先週は、木曜日がThanksgiving休暇(感謝祭)で北米市場が休場だったこともあり各市場とも週を通して比較的小刻みな値動きが続きました。
そんな中で幾つか目立った動きをピックアップすると、週を通して株式市場が底固い展開を維持した事、投資家のConfidence改善を示唆する動きを背景に週前半はドル売り、円売り圧力が先行した事、特に米国の金利低下基調が鮮明化した事、週の後半には欧州経済の失速も鮮明となり対ドル、円で上昇していた欧州通貨が大きく落ち込む格好で週を終えている事、等が目を引きます。
このうちの幾つかを詳しく見てみましょう。
1 底固さを見せた株式市場
先週の米株市場は感謝祭休日の木曜日以外は全営業日でプラスとなり、先々週の金曜日から先週の金曜日まで5営業日連続のプラス。且つ21日(金)~26日(水)までの4営業日の上昇幅の合計は連続する4営業日合算ベースでの上昇幅で記録更新となりました。Black Fridayと呼ばれる感謝祭明けの金曜日も文字通りの「黒字」を記録して終了です。
2 米国金利の低下 : 資本流入が止まらない米債市場
これも重要な動きです。金融業界、自動車業界と米政府によるBail-Outの対象は拡大を続け、流動性供給スキームを拡充する連銀のバランシートも受け入れ対象資産を学資ローン、自動車ローンを担保とするABSにまで拡大する事になりました。
今後湯水の如く米ドルが金融システムに供給されるという環境整備が行われている訳ですが、そのうち誰も米国債を買わなくなるという恐怖シナリオが跋扈する中で実際のマネーフローは米国債市場に津波のように流入すると言う皮肉な動きが鮮明化しています。
以下のグラフからも明らかなように米国の長期金利は低下傾向を鮮明にしています。
一方で、実際に金融機関同士が市場で短期、中期で資金を融通し合うLIBOR金利はG20当局の思惑ほどの低下は実現していません。
FRBがFF金利を下げて、信用市場が一定の改善を示してもある時点からは実際の調達コストは下げ渋っています。次のチャートはFF金利と3ヶ月、6ヶ月のLIBORの動きを示しています。
週明けから12月に入りますが、年末越えの資金繰り懸念が再燃して銀行間の取引レートが急上昇する展開にでもなれば、市場実勢金利とT-BONDイールドの乖離幅の拡大や資金調達圧力による短期金利の上昇と米債購入による長期金利の低下によるイールドカーブの歪みが新たな市場混乱をもたらすリスクも否定出来ません。
3 欧州通貨の失速
週前半であれだけ堅調だった欧州通貨ですが、米国の感謝祭明けの金曜日に発表された欧州圏のインフレが急低下していた事で週末に大幅反落と言う展開となりました。
11月の欧州圏のインフレ指標が10月の3.2%から2.1%まで急低下しており、この低下幅は1991年以来最大の下落になります。これを受けて週前半を1.30半ばで折り返したユーロの対ドル相場は1.27割れまで下落していますが、来週のECBによる値下げの注目度が急上昇と言う流れとなりました。
4 円の気迷い
気迷い的なSWING相場に入った感のある円ですが、欧米要因で円高圧力、国内主要企業の業績の急ブレーキや政治の迷走は円安要因、機関投資家の外国投資の引き上げ圧力の上昇は円高圧力、M&A戦略による生き残りをかけた国内企業の外国企業買収は意外と根強い円安圧力となっており、12月はこれらの奇妙なバランスが崩れればちょっとしたVolatilityの上昇局面があるかもしれません。
どんな年末になるのか、興味深いところです。