From Green Shoots to Red Flag ?
6月5日(金)に発表された5月の米雇用統計は、金融市場に激震をもたらしたばかりかどうやらその結構な潮流を反転させ始めた可能性があります。
5月に加速したトレンドをおさらいして置くと以下のようになります。
1 株高、商品高
2 ドル安
3 円安
4 新興国通貨、コモディティ通貨高
5 欧州通貨高
6 米国長期金利上昇
7 欧州長期金利上昇
8 世界的金利イールドカーブSteepening(長短金利差拡大)
9 世界的株高
これらは総括してしまえば世界経済が急回復はしないまでも少なくとも最悪期は脱して回復期に入っているという金融市場参加者が最大公約数的に共有するメインシナリオに基づく動きでした。雪どけ後の春の新芽の芽吹きに例えてGreen Shootsと呼ばれてきました。
この状況で6月に入り月初のイベントとして迎えた5日(金曜日)の雇用統計ですが市場の事前予想は非農業部門新規就業者数(NFP)が▲530千人、で失業率は9.2%まで上昇と言うものでした。
これに対して北米東海岸時間の午前8時半に発表された実際の数字はNFPが▲345千人と上記予想を大幅に下回る減少数となり、1月の▲741千人からも大幅な改善となりました。失業率のほうは予想の9.2%を上回る9.4%と実に26年振りの高水準にまで上昇してしまいましたのでNFPの改善と痛み分けかと思いきや市場は暴力的にこの内容を好感する動きに出ました。
ここで上記の5月のトレンドは大きな濁流に洗われ始めました。
1 株高、商品高 ⇒ 乱高下
2 ドル安 ⇒ ドルの急反発 ⇒大幅上昇へ
3 円安 ⇒ これは加速 (日本人としては複雑・・)
4 新興国通貨、コモディティ通貨高 ⇒ 急落モードへ
5 欧州通貨高 ⇒ 急落モードへ
6 米国長期金利上昇 ⇒ 加速 ⇒米10年債利回りは4%に肉薄へ。
7 欧州長期金利上昇 ⇒ 加速
8 世界的金利イールドカーブSteepening(長短金利差拡大)
⇒急Flattening ⇒長短金利差暴力的な縮小。
9 世界的株高 ⇒ 黄信号?
最も強烈な濁流は金利市場で生じています。米国10年債利回りは上記の通り一時3.905%まで上昇(終値は3.862%)、30年物T-bondイールドも一時4.718%まで上昇(終値は4.656%)、Fed Fundレートは年内12月までに50bp、来年2月までに75bpの利上げを織り込む水準にまで急騰してしまいました。
失業率が上昇しながらFFレートを引き上げると言う事は歴史的にも常識的にも考えにくい事ですが、金曜日終了時点で市場はそれを見込んだ状態になっていると言う事です。
週明けからの金融市場では各市場でこの雇用統計後の逆流の持続性(定着)と未だ予断を許さない濁流の行方に注目する必要があります。特に何があっても堅調を維持してきた株式市場に変調が起こるのかどうか、その場合はテクニカル的にはトレンド加速初期とも見える円安バイアスは我が道を行けるのかという点が為替市場では焦点となるでしょう。
このオープンインタレストの急増を見てもドル売りも行き過ぎていたと言う事でしょうか。
Green Shootsシナリオは乗り遅れる恐怖をばら撒きながら当初懐疑的だった投資家やトレーダーをその渦の中に取り込む形で勢力を増してきました。週末は明け方にカナダドルの損切りオーダーがついて私のGreen Shootsも終わりました(笑)。長期金利上昇のダメージをイールドカーブのSteep化(短期金利は低いまま)で凌いできた世界経済や株式市場は金曜日の短期金利の急騰のダメージをどのように消化するのか。
From Green Shoots to Red Flag.
6月相場待ったなし・・・・でしょうかね。