2007年8月30日木曜日

Collision of Thoughts : Perception Gap

先日会社で突然非常ベルの音が聞こえました。直ぐ側という感じでは無かったものの、避難するようなものなのかどうか少し気になったのですが、やがて音は収まり我々も直ぐに忘れてしまいました。

 人伝なので定かではありませんが、誰かがトイレの個室で流すボタンだと思って非常ベルのボタンを押したのだと聞きました。個室側面に流すボタンがあるのは知っていましたが、確認してみると確かに奥の壁には非常ベルのボタンを発見しました。

入社、或いは赴任間もない人か来客か・・・・ちょっと不慣れな人が用を足して流そうとしてそこにあるボタンを押したらベルが・・・・・・? そんな状況を想像をしたらとてもおかしくなってきました。

まさか・・・・・・

これではヤバイと思ったその人が、おしり丸出し状態のままうさぎ跳びのように出てきて隣の個室に逃げ込んだりなどしていたら・・・・・そんな絵を思い浮かべると声を出して笑いそうになりました。

水曜日には・・・・・

真横の同僚が電話で顧客に話をしながら、自分で飛ばしたジョークに自分で笑った拍子に大き目のゲップをしてしまい顧客に詫びを入れていました。

 「これ以上僕を笑わせたら殺す」・・・・彼にそんな事を言いながら私も受けていました。

閑話休題・・・・

日本株は、見ていて少し情けなくなるくらいに前日の米国株の動向に影響されますが、為替市場はかなり独自の動きを見せる事も多く、東京市場の独自性とステイタスはここ数年で随分と高まっていると感じます。

 米国市場が終了してから数時間後に東京市場が始まるという分断状態の株式市場が米国市場の後追いで、シドニー市場を挟みながらどこまでが米国市場でどこからが東京市場なのかの区別も曖昧な連続状態の為替市場で東京市場が独自の動きをするというのはちょっと不思議な気もします。

海外市場で株が売られる、円高が進む・・・・ヘッジファンドや外銀の戦略デスクがこの後の東京市場における輸出企業のパニック的な外貨売り注文による円高加速を期待してドル円やクロス円のショートポジションを積み上げる・・・。
 そんな動きの後で東京市場が注文通り、彼らの期待通りにパニック的な動きを見せる事は最近は極めて稀になりました。

 冒頭のエピソードも然りで前日の海外市場で株安、円高が進行して私自身も東京市場がパニック的な動きをする可能性があると少々緊張(期待?)して出社した日に起きたほのぼのとした出来事でした。
 
サブプライム・モーゲージ問題を震源地とした金融市場の激震は、各国当局の流動性供給策などにより一旦沈静化した格好となっていますが、いまだ不安定な状況に変わりはなく今週も週初から徐々に強まってきた株売り、円買いの動きが火曜日の北米市場で加速して水曜日の東京市場における日本人、特に投資家と輸出企業の動向に世界中が注目していました。

しかし、これまでのところあらゆる円高局面、今回の円高ピークだった111円台(111.60)の辺りですら本邦輸出企業のパニック的なドル売りは出ておらず、結局梯子をはずされた格好の海外勢がポジションを手仕舞う形で相場の振り子が円安方向に振り戻してくる展開が多く、水曜日のドル円、クロス円の反発も誰かが大きく買ったというよりは出るはずだった売りが不在であったために相場の需給の歪みから投機ポジションが解消されたという要因が大きかったと言えるでしょう。

シカゴの商品先物市場では2006年の6月以来久しぶりに円先物の建て玉がロングポジションに転じています。海外投機筋が期待する一大円高の幕開けは、日本の輸入勘定や投資勘定の外貨買いが輸出勘定の怒涛のパニック売りに押し潰されるときに実現するというシナリオですが、少なくともここまでの展開を見る限り、そのシナリオは実現するとしても海外勢が思い描くような時間軸ではなさそうにも見えます。

実際には、本邦勢のパニックを期待している海外投機筋にこそパニック的、刹那的な心理状態が感じられると言うのが個人的な印象ですが、この認識ギャップがどのように拡大・縮小していくかはここからの金融市場の大きな地雷となる事は間違いありません。

今の日本市場、特に東京外国為替市場は、巌流島か八幡原か・・・・・私はそんなイメージを持ちます。
宮本武蔵を待ちくたびれる佐々木小次郎、上杉軍を待ち構える武田軍・・・・これが海外勢というところですが、彼らを待たせる本邦勢は今のところマイペースです。

ただし・・・歴史と同じで、戦いは必ず起こります。

Stay Tuned.

2007年8月28日火曜日

Total Eclipse

火曜日の早朝に歯を磨きながら・・・・

昨晩後輩から教えてもらったのですが、今夜は皆既月食だそうです。
月が完全に見えなくなる皆既月食は珍しく、次にこれが見られるのは2010年になるとか・・・

まだ学生服を着ていた頃だったと思うのですが、ボニー・タイラーという女性歌手が、Total eclipse of the heart という歌を歌っていたので、皆既月食という単語を覚えたのを懐かしく思い出しました。

月曜日はロンドン休日と言う事もあって金融市場は静寂に包まれましたが、火曜日は要注意ですね。
特に週末連休明けの欧州勢の復帰と月の出る夕刻が重なるのは要注意でしょうか。

ここでは余分なリスクは控えたほうがいいかも・・・。

なんと言っても・・・・・・ 「つき」がなくなる瞬間があるのですから・・・

朝から失礼!

では出勤します。

2007年8月26日日曜日

金融工学バブル(後編) : サブプライム問題の"そもそも論"

後編です。

サブプライムというのは、Sub-Primeであり、最優遇金利(Prime Rate)ではない金利で行われる取引の事ですが、ここで1つ明確にしておきたいことがあります。

 サブプライムローンの延滞率が上昇した事が原因で、それに様々な要素が絡んで世界金融市場を揺るがすような混乱が生じた訳ですから一定の理解は出来ますし、視聴者にわかりやすく伝えようと言う善意の意図もあるのでしょうが、日本のメディアの多くがサブプライムという横文字を、”信用力の低い階層への住宅ローン”と言うような説明をしているのはやや配慮を欠いた必ずしも適切ではない表現だと思います。

 何故文字通り”準優遇金利貸し出し”等のすっきりした表現にしないのか個人的には残念な気がします。最優遇金利が適用されなくとも真正直に生きている人間は多いし、金持ちでもどうしようもない人間は沢山見てきました。

 日本のメディアは、”格差”と言うものを問題にするならば、格差を生み出すような表現は自粛する配慮も必要でしょう。

ええと・・・本題に戻ります。

ここ数年特に金融工学と言うものが脚光を浴びてきました。

高度に理論化されたデリバティブ理論やフラクタルな部分波動分析、過去の市場間の相関関係や共分散等の確率統計モデルに基づく市場間アービトラージ・・・と理系出身の私ですら現在の金融工学の最前線はまるでメトロポリタン美術館において絵画や彫刻作品の説明をギリシャ語で受けているような気になります。

ただし・・・金融市場のLighthouseの管理人としては、投資家が理解しておけばよいのはDCF(Discounted cash Flow)モデルというPricing理論程度だと保証して置きましょう。

 "XXXの証券化"などと言う話を聞いたり、そういう書物を見る事もあるでしょうが、それらは単にXXXに来るものが今後将来に渡って生み出すCashflowを現在価値に割り引いた数値を元にそれを小口細分化した証書に適当な値段をつけて世の中で売りさばくと言うだけの話です。

CDO,CLOなどと言う文字列を良く見るのですが、これらは高利回りを実現するべく金利の高い貸出債権を切り売りするもので、サブプライム住宅ローンもその対象になっているだけのものです。例えば、CDOなら"Collateral Debt Obligation"という言葉を短縮したものなのですが、やっている事は組み込まれたローン債権が将来に渡り生み出すキャシュフロー(=債務者の返済)を現在価値に引き直して投資家に小売りしているというだけのものです。不動産のREITと全く同じ仕組みと言ってよいでしょう。


と言う事で・・・それこそ国民層自己破産状態にでもなって将来のキャッシュフローがゼロにならない限り、理論的にはサブプライムローンを組み込んだCDO証券などに値段がつかないという事は有り得ないのですが、市場では一時これが起きていたために恐慌的な状況が発生しました。

全くの私見ですが、ここに一番大きな問題の本質があると思っています。

金融市場を支配するもの。少なくとも短期的(せいぜい週単位)どころか中期的(数ヶ月単位)での市場動向を決定付ける一番大きなファクターは、金融理論ではなく、はかり知れない人間の煩悩だと言う事です。

年単位の長期投資ではなく、日々の数字、月単位での数字が意味を持つトレーディングの世界に身を置く場合は、金融工学よりもHuman Natureの怖さを再認識しておくべきでしょう。

何故、サブプライムを組み込んだ証券には、予想延滞率を大幅に上昇させた形で将来の見込みキャッシュフローを減少させた形でのRe-Pricingすら出来ない(=値が付かない)のでしょうか。

George Sorosが普段から言っている事を掲載しましょう。これは彼が数年前でしょうか、今回の混乱などとは全く関係のない時に述べている事です。

“Derivatives are constructed on the basis of the theory of efficient markets. The fact that they have become so widely used would seem to imply that the theory of efficient markets is valid…Beta,gamma, delta are, for the most part, just Greek letters to me.”

江戸時代の戦のない時代になってから、かつて戦場を駆け巡った祖父が孫に対していかに合戦の実態は書物から学べる理屈とは違うものなのかを話して聞かせるような場面を思わせるような言葉です。

金融工学の大きな部分を占めるデリバティブ理論は、効率的市場を前提としており、市場が効率的ではないと思うなら、或いは市場が効率的ではなくなったと考えるべき状況下では、デリバティブ理論の存続前提が根底から崩壊していると言う事です。値付けなんて到底無理な話なのです。

米国における不動産投資ブーム、過剰流動性をベースとした世界資産市場・・・・・・色々なものが行き過ぎていたと言われますが、実はその根底部分で一番実態以上に膨張して過ぎていたものは、金融工学と言うものへの過度の期待と信頼だったのではないでしょうか?

金融工学・・・・これこそが最もバブル状態にあった。

Lighthouseで荒波を見つめながら、Robert Henryはそのように考えています。

金融工学バブル(前編) : サブプライム問題の"そもそも論"

今回の市場の動乱については、色々と考えさせられる話が多いのですが、同時に少々良くわからない部分も残ります。
 もともとは金融市場といえば①資本市場、②商品市場、③為替市場 に大別されて、①の資本市場の中身は金利市場(債券市場)と株式市場に分かれていると言うのがBig Pictureであり、取引手法的な切り口でそれぞれがListed(上場)とOTC(店頭)に分かれていると言うことを理解すれば入門編は終了と言う構造でした。

しかし・・・そうですね・・・インターネット、E-mail、携帯電話、PCのWindowsだってそうでしょう・・・・絶え間ない技術革命というものが今では当たり前の存在となっているこれらの産物を過去10年程度の間に世に出して普及させたのと丁度同じように、金融の世界で新しく登場し、急速に普及したのが"クレジット"というコンセプトだと言えるでしょう。

勿論、クレジットカード等というものは商品化されていたので、全く新しいものではないにしても、それが投資の可否を判断する基準から、投資対象そのものへと進化したのはこの10年程度と考えて間違いないでしょう。クレジット投資、クレジットデリバティブ・・・・そんな言葉は比較的新しいものなのです。

会社は違いますが、数年前に為替とオプションのトレーディングからオルタナティブ投資業務に移った学校の後輩が、クレジット市場というものを理解しないと投資先のヘッジファンドなどが何をやっているのかが充分に把握出来ないという話をしていました。私がかつて米国から発信していた金融レポートも金利債券、株式、商品、為替の解説であり、クレジット市場を全くカバーしていなかったのですが、彼はついでに私のレポートも"不完全である"と切り捨てていました。誠にいい奴です・・・・・

そんな自分の勉強不足を棚に上げて書きます。
 開き直りかもしれないにしても、要するに世界中が同じようなものだったのだと思います。金融市場での業務経験、業務知識が10年以上ある人々でもここ数年で急速に幅をきかせるようになったクレジット市場、クレジットデリバティブ市場というものに関しては今ひとつアップデート出来ていなかった・・・・・・・・先ずはこの部分を反省し、謙虚に認める事が今回の金融市場混乱の根源を理解するうえで必要不可欠なことでしょう。

マスメディアと言うものが、世間一般且つ広域な影響を与える事象、それらの利害に直結する情報を報道・伝達する事を目標とするものであるとしても、株高・株安、円高・円安、最近では原油価格にも言及していれば良いほうで、クレジットスプレッドが拡大したとか縮小したとかまで報道するところはなかったと思いますし、報道判断の前提としての世間一般が興味を持っていると言う条件を明らかに満たしていなかったのですから当然と言えば当然なのです。

長くなりますが、今回の混乱の震源地が、まさにこの世間一般は元より、金融市場関係者でも大部分が極限定的な関与しか持たず、情報チャネルも極度に限られたクレジット投資という領域におけるバブルの崩壊であった事が混乱に拍車を掛け捲っていると言う状況である事は間違いないでしょう。

”火事だ” と誰かが叫びました。でも大火災なのか、小火(ぼや)なのか、そもそもどこが火事なのか全くわからない。自分の現在地は安全なのか避難の必要があるのか、家族は・・・? そういう状況下で周りを見ると、情報を持っているのか持っていないのかわからないけど、人々があちこちで動き出している。立ち往生して周囲を見渡しているだけの人も居るが、お互いに情報を交換するでもない。

そんな状況で、取り急ぎ必要最小限の荷造り、食料や・・そう現金の確保もしておこう。株券や預り証などのペーパー資産も出来るだけ現金化して手元に確保しておこう。 

世界中が、こういう状態に陥ったというのが8月前半から特に中盤にかけての出来事でした。

次稿では、標題にもしましたが、実際には何がバブルだったのかを考察します。

2007年8月25日土曜日

Samurai investors made a statement this week.

今週の金融市場は、現象面としては見応えがあり、実務面としては"どっちらけ"と言う展開となりました。

ヘッジファンドや金融機関が保有する米国サブプライム債権へのExposureによる巨額損失がまだまだ露呈しそうだと言う緊張感に加えて、お盆休暇明けで復帰する本邦勢、特に輸出企業によるパニック的な円買いにより週初から円が急騰してそれが世界株安に拍車を掛けるのではないかと言うシナリオを多くの海外勢が共有し、月曜日の東京市場のオープンを待ち構えていました。

でも、そうはならなかったのです。先週の恐慌的な大相場は、今週初から加速するどころか徐々に反転してやがては値幅を拡大したのですが、今週はちょっとしたReversalタイムだったと言えるでしょう。
 ドル円で言えば6月の124円14銭の高値から先週111円61銭まで急落していたのですが、今週は木曜日に117円台まで反発、金曜日には一旦115円台まで反落しましたがNY市場で反発し、週の終値(週足といいます)も116円半ばでした。

先週の金曜日にFRBが公定歩合の引き下げを発表してパニック状態にあった金融市場の沈静化に乗り出し、これに呼応して欧米の主要金融機関がDiscountWindow経由で短期資金を調達してFRBの措置の実効性をアピールするなど官民一体となった混乱収拾努力が功を奏したという側面があるのですが、ここで日本勢の果たした役割は全く影の功労者的な隠し味となったと私は感じます。

仮定の議論は最小限に留めるにしても、週初に海外投機筋の思惑通りに本邦輸出勢がパニック的な円買いに走っていたら、実は相当えげつない展開になっていたのではないかと私は思います。
 実はこのパニック的な動きは一部の輸出勢からは出ていました。しかも注文通り朝一番での動きだったと思います。恐らくはそういう動きも想定していた邦銀勢は自らの玉も乗せて市場に売り圧力を掛けたのでしょう、週初の円高はちょっとした勢いもあり、この時点では海外投機筋もハイタッチモードに入っていました。

ところが・・・・どっこい大作・・・・・

ここから意気消沈していたはずの本邦投資家が動き出し、呼応するように6月までの円安局面では意気消沈していた輸入税も徐々に活動に動き出したため、これら円売り外貨買いの動きが徐々に市場を反転させる格好となりました。
 そしてこの動きが継続する中で、前半は静観していた海外勢が少なくとも短期的なシナリオの変更を余儀なくされた格好で週の後半には彼らが期待していた本邦輸出勢の代わりに慌ててリスク縮小を迫られて市場は株高、円安と言うバイアスを強めたまま週を終えた格好です。

お盆明けの本邦勢の血の匂いを嗅いで戦場の兵士化していた海外勢が、逆に自らの出血を隠しながら戦略的撤退を余儀なくされたと言うところでしょうか。

They smelled their own blood and ran for the nearest hill.

ある場所にはそのように書いておきました。洪水や大雨の時には高台に避難する事が語源と思われる "Run for the hill" という英語表現は、金融市場では想定外の状況となった際や先が全く読めないような時にとにかくポジション、リスク量を縮小すると言う意味で頻繁に使用されます。
別稿でも書こうと思っていますが、海外勢は大きな相場観は全く変えておらず、どこかでまた次の大きな波が来て世界的な株安と大円高が実現すると思っており、今回の撤退は予想以上の調整幅に短期的な撤退を余儀なくされた程度の認識なので、"nearest hill" という表現にして置きました。

このまま当局の思惑と世界中の投資家の希望するとおり事態が収拾していくのか。或いは今週の動きはかつて関ヶ原の合戦で西軍が東軍を大幅に後退させて東軍への寝返りを密約していた小早川秀秋隊が密約の反故をすら検討したような大き目の調整局面でしかないのか・・・・・

いよいよ金融市場のバトルは、注目の秋場所に入る感じでしょうか。どちらにしても荒れそうなので座布団を用意してしっかり観戦しましょう。

2007年8月19日日曜日

The last man standing: もう1つの本丸

これは心から驚くべき事であり、敬意と賞賛以外の感情は待ち得ません。

Old soldiers never die, they just fade away.

老兵は死なず。ただ消え去るのみ・・・と言ったのはマッカーサーだったと思いますが、この人の場合は
The old investor never dies, he is always there standing firm. とでも称えれば良いのでしょうか。

Oracle of Omaha.(オマハの賢人)という愛称をも持つWarren Buffet氏の事です。

普段から優良銘柄の購入対象をリストアップしておいて、市場で予想外の事象が起きて相場全体が文字通り糞味噌一緒に値下がりする局面で人々が恐怖感から損切り覚悟で放り出す優良銘柄を拾い捲ると言うValue投資の大御所的カリスマですが、今回の大幅な下げ相場の中でこの人の凄さが際立っているのです。

今回もこの人が株を買い捲っていると言う事ではなく、恐怖感から何をして良いかわからなくなった投資家たちが助けを求めるようにこの人にお金を差し出していると言う図式が見えるのです。

数字で示すとこうなります。株価の下落が加速し始めた7月16日の週からの丁度一月ほどの期間のデータです。

Dow jones ▲7.3%
S&P500  ▲8.0%
Berkshire Hathaway +3.2%

このBerkshire Hathaway というのは、Warren Buffetの経営する投資会社の株です。前稿では世界中の株式市場が下げる中で涼しい顔をして来た中国株をGlobal Investorの最後の砦であり本丸であると書きましたが、今回の騒動の大元であるSubPrime問題の震源地でもある米国の株式市場における同社株のパフォーマンスの異常ともいえる突出振りは説明の必要はなく、まさにもう1つの本丸であると言えるでしょう。

株式市場に投資をしている人は、利用しているWEB上で、そうでない方でも例えば http://www.cnbs.com/ 上などで銘柄コード(Symbol)→ brk.a という銘柄を指定してチャートをご覧ください。

一株が118,500ドルという水準で金曜日の取引を終了していますが、これは同社の株価としても52週高値を更新するレベルです。強調しますが、この状況下で高値を更新する銘柄と言うのはカリスマと言う以外に形容のしようがあるのでしょうか?恐らく一株で10万ドル以上と言うのも依然この会社だけではないでしょうか。
 彼は木曜日の夜にインタビューされて、"Every turmoil is a great opportunity"という名言を吐いているのですが、これも多くの投資家をして自分は最早ノーアイディアだけどこの人に任せれば何とかなるのではないかという気持ちにさせたのかもしれません。

Value投資の保守本流と言って良い同氏の数ある名言の中で、好きな言葉の一つに以下のような発言があります。

The price is what you pay, the value is what you get.

投資という意味でも重みのある言葉ですが、人生の全てにおいて拡大適用出来るし、自分なりの解釈で運用する事も出来ると思っています。

例えば、10人が同じ物を同じ値段で購入したとすると、各人が支払った金額は1つでもそれぞれが得た効用は10通りであると読む事も出来るし、失敗を教訓として生かすと言うような局面でもそこから何を学び取るかは各人次第であると言う意味でも使えるでしょう。

こういう深みのある言葉が、薀蓄とか含蓄とかいうのですかね?

人生でも投資でも自分の価値観を磨いて成長し続けたいものです。

その蓄積があれば、Buffetのように老齢になっても難局でこそ真価を発揮できるようになるのでしょう。

カリスマValue InvestorのValueの凄み。 今回はそんな話でした。 

頑張りましょう。

デリバ vs デレバ

今回の金融市場の激震は、98年のLTCM(Long Term Capital Management)の崩壊と比較される事が多いのですが、確かに多くの共通点があることは間違いありません。

LTCM崩壊過程の詳細についてはいくつか文献も出ていて興味深いものがありますが、私個人の実体験的な記憶としてはドル円が2日間で20円も下落し、しかもその大部分は1日目で下落した事です。あの時はオプション市場でドル円の一ヶ月物のVolatilityが40%台という史上最高値で取引された事を良く覚えていますが、今回は23%程度ですので狂気の中でも市場は随分当時より厚みを増したのだと感じる部分もあります。

勿論今回の値動きのほうが小規模で且つ時間を掛けているという事情もあるのですが、一方でより裾野が広く根も深い事象である事を考えると今後の動きには十分な注意が必要です。

今となっては新たな時代の到来とも思われた世界的資産上昇ユーフォリアは、Financial Technologyの進歩が生み出した過剰流動性がもたらすバブルであったと言わざるを得ないのでしょう。

"過剰"流動性・・・・そうこれが問題なのですが、所謂Globalizationの進む世界経済・世界金融市場を駆け巡る流動性が過剰かどうかは後になってみないと判断がつかないというところが問題なのです。

参院選の投票日であった7月29日の投稿で、"凸レンズの向こう側"と言う話を書きましたが、一部を再掲します。

所謂グローバリゼーションという現象の進行により、世界中が同じ土俵や尺度で語れる時代となった結果、企業活動や投資対象の幅も急拡大し、呼応するように信用創造、信用供与という機能も急速に強化拡大してきました。 世界資産バブルというのは、このような基礎・土台の上に成り立ってきたと言えるのですが、特に信用創造・信用供与機能の上昇が、レバレッジの拡大をもたらしていただけに、この部分を直撃したサブプライム問題は、レバレッジ機能の急速な収縮(=Deleveragingと言います)の引き金を引いたことになります。そう、皆がお金持ちになって世界中の資産市場で一大投資ブームが起きていたという理解は正しいのですが、実は本当の資本は投資額の数分の一、下手したら数十分の一程度であり、我々が年単位で目撃してきた巨大資本の激流は、実はデフォルメされた映像でもあったわけです。新時代の幕開けと思われたのは、凸レンズで拡大された映像だったと言う事になりますが、今はその凸レンズの向こう側からこちら側に資本が戻ると言う”資本還流、Repatriation”の動きが世界金融市場に暴風雨をもたらしているのです。

このレバレッジの反対である"Deleverage"または、"Leverage in reverse" という現象に関してその後より恐ろしい資料を発見しました。それはMorgan Stanleyによる分析なのですが金融テクノロジーの進歩がもたらす新規創出流動性は世界中の資産市場に怒涛のごとく流れ込む流動性の90%にも及ぶと言うものです。

90年当時300社ほどであったヘッジファンドは、今では1万社を超えており、その管理下にある運用資産はレバレッジ以前の元本で2兆ドル規模になっています。これらが金融テクノロジーの進歩、特にデリバティブと構造化(Structuriation)技術の進歩により、クレジット市場(信用市場)に劇的な拡大をもたらしました。
 CDO, CDS, CLO, CPDO, CDS of CDOs, CPPI ,LCDS・・・・正直私自身もこれらの全てを語る事は出来ませんが、多くが所謂Subprimeモーゲージをも含むこれらクレジット構造化商品が巨額の流動性(投資資本)を吸収し、その資産価値の上昇が新たなレバレッジを提供するという乗数理論的な拡大過程が創出する流動性が全体の90%を占めるとすれば、それが意味するところは中央銀行の無力化以外の何物でもありません。

従来は中央銀行がマネーサプライの調整という形で流動性をコントロールしながらインフレやバブルのリスクに対処してきたわけですが、それを警戒し続けてきた主要国の中央銀行がこぞって金融引き締めを 実施しても資産バブルが収まらなかった背景が、既に彼らがコントロール出来る流動性が全体の10%程度に落ちていると言う事だとしたらそれは物凄く恐ろしい事です。

残りの90%・・・・つまりは中央銀行のコントロール外にある流動性がDeleverageという加速度的な自己縮小過程に入ってしまったのだとすれば、世界中の流動性の枯渇は不可避であり、手元のCashが一番価値が高いという状況となれば新興国市場などは崩壊するはずです。

FRB,ECBを中心に世界金融当局はスクラムを組んでこのリスクを排除しに来ると信じますが、金曜日のFRBの公定歩合の緊急利下げは、タイムリーなシグナル効果を見せていると言えそうです。

DerivativeとDeleverage、このデリバとデレバという相互可逆過程の綱引きの中で来週からの注目点は、世界中の投資家達の最後の拠り所となっている市場が崩れるかどうかに掛かっていると思います。

それは、中国株、原油、貴金属、そして農産物系コモディティと言う事になるでしょう。
特に中国株はまさに投資ブームの本丸的な存在なので注目しましょう。そしてフェアに考えて、既に堀は埋められた状態であると考えるほうがよさそうです。全く油断は禁物です。

2007年8月18日土曜日

Let's remember how they "LIVED."

今週は結局大変な相場となりました。

この狂乱の大相場は世界金融市場の潮流を大きく転換させる動きの始まりを告げるものである可能性もあり、別稿で自分なりの分析もしてみたいと思います。
 
ここでは今週ずっと感じてきた事を書きます。

今週、特に懸念どおりXデーとなった水曜日以降に最も多く受けた質問や照会は以下のようなものでした。

①日本人はここからどうするか
②日本人はどうなっているのか
③日本の為替証拠金取引の人達はどこで損切りするのか(したのか)

Fear and Greed

元々恐怖と欲望に支配される金融市場ですが、今週のような緊急事態的な暴風雨の中では普段は理性的な人々までが完全に恐怖と欲望をむき出しにした状態となります。
 "臨戦態勢"と言っても良いのでしょうが、むしろHunam Natureの負の部分を丸出しにしたような印象を受ける事が殆どで今週の金融市場はまさに戦場と化していました。

米国のSubprime問題が表面化したあたりから主な関心は最後に傷付くのは誰かという議論だったように思いますが、世界中の投資家が非常事態を察して手元に資金を取り戻すべく出口に殺到し始めてからはこの怪我人探し一色になったように感じます。
 しかもそれは怪我人を探して救助しようと言うものではなく、怪我人を探してとどめを刺そうというくらいの後ろ向きなものであり、自分も傷付いている怪我人たちがより深手を負った人達を探して石を投げようとするというような、まさに阿鼻叫喚ともいえる状況となりました。

ここで私には1つのジレンマが生じました。

短期的な視野と利益のみを考えれば、一番楽なのは私も狂気に参加してしまえばよい事は明白でした。例えば実際に多くの海外ヘッジファンドからコンタクトがありました。日本人がどれだけ困っているか、泣き叫んでいるかを聞く為にです。彼らの殆どは血の匂いを嗅ぎながら日本の輸出企業、機関投資家、個人証拠金取引の投資家達などが今回の円の急騰でどれだけ大変な事になっているかと言う話を聞きたかったわけですが、そんな状態の彼らに私が話を合わせて、彼らが茫然自失で声も出ない状態だとか、Margincallに追いまくられて夜逃げが続出しているとか、直ぐ下に彼らの巨額の損切りオーダーがリーブされているというような囁きでもかませておけば、彼らは勇気百倍となって私は好かれ、またより多くのビジネスも取れた事は確実でしょう。

賢い選択だったかどうかは"神のみぞ知る"ですが、私はここでライフワークであるLighthouseに徹する事にしました。確かに輸出企業の多くは心配はしていましたがパニックはしていませんでしたし、機関投資家だってこれだけの円高は予想して居なかったにしても全くノーヘッジであったわけではないのです。そして一部の常識外のレバレッジ(100倍とか)の話が強調されて独り歩きしている個人の証拠金取引にしても、それは微視的な例外の話であり、多くは外貨預金の代替として身の丈に応じたサイズで外貨を保有していると言うのが実態であり、かつMarginCallもあるでしょうが運営会社による強制損切りルールなどでかなり早いうちに脱出しているケースも多いはずなのです。親しい友人がいる大手の一角を占める証拠金業者のモットーも"投機ではなく投資のサポートをする"と言う事であり、預かり資産評価額の減少が一定規模を超えると契約者の依頼がなくとも強制的に損切りをしてしまうという制度で運営されているのです。

"We report, you decide" これはFOXNews、"You give your time and we give you the world"というのはCNNだったと思いますが、私も冷徹にこれに徹する事で、海外からの照会に対しては血気にはやる先方の頭を冷やすような話をする事が殆どでした。
 これで怒り出す人も、呆れる人も、電話を切ってしまう人も居ましたが、そこは男芸者ではなくLighthouseである事を選択した時点で想定した事の範囲内ですから来週以降も方針は変えずに行きたいと思っています。

Lighthouseとして一言だけ言っておきたいのです。

金曜日のFRBの緊急利下げで足元は収束に向かう可能性もありますが、この暴風雨はまだまだ続き、且つどこかでより勢いを増す可能性すらあります。
 阿鼻叫喚の拡大に向けたリスクを取るのも良し、事態の収束と相場の反転に掛けるのも良しです。ただお互いにそれは自分の考え、判断、そしてリスクで行いましょう。正々堂々と世界金融市場という強い相手に挑戦しようではありませんか。
 痛手を負った勢力を追いかけてとどめを刺して武具や金品を奪い取るような落ち武者狩り的な視点でのみ動くのは申し訳ないけど見苦しいです。歴史的にもそんな連中は短期的な利益は得ても天下は取っていないはずです。

What do you really want?

こういう時ほど、冷静に大志と大儀を持ち続けましょう。
今日は久しぶりに見たラストサムライの最後のシーンでの明治天皇とトムクルーズの会話が心に刺さりました。

天皇 " Were yo with him at the end?"
トム  "Yes"
天皇 " Please tell me how he died"
トム " I will tell you how he lived"

In times of trouble, here is your LIGHTHOUSE.

Robert Henry.

2007年8月15日水曜日

The day of doom has come. But for whom?

いよいよ8月15日。

終戦の日でしょうか。実は今日はここ数週間Xデーとして注目され続けてきた運命の日です。

1 お盆休日で日本の特に東京市場の流動性が極端に落ちる。(可能性が高い)

2 米国債の償還と利払いが過去最大規模で訪れる。(100billon$とも400billion$とも)

3 世界的な株価調整で投資家の体力が落ちている。

4サブプライム問題で米ドルに不安がある。

主にこれらの問題で、場合によっては大変なドル売り・円買い方向のフロー(要するに円転)が出るのではないかという憶測があるのです。

前日となる昨日火曜日にも世界中から本件に関する質問を受けましたし、期待も不安も聞かれました。投機筋は一勝負してやろうという意欲満々で、輸出企業や投資家は心配して注目していると言う図式でしょうか。

実はそんな中で火曜日の夕方には全く反対のフロー、つまり円売りも出てきて我々を驚かせたのですが、どうやら火曜日までは117円台も固く、このままではあまり盛り上がりそうにないので他人より先に円のロングポジションを手仕舞っておこうと言う投機筋や、世間が円高期待をしているこのタイミングで新規海外投資用の外貨の手当てをしようという投資家も随分とたのではないか言う印象です。

実は今は午前5時過ぎで出勤前のシャワーを浴びる前に書いています。既に書きましたがこの夏には完全にバテ気味で毎晩帰宅後には思わずPCに向かわずに寝てしまう今日この頃なのですが、今晩も相場次第ではグッタリして帰宅する可能性もありそうです。

注文通りの円高となるか、カウンターの円売りが出て投機筋が絶叫の手仕舞いをする展開か・・・はたまた何事もないお騒がせで終わるお盆か?

通貨オプション市場のVolatilityの建値は、ドル円とクロス円のみが逆イールドで短期が長期を上回る状態となっています。これは、大突っ込みもあり、大戻しもありと言う乱高下に備えた状態ともいえますがこれから結果を見てきます。

Good luck to everyone today. Protect yourselves at all time.

2007年8月12日日曜日

SIMPLY PUT : Greenspan Put vs Bernenke Put

プラザ合意、Black Monday,LTCB危機、幾つかのテロや戦争など短期的な不透明感を背景に大きく下落した局面を全て含めて計算しても、米国の株式市場は取引開始以来平均して毎年10%の上昇を実現してきました。
 全財産を株式市場につぎ込んできた米国人がいるとすれば、この人の財産は大雑把に計算すれば追加投資をゼロとしても7年で2倍、14年で4倍、21年で8倍になる計算になります。私自身も米国に行くまでは気が付かなかったことですが、米国にあれだけの金持ちが居る最大の原因はここにあります。別にマイケルジョーダンやマドンナではなくても普通の人々のMillionairが多いのは普通に土地や株を買っていれば資産価格が雪ダルマ式に増えていったからというのが最大の要因であり、個人消費を原動力に繁栄を築いてきた米国経済には批判も多いのですが、ひたすら企業優遇で国民一人一人やサラリーマンは"生かさず殺さず"状態で多くの人々が不動産や株への投資で"しこっている"日本などとの比較においても公平に見て間違いなく評価出来る部分があります。
 個別銘柄で見ても、今や押しも押されぬ長優良銘柄のDellコンピュータを93年当時に1万ドル買っていたら、今ではそれがMillionになっていると言う庶民的なアメリカンドリームもあり、こういうところも実に見事だと思います。

さて・・・・・

今の金融市場は、"Bernanke Putはないのか?"と言う事が一大テーマになってます。FRBのBernenke議長のPUTとは何かというと、これには彼の偉大な前任者であり且つ恐らくは歴史上最も市場から信任されたFRB議長と言ってよいと思われるGreenspan議長時代に、"Greenspan Put"と言うものが存在したと信じられている事から説明する必要があります。

Putとは、Putオプションの事です。少し専門的になりますが、オプション取引には基本的にPutとCallがあります。ある資産に対して価格下落リスクをヘッジするにはPutオプションを購入し、価格上昇リスクをヘッジするにはCallオプションを購入します。 
 そしてさらに一般的なデリバティブ用語を使用すると、オプションとは購入者の資産価値にFloorを設定し、資産価値の下落に歯止めをかけてくれると言う効果があります。

Greenspan議長時代のFRBの金融政策には幾つかの特徴がありましたが、中でも重要なものの1つに強面のインフレファイターに徹する欧州各国の中銀や日銀とは対称的に、Progrowthに徹した金融政策を挙げることが出来ます。
 他の中銀に比べて景気拡大時、資産価格上昇時の利上げには非常に慎重である反面、景気減速時や特に想定外の事象による資産価格急落時などにおける金融緩和には極めて迅速果敢という運営により米株市場を筆頭に資産価格一般にFloorが設定されたような状況が続き、上述のとおりFloorの設定はPutオプションですから投資家心理として、やがて一定以上の価格下落はGreenspan議長が止めてくれるという安心感が醸成されていきました。このGreenspan議長の存在そのものがPutオプションのように考えられた事から、いつの頃からか、"Greenspan Put"と言う言葉が出来たのでした。

Wall Street出身のGreenspan前議長とは違い、学者畑出身のBernenke議長は同じように資産価格をプロテクトしてくれるのかどうかという期待と不安の入り混じった不安定な心理状態に覆いつくされたような米株市場において、最近よく聞かれるのが、"Looking for Bernenke Put"という議論だと言うわけです。

経済も金融市場も表向きはFundamentalsとTechnicalな要因で動きますが、底流まで覗いてしまえばそこにあるのは、人々の欲望と恐怖が渦を巻いているわけですから、実体経済のコントロールは身の凄く難しい事だと思います。恐らくは世界経済及び市場全体が得体の知れないサブプライム問題に揺れ動く現状において、Bernenke議長はその事を痛感しているのではないでしょうか。Putオプションを最も欲しているのは、実は彼なのかもしれません。

元ヘッジファンドマネージャーで今では多くの投資家のGuru的な存在であるJim Cramer氏が、全く利下げに動こうとしないBernenke議長を無能者呼ばわりした絶叫ビデオは先週のYouTubeのアクセス件数トップだったようです。

面白いので是非覗いてみたらいかがでしょうか?
http://www.youtube.com/watch?v=rOVXh4xM-Ww

とにかく金融市場はここ数年で最も難しい局面に来ています。

十字架のメッセージ?

子供が購入する切符の値段を間違えた事、レストランで自分のオーダーのサーブが遅く、先にサーブされた家族全員が食べ終わってもまだ来ない上にウェイトレスがデザートのオーダーを取りに来た事・・・・・不断なら笑って書き物のネタにでもしてしまうような出来事が妙に頭に来てしまった一日でした。誰にでもこういう時はあるのでしょうが、自分はまだまだ未熟だと感じながらこれを書いています。

"買って驕らず、負けて腐らず、千葉は木更津" 

傍から見て勝っているか負けているかが態度や表情からわかってしまうディーラーは三流であるとか、「今日の俺は機嫌が悪いから怒らせるなよ」という類の公私混同で周囲に特別な気遣いを要求する上司はその資質なし・・・・常々そのような事を考え、言葉にも文字にもして来た自分自身の特に家庭内での振る舞いを見直せざるを得ないように思います。

Heat breaks my Heart.

各地で連日報道される水の事故に加えて、熱中症による死亡というのが増加していますが時折ならまだしも連日気温が40℃弱まで上昇する今年の夏は流石に浦島太郎には辛いものがあります。
 日の出も早いので、早朝の4時くらいからカラスに加えて、なんと・・・セミがうるさく鳴き叫び、これでWeekdayの朝は大抵目覚まし時計のベルより先に起こされます。 完全な言い訳ですが、こう暑いとイライラしてしまうのは私だけでしょうか?

木曜日に最後の船便の荷物の配送を受けて懐かしい絵画やキルトなどが合流しました。DVDプレーヤーも届いたので数駅先の大きな電気屋さんに配線ケーブルを買いに行ったのですが、日中の外出は自殺行為にも思えて薄暗くなってから出かけました。それでもサウナの中のような熱気の中で妙に切れやすいオッサンに成り下がってしまったと言うのが今日の出来事だったように思います。

私は気持ちを落ち着かせる必要のある時や自身の未熟を感じる時、そして他人の為に祈る時にはいつも携帯しているお守りと十字架を握り締めます。自己流の宗教ミックスという感じですが、本日も反省モードでそれらを探すと、十字架がないことに気が付きました。

WTC(ワールド・トレード・センター)の十字架というのはご存知でしょうか?
2001年9月11日のテロによる同ビル崩壊後の所謂グランドゼロの地から、同ビルの梁の一部だったと見られるH鋼の破片が十字架状となってしかも直立した状態で見つかって話題となったものです。
 しかも縦横軸の寸法比が、キリスト教の十字架のそれとほぼ一致していることもわかり、今でもグランドゼロの近郊に展示されていると思います。

WTCのほぼ向かいにはNY市内では最古の教会である聖パウロ教会がありますが、私はNYを離れる時にその教会で購入したWTC十字架のレプリカを携行しているのですが、何故か今日はそれが見当たらないのでした。毎日家を出る時には必ず持って出る物ですので、自宅に置き忘れた可能性は低く、どこかで落とした可能性が高いのでとても心配になりました。

そんな話は家族には黙ったまま帰途に着きましたが、電車から降りて最寄り駅の改札を出た少し先で私は無事に自分の十字架を発見しました。

物理的には子供の切符を買う為に財布を出した際に落としたものなのでしょう。でも私には二つの考えが浮かびました。一つ目はこれを落としてしまったために私は切れやすくなってしまったのかもしれないと言う事。二つ目はたかが子供の切符の金額間違いを怒ってしまった私に愛想をつかした十字架が私から離れたという事でした。

いずれにしても、何かこの十字架からメセージが送られてきたような気がしています。

Cross my heart, I'll be a batter man.

crossと言う単語は形容詞で使われると、"切れやすい"と言う意味にもなるのは偶然でしょうか。

とにかく暑い一日でした。

2007年8月4日土曜日

YEN CARRY⇒円借り : 鈍感力⇒ DON'T COUNT?

案の定・・息子が漢字で苦戦中です。

誕生して以来4thGraderになるまでずっと異国にいたのですから無理もない部分もあり、かつて父親である私も漢字が苦手でテストで零点を取った事もあると言う話をして励まして置きました。

今更詰め込み作戦は意味がなく、上手く興味を持たせるように仕向ける事さえ出来れば子供は直ぐにCatch-up出来るだろうと思っているのですが、そんな作戦が功を奏したのか最近は興味を持ち始めてくれたようで新しい漢字を覚える所要時間が随分短くなってきたようです。

そういう状況だからこそちょっと困るのが”当て字”というやつです。

歌や映画などの題名に使用する漢字に作品のコノテーションを織り込ませる目的で本来とは違う読み字を当てると言うやつですが、こういうのって日本語を勉強中の外国人や感じで苦労する帰国子女などには誠に迷惑な話であると思います。

例えば、漢字に興味を持ち始めた子供がテレビを観ていて、字幕などで知っている漢字が出てくると嬉しいし、新しい漢字には興味を持ったりもしますが昨晩はテレビ番組でやっていた”離婚を決意した瞬間”というコーナーで最後の”瞬間”という漢字にわざわざ”とき”という振り仮名を付していました。

おい、プロデューサーさんよ、ああいうのはややこしいし、迷惑なんだよ。

閑話休題

逆に”上手いな~”と感心する例もあります。ほぼゼロ金利である日本円を調達原資として主に外貨建て資産などに投資する手法をYEN CARRY(円キャリー)トレードと言いますが、ある時一部で”円借り”という当て字が使われ始め、今ではすっかり定着してしまいました。
 もしかしたらこれは考え付いたと言うよりは誰かが勘違いして”円キャリー”を”円借り”と思い込んで確信犯的に使っていたものがあまりにも意味的にも近いのでそのまま定着したのではないかと個人的には推理しているのですがどうなのでしょうか。

最近日本で流行しているらしい言葉に”鈍感力”というものがあります。
月並みに言えば”くよくよしない”とか”受け流す”能力と言う事ですが、一歩踏み込んで積極的に鈍感になれと言うところが微妙に新しいというところかと思います。

実はここ数年は投資の世界でも調整局面で慌てて逃げずに踏みとどまった人達が勝ち残っていると言う状況になっており、株式でも為替のクロス円でも完全に鈍感力が求められる相場が続いてきました。
このじたばたしない能力、逃げない能力、さらには気にしない能力が鈍感力である訳ですが、これはある意味では、どのくらい相場が調整したとか、自分の保有ポジションがピーク時からどのくらい減価してしまったとかをいちいち勘定しないと言う事でもある訳ですから英語で言えば”DON'T COUNT”と言える事に気が付きました。これは発音も鈍感に近いのでちょっと面白いと思っています。
 そもそも鈍感力という日本語のコンセプトは英語では説明しにくいものですので、質問される機会でもあれば、音感も良く似た”DON'T COUNT”の事だとでも言っておこうかと考えています。

゛円借り″の域には及びませんが、他にもこういう面白い例は探せば見つかるかもしれないですね。そんな暇はないけれど・・・・・・・

BULL vs BEAR in DOG days of summer.

金融市場には強気派と弱気派がいます。前者は相場が上昇すると予測している人で、後者は相場が下落すると思っている人です。英語では、強気派をBULL、弱気派をBEARと言いますが、このうだるような真夏日が続くなかで両者の戦いは文字通りHEAT UPする一方です。

金融市場では米国のSub-Prime Loanの延滞率上昇に端を発した複数のヘッジファンドや金融機関の巨額損失の話を背景に最終的には投資家のリスク縮小→ポジション清算の動きから世界中の資産価格の大幅反落への恐怖が蔓延してちょっとした騒ぎが継続中です。
 この動きの中で元々世界中に過剰と言われる程の流動性(=安価な投資元本とでも思いましょう)を提供してきた日本円には資本逆流による上昇バイアスが強まっています。

こんな背景から世界中の資産市場価格と為替市場での円安はほぼ完全な正の相関関係にあり、最近は資産価格(特に株式市場)の下落と円高の動きが同時に起きて世界中から悲鳴が上がるというパターンが目立ってきました。

ところで、BULLとBEARは長年の付き合いの中で相手方の強みも弱みも知り尽くしています。世界的投資ブームでしばらく守勢に回ってきたBEARは、ここで一気に攻勢をかけてBULL陣営を攻略しようとしているのですが、少なくともこれまでのところどうも攻め切れていません。

規模の大きいヘッジファンドからですら「どうもしっく来ないね」という違和感の声が聞こえてきますが、私はここにBULLとBEAR以外の新興勢力(?)としての”DOG”の存在を感じています。(真面目よ)

Pavlov's Dog(パブロフの犬)というのは、条件反射の実験でパブロフ博士が一定期間ベルを鳴らしてから犬にえさを与えると言う行為を繰り返したところ、やがて犬はベルの音を聞いただけで涎を流すようになったと言う話ですが、年単位で一方向に継続してきた株式市場の上昇や円安の流れを潜在意識に刷り込まれてきた新興投資家勢力がパブロフ博士の犬のように相場の反落局面で怖がるどころか狂喜乱舞して買い注文を入れてくると言う現象が発生しているのです。

この新興投資家勢力が塊として持つ総合力は、最早大規模なヘッジファンドなどをも踏み潰して相場の流れを変えてしまうくらいの力は充分にあると言えるのですが、自分たちが売り仕掛けても相場が下がると食いついてくるDOG軍団を当初は馬鹿にしていたBEAR軍団も相手がもしかすると大きな群れを成す狂犬集団かもしれない事に気が付いてやや腰が引けてきたというのが現状でしょうか。

冒頭に書いたとおり、奇しくもうだるような真夏日が続く盛夏の季節にBULL対BEARの戦いがHEAT UPしていますが、この盛夏、真夏というのは英語では、”dog days of summer"と表現されます。

BULLS、BEARS AND DOGS 

これで陣営が出揃ったとするならば、我々はどこに加勢しましょうか?

A heated battle continues between BULLS and BEARS in DOG days of summer.

今日はそんなコンセプトで書いてみました。

The heat is upon us. : 我々にとっても試練の時ですが頑張りましょう。