2007年9月24日月曜日

"Cutting both rates" cut both ways.

注目された18日(火曜日)のFOMCミーティングでは、Bernanke議長の新FEDが市場予想を上回るかなり踏み込んだ対応を見せた訳ですが、これが大きな波紋を呼んでいます。

①Discount rate(公定歩合) と Fed Fund rate(金融政策の短期金利誘導目標金利)を両方とも引き下げたこと。
②ともに切り下げ幅が市場予想を上回る50bp(0.5%)であったこと。
③その後の議会証言なども併せて一段の追加利下げの可能性を否定していないこと。

などが大きなポイントだったと思いますが、これを肯定的に評価する意見と否定的に評価する意見が市場を駆け巡り、今後の金融市場の動向を左右する大きな材料となることは間違いなさそうです。

株式市場とクレジット市場はFOMCの結果を好感し、FOMC翌日には株価もクレジットスプレッドも8月半ばの混乱前夜の水準にまで急回復していました。
 反対に否定的な評価が見られたと言ってよい為替市場と商品市場では、前者は大きくドル売りに動意し、後者(商品市場)にも怒涛の資金流入がありました。

ズバリ・・・私の評価は二重丸+花丸と言う最上級のものでした。誰も気にしていませんが(笑)

世の中も金融市場も理屈通りには行かないものです。
全てを理屈・ロジックで正しく判断しても大抵は思ったようにはなりません。

Wall街出身で現場上がりのGreenspan前議長とは違い、学究畑一筋と言う経歴のBernanke議長に対する不安はまさにここにありました。あらゆる経済理論やロジックを駆使しても説明できない何かが金融市場にもあるのですが、これを肌で理解していないと思われるBernanke議長が冷徹且つロジカルに現状を分析し、ここで踏み込んだ利下げに踏み切ればモラルハザードが起こると判断する可能性は無視できない状況だったと思います。
 リスク管理の甘かった投資銀行、ヘッジファンド、儲け話に目が眩んでリスクを取った投資家には相応の痛みを経験させることに彼なら躊躇はしないのではないかという懸念があったのです。

そんな中でBernnanke議長が、上述のようなアケデミア的見地からすれば踏み込みすぎと感じるほどの金融緩和を断行したことは、私はフェアに見事だと喝采を送りたいと思っています。

市場の評価は二分した状態ですが、どう考えても今回だけは、何をやってもやらなくても、間違いなく評価は二分していたことでしょう。万人を納得させる選択肢は無かったのですし、金融緩和に舵を切るなら中途半端じゃなくやったろうじゃないの・・・・という男気すら見せてくれたような気がするのです。

人気もカリスマもあった前任者の後は大変やりにくいもので、その意味で安倍首相もBernanke議長も少し立場が似ていると書いた事がありました。
 安倍さんは、残念ながら挫折してしまいましたが、Bernanke議長は、今回の市場の混乱を上手く収めれば最終的に前任者同様の名議長だったと言う評価を受ける事だって夢ではないでしょう。

頑張れ、Benちゃん。少なからぬ人々が、今回のあなたの勇気と決断を称えています。

The first cut is the deepest. という最近ではシェリル・クロウも歌った名曲がありますが、これを拝借して最初の利上げで少々市場が混乱したと言う意味で、The first cut is the tempest. というキャッチも考えたのですが、やはり評価が二分していることや、実際に大幅利下げは色々な意味で両刃の剣とも言えるという意味で、海外向けに書いているレポートには、"Cutting both rates" cut both ways. というキャッチを付しました。