強まってきたようです。金曜日の米3月雇用統計が非農業部門新規就業者数及び失業率が弱い数字ながらほぼ市場の事前予想通りの内容であったことから意外にも大きな材料とはなりませんでした。実は1月の数字などはかなり下方修正されていたりしてひどいものなのですが市場がそれを無視したという事実をもって市場心理が持続的な修復過程にあるというより大きな流れが確認されたと考えるべきなのかもしれません。
Risk Appetiteの復活によりそれまでのRisk回避アセットであったGold、米ドル、米国債、円などが大きく後退する一方で、かつての希望の星達とも言える新興国通貨、株式市場、コモディティ市場、コモディティ通貨などが大復活を遂げて週の取引を終了しました。
本格的な持続的回復が始まったと考えるのはあまりにも楽観過ぎますが、非常に大きな下落の後であるだけに、たとえ調整でしかなかったとしても先週確認されたベクトルは結構な持久力を証明する可能性があります。
株式市場の代表格であるS&P500インデックスの200日移動平均線からの乖離率をPlotしたものが以下のチャートです。
これが調整し始めたとしたら、例え長期トレンドは下向きだとしても足元の株価は相当上昇できますよね。
コモディティ市場の総合指標であるCRBインデックスでも20日移動平均が50日移動平均を上抜くというBullish Crossover(Golden Crossと呼ばれるやつですね)が確認できます。
こうなるとドルは完全に守勢に回るわけです。
以下はS&P500とドルインデックスの逆相関を表すチャートです。
最後に重要な事を付け加えると・・
遂に先週は米国が世界に先駆けて市場流動性に脆弱性がある一部の資産に関してのみですが時価会計基準の適用を緩和すると言う動きに出ており、今後これが世界的な潮流となる可能性があると同時に間もなく始まる金融機関の決算が相当改善すると言う憶測があります。
金融緩和に財政出動、そして遂にゲームの終了後にルールまで変えて世の中の底上げを図ると言う動きに対する結果が現在進行形の市場センチの回復だとすれば、少々複雑な気持ちにもなりますが、市場自身が実態と認識している物よりも肉眼で見える物により大きく反応してしまうという構図が変わらないのであれば、歴史は繰り返すとか、人類は学ばないと言う言葉の重みも感じてしまいますね。
我々はそれに即した動きをするのみではありますが。We want to be the ones that learn.