金融市場では軒並みオプション市場のVolatilityが軟調推移しており、リスク回避バイアスの後退と所謂Risk-ON相場への回帰がメインシナリオとなっているのですが、詳細に見ていくとあちこちにConflictが起きている事が判ります。
1 Fundamentals vs Technicals
ファンダメンタルズ分析では欧州問題は相当長引くはずであり、まだまだ表面に出てきていない火薬庫も沢山ありそうな話も聞こえてきます。中長期的には欧州売りの動きは相当な水準まで進展していく可能性が高いでしょう。
一方でテクニカル分析はかなり明確な反転を示しています。少なくとも短期的な潮目は反転したという見方が急速に広まっており株式市場や商品市場などのアセット市場に大きな復活の兆候が出てきていますが、これはテクニカルプレーヤー達がベアトレンドが一旦走りきって息切れしたと言う兆候を見て一斉に動き出したからで、基本的にはショートスクィーズ的な動きが中心でしょう。
2 Inside Technicals.
テクニカル分析をよく見ていくと、少しMIXな絵が見えてきます。ユーロ下落が注目を集める形で今回の相場の牽引役を勤めてきた為替市場ではかなり明確な形でユーロの反発、ドルの反落というベクトルが見えています。ここからはこれまでのリスク回避バイアス下での受益者兼勝ち組であったドルと円が下落していく動きが暫く続くように見えます。
一方で株式市場なのですが、こちらは買戻しが激しかった分少し心配な兆候が出ており、1週間以内に再びより大きな下落が再開されるリスクを指摘する分析も出ています。私も愛読しているElliot Wave Internationalの分析を紹介するとこんな感じです。
①DowもS&Pも週次で2.5%以上の反発上昇を記録したpositiveな週だった。
②しかし金曜日の取引高は4月12日来約2ヶ月ぶりの低水準。
③木曜日の取引高も今月2番目の低水準。
④金曜日のトレーダーズインデックス(簡単に言えば市場の鼻息の荒さです)は約58年振り低水準で過
去70年で8番目の低水準。(注意;これは低いほど鼻息が荒いと言うインデックスです)
⑤金曜日のニューヨーク証券取引所のTICKデータ(上昇銘柄数ー下落銘柄数)は実に+1644となり23
年振りに記録された高水準。
と言う具合に一見物凄い強気相場に見えるし、そういう分析も実際にあるのですが、彼らの指摘はこの④と⑤で言及しているインデックスはベアマーケットラリーにおける最終局面で高値を更新してきたと言う歴史があると言うことなのです。
株価が木曜日、金曜日と出来高を伴わない形で上昇してきたことに加えて、これら定義はBullなるも実績はBearなシグナルが不気味に点灯中という状況から今回の元々ReversalではなくBear Market Rallyであると考えられる株価の反発は早くも最終局面に来ていると言うリスクシナリオを頭に入れていく必要があると言う事です。
ただし、為替市場のユーロ反発気配、ドルや円の反落気配には今のところ大きな死角は無いように見えます。もしかすると株価が反落しても為替ではユーロが反発してドルや円が売られると言うこれまでとは違う図式(為替市場と株式市場のDecoupling)が起こる可能性もあるのでしょうか。
中長期ファンダメンタルズと短期テクニカル、為替のテクニカルと株のテクニカル・・・・・今の金融市場にはあちこちに大物同士の戦いが展開され始めているようです。金融市場版のタイタンの戦い・・でしょうか。