2009年6月22日月曜日

Stars know what we don"t......?

Raymond Merrimanという名前を知っていれば結構な市場通と言うことになるのではないかと思うのですが、メリマンサイクルなどという言葉ならピンとくる人も多いかもしれません。

このメリマンサイクルというAstrology(占星術)に基づく分析は過去に何度か大きな相場の転換点や天井、底値などのタイミングを正確に予測していたと言う実績もあって結構な影響力を維持しているのですが、実はこれがこの週末~週初のタイミングで商品市場、株式市場、債券市場、為替市場と要するに金融市場の大部分が重要変化のタイミングに突入すると言う予測を出していることで少なからぬ市場関係者が大いに気にしていると言う状況です。

さて・・・そんな事を頭に入れながら週末の相場を見てみると、北米時間に格付け会社のムーディーズがカリフォルニア州の信用格付けを引き下げる可能性があること、更に引き下げは一気に数段階の引き下げになる可能性が高いことを発表した事から妙な流れになって越週しています。

カリフォルニア州の信用格付けは既に全米でも最低のA2という格付けですが、これが数段階引き下げられるのですから約720億ドルもの債務に影響が出ます。同州の財政赤字は約240億ドルですが今後の自力での債務の借換調達が困難になりますし、既に景気回復を視野に値下がりの激しかった地方債を大量に購入してきた投資家層も大きなダメージを蒙ります。

これを受けた金曜日の動きですが、取り合えず久しぶりに「質への逃避」という流れが進んで米国政府債に買いが集まり、結果として金利低下⇒米ドル下落という動きになりました。

株はダウが下落でナスダックは上昇と言うMIXな展開になっていますが、実際に週明けにも米国債が変われて金利低下要因からドル売りという流れが続くかと言うとその保障も無いと言う状況です。
 損失補てんやリスク回避的なバイアスが強まるならば、寧ろ海外からの資金引き上げで米ドルは上昇し、新興国などの市場が下落すると言う展開にシフトする可能性も十分にあるということです。

実際の引き下げ時期や規模、そして米国政府、FRBの対応次第ではGreen Shoots的な楽観に水をさして金融市場のムードを厳しい現実に引き戻すような動きのキッカケになりうる事象として注目しておく必要があるでしょう。

今週は23日(火)から注目のFOMCがあります。昨今の長期金利上昇に対してどのようなメッセージを送ってくるのかに注目が集まっています。恐らくは米国財務省証券の買取規模の増額ではなく、相当期間低金利を維持すると言うような時間軸効果を狙った方針を表明するのだろうと言うのが市場の最大公約数的な見解ですが、どうもこのメリマンサイクルの変化のタイミングであることが気になります。

難しい舵取りが迫られるカリフォルニア州の知事はあのアーノルド・シュワルツネッガーですが、彼はまさかGreen ShootsのTerminaterになってしまうのでしょうか?

星は、我々の知らない何を知っていると言うのでしょうか??今週の市場に大いに注目していきましょう。

2009年6月14日日曜日

故三沢光晴氏へのレクイエム

プロレス団体”ノア”を牽引してきた三沢光晴氏が試合中に頭部を強打して他界したと言うニュースには大きな衝撃を受けました。格闘技ファンの私ですが相当な期間プロレスからは遠ざかっていましたが二代目タイガーマスク時代を含めて彼は私の好きなレスラーの一人でした。

彼の死を惜しむ話は色々なところに沢山の人が書いていますが、ここでは少し違う角度から彼への思いを書いてみたいと思います。

三沢光晴というと私はどうしてもある人物を思い出します。私の中ではもうこの二人はセットなのですが、それはタイガーマスクでも彼を育てた馬場氏、鶴田氏(この二人も故人ですね・・・)でもありません。それは恐らく今でも現役だと思うのですが越中詩郎というこれまた立派なレスラーです。

この二人はG馬場率いる全日本プロレスの若手ホープとして将来を嘱望されていましたが、恐らく馬場さんはこの二人を競争させながら将来の二大看板に育てていく方針だったと思われます。ある時に馬場さんはこの二人を同時にメキシコ修行に出したのですが、その直後に猪木サイドの新日本プロレスとのビジネスの切れた梶原プロダクションからビジネスの話が舞い込み、全日本で二代目のタイガーマスクを誕生させる機会を得たことで事情が一変し、急遽タイガーマスク的な運動能力に秀でた三沢選手がごく短期間で呼び戻されることになりました。

彼の帰国は極秘扱いで短期間で特訓を受けて二代目タイガーマスクとしてデビューして一気にスターダムに乗る事になるのですが、これは先輩格でありメキシコに取り残されることになった越中選手にとっては納得しかねる事だったようです。この辺は非常に複雑で両者の間にも複雑な感情が芽生えるのは無理からぬことだと思います。

やがて日本でもプロレス団体間の興行競争が激化してやがて仁義無き人気選手の引き抜き合戦にも発展するのですが、その中で越中選手が選択した帰国先はライバルの新日本プロレスでした。馬場さん直々の慰留をも蹴って厳しい道を選択した越中選手にも曲げることの出来ない男の意地があったのでしょう。

タイガーマスクとしてスターとなった三沢選手とライバルの新日本プロレスのリングで準スター的な扱いを受ける越中選手を見ながら一ファンとしての私の心も複雑でした。やはり新日本でも生え抜きの選手がスターであり越中選手の扱いは明らかにそれ未満のものでした。

「あそこに帰る訳には行かなかった」という越中選手の言葉も、「コーナーは違っても良いから彼とは同じリングに立ちたかった」という三沢選手の言葉は印象に残っていますが、これらは共に大分後になってからのもので両者ともに暫くは公的にはお互いに対するコメントは控えていたように思います。

その後の両者の活躍は書くまでも無く、共に日本を代表するレスラーになっていくのですが、私も海外に出てしまったりして果たしてその後この二人が同じリングに立ったことがあるのか、共に一流レスラーとして名を上げた二人が複雑な感情を消化して打ち解けることがあったのかどうかは全くわかりません。

三沢選手の訃報に触れて、すぐに越中選手のことを思いました。彼は間違いなく三沢選手の死を最も悲しんでいる業界人の一人だと確信します。

人間とか男とか言うものについてちょっと考えさせられる思いです。

とにかく三沢選手のご冥福を心からお祈りしたいと思います。 

合掌。

Does "shoot" look greener ?

為替市場における大きな潮流と注目材料について自分なりに整理してみました。

1 金融危機とドル高( ~2009年3月?)

2007年のサブプライム問題、2008年のリーマンショックなどの予期せぬネガティブサプライズによりドルは一旦売られたものの結局はディレバレッジ等のリスク縮小や資産のキャッシュ化によるドルのレパトリを受けてドルは一転上昇に転じました

米国発の混乱で何故ドルが買われるのかという困惑が当初は多くの為替ディーラーからも聞かれたものですがどうやら4月以降はこの潮流は収まったかに見えます。

2 その後のドル反落の三つの要因(2009年4月~)

 4月以降のドル安については主に以下のような材料があったと思います。

1 ドルのリザーブ通貨というステイタスの危機

2 米国の財政赤字膨張速度への懸念

3 所謂Green Shoot的な回復楽観論によるリレバレッジ(De-leverage⇒Re-leverage)。

  リスクアセットへの再投資によるドル売り。 

ドルインデックスは次々にサポートを破られて一時は大暴落寸前でしたがここへ来て一息ついた感じで、体制を立て直して反発に転じる可能性を示しています。

 3 直近の市場ドライバー 長期金利とイールドカーブ

  金融市場の台風の目は米国の長期金利ですが、10年債利回りが4%台に乗っていくかどうかと言う点に加えて長短金利差が拡大するのか縮小するのかというイールドカーブの動向も為替市場への大きな影響力を持っています。

   ① 長期金利上昇とイールドカーブのSteep化  ドル売りになり易い。

  ② 短期金利上昇とイールドカーブのFlat化  ドル買いになり易い。

 長期金利の水準は価格軸、時間軸の両面で分岐点に来ている可能性大という感じです。

 更にある米銀のレポートで指摘されているのですが、長期金利は6月にその年のピークを打って反落する傾向があります。

 10年債イールドの高値 2005⇒615日、2006⇒628日、

2007⇒613日、2008⇒613

  今年の616日にはBRICS会合23日からはFOMCも予定されており要注意ですね。  

 4 デレバレッジによるリスクマネーのレパトリによるドル買いの動向について。

 上述の通り運用主体の資産配分状況や市場のフロー分析等から判断してこの動きは一旦終了したものと考えられます

しかしこれは還流するべきリスクマネーが還流しきったという状況ではなく市場は最悪期を脱したという楽観論に基づく小休止或いはリスク資産への再投資の動きによるものであり今夏以降に過去2年のような金融危機第三波的な動きがあればドルのレパトリが再開する可能性は十分にあるでしょう。

 5 日本版HIAのモラトリアム的な状況

 当初は大きな円高要因となりうると世界中から注目された日本版本国投資法については当初は積極利用に意欲を見せていた本邦勢の利用状況も低調な状況であると考えられます

各種ヒアリングに対しても当初制度利用に意欲的な回答を寄せた企業からも最近は明確な意欲後退を示唆する回答が寄せられるようになっており、フロー分析からは寧ろ本制度が適用となる4月以前の方が本邦勢のレパトリ規模は大きく、4月以降は逆に大きく減速している印象があります。海外資産のレパトリについては税制優遇要因よりも足元の資金繰りコストの方が大きなファクターとなっているものと考えてよさそうです。資金繰りがタイトなら海外から資金を引くが、税制優遇はそのインセンティブにはなっていないということです。

来そうで来ない円高の遠因の一つは間違いなくこれではないでしょうか。

 6 今後の展望

 最近は楽観論が強まる傾向でGreen ShootからGreener Shootという言葉すらにする機会が増えていますが、実体経済が市場の期待にこたえられるのか、ハイパーインフレを起こさない形で現行の量的緩和政策に終止符を打つ出口政策が可能なのか、株価の大幅反落は本当に無いのか、長期金利は株価や景気を壊さないのか・・等の不透明材料も多く、今夏以降の金融混乱第三波によるVolatility上昇のリスクは市場の備えを遥かに上回る実現可能性を秘めていると考えても決して大袈裟ではないように思います。株価、コモディティ価格、欧州通貨、コモディティ通貨などが対ドル、対円で下落に転ずる方向に大きな潮流が逆流する展開も十分に頭に入れておきたいところです。 

最近は以下のような気になるデータも増えいますが、この動きの引き金を引くのは株価の反落、中国経済の失速、欧州経済の問題の露呈、回避されたと思われた米国景気の底抜け・・等が考えられるのではないかと思っています

US imports down 30% YOY

China Exports (YOY)down 26% in May; -23% in Apr; -17% in Mar、 Imports(YOY) down 25.2% in May; -23% in Apr

   Germany Exports for Apr -4.8% from Mar; -28.7% yoy Industrial production -2.9% from Mar; -29.3% yoy

  Japanese machine orders Apr -12.7% mom; -42% yoy

  US mortgage refinancing back to Nov 2008 levels when Fed started campaigning to lower rates

 最近は一方向の動きが一日持たずに乱高下する相場となっていますが、6月中には少し風向きがはっきりしてくる可能性が高そうですね。

 Stay Tuned.

2009年6月7日日曜日

Exit Policy ?


理論としては存在しても事実上日本以外は正式な金融政策として採択していなかった量的緩和ですが、ちょっとアトピー治療とステロイド剤の関係に類似した部分があり、効果は期待できるけど副作用も確認されており使用方法とそれ以上にやめ方(出口政策)が難しいと言う問題があります。

米国は明らかな量的緩和を採択していますが、これはFRBのバーナンキ議長が元々世界的な量的緩和政策の権威であるという事情も大きいと思われますが、欧州など多くの先進国は事実上の量的緩和、或いは極めて類似した政策を採択しながら量的緩和政策であると明言する事はかたくなに拒否していると言う状況です。こそこそステロイドを使用していると言うイメージもありますね。

このような状況下、金融市場には量的緩和政策に関する出口政策が準備されているのか、その有効性はどうかというような不安が共有されているのですが、先週金曜日には、意図した訳ではないのでしょうが結果としてこの部分に関する不安を煽るような当局者発言が相次いだ事で長期金利上昇ばかりかこれまで実に効果的に抑制されてきた短期金利の急騰に火がついたと言う側面がありました。

先週の議会証言で米国は適当なタイミングでインフレを招かずに現在の政策に終止符を打てると発言して市場にインフレリスクを思い出させてしまったバーナンキ議長に続いて以下のような発言が出ています。

・カンザスシティ連銀のHoeningが長期金利上昇に懸念を示した上で、巨額の赤字と緩和的金融政策の組合せはインフレーションを招くと言う懸念を表明。

・サンフランシスコ連銀のYellenが、"Great Moderation"は過去のものであり、長期金利の高騰はインフレーション懸念を上昇させると発言。

ちなみにGreat Moderationとは、経済のグローバル化の結果景気の波が小規模化して世界的に経済の安定度が増すという現象ですが、一連の発言は結局は米国も現行政策の確固たる出口政策を用意している訳ではなく、如何にインフレーションリスクを制御できるのかと言う部分に金融市場から懸念をもたれてしまったと言うことになりそうです。

ハイパーインフレーション懸念が顕在化するのなら足元の金利上昇要因による買い戻しの後は再度激しいドル安が来る可能性も残りますが、同様のリスクは世界中に共有されていると言う意味では全通貨が現物資産に対して価値を下げる流れも有り得ます。コモディティの時代が来ればジムロジャースの予言の実現となるわけですが、将来の話として意識はしておきたいものです。

私自身もそろそろ真剣に負債を持つべきか・・・・借金して不動産でも買うべき時かなと仲間内で真剣に話しています。

From Green Shoots to Red Flag ?

From Green Shoots to Red Flag ?

6月5日(金)に発表された5月の米雇用統計は、金融市場に激震をもたらしたばかりかどうやらその結構な潮流を反転させ始めた可能性があります。

5月に加速したトレンドをおさらいして置くと以下のようになります。

1 株高、商品高

2 ドル安

3 円安

4 新興国通貨、コモディティ通貨高

5 欧州通貨高

6 米国長期金利上昇

7 欧州長期金利上昇

8 世界的金利イールドカーブSteepening(長短金利差拡大)

9 世界的株高

これらは総括してしまえば世界経済が急回復はしないまでも少なくとも最悪期は脱して回復期に入っているという金融市場参加者が最大公約数的に共有するメインシナリオに基づく動きでした。雪どけ後の春の新芽の芽吹きに例えてGreen Shootsと呼ばれてきました。

この状況で6月に入り月初のイベントとして迎えた5日(金曜日)の雇用統計ですが市場の事前予想は非農業部門新規就業者数(NFP)▲530千人、で失業率は9.2%まで上昇と言うものでした。

これに対して北米東海岸時間の午前8時半に発表された実際の数字はNFP▲345千人と上記予想を大幅に下回る減少数となり、1月の▲741千人からも大幅な改善となりました。失業率のほうは予想の9.2%を上回る9.4%と実に26年振りの高水準にまで上昇してしまいましたのでNFPの改善と痛み分けかと思いきや市場は暴力的にこの内容を好感する動きに出ました。

 ここで上記の5月のトレンドは大きな濁流に洗われ始めました。

 1 株高、商品高  乱高下

2 ドル安  ドルの急反発 大幅上昇へ

3 円安  これは加速 (日本人としては複雑・・)

4 新興国通貨、コモディティ通貨高  急落モードへ

5 欧州通貨高  急落モードへ

6 米国長期金利上昇  加速 10年債利回りは4%に肉薄へ

7 欧州長期金利上昇  加速

8 世界的金利イールドカーブSteepening(長短金利差拡大)

Flattening 長短金利差暴力的な縮小。                             

9 世界的株高  黄信号 

 最も強烈な濁流は金利市場で生じています。米国10年債利回りは上記の通り一時3.905%まで上昇(終値は3.862%)、30年物T-bondイールドも一時4.718%まで上昇(終値は4.656%)、Fed Fundレートは年内12月までに50bp、来年2月までに75bpの利上げを織り込む水準にまで急騰してしまいました。

 失業率が上昇しながらFFレートを引き上げると言う事は歴史的にも常識的にも考えにくい事ですが、金曜日終了時点で市場はそれを見込んだ状態になっていると言う事です。

 週明けからの金融市場では各市場でこの雇用統計後の逆流の持続性(定着)と未だ予断を許さない濁流の行方に注目する必要があります。特に何があっても堅調を維持してきた株式市場に変調が起こるのかどうか、その場合はテクニカル的にはトレンド加速初期とも見える円安バイアスは我が道を行けるのかという点が為替市場では焦点となるでしょう。

 

このオープンインタレストの急増を見てもドル売りも行き過ぎていたと言う事でしょうか。

Green Shootsシナリオは乗り遅れる恐怖をばら撒きながら当初懐疑的だった投資家やトレーダーをその渦の中に取り込む形で勢力を増してきました。週末は明け方にカナダドルの損切りオーダーがついて私のGreen Shootsも終わりました(笑)。長期金利上昇のダメージをイールドカーブのSteep化(短期金利は低いまま)で凌いできた世界経済や株式市場は金曜日の短期金利の急騰のダメージをどのように消化するのか。

 From Green Shoots to Red Flag.

 6月相場待ったなし・・・・でしょうかね。