2010年1月31日日曜日

Where the things are wild.

金融市場はアジア、欧州、北米と各時間帯ごとにめまぐるしく展開が変わりやすい状況ですが、結局日や週を通してみれば各種リスク資産が対ドル、対円で下落すると言う展開となっています。

以下は米ドルの最大の代替候補。ドルに代わる世界の基軸通貨となる事が確実視されているユーロの対ドル日次チャートです。

ユーロドルDaily

ユーロ円Daily

円は元祖調達通貨、ドルは新参の調達通貨でありともにCarryトレードと呼ばれる手法の資金調達通貨となってきました。世界中の投資家が金利の安いこれら通貨で調達した資金を高金利やハイポテンシャルな別の資産に投資してきたわけです。

それが一気に逆流している様は先週も指摘したこのチャートからも明白です。

Risk資産並列チャート

米国のVolckerルールの提唱など世界的な金融規制の強化の動きに世の中の枠組みが揺さぶられるリスクを感じ取った市場参加者たちが一旦身軽になるべく戦線を縮小しているので資産価格が下落して調達通貨が買い戻されると言う展開が加速しつつあります。

特に上記のチャートでも明白ですが、最後まで粘っていた株価の下落角度が鋭角的であることは非常に大きなリスクを暗示していると言えますし、別項で詳しく見てみようと思いますが金価格の動向も今後の台風の目となるでしょう。

通貨市場ではやはりユーロ、豪ドルあたりが非常に大きな下値リスクを内包していることは間違いありません。

2010年も早くも1月が終了しましたが、総括するとかなりVolatilityが上昇していると言う特徴があります。2月相場も間違いなくこの傾向が続くと見ています。金価格あたりもかなりがたつくのではないでしょうか。

今日家族で見てきた映画の題名は、かいじゅうたちのいるところでした。中々面白かったですよ。

 海外では絵本でも有名なこの話の現代は Where the wild things are.です。悲しいかなほとんど職業病と言う感じですがいつも仕事のことが頭にある私はこの題名は少し変えれば今の金融市場そのものではないかと考えていました。

今の金融市場は、Where the things are wild.ということになるでしょう。語順を入れ替えただけですが、何故か仕事は映画ほどには面白くないんですよね(笑)

週初はシドニー時間からオセアニア通貨が叩かれるリスクが大きいと思います。

Watch out now.

2010年1月24日日曜日

And so....the cranes fly.

JALとANAというのは自動車で言えばトヨタとホンダという位のイメージでその時々の競争上の優劣はあってもまさか事業再生法を申請するような事になるなど全く考えてもいませんでした。JALの1件は日本企業にとどまらず全ての企業が教訓とするべきだと思います。個人的には複数の労組の存在や発言力の強さなどが改革を阻んでいた米国のGM等と相似形の部分も少なくないと感じています。

JALと言えば鶴のマークが思い浮かぶのですが、丁度同社がおかしくなり始めた頃と鶴のマークを廃止した時期は結構一致していると言う話も聞きました。

今回の金融危機は100年に一度の事象と言われています。英語で滅多にない事を黒い白鳥(Black Swan)と表現することがあり、この金融危機もこの言葉で語られる事が少なくありません。この金融危機を扱ったそういう題名の本も売れていますね。

私はその延長線上でJAL問題を捉える時に、"The blacl swan killed the crane."という言葉が浮かびました。日本を代表する鶴は100年に一度の黒い白鳥に殺されてしまったのかと言う事です。

しかし流石にというか、まさに" Too big to fail" ということなのでしょう。日本政府も全面的にバックアップし、邦銀メガ3行の出血覚悟の債権放棄などにより日本の鶴は何とか飛び続ける事が出来るようになりそうです。

ところで、こういう話があります。

とある発展途上国のある村に電気を通すと言うODA案件が持ち上がった時の事です。大抵の国ならば直に飛びつく話でしょう。ところがその村には昔から鶴が飛来してきて巣作りをするという事情がありました。電気を通すために高圧線を張り巡らせると飛来してきた鶴が高圧線に接触するなどでこの村での巣作りが出来なくなると言う懸念が持ち上がりました。結果的にその村の人々は電気のある文化的な生活よりも鶴との調和的な生活を継続することを選択してこのODA計画を謝絶してきたそうです。

その国の名は、ブータン。そうです、あの国の豊かさはGNPやGDPではなくGNH(国民総幸福度)で計られるべきと主張している国です。

ちょっといい話だな・・・・と思ったのですが、日本人もブータンの人々も自分たちの鶴を大事にすることを選択したのだと言う事になるのでしょうか。

鶴の恩返しがあるといいですね(笑)

Embrace the new years' volatility

さて・・・金融市場です。

これは、大荒れですね。

オバマショック以前から欧州の周辺劣化(ギリシャ問題など)等もありリスクマネーが米国に急速に還流してきています。私も当初はドル高、円高というよりもユーロ安だろうと言う見方をしていたのですが代表的なアセット価格のチャートを並べてみると一目瞭然で、これはドル高ですね。最後まで粘り腰を見せていた株式市場も先週後半に一気に崩れました

Elliot Wave Internationalには見事なチャートが出ています。

そんな中でドル円は円高傾向。つまり円が最強と言う事ですね。

ドルキャリートレード等といわれながらストックベースでは依然として円キャリー調達の投機マネーが莫大だと言うことでしょう。

年末年始には円安の目が出かけていただけにオバマ発言によるリスクマネーのレパトリが続くようだと円高、ドル高、併せ技でのクロス円(ユーロ円や豪ドル円など)の急落が続く可能性も出てくるでしょう。

Volatileな展開に備えるべきでしょう。

Another look at the Obama shock.

今回のオバマショックの背景は色々考えられるのですが、やはり先般のマサチューセッツ州で行われた上院議員補欠選挙における民主党の敗北が相当こたえているのではないかという説が有力です。

これは先般他界した故エドワード・ケネディ上院議員の議席を埋める選挙だった訳ですが、ここで無名の共和党候補者が勝利したと言うことには私も正直言って驚きました。マサチューセッツ州はあのケネディ家の地元であり数少ない共和党支持者はそれを普段は隠しているし、それを表明することは"coming out"だと言われているところです。つまり同性愛者だと告白する(coming out)くらい勇気が要るということです。大統領選でも当時のオバマ候補は共和党のマケイン候補に当然圧勝しています。

そんなところで無名の共和党候補が勝利してしまったと言うことは支持率が急落しているオバマ大統領にとって相当なショックだったはずです。そこで高額報酬への固執などにより国民感情的な悪役となっている大手金融機関に厳しい態度を取ることで有権者に擦り寄る作戦だったのではないかと言う事です。

しかし・・・腑に落ちないのは米国が金融立国であり米国景気の浮揚も金融セクターの復活に掛かっている中で、その業界を弱めるような政策が打てるのかと言う疑問もあります。米国はある時点で製造業などは中国などにGive-upしてしまっており、サービス業、金融業を生業とする社会となっている訳ですから今回のオバマ政権の真意は様々な憶測を呼んでいます。

ワシントンの友人の話が一つのヒントになるかもしれないと思うのですが、彼曰く、陰謀説的に見れば今回の規制案が実現した場合に困るのは比較的棲み分けの進んでいる米銀よりも調達サイドに預貯金の比率の多い邦銀や欧州系ユニバーサルバンクであり結果的に米銀の独り勝ちとなるというシナリオもあるとか・・・

確かに米銀の場合はゴールドマンなどのような元々投資銀行だったようなグループは預貯金ではなく投資先というイメージですし、ヘッジファンドのメッカも米国です。預金調達が多く今後自己トレーディングを控えるべきかゴールドマン的な業態を選ぶかで迷うところも勿論ありますが最初から比較的棲み分けはできているような気もします。(ただCITI,JPChaseやBOAなどは悩ましいですね・・特にBOAはメリルまで買わされて置いて今回の話ではたまらないでしょう・・・)

この前に発表されていた大手金融機関への金融危機を招いた責任料としての特別課徴金にしても米国内で業務を行う欧州や邦銀等の外銀も対象となる訳ですから実はオバマ政権はちゃっかり計算高く動いているだけなのかもしれません。

予想外の展開なので様々な憶測も出ていると言うお話でした。

Obama Shock : Volcker Plan.

年初から出張や研修などで週末も潰れてしまう事が多く久しぶりとなってしまいましたが年初の乱高下を消化して各市場ともVolatilityが低下し始めたところで先週は21日の木曜日にオバマ大統領から銀行の自己トレーディング規制を示唆する発言が出て金融市場は大荒れとなっています。

議論が本格化して実際に規制が実現することになれば後世の歴史にオバマショックと記載されるであろうこのプランは内容を政権内の重鎮ポールボルカー氏と相談して決定している模様で政権内ではボルカープランと呼ばれているようです。

現状の内容がそのまま法案化する可能性は極めて低いのでしょうが、連邦政府(FDICなど)の保護の対象となる預金業務を営む金融機関に対して自己資本を用いた証券売買(プロップトレーディング)、ヘッジファンドプライベートエクイティファンドの保有を禁止し、トレーディング業務は対顧サービスに限定すると言うものです。そして銀行が「大きすぎて潰せない」ことのないよう各行の預金シェアは全米預金残高の10%以上となることも禁止するというものです。

税金で救済されておきながら幹部に高額報酬を払い続け、批判が強まるとさっさと公的資金を返済すると言うウォール街の金融機関に対する批判の声は強まるばかりですが、今回のオバマ大統領の動き以前にも色々な動きが出ていました。

下院は自らの金融改革法案を可決していますが、(議事妨害制度のある)上院は一筋縄ではいかない状態で、上院銀行委員会のドッド委員長は超党派の支持で自らの法案を委員会通過させようとしているものの委員会内の共和党トップであるシェルビー議員と話がつかない状況にあります。そこに大統領案が出てきた訳ですから今後も一筋縄で進む話ではないと思われます。

正統派というか常識派と言って良いボルカー氏の基本的な考えは運用と調達のインセンティブの一致だと言われています。

 ヘッジファンド等が脚光を浴びる中でその中がハイリスクハイリターンを求める傾向が強くなった結果、本来は預金業務が中心であったはずの信用金庫や地方銀行のようなカテゴリーの金融機関の業務内容がウォール街の投資銀行と変わらなくなってしまっていたと言う反省点があるのだと思います。善良な市民の預金を不要なリスクに晒してはならないと言う事です。一方で富裕層の投資先であるヘッジファンドのような連中は勝手におやりなさい、それは元々がリスクを求めるマネーなのだからというイメージではないでしょうか。

このコンセプトのもとでは今後金融機関は業態が二分化していくものと考えられるでしょう。政府がそれを求めている訳です。調達サイドが預金というリスク許容度の低い商品であれば低収益のグループ(Utility銀行)となり、資産家のリスクマネー調達であれば高収益を狙う投資銀行等ヘッジファンド的な投資集団に二極化すると言う事で、後者は今後国民のお金で救済する対象ではなくすと言うことですね。

それにしても2010年も1月から非常に大きな材料が出てきました。今後の金融ビジネスの根幹を揺るがしかねない動きとして大いに注目していく必要がありそうです。

2010年1月11日月曜日

A difficult job.

先週は年初である事に加えて8()に発表される米雇用統計で流れがひっくり返る可能性もあったので投資家コミュニティは慎重に動き始めていましたがトレーディングキャンプの勢力は短期回転売買中心でスロースタートを切っているのではないかと思います。

12月第一週に発表された11月の米雇用統計は非農業部門雇用者数(NFPNon-Farm payroll)が予想以上に強い▲11千人だった事で米国の雇用が急ピッチで改善していると言うシナリオが急浮上していましたので先週末に発表された12月の雇用統計は大きな触媒となることは確実でした。

 

それにしてもいい加減なものだと言ってしまえばそれまでなのですが、今回の数字についての事前予想も非常に強い内容が目立っており、年が明けてからはNFPが数十万人の増加という予想すら出ていたようです。

 実際に蓋を開けてみると12月のNFP85千人で事前予想の中心値である±0を大幅に下回る内容である一方で10.1%に悪化すると思われた失業率は10.0%に踏み止まり、更に11月のNFP▲11千人から+4千人に上方修正されるという斑模様の内容となりました。11月のNFPのプラスというのは2008年の1月以来の事です。

この内容を受けて米国市場はドル売り、株売り、債券買い(金利低下)となりましたが、その後徐々に反転し、ドルはそこそこの反発、株は前日比小幅プラス、長期金利はほぼ横ばい水準にまで戻しての週越えとなりました。

今回の数字も含めて米国の雇用がどこまで回復しているのかという議論は今後もますます活発化することでしょう。

 今回の数字のポジティブな解釈の1つに寒波と大雪の影響が十数万人規模で足を引っ張ったのでそれが無ければNFPはプラスだったというものがあるのですが、個人的な経験からは実は少し反対の懸念も持っています。

私は個人的にもっと強い内容を予想していたので12月の雇用統計はかなりのネガティブサプライズでした。

一個人の局地的な経験を持って米国社会の慣習を一般化する程愚かではありませんが少なくとも私が勤務していた会社では人事部の方針で金曜日に従業員のレイオフを行う事は極力回避していました。日本の感覚では必ずしも合点がいく訳でもないのですが家族と過ごす週末直前にレイオフするのは非人道的だと言う考えからです。当然ながらクリスマス休暇前には尚更ですので12月には解雇やレイオフは少なく今回の数字は予想外のポジティブサプライズとなり、逆にここでHOLDされた人員削減が年明けに行われるので2月や3月あたりからの数字の悪化に要注意と思っていましたのです。

改めて雇用統計は事前予想が最も難しく集計方法によるテクニカルなブレも大きい指標のようですね。

改めて2008年からの雇用者数の減少は大規模です。下図の横軸が年度、縦軸がNFPです。これを見ると雇用減少の深刻さと同時に一端景気が底を打てば雇用も急激に戻ってくる可能性も確かにあるのかもしれませんね。

At the start of the 2nd dacade of the century.

21世紀も二つ目のDecadeに入りました。日本でも本日成人式を迎えた新成人達は平成生まれなのですね。何だか時が流れたと言う事以上に今後の世の中の変化と言うものが一気に加速していくような気がしてきました。

さて・・・・

金融市場でも予想通りではありますが、新たな年の第一歩を様々な市場参加者が色々な思惑で踏み出した事がうかがえるような2010年のスタートになっています。基本的にはRisk-onモードの動きだと見ていますが、少々構成が変化してきていると言う事と、もしかするとRisk-on/Risk-offというプリズムで市場を見る事が最早古いと言う可能性もあるように思います。

株式市場・・・やはり You need to put your money somewhere. タンス預金ではお金が増えません。2010年も世界中の投資マネーの多くは株式にアロケートされ始めています。主要な株式市場は中々良いスタートを切っています。最初の1週間でのパフォーマンスは日本株も良好な出だしです。

米株・・ダウ+1.8%,ナスダック+2.1%, 日経平均+2.4%,香港ハンセン指数+1.9%・・・・・・

商品市場・・・これまた堅調です。商品市況の相対的な強さを表すCRBインデックスが293.75まで上昇しており、原油価格も遂に1バレル当り$82後半へ上申しています。注目度の高い金価格も1オンス当り$1141$1200台への回帰も視野に入る水準まで復活してきました。

債券市場・・・債券市場或いは長期金利と言い換えても良いのでしょうが、2010年の大きなテーマとなるでしょう。これはインフレかデフレかという壮大なテーマとも絡みますが米債を中心に主要国の債券市場は史上最大のバブルという指摘もあり、世の中の針が過剰流動性を背景としたインフレーションの方向に振れてしまえば債券市場は暴落、長期金利が急騰すると言う恐ろしいシナリオが意識されています。12月には3.5%水準が頭を抑えそうに思われた米国10年債利回りも3.83%水準まで上昇してきました。金曜日の予想を大きく裏切る12月の米雇用統計の後でも結局短期金利は下がりましたが長期金利は上昇しており今週からの動きにも十分注意が必要です。

為替市場・・・株や商品の堅調な出だしを背景に所謂Risk-onモードが強まる動きになっていますが、欧州も失速も懸念から現実になり始めていることもあって資源国や新興国の通貨が強く、日米欧など先進国通貨が相対的に弱いと言う流れとなっています。基本的な流れとしては紆余曲折を経ながらも資源国通貨は上昇していくと言うのがメインシナリオになると見ていますが、一方で日米欧の通貨バトルは予想外に順位を入れ替えていく可能性がありそうで、今年は米ドル、日本円、欧州通貨のバトルフィールドも結構なVolatilityを提供してくれるのではないでしょうか。

健康面は勿論、投資活動においても実りの多い年となるようにしっかりFollowしていきましょう。

2010年1月2日土曜日

Happy New Year.

謹賀新年

2010年が良い年でありますように心より祈願致します。
色々な意味で金融市場も'世の中も2009年(これも特別な年でしたね)とは
性質の違う年になるのではないでしょうか。

色々と考えて行きたいと思います。今年もよろしくお願いいたします。