2008年12月28日日曜日

What we should appreciate most..........


日本では何故かクリスマスイブが盛り上がるようなのですが、海外では飽くまでもイブはイブでしかなく、クリスマス本番の25日こそが最重要イベントとなります。正月は元旦しか休まない欧米の多くの地域ではこのクリスマスこそが家族が集うとても重要なイベントと言う事になります。

私は思うのですが、今年は家族や親戚が集まった時に景気後退の影響を強く受けてしまっている人が少なからず含まれていて周囲がしっかりサポートしていこうと当人たちをEncourageすると言うようなシーンがかなり多かったのではないでしょうか。

どうしても米国が目立つのですが、不景気の波は世界中を席巻しており、日本でも多くの企業が競うように特に非正規雇用者の方々をLay-offしていると言うニュースが取り上げられています。企業サイドも生き残りに必死な訳ですが、最早そこには"家族的経営"、"終身雇用"、"年功序列"など日本独特の人事・雇用慣行と言うものは影も形も消えうせているかのような印象すらあります。まだこれから3月までに契約解除が見込まれる非正規雇用者が8万数千人という報道を見ると尋常ではない事が分ります。

日本を代表する世界に誇る優良大企業トヨタ自動車ですら2007年度の史上最高益から2008年度が赤字決算という異常な急降下ですので雇用側も異常事態に必死で対処していると言う事なのでしょうが・・・・・・

このクリスマスのコンセプトは、LoveGiveな訳ですが、これを世界中が再確認してもう一度足元を見直すきっかけとならないかと思ってしまいます。

サンタクロ-スの起源には、諸説ありますが、どれか一つが真実という事ではなくそれらの伝説の集合体がサンタクロ-スを生んだという話なのかもしれませんが、そんな中でも有力な説の一つが、聖ニコラスという司教の逸話です。

彼が布教していたある村で、貧しさのあまり娘を売りに出さなくてはならなくなった家庭を人知れず助ける為に、その家の煙突から金貨を投げ入れたところ、そこに吊るしてあった(=干してあった?)娘の靴下に金貨が入り、そのお陰で娘は身売りをしないですんだというお話があります。

この「聖ニコラス」というのがどういう訳かオランダ語読みで「ジンタクロ-ズ」となるらしく、マンハッタンを含む米国のオランダ人入植地でサンタクロ-ス伝説が広まって世界中に拡散していったというシナリオなのですが、英国などでももともとは、サンタクロ-スではなく、ファ-ザ-・クリスマスという呼び方が一般的だったようですが、こんなところにも米国流が世界標準となっていったようです。

この聖ニコラスを崇めるギリシャ正教の教会である、”聖ニコラス堂”というこじんまりとした教会がかつてはワ-ルドトレ-ドセンタ-の御向い(バッテリ-パ-ク側)にありました。駐車場の管理人小屋くらいにしか見えない教会だったのですが由緒ある聖ニコラスにまつわる貴重な品々も置かれていたようです。この建物は2001年の9/11テロで破壊されてしまいましたが、このLove&Giveというコンセプトは今こそ力強く復活して欲しいと強く思います。

煙突は家族を暖め、サンタを迎え入れる愛の導管から、経済を拡大させる一方で二酸化炭素やスモッグをばら撒く機関へと主な役割を変換してしまった産業優先主義に調整と見直しが求められる中で我々一人一人が考えるべき事も多いように思います。

個人的な話ですが、図らずも12月に入り私の周辺で立て続けに生命のはかなさを思い知らされる事象が続き、何事も当たり前ではなく在り続けてくれる事を感謝するべきものなのだと言う思いが強まりました。

これを読んで頂いている皆様とご家族に神の愛と御加護が在ります事を心からお祈りいたします。
Be it ever so humble, there is no place like home and nobody like you.

2008年12月21日日曜日

When Deserts Have Snow of Vanity...

先週後半は、実に30年振りにあの常夏の街ラスベガスに降雪があったという異常気象でしたが、結局東海岸でも大雪となりNY辺りも大変な事になっていると言う連絡がありました。雪嵐が来るということで学校などは朝から休校となったようですが出勤しなければならなかった人々は大変だったのではないでしょうか。

そう言えば今年はイラクのバグダットにも降雪があった筈ですが、あちらは確か100年振りだったようです。なんという年なのでしょうか2008年というのは・・・

2008年は年初直後から3月までが大荒れ、4月~6月の調整過程を経て7月以降が再び大相場となりました。ファンド業界の壊滅的凋落、株式市場、商品市場の崩壊的下落、新興国経済の後退、中国、アジアの失速、Wall街のビジネスモデル(投資銀行というやつですね)の崩壊と消滅(全て破綻か普通銀行へ転身してしまいました)、そして大部分の市場参加者の予想に反する米ドル急上昇などの波乱に次ぐ波乱という年だった訳ですが、天候の方も数十年振りというレベルの事象が頻発していると言うことでしょうか。

やはり全ては包括的な天のシナリオの時間軸の中で起きている事なのでしょうか? 個人的にはそのような感慨が強まるばかりです。そしてその枠組みの中で今年に入ってから自分自身や自分の身の回りで起きた事を見直してみると時空を超えたメッセージが読み取れる・・・・? なんて事もあるのかも知れませんね。


さて、先週の金融市場ですが、週初からいきなりFOMCがやってくれました。1%まで引き下げてきたFF金利(Fed Fund Rate)を大方50bp、一部が75bpという予想利下げ幅を飛び越えて誘導目標金利を0%0.25%に設定すると言う事実上のゼロ金利政策への転換を宣言し、住宅市場のサポートとして大量のエージェンシー債やMBSを購入する旨も明記してバランスシート拡大という米国型の量的緩和政策を明確にしました。


ややこしいので補足すると、これはかつて日本が行った「量」を目標とする量的緩和とは異なるアプローチであり、FRBのバランスシートの拡大は市場機能の目詰まり現象により機能停止状態となったアセットに直接息吹を吹き込んで機能回復を働きかけると言う手法です。

これで追い込まれたのが週末に政策決定会合を控えていた日銀サイドでした。世界中が手本のように考えているかつての日本のゼロ金利政策と量的緩和と言うアプローチについては、政治サイドやMOFサイドが国際舞台で日本の経験をアピールするのとは対照的に日銀サイドではどうも悪夢の記憶として位置付けられているかのように見えます。


FOMCの大胆な踏み込みに加えて、大幅に悪化した日銀短観という材料を抱えながらも日銀内部にはゼロ金利や量的緩和はおろか今回既に0.3%しかない政策金利を更に引き下げると言うことにすら大いなる抵抗があったようです。


かつてのゼロ金利や量的緩和は飽くまでも異常な状態であって、その後の正常化プロセスには多大な時間とコストが掛かったというトラウマからイデオロギー的に拒否反応があるというところでしょうか。


JGB市場は完全に利下げを織込んでいたのですが、二日間の日程の初日を消化した時点でどうも雲行きが怪しいという話が出た為に二日目に入り市場の織込みは60%くらいに後退するという動きとなりましたが、結果として政治サイドと日銀サイドの妥協点だったかのような0.2%の利下げ(0.1%だけ残しました)と予想通りのCP買取および輪番オペの拡大と言う結果となりました。


記者会見では「ゼロ金利とは違うし、量的緩和でもない」、「長期債の購入はするが長期金利を低下させる意図は無い」等と相変わらずイデオロギー論を展開していたのですが、円債市場からも言動不一致が指摘されるなど評価はお世辞にも高いものではなかったようです。


大きな注目を集めた上で結婚式と披露宴までやっておいて、記者会見で実はこの人が好きな訳ではないとでも言ってしまったかのような印象を私も抱きました。


さて・・・・・

世の中で起きた事は、なんと言っても①米国債バブル、②ユーロバブルの二つでしょう。



①の米国債バブルですが、かつてGreenspan議長が短期金利(FF金利)をいくら引き上げても長期債が買われて長期金利が低下してしまうジレンマをConundrum(難問)という言葉で表現した事に対するウルトラC的な対応としてBernenke議長はバランスシート拡大の中で長期債の購入等にも道を開いて長短金利差のイールドカーブその物を金融政策の操作対象としてしまいました。これを受けて一部でマイナス金利なども話題となった米国債市場のバブル的な上昇は継続中です。


 


 この角度はバブル・・・ですね。

②のユーロの上昇ですが、正式には乱高下と言うべきでしょうか・・・


週初のFOMCの決定後に加速したユーロ上昇は凄まじい勢いでした。



今年のユーロの動きをおさらいすると最高値が1.6038715日)、最安値が1.23291028日)で、そこから徐々に切り返してきた相場が今週加速したわけです。


1210日⇒1.30回復。1215日⇒1.35回復。1216日⇒1.40回復。1218日⇒1.4720まで上昇。1219日⇒1.3819まで下落。


上昇も凄いのですが、最後は一日で900ポイント以上の反落をしています。


米債といい、ユーロといい・・・どうですかこれ?


砂漠に雪が降る時にはこういう事が起こるのでしょうか。英語では滅多に起こらない事の例えで、When hell freezes over(灼熱の地獄が凍る時に・・)という表現を使う事がありますが、今後は、When deserts have snow等と言ってみようかという気になる一週間でした。

この雪はちょっと虚しいのですが・・・

2008年12月15日月曜日

Take A Closer Look 3

今日はもうすぐ寝ますが、最後に馬鹿な話を一つ。

Take a closer look にかけた話です。

私はメタボリック症候群の予備軍であり、BMI値とかいう体重(kg)÷身長(メートル単位)の二乗を計算してもほぼボーダーラインである25近辺を彷徨う数字が出てきます。

そこで普段は出来るだけ早く退社をして一つ二つ手前の駅で電車を降りて家まで歩くようにしているのですが、週末も子供を帰国子女向けの英語教室に送っていった後に隣町の図書館まで歩いてそこで時間をつぶす事が多いです。

実は、その道すがら・・・・のことなのですが・・・

初めてこれが目に入ったときは、思わず目を惹かれました。オオ~!と言う感じです。


男と言うのはま~その程度の生き物ですね。







これで足早に近寄って正体を確認すると・・・・・・・







な~んだ・・・

男と言うのは、ま~その程度の生き物ですね。

Take A Closer Lookシリーズは一旦終了です。

2008年12月14日日曜日

Take A Closer Look 2

何事も本当の当事者やインサイダーで無い限り、物事の全体像を把握することは不可能であり、我々は与えられた、或いは必死に集めた部分像を元に全体像を類推して動くと言うことを繰り返しています。

ただ、時には中途半端にパズルのピースを持っているが為にかえって全体像を誤ってしまうとか、真実から遠ざかってしまうと言うこともあります。

前回書いた雇用統計と株式市場の関係等はその好例ですが、今回はもう少し裾野を広げて別の角度から少し意外な事実をお話します。

先ずは、如何に今年の金融市場のVolatilityが高いかと言う点です。

歴史の浅い通貨オプションの世界では、これまでは97年、98年のアジア通貨危機、ロシア危機、そしてLTCM崩壊時のImplied Volatilityが最高値だったのですが、今年は遂に多くの通貨ペアで当時の水準を上回る水準での取引が確認されており、オプションの建値としてのVolatilityが最高値を更新した年と言うことになりました。

一方で歴史の古い株式市場ですが、こちらもご多分に漏れず今年は歴史的なVolatilityを記録しているのですが、特に一日の値幅が5%を越える取引日が年間でどの位あったかというデータを見ると如何に凄いかがわかります。

あるデータベースによると、そもそも一日のレンジが5%というのは為替に直せばドル円で約5円ですので滅多にあることではなく、米株市場においても過去データでは10年単位で数回という頻度でしか記録されない動きだと言うことがわかります。

一日の値幅が5%以上を記録した取引日の数は、以下のようになっています。

1930年代・・・95回 
1940年代・・・3回
1950、60、70年代・・・各1回。(この30年で3回)
1980年代・・・6回
1990年代・・・2回
2000年代(2007年まで)・・・4回

今年は既に10回を大幅に越えており、しかも9月以降に集中しています。30年代の95回と言うのは凄い回数ですが、大恐慌の余韻の残る時代ですし当時は分母がかなり小さいので変動幅の%表示が大きくなりがちだったと言う背景もあるでしょう。1950年からの50年間で11回しか観測されていないのに今年は過去数ヶ月でそれ以上の回数を記録していると言うのは凄いことだと思います。

更に・・・・こちらの方がより意外感があるかもしれませんが、過去の%ベースでの一日の上昇幅ベスト10というのを見てみるとこのようになります。

1位・・・1933年3月15日⇒15.34%
2位・・・1931年10月6日⇒14.87%
3位・・・1929年10月30日⇒12.34%
4位・・・1931年6月22日⇒11.90%
5位・・・1932年9月21日⇒11.36%
6位・・・2008年10月13日⇒11.08%
7位・・・2008年10月28日⇒10.88%
8位・・・1987年10月21日⇒10.15%
9位・・・1932年8月3日⇒9.52%
10位・・・1939年9月5日⇒9.52%

太字で示したとおり、今年の10月の乱高下相場の上昇幅が2つベスト10にめでたく(?)ランクインしています。

ベアマーケットラリーでしかなかった10月13日と28日の上昇が良くぞ上昇幅ベスト10に入ったものだと思っていたのですが、実はこれ・・・・今年の2つを含む上昇幅ベスト10の全てがベアマーケットラリーであることがわかりました。上昇幅のベスト10はいずれもベアマーケットの中の反発局面での上昇だったわけです。

我々は為替で言えばドル円のように、アセット価格と言うものは上昇時は緩やかで、崩れる時は急激であると言う印象を持っていますが、実は激しい上昇と言うのも弱気相場の中でこそ起こる傾向があると言うことは頭に入れておきたいものです。

そうすると最近反発傾向を強めていてトレンド反転という可能性を考え始めている人も多い・・・あれ・・・とか・・これも・・・ う~ん・・・・!? という事になりますね。

If History Repeats Itself, Take A Closer Look.

最近は日本でも大企業による非正規雇用者のLayoffがメディアを賑わしていますが、実際にトヨタにしろソニーにしろかなりエグい事をやっていると感じてしまいます。

多くの企業では既に終身雇用や年功序列というものは有名無実化していると思いますが、一方で正規雇用(企業にもよりますが一般に基幹職、総合職、特定職、一般職などと呼ばれるようです)と非正規雇用の間に立ちはだかる壁は、かつての年功序列が持っていた年齢や入社年度による壁、また男女間の間の性別の壁等よりもより深刻な、抜本的な部分での身分の差とでも言うような高さと厚みを持っているように感じます。

実は私自身が現在所属している組織においても職種間にある見えないけれどとても分厚い壁の存在が組織の活力を削ぎ落としているという強い問題意識を持っているのですが、世間一般における非正規雇用者の立場の弱さと5年、10年と彼らを戦力としてきたはずの企業側のあまりにも非情な態度は、世界景気が未曾有の不景気に突入し始めているという事実を租借しても尚強い疑問を感じさせるものです。

政府が景気対策、特に雇用対策を最優先するというのは当然であり、いつものような口先だけではない実効性のある施策と政策の実施を強く望むものです。

この雇用問題は、世界的に共通する課題ですので各国がどれだけ真剣にこれに取り組み、どこが先に実効性のある成果を出せるかというテーマに非常に注目しています。

さて、今月初に発表された11月の雇用統計の話に戻りますが、おさらいすると11月の非農業部門就業者数の減少が533千人、年初来累計が1.8百万人を突破して12月を含めた年間ベースでの2百万人突破が確実となり、失業率も0.2%上昇して6.7%でした。これは実に1974年以来34年振りの不景気振りであり、統計史上でも1939年以降で4番目の悪さです。

では過去の同様の事例では金融市場はどのように反応したのかという事になると、実は少し意外な結果が出ます。前回が34年前と言うことで、それより前に遡ってもあまりにも時代背景が違うと思うので、その34年前となる1974年12月、非農業部門就業者数(NFP)が602千人の減少となった後の米国株式市場を追いかけてみると・・・・・・・・・・・・

なんと・・・・・・・・翌年(1975年)の6月までの約半年の間に株式市場は実に42%もの急騰を記録しています。年換算ベースでは84%という物凄い反発ですね。

特に米国の場合は雇用統計の衝撃的な悪化は金融市場においては負のクライマックスとなることがあると言うことです。株のチャートに関して言えば、そこが陰の極となると言うことです。

If history repeats itself, you must act now.

そんなアジテーションが実際に随分と出回っているのですが、確かに最近の株式市場は数々の悪材料にあまりにも鈍感というか、耐久力をつけているように感じられます。

世の中にはよ~く確認しないと、感覚と事実の間に驚くような乖離が存在することがありますが、金融市場ほどそういう経験をさせられる空間も他に無い様な気がします。

Let's take a closer look. If your eyes are not too aged yet. (あなたが既に老眼なら別ですが)

Between Confusion and Pain

金融市場は先週も盛り沢山でした。

2008年の金融市場は以下のように総括される事になるのではないでしょうか。

1. 1月~3月までの第一四半期が大荒れ。


2. 4月~6月の第二四半期は急速な沈静化を見せて大相場後遺症に陥った多くの市場参加者を翻弄。             


3. 7月~9月の第三四半期から再びVolatilityが上昇。


4. 第四四半期は大きなBOX圏で乱高下。


今我々は、この大きなBOX圏で乱高下という過程にいると思っているのですが、テクニカルな表現を使えば第4波の調整期間という事になり、今後流動性の低下などの年末要因との兼ね合い次第では予想外の値幅が出易いというリスクの上昇を見込んでおくべきでしょう。

実際の所、不透明感は増すばかりです。先週起きた事の幾つかを見ても、前例のない事や予想外且つ今後の見通しも立ち難いと言う事ばかりです。

 ・株式市場は乱高下を消化しつつ結果として底固い動きをしています。今の株式市場は私なりに表現するとこうなります。

Fundamentally Bearish, Technically Bullish and Seasonally Dangerous.


 ・米国債の短期ゾーンがゼロ金利となり、一部でマイナス金利を記録しました。 


先ずは4週間物の入札が初めてゼロ金利となり、次に3ヶ月物が-0.01%で取引されたのですが、投資家が社債はおろか銀行預金のリスクにも尻込みし、金融機関同士が再び疑心暗鬼となってお互いに資金を融通せずに政府債を購入すると言う動きをしているためです。米国債と投資適格社債の金利差は危険領域まで再拡大しています。


 

・米国自動車業界のBIG3救済法案が予想外の否決という事態となり、可決を織り込んでいた金融市場は大混乱となり、株式市場が下落、円高が進行すると共に米ドルは一旦円以外の通貨には上昇した後に再度後退と言う激しい値動きの中でドル円は8810銭と今年の最安値を更新し、95年以来の80円台を示現しました。


ドルは少なくとも短期的に下値を試す段階に入ったようです。円とドルが他の通貨やコモディティに対して上昇する動きは一旦Decouplingし始めており、ドルインデックスで見てもこれまでの大幅上昇に対するテクニカルな調整だけでも年内にあと数百ポイントの下げが必然とすら感じます。当面はドルインデックスで80の攻防を見込むべきでしょうか。


   


今週はFOMCがあります。私は50bpの利下げを見込んでいますが市場の一部には75bpや一気に100bp下げてゼロ金利とするという予想もありますが、注目は利下げ幅以上にFEDが量的緩和政策に舵を切るというメッセージを明確にするかどうか、その場合はどのような内容になるのかというIF&HOWにあると思います。

それにしても世の中の変化は急速です。

2008年12月7日日曜日

Cut&Blood vs Hope&Resilience

先週の山場は木曜日の英国、欧州の金融政策決定会議と金曜日の米国雇用統計でした。その他の国々の結果もあわせて整理してみると以下のようになります。

Australia      ⇒dropped 100 basis points.
New Zealand   ⇒dropped 150 basis points.
Sweden dropped ⇒dropped 150 basis points.
U.K.         ⇒dropped 100 basis points.
Eurozone      ⇒dropped 75 basis points.

どの利下幅も事前予想以上の規模であり、昨年度前半までは圧倒的な影響力を持ち続けてきた金利差という物が急速にその影響度どころか存在そのものを消し去ろうと言う動きになっています。

そうは言っても依然として金利差は残っていると思われる方もいるかもしれませんが、金融市場の動きは現存の金利差ではなく、金融政策のベクトルに敏感です。つまりある二つの通貨間の金利差が縮小する方向のベクトルが明確であれば最早金利差を理由に金利の高いほうの通貨を買う動きは継続せず、むしろそれまで積み上がった持高の解消フローを背景に低金利通貨の方に上昇圧力が掛かります。

また金利差の存在そのものが無くなろうとしているという意味は世界中がゼロ金利に向けた動きを明確にしており、例えゼロ金利までは行かなくとも実質的な量的緩和が世界共通の事象となる動きの中で金利差という物が事実上意味を持たなくなる(あるいは実際に無くなる)という事です。

一方、金曜日のメインイベントである米国11月の雇用統計ですが、これは驚くべき悪化振りでした。

非農業部門雇用者数は前月比で▲533千人。実に34年振りの大幅な落ち込みでした。第一次石油危機の1974年12月の▲602千人以来という事になります。Bloombergに予想を掲載した73名のエコノミストの予想の上限(下限と言うべきでしょうか)をExceedする悪化振りでした。
 改定値も目を疑う程の下方修正となり、9月が▲284千人⇒▲403千人、10月も▲240千人⇒320千人となり、雇用者数の減少は年初来11ヶ月連続で合計1,910千人と2008年度は2百万人以上が職を失うことが確実となりました。失業率も10月から0.2%悪化して6.7%まで上昇しています。

雇用の悪化も米国のみではなく世界的な現象であり、例えば英国のデータでも第三四半期の雇用の減少が164千人と過去17年で最悪のペースとなっており、10月以降の加速傾向を考慮しても第四四半期はより厳しい状況となっていることが確実です。今年の特徴はこの規模感だけではなく、数十年という歴史の中で創業以来始めてのLayoffを断行せざるを得ない優良企業が非常に多いという事で、それだけ深刻な状況であることが浮き彫りになっています。

Rate cut, Job cut、Pay cut......と世界中がCutだらけなのですが、金曜日の雇用統計を受けて尚米株市場が上昇して取引を終えているように金融市場が悪材料に対する抵抗力をつけたかのような反応をしている事が目を引きます。市場にとって悪材料は織込み済みだったと言うのは簡単なことですが、それでも市場の事前予想の平均どころか下限をも下回るような予想外の悪化を示すデータが出ても株式市場が上昇すると言うのは通常は無いことです。
 実際に金曜日はダウ平均で約$260の上昇で、同様に欧州株もアジア株、日経平均を見ても最近の下値抵抗力は驚くほどです。PKO(当局或いは半公的な勢力による株価維持活動)臭い動きも散見されますが明らかにそれだけではありません。所謂Value投資家と言われる勢力が相当活発に割安銘柄に資金を入れ始めており、これらの動きによる株価の上昇に反応したPassiveな運用モデルの一部も確実に買い圧力を後押しし始めています。

金融当局間の国際協調姿勢や迅速且つ大胆な対応、それ以上に優良企業のLong term productivity、そして Intrinsic Valueと言うものを評価すると言うよりは信じる事を選択するという前向きなセンチメントが市場を支えていると言っても過言ではないと思うのですが、金融市場の混乱が実体経済に波及してきた中で、この混乱は同じように金融市場から修復される可能性が高いので株式市場などに見られる前向きな姿勢には大いなる期待を込めて注視していく価値があると思われます。

実体経済の底打ちは明らかにまだまだ先でしょうが、一足先に金融市場に前向きな姿勢が戻り始めた可能性に注目しましょう。

水曜日には毎年恒例のマンハッタンのロックフェラーセンターのクリスマスツリーが点灯されました。私はこれを見るのが本当に好きでした。Wall街の痛みを少し離れたミッドタウンから暖かい福音の灯りで癒してくれるような、そんなイメージを今年は頭に描いてしまいます。

今年も、これまでに起きたことの全てを受け入れ、現状をGivenのものとして、ここから前向きに頑張って行くのだという気持ちを新たにする季節が到来しました。

Rejoice and keep faith.

Dramatic Rise and Fall.

Dramatic rise and fall………

やはり広範な世の中の仕組みが根本から変革の時期を迎えているのでしょうか。

未曾有の金融危機が引き金を引いた未曾有の世界経済の混乱と収縮により、発表される経済指標が世界中で数十年振り低水準という事態が続き、財政政策や金融政策の手法を抜本的に見直して、これまでとは違う方向に急速に舵を切る国々や金融当局、中央銀行が後を絶たない中でこの週末にはボクシング界でも未曾有の偉業”が達成されました。


プロモーターの一角、HBOスポーツのGreensburg社長が自身の31年間のキャリアの中で見て来た一流ボクサー達による偉業達成の中でも出色のものだったと言い切る奇跡的勝利を勝ち取ったのはフィリピンの英雄、Manny Pacquiao選手でした。


土曜日のラスベガスで行われたこの試合は、実現自体が大いなる驚きでした。Pacquiao選手は最初に獲得したのがフライ級という軽量選手であり、バンタム、フェザー、そしてライト級を制覇した偉大な王者。一方、そのライト級より一つ軽いジュニアライト級で最初の世界タイトルを獲得したOscar DelaHoya選手はライト、ウエルター、ジュニアミドル、ミドル級までを制覇した偉大な王者であり、今回の試合はDelaHoya選手が体重を落とし、Pacquiao選手は2階級分体重を増やして実現したという常識では考えられない試合でした。


自国の希望であり、英雄であるPacquiao選手が壊されてしまうことを恐れたフィリピンの国会議員や有力者たちがあらゆる手立てを駆使して実現を阻止しようとしたほどの危険な試合は、流石にDeaHoya選手が体力で圧倒するものと予想されていましたが、Pacquiao選手がまさかの奇跡を起こして8回終了時点でのTKO勝利をもぎ取りました。


今、世界経済が必要としているのは、ボクシング界におけるPacquiao選手のような救世主であり、彼の今回の奇跡の勝利のような偉業なのかもしれません。敗れたDeLaHoya選手もEast LAのメキシコ移民の地区から米国のスターダムを駆け上がったアメリカンドリームの具現者であり、フィリピン出身のPacquia選手のAchievementはそれを上回る軌跡と言えましょう。今でも英語が流暢ではない彼の成功はまさにこれもアメリカンドリームそのものです。


2009年を展望するときに、国、地域、経済圏、商品、プロダクツ、通貨、銘柄...などにおいて誰が(何が)DelaHoya選手であり、Pacquiao選手になるのか......そんな視点も持ち続けて行きたいと思います。