2012年9月2日日曜日

Grave Concern.

結局は米国もRealとVirtualのバランス操作を誤ったのでしょうか。

Jackson Holeシンポジウムにおけるバーナンキ議長の発言は、国内雇用状況への最上級の懸念が強調された内容であり、前項の通り金融市場はそのメッセージを重く受け止めています。

主だったところでは、以下のような発言がありました。

There is no net improvement in the unemployment rate since January.
⇒1月以降の失業率は悪化と改善を繰り返しているだけで実質的な年初来の回復基調は見られない。

Unless the economy begins to grow more quickly than it has recently, the unemployment rate is likely to remain far above levels consistent with maximum employment for some time.
⇒今後の経済成長に抜本的な改善が見れない限り、失業率は相当期間に渡り完全雇用水準を大幅に上回る水準で推移する事になるだろう。

The stagnation of the labor market in particular is a grave concern not only because of the enormous suffering and waste of human talent it entails, but also because persistently high levels of unemployment will wreak structural damage on our economy that could last for many years.
⇒特に労働市場の低迷は、最大級の懸念である。それが齎す莫大な苦悩と才能の浪費だけではなく、高失業率の定着は長年に渡る構造的な損害に繫がるからだ。

米国は、経済運営を実体経済と金融経済のバランスを取る形で運営してきましたが、過去10年以上の期間は金融経済の方に軸足を置いた運営となってしまい、製造業を中心とした実体経済は中国などに生産拠点をシフトするなどの合理化の結果、極端に中間層の雇用環境が悪化してしまいました。いくらグローバル化と言ってもドラスティックな合理化にも大きな犠牲と構造改革が必要だと言う事に気が付いたところで金融バブルが崩壊し、頼みの綱だった金融経済にも大きなひびが入ってしまいました。

今の状況で米国が持続的且つ抜本的に雇用環境を改善して中間層を再構築するのは相当な難題だと思います。事実こういう解説も出ていました。

"Grave concern" was cited by some analysts as the strongest word Bernanke has ever used regarding the dire situation in employment.
⇒”Grave concern”と言う言葉は、バーナンキ議長が深刻な雇用問題に関してこれまで使用した表現のなかで最も強い言葉であると言う指摘もある。

今回注目したいのは、このGrave concernなのですが、恐らく’’重大な懸念”と言うような日本語が使われるのだと思います。
 ただ、このGraveという言葉ですが、もっと重いように思います。名詞で"お墓"と言う意味であり、重力のGravityとも語源は一緒のはずです。つまり抗えない重さとでも言うのでしょうか、そういうものだと思うのです。
 夜のお墓を想像する時、または実際にそこに一人でいる時に腸を掴まれる様な冷たく重い恐怖感を体感すると思いますが、ここで言うGrave concernもそういうレベルのもののはずです。

医学的にもGrave Conditionと言えば危篤ですし、医師が容態にGrave concernがあると言えば治癒の見込みはないというメッセージなのです。

重大な懸念と言うよりも、実際には絶望感にすら近いはずのこの言葉を議長が使用した意味は個人的にはとてもGraveな事だと思えてなりません。