2007年7月29日日曜日

The other side of the convex lense.

週の後半の金融市場ではちょっとした嵐が吹き荒れました。

日本のメディアを見ていると、米国のサブプライム問題への一層の懸念を背景にドル安になっていると言う報道が目立ちますが全くの出鱈目です。
 
今起きている事は、金融市場における広範囲な資本の逆流であり、根底にあるのは、所謂Risk Aversion/Reductionと言う事になります。つまりは、先行きの”不確実性”、”不透明感”の上昇を受けて皆が一斉に足元のRisk(=Portfolio)を縮小する動きに出ていると言う訳です。

①潤沢な流動性、②信用供与の拡大 を両輪に莫大な投資資本が世界中のあらゆる資産市場に流入し続けて一部のアジア株は既に今年に入って50%以上の上昇をするなどの資産バブルが発生していました。

この状況下において、”①潤沢な流動性”の最大の供給源だったのが日本円である一方で”②信用供与の拡大”に関しては主に北米市場で起きていた話です。つまり投資資本の調達は円で行われる事も多く、一方で実はRiskMoneyの大半は北米のヘッジファンドなどを経由してレバレッジが掛かった状態で(=実際の数倍~数十倍の規模に膨らんで)世界中の資本市場に流れ込んでいたと言う訳です。

この過程においては、当然ながら日本円、米ドルは為替市場では売られる通貨であり続けたわけですが、今はこれが逆流する動きの中で米ドルが上昇し、更にそれ以上の勢いで急速に円の買戻しが進行していると言うわけです。実際に米ドルは対日本円以外ではかなりの急上昇を見せており、専門的になりますがドルインデックスという指標も爆騰中です。

そんな米ドル以上に円が強いとどうなるかを示しているのが、所謂クロス円の一大調整大会です。
主な通貨が数週間前につけた対円での高値と金曜日の水準を比較してみましょう。

ドル円 : 124.14 → 118.02
ユーロ円 : 168.88 → 161.70
STG円 : 251.11 → 240.15
AUD円 : 107.73 → 100.95
NZD円 : 97.79 → 90.90

これは、暴落と言ってよい動きです。

所謂グローバリゼーションという現象の進行により、世界中が同じ土俵や尺度で語れる時代となった結果、企業活動や投資対象の幅も急拡大し、呼応するように信用創造、信用供与という機能も急速に強化拡大してきました。
 世界資産バブルというのは、このような基礎・土台の上に成り立ってきたと言えるのですが、特に信用創造・信用供与機能の上昇が、レバレッジの拡大をもたらしていただけに、この部分を直撃したサブプライム問題は、レバレッジ機能の急速な収縮(=Deleveragingと言います)の引き金を引いたことになります。

そう、皆がお金持ちになって世界中の資産市場で一大投資ブームが起きていたという理解は正しいのですが、実は本当の資本は投資額の数分の一、下手したら数十分の一程度であり、我々が年単位で目撃してきた巨大資本の激流は、実はデフォルメされた映像でもあったわけです。

新時代の幕開けと思われたのは、凸レンズで拡大された映像だったと言う事になりますが、今はその凸レンズの向こう側からこちら側に資本が戻ると言う”資本還流、Repatriation”の動きが世界金融市場に暴風雨をもたらしているのです。

日曜日はいよいよ参院選の投票日。選挙結果次第では間違いなく暴風雨が強まりそうです。早めに投票をしないと、先ずは天気からして荒れそうだとの予報なのですが、どうなることやら・・・・・・・・