何事も本当の当事者やインサイダーで無い限り、物事の全体像を把握することは不可能であり、我々は与えられた、或いは必死に集めた部分像を元に全体像を類推して動くと言うことを繰り返しています。
ただ、時には中途半端にパズルのピースを持っているが為にかえって全体像を誤ってしまうとか、真実から遠ざかってしまうと言うこともあります。
前回書いた雇用統計と株式市場の関係等はその好例ですが、今回はもう少し裾野を広げて別の角度から少し意外な事実をお話します。
先ずは、如何に今年の金融市場のVolatilityが高いかと言う点です。
歴史の浅い通貨オプションの世界では、これまでは97年、98年のアジア通貨危機、ロシア危機、そしてLTCM崩壊時のImplied Volatilityが最高値だったのですが、今年は遂に多くの通貨ペアで当時の水準を上回る水準での取引が確認されており、オプションの建値としてのVolatilityが最高値を更新した年と言うことになりました。
一方で歴史の古い株式市場ですが、こちらもご多分に漏れず今年は歴史的なVolatilityを記録しているのですが、特に一日の値幅が5%を越える取引日が年間でどの位あったかというデータを見ると如何に凄いかがわかります。
あるデータベースによると、そもそも一日のレンジが5%というのは為替に直せばドル円で約5円ですので滅多にあることではなく、米株市場においても過去データでは10年単位で数回という頻度でしか記録されない動きだと言うことがわかります。
一日の値幅が5%以上を記録した取引日の数は、以下のようになっています。
1930年代・・・95回
1940年代・・・3回
1950、60、70年代・・・各1回。(この30年で3回)
1980年代・・・6回
1990年代・・・2回
2000年代(2007年まで)・・・4回
今年は既に10回を大幅に越えており、しかも9月以降に集中しています。30年代の95回と言うのは凄い回数ですが、大恐慌の余韻の残る時代ですし当時は分母がかなり小さいので変動幅の%表示が大きくなりがちだったと言う背景もあるでしょう。1950年からの50年間で11回しか観測されていないのに今年は過去数ヶ月でそれ以上の回数を記録していると言うのは凄いことだと思います。
更に・・・・こちらの方がより意外感があるかもしれませんが、過去の%ベースでの一日の上昇幅ベスト10というのを見てみるとこのようになります。
1位・・・1933年3月15日⇒15.34%
2位・・・1931年10月6日⇒14.87%
3位・・・1929年10月30日⇒12.34%
4位・・・1931年6月22日⇒11.90%
5位・・・1932年9月21日⇒11.36%
6位・・・2008年10月13日⇒11.08%
7位・・・2008年10月28日⇒10.88%
8位・・・1987年10月21日⇒10.15%
9位・・・1932年8月3日⇒9.52%
10位・・・1939年9月5日⇒9.52%
太字で示したとおり、今年の10月の乱高下相場の上昇幅が2つベスト10にめでたく(?)ランクインしています。
ベアマーケットラリーでしかなかった10月13日と28日の上昇が良くぞ上昇幅ベスト10に入ったものだと思っていたのですが、実はこれ・・・・今年の2つを含む上昇幅ベスト10の全てがベアマーケットラリーであることがわかりました。上昇幅のベスト10はいずれもベアマーケットの中の反発局面での上昇だったわけです。
我々は為替で言えばドル円のように、アセット価格と言うものは上昇時は緩やかで、崩れる時は急激であると言う印象を持っていますが、実は激しい上昇と言うのも弱気相場の中でこそ起こる傾向があると言うことは頭に入れておきたいものです。
そうすると最近反発傾向を強めていてトレンド反転という可能性を考え始めている人も多い・・・あれ・・・とか・・これも・・・ う~ん・・・・!? という事になりますね。