先週の山場は木曜日の英国、欧州の金融政策決定会議と金曜日の米国雇用統計でした。その他の国々の結果もあわせて整理してみると以下のようになります。
Australia ⇒dropped 100 basis points.
New Zealand ⇒dropped 150 basis points.
Sweden dropped ⇒dropped 150 basis points.
U.K. ⇒dropped 100 basis points.
Eurozone ⇒dropped 75 basis points.
どの利下幅も事前予想以上の規模であり、昨年度前半までは圧倒的な影響力を持ち続けてきた金利差という物が急速にその影響度どころか存在そのものを消し去ろうと言う動きになっています。
そうは言っても依然として金利差は残っていると思われる方もいるかもしれませんが、金融市場の動きは現存の金利差ではなく、金融政策のベクトルに敏感です。つまりある二つの通貨間の金利差が縮小する方向のベクトルが明確であれば最早金利差を理由に金利の高いほうの通貨を買う動きは継続せず、むしろそれまで積み上がった持高の解消フローを背景に低金利通貨の方に上昇圧力が掛かります。
また金利差の存在そのものが無くなろうとしているという意味は世界中がゼロ金利に向けた動きを明確にしており、例えゼロ金利までは行かなくとも実質的な量的緩和が世界共通の事象となる動きの中で金利差という物が事実上意味を持たなくなる(あるいは実際に無くなる)という事です。
一方、金曜日のメインイベントである米国11月の雇用統計ですが、これは驚くべき悪化振りでした。
非農業部門雇用者数は前月比で▲533千人。実に34年振りの大幅な落ち込みでした。第一次石油危機の1974年12月の▲602千人以来という事になります。Bloombergに予想を掲載した73名のエコノミストの予想の上限(下限と言うべきでしょうか)をExceedする悪化振りでした。
改定値も目を疑う程の下方修正となり、9月が▲284千人⇒▲403千人、10月も▲240千人⇒320千人となり、雇用者数の減少は年初来11ヶ月連続で合計1,910千人と2008年度は2百万人以上が職を失うことが確実となりました。失業率も10月から0.2%悪化して6.7%まで上昇しています。
雇用の悪化も米国のみではなく世界的な現象であり、例えば英国のデータでも第三四半期の雇用の減少が164千人と過去17年で最悪のペースとなっており、10月以降の加速傾向を考慮しても第四四半期はより厳しい状況となっていることが確実です。今年の特徴はこの規模感だけではなく、数十年という歴史の中で創業以来始めてのLayoffを断行せざるを得ない優良企業が非常に多いという事で、それだけ深刻な状況であることが浮き彫りになっています。
Rate cut, Job cut、Pay cut......と世界中がCutだらけなのですが、金曜日の雇用統計を受けて尚米株市場が上昇して取引を終えているように金融市場が悪材料に対する抵抗力をつけたかのような反応をしている事が目を引きます。市場にとって悪材料は織込み済みだったと言うのは簡単なことですが、それでも市場の事前予想の平均どころか下限をも下回るような予想外の悪化を示すデータが出ても株式市場が上昇すると言うのは通常は無いことです。
実際に金曜日はダウ平均で約$260の上昇で、同様に欧州株もアジア株、日経平均を見ても最近の下値抵抗力は驚くほどです。PKO(当局或いは半公的な勢力による株価維持活動)臭い動きも散見されますが明らかにそれだけではありません。所謂Value投資家と言われる勢力が相当活発に割安銘柄に資金を入れ始めており、これらの動きによる株価の上昇に反応したPassiveな運用モデルの一部も確実に買い圧力を後押しし始めています。
金融当局間の国際協調姿勢や迅速且つ大胆な対応、それ以上に優良企業のLong term productivity、そして Intrinsic Valueと言うものを評価すると言うよりは信じる事を選択するという前向きなセンチメントが市場を支えていると言っても過言ではないと思うのですが、金融市場の混乱が実体経済に波及してきた中で、この混乱は同じように金融市場から修復される可能性が高いので株式市場などに見られる前向きな姿勢には大いなる期待を込めて注視していく価値があると思われます。
実体経済の底打ちは明らかにまだまだ先でしょうが、一足先に金融市場に前向きな姿勢が戻り始めた可能性に注目しましょう。
水曜日には毎年恒例のマンハッタンのロックフェラーセンターのクリスマスツリーが点灯されました。私はこれを見るのが本当に好きでした。Wall街の痛みを少し離れたミッドタウンから暖かい福音の灯りで癒してくれるような、そんなイメージを今年は頭に描いてしまいます。
今年も、これまでに起きたことの全てを受け入れ、現状をGivenのものとして、ここから前向きに頑張って行くのだという気持ちを新たにする季節が到来しました。
Rejoice and keep faith.