2010年8月23日月曜日

Salue to Mr.Stanley Druckenmiller : Seeing off another legend.

従来の常識では普通ではない事が普通の事になるという現象があちこちで起きています。当初は一時的な現象として捉えられていたこれらの現象が長期定着し始めると、人々はそれらに適当な理由付けと正当化を行い"New Normal"という表現で常識の書き換えを行ってきました。

金融市場でもNew Normalと呼ばれる現象が色々起きているのですが、こういう時代の変わり目には世代交代も加速されると言う事なのでしょうか。

先週の8月18日(水曜日)にStanley Druckenmiller氏が突如引退を表明しました。George Soros氏の片腕としてヘッジファンド業界の勃興から全盛期の生き証人でもある同氏の引退は同業界が今後縮小期に入っていく事を暗示しているのかもしれません。

実は、同氏の引退表明はこれが二度目で、一度目は2000年にSoros氏のQuantum Fundを離れる時にも一度は引退を表明していた筈です。その年は1989年以来驚異的な運用実績を残してきたQuantum Fundが初めてマイナスとなった年でもありました。

結局Druckenmiller氏は自身でDuquesne Capitalというヘッジファンドを立ち上げて活躍してきたのですが奇しくも今年に入り同ファンドの実績が始めてマイナスとなっている事を理由にファンドを清算して投資家に資金を返還し、自身も潔く引退すると言う道を選択したと言う事のようです。

"While the joy of winning for clients is immense, for me the disappointment of each interim drawdown over the years has taken a cumulative toll that I cannot continue to sustain,"
(意訳)⇒これまで顧客資産を増やしていく喜びは大きいものでしたが、その過程で度々経験して来た資産減少時の焦燥と失望による心身のダメージの蓄積により今後の事業継続を困難と判断しました。

彼が今回投資家に当てたレターの中の言葉ですが、ここに巨額の顧客資産を預かるヘッジファンドの責任者としての重圧が滲み出ているように思いました。

3回ほど彼のファンドを訪問して直接会うという幸運にあやかりましたが、実は同氏を含めて先方のスタッフ誰一人として一度も笑顔を見せたことはなく組織全体に暗い印象を持っていたのですが、今思えばプロ中のプロとして大変な重圧と責任感を絶えず背負い続けていたと言うことだったのかと思っています。

欧米からアジア、新興国の時代へ・・・・世界経済の変遷とともに金融市場でも新たな時代が来ているということなのでしょうか。