2011年7月10日日曜日

ECB's 2-way theory is under a cloud.

それにしても先進国経済が夫々に行き詰まり感を強めて新興国への期待が強まる中で米国、欧州、日本が夫々違ったアプローチを取ってきた事は興味深いところです。ある意味においてはリスク分散を図りながらの壮大な実験が進行中というところでしょうか。

日本は課題先進国として様々な苦悩を抱えています。人口減少と少子高齢化のトレンドを転換させる有効な手も無いままに天災にも見舞われ、今原発事故への対処と言う重い十字架を背負い始めました。経済的にもバブル崩壊後のデフレ傾向は継続したままであり異例処置だったはずの金融緩和状態も常態化しています。

米国はサブプライムでバブルが弾け、リーマンショックで金融立国の看板も崩壊した後は日本経済の足跡を教科書にしながら、如何に日本の様にならないように日本を真似るかという難しい作戦を展開してきました。日本通のバーナンキFRB議長やガイトナー財務長官がバブル崩壊後に来るのはデフレーションであるという確信から徹底した金融緩和とドル安容認に徹してきたのは日本を熟知しているからとも言えるでしょう。
 現在米国のカードは時間軸であるように見えますが、日本のように量的緩和をダラダラ常態化させない分短期集中的に強烈な緩和を断行してきたと言うのが所謂QE1,QE2までの動きでしょう。

欧州は両睨み作戦を展開してきました。可能であれば美味しいとこ取りをしようという作戦です。ギリシャなど周縁国支には”必要悪”として非伝統的な財政援助や緩和的な資金供給が必要であるとしながらも従前からのインフレファイターとしての仮面も被り続けると言う両面作戦です。今回も利上げを行いましたが資金市場への緩和的な資金供給は継続すると言う'構えを取っています。

ECBはMain Refinancing Rateを25bp引き上げて1.5%としました。2008年3月以来の高水準であり今後の物価上昇圧力次第では追加利上げの可能性も示唆しています。    
 この利上げ後にEURは上昇していますが、週末にかけては反落してしまっています。これは周縁国の財政難リスクが再び表面化し始めていることが背景になっています。

格付会社Moodysはポルトガルの信用格付けをBa2(=ジャンクレベル)に引き下げました。ギリシャの支援策に民間投資家の関与が含まれていることにも強い懸念を示しています。市場にはアイルランドの追加格下げの観測も根強く、先週はポルトガル、アイルランド、ギリシャのCDS(Credit Default Swap)は最高値を更新し、特にポルトガルのCDSの水準は5年後の財政破綻リスクを50%以上とする水準になっています。


 普通はこういう時は利上げ等出来ない訳ですが、今の欧州の両睨み作戦(2-way theory)においては、”それはそれ、これはこれ”という割り切りが起きていると言う事でしょう。


EURUSD DAILY

市場はこの2-way作戦に振り回されていますが、徐々にこの2-wayの状況自体を問題視し始めていると言う気がします。