先週の金融市場も色々見せてくれました。
* 実体経済減速を裏付ける経済指標
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* 自動車業界Big3(GM,Ford,Chrysler)CEOによる議会への公聴会の不評
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* 株価下落、金利低下、円、米ドルへ資本還流
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* オバマ政権の閣僚人事への期待で株価反発
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* 週末にオバマ次期大統領による追加の景気刺激策と雇用創造計画の発表
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* 今週の市場による評価に注目
大体イメージとしてはこんな感じでしょうか。
1 実体経済減速を裏付ける経済指標
世界中どんぐりの背比べ状態ですが、先週の米国の主だった物のみ拾ってみましょう。
・10月CPIが前月比▲1%(予想は▲0.3%)、1947年の同指標の計測開始以来最大の下落。
・コアCPI も▲0.1%でコアの前月比マイナスは1982年以来。
・10月PPIも ▲2.8%で1947年の計測開始以来最大の下落。
・11月Empire State 製造業指数が史上最低の▲25.4に下落。(ただし予想よりはよかった)
・11月Philly Fed index が1990年以来最悪となる▲39.3 まで下落。
・11月NAHB builder confidenceが10月の最安値14から新最安値となる9まで下落。
・10月住宅着工 が4.5%減の年換算791千件となり1959年の計測開始以来最低を更新。
・建設許可件数も12%減少の708千件で、少なくとも1960年以来最低。
・新規失業保険申請件数は1992年以来最大の542千件に上昇。
・継続申請件数は1982年以来初となる4百万件を超過。
欧州も似たような物であり、英国も11月6日に150bpの利下げを行い政策金利を1955年以来最低となる3.00%まで引き下げていますが、その後の議事録では200bpの利下げまで議論されていたことが判明して史上を驚かせています。スイスも100bpの緊急利下げを行うなど欧州経済も米国経済と歩調をあわせるように縮小の一途を辿っています。
2 自動車業界のBig3(GM,Ford,Chrysler)CEOによる議会への公聴会の不評
先週行われた米国自動車業界の所謂Big3、GM,FORD,CHRYSLERのCEOを召集して行われた米議会によるヒアリングは大きな注目を集めましたが、公的資金による救済を求める3社に対する大きな疑問と反感を残して終了した格好となり、一歩も二歩も後退してしまった印象があります。
3 株価下落、金利低下、円、米ドルへ資本還流
このような寂しい状況を受けて先週はS&P500が$752.44の11年振り最安値まで下落。Dowも$8,000のサポートを割り込んで$7450台まで急落しました。原油価格も1バレル$50のサポートを割り込んで再び資産市場のImplosionが進行しました。為替市場では“Money back to centers”の潮流が復活して米ドルと日本円が上昇してドルインデックスが88.46の高値を取り、今回も円の強さが米ドルのそれを上回ったためにドル円は93円55銭まで上昇しました。
19日の原油の$50割れというのも印象的です。1バレル当たり$150突破寸前から折り返して短期間で$50割れですからある意味ではこれが最もこの1年数ヶ月の出来事を象徴している市場の一つなのでしょう。この日にガソリン先物も2005年10月に指標が現在の計算方法に改定されて以来の最安値を更新しています。
4 オバマ政権の閣僚人事への期待で株価反発
金曜日の終わり方次第では世紀末的な雰囲気が一気に拡大した可能性があり、実際に日中は非常に危ない局面も多々ありましたが、オバマ次期大統領の下で注目される閣僚人事においてNY連銀総裁のガイトナー氏の財務長官就任が濃厚との報道を好感した株式市場が大規模な反発を見せて終了しました。ダウが$500弱の反発を見せて鬼門の$8,000も回復し$8,046.02で終了しています。
ガイトナー氏は40台でオバマ氏と同世代であり、これまでもNY連銀総裁としてWall Streetの事情にも詳しく、ベアスターンズやリーマンブラザーズの処理にも辣腕を振るった人物であるところが好感されていると思います。オバマ陣営の経済顧問チームの首領的な存在である元FRB議長ボルカー氏の就任が有力視された時期もありましたが新しい米国を印象付ける意味でもガイトナー氏の就任は個人的にも期待したいところです。
5 週末にオバマ次期大統領による追加の景気刺激策と雇用創造計画の発表
因みにアジア外交におけるスタンスも気になるオバマ政権ですが、ガイトナー氏はアジア通であり、中国語は不自由なく、日本語もほぼ問題なしと言う事ですので大いに興味ありですね。他にもどうやらヒラリー・クリントン女史が国務長官を受けそうな流れですし、オバマ政権は実力のあるスタッフを集めることが出来そうな期待が高まっており、希望を紡ぐ事により米国の士気を高め、維持することが出来るかもしれません。(多分に期待込みですが・・)
さて、オバマ政権は週末の間に追加の財政出動による需要の創造を発表しています。公共事業的な社会インフラ整備を基本に教育改革などにもお金を注ぎ込み、住宅オーナー支援、大規模な雇用創造、そして先週株価急落による危機に見舞われたCitiグループへの200億ドルの追加の資本注入も合わせて発表しており、週明けの金融市場でこれらがどれだけ好感されるかに大きな注目が集まります。
6 今週の市場による評価に注目
現状は世界経済も金融市場も土俵際まで追い詰められた状態と考えられます。
20日の木曜日には、S&P 500 の構成銘柄のうちの実に101銘柄が$10を割り込むという1980年以来となる寂しい状況となりました。馴染みの深いところでもCitiグループ、スターバックス、モトローラなどのかつてのスター銘柄が$10未満のグループに含まれています。特にCitiグループは木曜日に$5割れ、金曜日に$4割れとなっています。
金曜日と週末の材料により今週は前半に市場は一息付きそうな気がしますが、金融市場の主要な潮流は資産市場の縮小と投資資本の逆流(還流)による円高、ドル高の断続的な加速にあると考えています。
米国の自動車、金融のみならず世界中で各国の繁栄を象徴し代表するような産業や企業までをも巻き込んだ生き残りをかけた生存競争が始まりました。