2010年5月5日水曜日

A strong YEN for weaker JPY.

2010年は円安の年になると言うのは市場参加者のMajorityが共有する一大テーマです。

毎年色々なイベントやテーマがありますが、ポートフォリオ運営やトレーディング業務における毎年度末のReviewで明らかになるのは、結局はその年の中で何度かあった重要局面でどれだけのパフォーマンスを出せたかと言う要素が非常に大きく、普段からの細かい積み上げ以上の決定要素となる事が多いようです。

2010年にはどういうテーマがあるのかと言う事前予想において、色々な戦略が想定されているのでしょうが、上述の通り大多数の参加者が共有しているテーマとしてはアジアであれば人民元の切り上げが最大のテーマとなります。そしてその次位に来るのは円高水準の是正による円安トレンドの復活と言うことがあるでしょう。

円を取り巻く環境は随分と変化しています。アジア経済の発達は目覚しいものがあり、かつては欧米から人民元切り上げ圧力が掛かると必ず円が身代わりに上昇すると言うパターンで円高となっていたのですが、最近では明らかにその人民元のProxyの役割はシンガポールドルや韓国ウォンが果たすようになっています。(香港ドル然りですがこれはポジションが既に過密な印象があり、政情不安さえなければ欧米の投資家が非常に好んでいたはずのタイバーツも今は回避されています。)

更に今年はソブリンリスクというものが一大テーマにもなっており、ある意味では欧州のPIIGS諸国の問題もこれに尽きる訳ですが、この政府債務、国の財政状況というテーマでもその矛先が何時日本に向けられても不思議ではない訳ですので現状の90~95円と言うあたりに滞留しているのは実力以上の円高と言う見方が定着していると言っても良いでしょう。これが100~105円水準に是正されるだけでもレンジが10円切り上がる訳ですし、勿論105円どころか110円以上と言うシナリオを描く人達も多いので2010年はこの10(以上)の動きをしっかり取りたいと言う戦略が広く共有されていると言う訳です。

最近では民主党の多数の議員による円安誘導活動も盛んにメディアに取り上げられるようになっており、円安への機運は相応に盛り上がりを見せています。

相場的には95円の関門を越えると風景が変わる(=円安トレンドが着火する)という見方が根強いのですが、この95円は本当にタフな抵抗線となっており、思った以上に近くて遠い通過点という位置付けになっています。

足元のドル全面高の動きは一つのキッカケとなる可能性があるのですが、ドル円は火曜日に9499銭という直近の高値を付けたものの、あと1pip届かずに反落し、今日もここまでは昨日の高値に迫りながらリスク回避に呼応したクロス円売り圧力に阻まれて逆に93円台突入寸前まで反落した後は小康状態となっています。

ドル円Daily

日本は依然として輸出立国です。円高時には輸入面での円高メリットも確かにあるのですが、今では多くの輸入企業も少々オーバーヘッジ状態らしく一旦円安になってもらった方が良いくらいだという指摘もあります。

政府も当局も実業界も円安で困らないか、むしろそれを望んでいるというのならやはりどこかで100円回復と言うシナリオはありそうなのですが、恐らくは外貨の買い方向から入る人達が圧倒的に多いFXの個人投資家の人達もその方が総じて潤うのでしょう。

そう考えると、相場は今の欧州売りの如く誰かが困る方向、或いは過半数が痛みを感じる方向に動く傾向もありますので円安が中々実現しないのはそのあたりにも原因があるのかという気にもなってきますね。

リスク回避バイアスが危機的な水準にまで高まれば相当なクロス円売りが出るでしょう。円ベア陣営のリスクシナリオはそのあたりにあると言うところでしょうか。

Yenは一般名詞では希望や渇望と言う意味になりますので、今の市場には根強い円安待望論があると言うのは A strong yen for weaker jpy と表現出来る事になりますね。