2007年8月26日日曜日

金融工学バブル(前編) : サブプライム問題の"そもそも論"

今回の市場の動乱については、色々と考えさせられる話が多いのですが、同時に少々良くわからない部分も残ります。
 もともとは金融市場といえば①資本市場、②商品市場、③為替市場 に大別されて、①の資本市場の中身は金利市場(債券市場)と株式市場に分かれていると言うのがBig Pictureであり、取引手法的な切り口でそれぞれがListed(上場)とOTC(店頭)に分かれていると言うことを理解すれば入門編は終了と言う構造でした。

しかし・・・そうですね・・・インターネット、E-mail、携帯電話、PCのWindowsだってそうでしょう・・・・絶え間ない技術革命というものが今では当たり前の存在となっているこれらの産物を過去10年程度の間に世に出して普及させたのと丁度同じように、金融の世界で新しく登場し、急速に普及したのが"クレジット"というコンセプトだと言えるでしょう。

勿論、クレジットカード等というものは商品化されていたので、全く新しいものではないにしても、それが投資の可否を判断する基準から、投資対象そのものへと進化したのはこの10年程度と考えて間違いないでしょう。クレジット投資、クレジットデリバティブ・・・・そんな言葉は比較的新しいものなのです。

会社は違いますが、数年前に為替とオプションのトレーディングからオルタナティブ投資業務に移った学校の後輩が、クレジット市場というものを理解しないと投資先のヘッジファンドなどが何をやっているのかが充分に把握出来ないという話をしていました。私がかつて米国から発信していた金融レポートも金利債券、株式、商品、為替の解説であり、クレジット市場を全くカバーしていなかったのですが、彼はついでに私のレポートも"不完全である"と切り捨てていました。誠にいい奴です・・・・・

そんな自分の勉強不足を棚に上げて書きます。
 開き直りかもしれないにしても、要するに世界中が同じようなものだったのだと思います。金融市場での業務経験、業務知識が10年以上ある人々でもここ数年で急速に幅をきかせるようになったクレジット市場、クレジットデリバティブ市場というものに関しては今ひとつアップデート出来ていなかった・・・・・・・・先ずはこの部分を反省し、謙虚に認める事が今回の金融市場混乱の根源を理解するうえで必要不可欠なことでしょう。

マスメディアと言うものが、世間一般且つ広域な影響を与える事象、それらの利害に直結する情報を報道・伝達する事を目標とするものであるとしても、株高・株安、円高・円安、最近では原油価格にも言及していれば良いほうで、クレジットスプレッドが拡大したとか縮小したとかまで報道するところはなかったと思いますし、報道判断の前提としての世間一般が興味を持っていると言う条件を明らかに満たしていなかったのですから当然と言えば当然なのです。

長くなりますが、今回の混乱の震源地が、まさにこの世間一般は元より、金融市場関係者でも大部分が極限定的な関与しか持たず、情報チャネルも極度に限られたクレジット投資という領域におけるバブルの崩壊であった事が混乱に拍車を掛け捲っていると言う状況である事は間違いないでしょう。

”火事だ” と誰かが叫びました。でも大火災なのか、小火(ぼや)なのか、そもそもどこが火事なのか全くわからない。自分の現在地は安全なのか避難の必要があるのか、家族は・・・? そういう状況下で周りを見ると、情報を持っているのか持っていないのかわからないけど、人々があちこちで動き出している。立ち往生して周囲を見渡しているだけの人も居るが、お互いに情報を交換するでもない。

そんな状況で、取り急ぎ必要最小限の荷造り、食料や・・そう現金の確保もしておこう。株券や預り証などのペーパー資産も出来るだけ現金化して手元に確保しておこう。 

世界中が、こういう状態に陥ったというのが8月前半から特に中盤にかけての出来事でした。

次稿では、標題にもしましたが、実際には何がバブルだったのかを考察します。