2007年10月23日火曜日

Delicate amvibalence of G7 meeting.

週末に行われたG7会合は非常に注目度の高いものでした。

今回も密室会議の中では相当突っ込んだ議論の応酬が在った物と思われますが、最終的な声明文はある意味で最近のG7会合の中でも最も淡々とした内容だったように感じます。

①世界経済の足腰は依然として健全な強さを維持している。
②ただし短期的には一段と景気が減速する懸念に直面している。
③(特に米国の)現状の住宅市場の低迷は相当期間継続する可能性がある。
④中国の人民元はより速いペースで柔軟に上昇する事が世界経済及び中国の利益となる。

要約してしまえばその程度のものでしょう。

ブラックマンデーの20周年とも重なって、週末の海外市場と週明けのアジア市場でも株式市場が大きく売り込まれる展開となりましたが、G7声明文で率直に表明された景気減速懸念に素直に反応したと言う事でしょう。実際に懸念と危機感のみが表明されて、それに対して各国が協調してどうすると言う部分が抜け落ちたような声明文はある意味で失望感を誘ったとも言えるでしょう。

そんな事は百も承知で市場参加者、世界中の投資家達が懸念を共有する中で先進国代表が会合した結果、そうそうたるメンバーが集まって集中討議をし、出てきた結果としての声明文が、

「う~ん、ちょっと難しいね。しばらくは妙案も無いな~」

と言う内容では株も売られますわ。

一方で為替市場では、プラザ合意の焼き直し的な合意がなされる可能性が指摘される中でドルに下落バイアス、円には上昇バイアスが掛かりながらイベントに突入したわけですが、結果として声明文に言及されたのは人民元についてのみで、予想(期待?)された米ドル、ユーロ、日本円などへの言及は皆無でした。

これは正式な参加国である国の通貨への言及は無く、招待はされているものの正式メンバーでは無い中国の通貨にのみ言及したと言う事であり、非常に淡白な声明文であったと言わざるを得ない結果となりました。
 金曜日のNY市場と週明けの市場では、人民元の身代わりに日本円が上昇して輸出企業の収益圧迫懸念から日本株の下落に拍車がかかると言う悪循環となり、株式市場下落=円高という図式が強く意識される展開となりました。イベントに向けて売り込まれてきた米ドルは、対円以外では持続的な買戻しが入っており、結果として円の強さを際立たせる展開となっています。

個人的は、「なんじゃこれは・・・」 という展開ですが、それ以上にG7会合と言うイベントに対して何か物悲しい感傷をすら抱いてしまいます。
 後輩から届いたメールにG7の無力さを指摘する件があり、私も全く同感でした。そもそも現実問題として世界経済を牽引するのはBRICS、イスラム経済、資源国などであり、所謂G7先進国は最早成熟した兄貴分的な存在に過ぎない中で、自分達だけが集まって意見交換をしても最早世界経済に与える実際的な影響力は限られていると言う事です。

G7のUN化現象とでも言うところでしょうか。世界平和などにおけるUN(国連)の無力さは最早存在自体が象徴的な意味しか持たないという状況ですが、実際的な影響力の低下を自覚して当事者のインセンティブも落ちている事と、組織内が不正や汚職の巣窟と化している事とは無関係ではないでしょう。その意味でUN化傾向を強め始めたG7会合の将来に対しては強い懸念を抱かざるを得ません。

そんな自らの限界を自覚してか、素朴なまでに率直な印象だけを残したG7会合でしたが足元の調整が一段落すれば、中期的に商品市場の上昇バイアス、先進国株式市場の下落バイアス、新興経済圏の株式市場の上昇バイアス、米ドルの下落バイアス、欧州通貨、資源国通貨、エマージング通貨の上昇バイアスなどが継続しそうな流れです。日本円については足元の上昇バイアスが数週間は継続するのではないでしょうか。中長期的な円の大幅上昇を見る向きも少なくないのですが、ここはもう少し分析が必要でしょう。この部分の視点に違いについては今後言及して行こうと思っています。