週の後半に円が上申して一躍為替市場における風雲児的な位置付けになりました。
ドル円は週半ばに一旦112円をつけて、一旦113円半ば手間まで戻してから、勢いをつけて110円台半ばまで一気に駆けたという相場展開でした。
多くの大手金融機関の財務内容に関する様々な憶測記事や巨額損失隠し疑惑が市場を駆け巡り、金融セクター主導で日本・欧州・北米の株式市場が地崩れ的な下落を繰り返す中で金曜日にはダムが崩壊したような地滑り的な円の上昇が見られたと言うことになります。
・サブプライム問題を抱える米国金融機関に対する決算懸念から米ドル下落が加速?
・リスク回避心理の上昇を受けたキャリートレードの巻き戻しから円が上昇?
・株式市場下落との相関通りに円が上昇?
・FRBバーナンキ議長の景気回復は2008年度半ば以降という議会証言を悲観した米ドル離れ?
・過小評価されて来た日本円の本領発揮・失地回復?
毎度の事ながら相場解説の世界ほど言論の自由が跋扈する領域は少ない訳ですが、私は今回の円高には、実は欧州と中国によるお膳立てがあったという事実が大きかったと思っています。
週央に政策金利を据え置いた欧州中央銀行(ECB)ですが、その後のTrichet総裁からは数年ぶりに”Brutal"と言う強い形容詞を使用したユーロ高懸念が表明されて市場の注目を集めました。私は当初フランス人のTrichet総裁はフランス語で話をしているものと思ったので通訳者を介した英語表現にどれほどの意味があるのかと思ったのですが、調べてみると彼は最初から英語で話をしていることがわかりました。公の場ではいつも英語で話をする彼自身が何段階か用意しているであろう表現のなかで最上級と考えられる言葉を使っているという事実は市場に重く受け止められたと考えてよいでしょう。
更に週後半の中国の動きですが、木曜日にNational People's CongressのCheng Siwei議長とPeople's Bank of ChinaのXu 氏の発言に市場が揺れました。
・外貨準備構成の運営に関しては弱い通貨よりもユーロのような強い通貨の保有が望ましい。(Siwei)
・米ドルは世界の基軸通貨としての位置付けを失った。(Xu)
この発言などを材料に金曜日には、直物およびオフショアの先物取引において人民元が2005年7月の変動バンド制移行直後の同年8月以来となる水準にまで上昇ましたが、市場はこれを中国金融当局が度重なる利上げに一向に怯む気配のない国内インフレ抑制策の切り札として一層の人民元上昇容認のシグナルを送ったものと言う解釈をした為にこれまで置き去りにされて来た日本円が一気に冬眠から覚醒したという動きとなりました。
そんなアジアの上昇の中で実は欧州中銀のTrichet総裁発言等を材料にユーロなど殆どの主要通貨は対米ドルで大きく下落しており、その一方で人民元、日本円が対ドルで大きく上昇すると言う組み合わせとなっているのですが、その意味で先週後半の動きは米ドル下落と言う表現よりも欧州通貨やコモディティ通貨に対するアジア通貨の大反発と言う表現が適切だと言えます。
長年欧州が切望してきたような構造的な米ドル下落の負荷をアジアにも負担して欲しいと言う流れとなっているわけですが、全く別要因が引き金を引いたような動きの中で欧州はこれをどう見るのか、また世界的な株価不調の先頭を走らされている日本株が日経平均で間もなく年初来マイナス10%に迫る下落となっている中で更なる下落要因となる円高という動きを本邦当局はどう見るのか。
Veteran's day休日で週末3連休となる北米市場ですが、週末の天気予報はなんと雪でした。
この時期にWall Streetに積雪と言うのは・・・・・・・・・・・・・・・・
冬時間の到来は冬景色をも招き入れたのでしょうか。この週末連休の冷え込みは市場の混乱を冷ますのか、あるいはウォール街が凍りつうてしまうのか。
8月の混乱以降、9月、10月と沈静化し始めていた金融市場は俄かに荒れ模様となってきたようです。
金融市場参加者も当局者もここで少しシートベルトを締め直す必要があるでしょう。このLighthouseから照らす海原も少々波が荒くなってきたようです。様々な想いが駆け巡りますが、それらをここにぶつけていこうと思います。