2010年1月24日日曜日

Obama Shock : Volcker Plan.

年初から出張や研修などで週末も潰れてしまう事が多く久しぶりとなってしまいましたが年初の乱高下を消化して各市場ともVolatilityが低下し始めたところで先週は21日の木曜日にオバマ大統領から銀行の自己トレーディング規制を示唆する発言が出て金融市場は大荒れとなっています。

議論が本格化して実際に規制が実現することになれば後世の歴史にオバマショックと記載されるであろうこのプランは内容を政権内の重鎮ポールボルカー氏と相談して決定している模様で政権内ではボルカープランと呼ばれているようです。

現状の内容がそのまま法案化する可能性は極めて低いのでしょうが、連邦政府(FDICなど)の保護の対象となる預金業務を営む金融機関に対して自己資本を用いた証券売買(プロップトレーディング)、ヘッジファンドプライベートエクイティファンドの保有を禁止し、トレーディング業務は対顧サービスに限定すると言うものです。そして銀行が「大きすぎて潰せない」ことのないよう各行の預金シェアは全米預金残高の10%以上となることも禁止するというものです。

税金で救済されておきながら幹部に高額報酬を払い続け、批判が強まるとさっさと公的資金を返済すると言うウォール街の金融機関に対する批判の声は強まるばかりですが、今回のオバマ大統領の動き以前にも色々な動きが出ていました。

下院は自らの金融改革法案を可決していますが、(議事妨害制度のある)上院は一筋縄ではいかない状態で、上院銀行委員会のドッド委員長は超党派の支持で自らの法案を委員会通過させようとしているものの委員会内の共和党トップであるシェルビー議員と話がつかない状況にあります。そこに大統領案が出てきた訳ですから今後も一筋縄で進む話ではないと思われます。

正統派というか常識派と言って良いボルカー氏の基本的な考えは運用と調達のインセンティブの一致だと言われています。

 ヘッジファンド等が脚光を浴びる中でその中がハイリスクハイリターンを求める傾向が強くなった結果、本来は預金業務が中心であったはずの信用金庫や地方銀行のようなカテゴリーの金融機関の業務内容がウォール街の投資銀行と変わらなくなってしまっていたと言う反省点があるのだと思います。善良な市民の預金を不要なリスクに晒してはならないと言う事です。一方で富裕層の投資先であるヘッジファンドのような連中は勝手におやりなさい、それは元々がリスクを求めるマネーなのだからというイメージではないでしょうか。

このコンセプトのもとでは今後金融機関は業態が二分化していくものと考えられるでしょう。政府がそれを求めている訳です。調達サイドが預金というリスク許容度の低い商品であれば低収益のグループ(Utility銀行)となり、資産家のリスクマネー調達であれば高収益を狙う投資銀行等ヘッジファンド的な投資集団に二極化すると言う事で、後者は今後国民のお金で救済する対象ではなくすと言うことですね。

それにしても2010年も1月から非常に大きな材料が出てきました。今後の金融ビジネスの根幹を揺るがしかねない動きとして大いに注目していく必要がありそうです。