2007年12月26日水曜日

Post X'mas Brain Workout.

クリスマス相場の中で、要するにヒマだったのでしょう。もともと仕事とは直接関係の無いコールやメールも飛び交うのがこの時期の特徴でもあり、クリスマスや年末の挨拶が多いのですが、中にはクイズのようなものを送りあったりする事もあります。今年は次のような"命題"を送ってきたファンドがありました。

決して秀作とは思いませんが、ちょっと考えてみてください。

Imagine that you are stuck (naked) alone in a room with 5 feet thick concrete/steel walls, reinforced floor and ceiling with NO door and NO windows.
 
There is nothing in the room.

So how do you get out of this situation in a snap, even though you are no James Bond.

私は、30分考えても駄目だったので職場の同僚達をも巻き込んで必死に考えました。色々な仮説が出ましたが、全て不正解。一時間以上経過したところで、"答えは一行目にある"と言われて遂に正解に辿り付く事が出来ました。

Imagine をやめればよい : それが答えでした。

"決して秀作とは思わない"と書いたとおり、喜びというよりは何だか時間を無駄にしたような脱力感すら感じたのですが、どうせならもう少しひねりが欲しかったと思いませんか?

・これでは目からうろこが落ちる代わりに、鼻から鼻くそが落ちるだけだ。
・Imagine をやめるなんて、John Lennon が激怒するぞ。

そう抗議(?)したところ、彼は笑って、申し訳なさそうに色々教えてくれましたが、その内容が共感出来る物でしたので私もこの決して秀作とは思えない命題をここに転記する事にしたのです。

・この命題は、年齢層が上がるほど正解率が下がる。
・"Imagine をやめる"という回答は子供達からはよく出てくるが、大人からは殆ど出ない。
・Naked とか、窓やドアが無いというNOを大文字にしたのは読み手の注意をそらすための小技。

と彼は教えてくれました。

人間は成長するほどに世の中が複雑である事を理解して受け入れていく訳ですが、一方で問題解決の姿勢の中で最も単純な可能性を最初から切り捨ててしまったり、"そもそも論"を置き去りにして細部の技術論に走ってしまう傾向を強めてしまうと言う事なのでしょう。
 面白かったのは、我々が知恵を絞った一時間以上の間に、まさに注文どおりにNaked である事に意味があるのではないかとか、NOを強調しているのは気になるが、これはドアや窓という物が無いわけでそれらがあるべき場所に穴が開いているということではないかという珍説が出たましたし、私などは5feetというのは5本足という状態で、どうせImagineの世界なので自分も人間ではないのではないかなどと考えていました。(笑)

実は丁度最近子供が学校から持ち帰る試験の問題などを見ても感じていた事があります。本来理解しておくべき事項の理解度を素直に問うと言うよりも、色々複雑な前提条件(ノイズ)を与えて混乱させるような設問が少なくないように感じているのです。うちの子供の場合は設問の日本語に困惑していたというケースも多く見られるのです。今更"お受験"などは考えていないので帰国子女が英語力を維持する塾にのみ行かせているのですが(あ、これはまだ書いていませんでしたね。今度書きましょう)、そこの宿題をやっている時の方が随分明るいようなのでちょっと考えさせられています。

話を戻しますが、我々は知識面でも技術面でも色々な事を知りすぎているが故に、時として最も基本的な部分をSKIPしてしまう傾向があるのかもしれません。
 長年金融市場に参加していると、情報ソースも増え、やがて多くの知識や着眼点を手に入れることが出来る一方で、最初に感じる直感、フィーリングなどは一旦SKIPしてしまう傾向も強まってしまうのではないかとも感じる事があります。

恐らく同様のジレンマを感じたのでしょう。この直感力の衰えを防ぐためかある後輩は少し前から情報交換先や情報ソースの整理に動き始めたようです。
 市場でリスクを取ると言う事はとても危険であり、怖いことです。少しでも勝率を増やすために少しでも多くの情報が欲しい、少しでも安心したいし、少しでも自分の戦略の裏付けを増やしたいが為にひたすら情報交換先や情報チャネルの拡大・充実に努めてきた人間がある時点でその弊害にもぶつかり、熟慮の末にバランスを取り始めると言うのは不思議ですね。

これは、人類の幸福、進歩の為に産業育成・推進に従事してきた人類が、地球温暖化や格差の発生・拡大という弊害を認識して少しバランスを取ろうとし始めているという現象にも通じるものがあるのかもしれません。

Think globally, act locally. と言う言葉がありますが、今日の脈絡では、Think like an old professor,act like a young kid. という感じでしょうかね。

原点回帰的なレビュー。 年末年始はそれのよい機会かもしれません。