2010年2月28日日曜日

Behind the glory and prosperity....

最近気になっていることの一つに米国のAggressionがあります。

オバマ政権は前Bush政権の高圧的な押し付け外交の結果として米国は世界中に敵を作ってしまったばかりか友人達の一部も失ってしまったと言う反省から政権発足時から対話重視路線を前面に押し出して来ました。

当初は世界中から歓迎されて出だしは順調でした。キューバやベネズエラとの距離も縮まり、ロシアや中国とも軍縮や経済面でも歴史的な合意に達する可能性すら感じたものです。
 しかしこの対話路線は徐々に米国の影響力を削ぎ落とし、やがて中国なども全く言う事を聞かない態度を露骨に示すようになってきました。イランは堂々と核開発を継続し、北朝鮮問題も進展なし、地球温暖化問題などでは中国が新興国を取り纏める形で欧米日の意見に真向から対立してくるという事態に直面し、柔軟な対話路線の見直しと軌道修正を余儀なくされてきたのだと思います。

「舐められて終わる訳には行かない」という発言にもあるとおり、オバマ政権下の米国の攻撃的な態度は過激性すら感じることもあります。台湾への武器売却、ダライラマとの会談などは中国への反撃ですし、日本のメディアはあまり取り上げていませんが最近はイランなどにもかなり危険なシグナルを送りつけています。

所謂TOYOTA問題ですが、この問題も明らかにこの枠組みの中で考えた方が良い問題だと思っています。先週豊田社長が公聴会に招待されていましたが、そもそもこの手の問題で米国の事業を取り仕切る現地の代表ではなく外国の本社から社長を呼びつける(形の上では招待ですが)のは前例のない事だそうです。そもそも外交面でも経済面でも米国の状況が今よりも良ければここまで問題が大きく取り上げられる事は無かった可能性が高いし、また普天間問題などでここまで米国を怒らせていなければTOYOTAに目をつけられることも無かった可能性もあると思います。

昔から米国は、日本と中国が接近することを好まず、歴代政権は親日・反中(主に共和党)か親中・反日(主に民主党)のどちらかのスタンスを踏襲してきました。民主党政権であるオバマ政権は案の定発足当初から親中姿勢を取り、鳩山政権が誕生してからは明確に日本への態度を硬化させてきていました。TOYOTA問題は非常にタイミングも悪かったと言うことになります。

公聴会ですが、私は豊田社長は十分に男気を見せたと思います。一般メディアからの出演要請も積極的に受けて立っていましたが、ラリーキングライブ等にも出演した際には、「この状況を創始者であるあなたの祖父はどう見ていると思うか」などとかなり意地悪な質問も受けていました。
 私だったら、「彼はもうとっくに死んでいるので見ていないだろう」とか「私の祖父はあなたのような人ではなかった」とか言っちゃうと思うのですが、一般メディアまでこうなっちゃうと言うところが米国のどこかおかしい部分ではないでしょうか。そもそもイラク戦争にしてもサブプライム問題にしても米国の場合は車どころか国全体のブレーキが故障していた訳ではないのでしょうか。

この公聴会などを無事に終えて事態が沈静化すると見ていましたが、わざわざ公聴会の後を狙っていたかのように新しい動きが出来ました。米国トヨタの元社員で法務課に勤務していたと思われる米人弁護士が同社に問題を隠蔽する体質があったとメディアや国会議員に告発しているのです。
 この問題は収まりかけた火種に新たな薪をくべる可能性もあり、今後は具体的な問題の隠蔽事例や隠蔽の判断や支持が現地の判断なのか本社の支持だったのかというところが焦点となるリスクがありそうです。

こういう情報を告発する、たれ込む、という行為を笛を鳴らす⇒ blow the whitsle と表現することがあります。告発者、垂れ込み屋という名詞は whistlerです。
 
こういうのは怖いなーと思いながらバンクーバーの冬季オリンピックゲームを見ていたら、関連記事で面白い情報がありました。
 各種アルペン競技の熱狂の舞台となったのが The Whistler Blackcomb Ski Resort というスキー場なのですが、今私がこのBLOGを書いている時点で既に競売にかけられています。Intrawest ULCという開発業者兼所有者がバブル崩壊後の資金繰りの為に2月19日までに売却することになっていたのですが債権者の好意により流石に五輪競技開催中の競売は回避して27日まで延期されていたということです。

こちらのWhistlerが告発(?)しているのは何でしょうか? 私には最悪期は脱したかに見えている世界経済の二番底はまだ先にある・・・・世の中のDe-levrageプロセスはまだまだその課程にあるのだという事実であるような気がしてなりません。

我々は正直に真っ直ぐに生きて行きたいものですね。笛は吹いてもホラ吹くなという感じでしょうか。

欧州は、「呉越同舟」から「同床異夢」へ

このBLOGにも書いたことがありますが、欧州の歴史と言うのはまさに占領と殺戮に血塗られた歴史であり、とにかく戦争を繰り返さない体制を構築するのが欧州連合(EU:European Union)の最大の目的でした。中でも最も強くて残忍だったゲルマン民族の取り込みこそが最も肝要であったと言われています。

かつての政治、文化の中心地であったギリシャやイタリア、欧州の覇者でもあったポルトガルが国家破綻のリスクに直面しておりかつては欧州内でも蔑まれていたドイツの援助を期待せざるを得ないと言うのはまさに歴史の皮肉と言える訳ですが、ここへ来て先週あたりの動きを見てもかなり欧州内の混乱が悪化しているようにすら見えます。

月末且つ週末と言う事で需給が注目された金曜日にユーロが反発していますが、これはまさにゲルマン民族(ドイツ)からドイツ復興金融公庫にギリシャ国債を購入させる救済案が示されたことによるものですが、まだまだ解決への道のりは相当遠いように思われます。以下に主要なポイントを挙げておきます。

1 民族間の感情問題が復活していること。

これには驚きも感じますが、EUから財政再建策の提出を求められたギリシャ政府の副首相からナチス時代のドイツの戦争犯罪を糾弾する発言が出たり、財政状態の粉飾に関してはイタリアの方がもっとえぐいことをやっていると言う発言が出るなどギリシャ政府レベルにも一種の逆切れ的な言動が出始めています。

2 ギリシャ政府の逆切れと国民の反発

なぜいい加減な財政運営で問題を招いたギリシャを自国の税金で救済しなければならないのかと言う反発がドイツの世論調査などから伺えますが、一方で財政再建の為に痛みの共有を強いられる財政再建策を政府から示されたギリシャ国民の反発も強く、何とギリシャでは官民合同のゼネストが起きてその一部が暴徒化してしまいました。

3 PIIGSの問題

ジョージソロスが指摘している問題ですが、ギリシャが救済されるかどうかは実はあまり大きな問題ではないと言っています。つまり、ギリシャを救済すれば必ずポルトガルやイタリアなども救済を求めてくると言うことです。ギリシャを助けておいてイタリア、ポルトガル、アイルランド等を救済しないというのは道理が通りませんし、ベアスターンズを救済したのにリーマンブラザーズは救済しなかった結果米国が世界中を大混乱に巻き込んだことは記憶に新しいところです。ソロスも問題の拡大は不可避だと指摘している訳ですね。

このような状況を見ていると、「呉越同舟」状態で誕生したEUというシステムはいまや「同床異夢」という状態に陥っていると思えてなりません。

では同床異夢の中で本来の目的である互助会的な機能は果たせるのか?・・・・と言うことを考えていたら面白いことに気が付きました。

元々経済的に他国を救済出来る体力があるのはドイツとフランスの二国です。しかしより体力のあるドイツとギリシャの間には感情的な関係の悪化が明白になってきており、今後はフランスの動向が大きな焦点になってくる可能性が高いのではないでしょうか。超目立ちたがり屋のサルコジ首相にとっては願ってもないことかとも思いますがフランスの世論がドイツ同様のものであろうことは想像に難くありません。

そこで・・・同床異夢 ⇒ 同床イム  どうしょうイム  どうしよう・・仏(フランス)

というのを考えました。  ちょっと脱線しちゃいましたね・・・

Seeing a yen for YEN.

ギリシャ問題に揺れる欧州の動向や旧正月休暇明けの中国市場の動向に注目が集まった先週の金融市場はかなりの乱高下相場となりました。

GOLDWeekly Chartから覗いてみましょう。前週、前々週と上昇してきたGOLDですが、先週は長い下髭を残しながらも陰線で引けているのが目に付きます。

GOLDのポイントは究極の資産であると言うことでしょう。俗世の先行きに関する不透明感が上昇するとRISK-OFFと表現される潮流の強まりからあらゆるリスク資産から安全資産への資金還流が起こります。概念的には以下のイメージです。

RISK-ON : 安全資産  リスク資産 への資金移動

RISK-OFF : リスク資産  安全資産 への資金移動

では、何が安全資産で何がリスク資産なのでしょうか? 実はここが大きなポイントなのです。一般にはこういう分類になると考えてよいでしょう。

リスク資産 : 株式、不動産、大部分のコモディティ、社債、派生商品(デリ

        バティブ)、新興国市場 etc

安全資産 : 現金、先進国の国債、ごく一部のコモディティ

GOLDの場合は実はこの両者の間を行ったり来たりしているイメージなのです。他の貴金属同様にリスク資産に分類されるケースもあれば、最近では将来の世界的ハイパーインフレーションへの懸念などを背景とした通貨不安から現金以上の究極の安全資産とみなされる風潮も強まってきています。

つまりGOLDに関してはRISK-ONでもRISK-OFFでも買われる理由があると言う状況にあり、事実昨今の欧州の混乱を受けて通貨としてのEUROから引き上げた資金でGOLDを買うと言う動きが活発化したことからGOLDは欧州混乱の受益者となってきました。しかし前述の通り先週のGOLDは陰線で終了しています。

では、EUROは買い戻されてきたのでしょうか?これが実は結構微妙です。

EURUSDWeekly Chartでは週内の乱高下を消化して先週は開始値と最終値が殆ど同じと言う往来相場となっています。

いったい世の中、金融市場は落ち着きを取り戻し始めているのでしょうか?

答えを持っている可能性があるのは日本円かもしれません。

USDJPY Weekly Chart

EURJPY Weekly Chart

ご覧の通り、株式市場、商品市場、欧州通貨と米ドルの関係が少し落ち着き始めているかのように見える中で、次の混乱の足音に警鐘を鳴らすかのような不気味な陰線が出まくっているのがドル円、クロス円のチャートなのです。

駄目押しにGBPJPYも出しておきましょう。(Weekly凄い円高ですね。

実はここへ来てギリシャなどのソブリンリスクが上昇する中で海外勢を中心に日本のソブリンリスク上昇懸念から現行の円の水準が高すぎると言う指摘と共に今後大きく円安方向への大転換が起こると言うシナリオが増加しています。今回の円高はそれを嘲笑うかのような現象であり、まだまだ多くの市場参加者は何か重要なものを見失っている、或いは見誤っているという事を示唆している可能性があります。

明日からの3月相場では円の動向からも目が離せませんね。

日本円はJPYやYENと表記されますが、YENは普通の可算名詞として使用される時には”憧れ、渇望、欲求、需要”と言うような意味になります。今の円高には多くの市場参加者が解明し切れていない円需要が隠れている可能性があります。

まさに A yen for YEN is getting momentum. と言うことです。円だけに360度の注意を払いたいですね。

2010年2月22日月曜日

Collusion of charts

以下はEURUSDDailyチャートです。最後の5本のロウソク足が先週の月曜日から金曜日と言うことになりますが市場のドタバタ振りが目に付きます。

月曜日の小さな陰線の後に大陽線(火曜日)と大陰線(水曜日)が続き、木曜日に大陰線で続落しますが金曜日には大陽線が出て全戻ししています。

大きな流れは完全に右下がりのベアトレンドですが、投機筋のショートポジションが急拡大している為に大きな反発も起こり易くなっているという状況ですね。

こちらはGoldDailyチャートですが、先週はEUR23敗に対して41敗と陽線が4本立っており、やはりUSD高というよりはEURベアな相場なのではないかと思わせます。

USDCADDailyチャートもImpressiveですね。(CAD=カナダドル)

先週はUSD23敗ですが、金曜日の陰線の大きさからもCADに対するUSDの弱さが明白でしょう。

ドルインデックスは強い。EURは弱い。金やカナダドルは強い。こうなれば欧州通貨とカナダドルや豪ドルなどのコモディティ通貨のクロスに大きなトレンドが出ていそうだと言う事になりますが、実際に例えばEURCADはこんな感じです。

AUD,NZD,CADといったCommodity producing currencyは確かに強いのですが、これはRisk-on的な動きに持ち上げられやすいのと主要国の金融緩和政策の長期化により上昇している根強いインフレーション懸念へのヘッジで商品市場への資金流入が続いていることが背景と言えそうです。

中長期的にはドルインデックス上昇もEURの下落も相当先があると見ています。ただ足元は一旦結構な逆流があるかもしれない状況ですし、ここは一旦単純なドルロングやユーロショートではなく欧州売り/商品買いの通貨スプレッドを長期間持ち切るという戦略が機能しそうな気配ですね。

2010年2月21日日曜日

Cllision of currents.

先週の金融市場も色々な動きがありましたね。

どこの市場も結構なドタバタ劇を演じているのですが、総合的に分析すれば現時点では主に二つの潮流が主導権争いをしているように見えますが如何でしょうか。

1 欧州の混乱継続

ギリシャの財政問題は深刻さを増していますが、EU(欧州連合)として何らかの形で救済の手を差し伸べる事は確実視されています。先週初めに行われた欧州首脳会議に注目が集まりましたが、ここでは具体的な救済方法は示されずギリシャに3月中旬までの期限を与えて自助努力の策定と過去に行った不透明な金融取引の詳細の説明をするという宿題を突きつけて時効の中断を図りました。

ここで言う過去の金融取引というのはギリシャ政府が財政の赤字を粉飾するために行っていたとされるデリバティブ取引のことで、これまでに Bond Swapですとか単純に為替取引というような記述がなされていました。ギリシャ政府は少なくとも成約時には合法であったと主張すると共に他国だってやっているはずだと言う爆弾発言を行っており、これのせいでイタリアなどに疑惑が飛び火してしまいました。今回の欧州危機は依然出口が見えてきません。

2 FEDの公定歩合引き上げ

木曜日の北米市場のクローズ前に突然FEDが公定歩合を0.5%から0.75%に引き上げました。実に20066月以来の公定歩合引き上げはその意外な実施タイミングと併せて金融市場を大きく揺さぶりました。FEDは金融引き締めを意味するものではなく正常化の一環であることを強調しており、事実Discount Windowと呼ばれる制度を通してFRBから融資を受けている金融機関は数も金額も極めて小規模であるために経済的な影響は非常に限られると言う指摘も多いのですが、やはりそのメッセージ性、シグナル性から来る影響は大きく市場は今年の11月までに50bpの利上げを完全に織り込んだ水準にまで市場金利を押し上げてしまいました。またドル金利のイールドカーブは短期金利が反発する格好でフラット化しています。

3 ソブリンというテーマ

2010年の大きなテーマの一つがソブリンリスクであるというのは決して新しい話ではないのですが米国、欧州、日本の国としての債務履行能力が規模的な限界に近づいていると言う危機感から足元のドル上昇トレンドの合間を縫うかのように財政黒字国の通貨が買われる動きが目立ち始めました。投資に詳しい人ならグローバルソブリン債を知っていると思います。金融危機を受けて民間の債務を敬遠して国の保証が付いている債券を集めて商品化したもので相当な売れ筋商品でしたがここへ来てかなり資金が流出しています。ギリシャ、ポルトガル、スペイン、イタリア、アイルランド・・・そうそうたる国々の債務返済能力に疑問符が付されたことや財政実態を不透明化するデリバティブ取引の存在が表面化したことなどから無理もないとも言えますが事態の動向によっては今後とんでもない問題に発展する可能性もありそうです。

1のテーマに関しては混乱から安定へ

2のテーマに関しては金融緩和政策の出口政策実施の遅延国から着手国へ

3のテーマに関しては赤字国から黒字国へ

そんな潮流が市場トレンドとしての主導権争いをしていると言うのが現状の鳥瞰図ではないでしょうか。

今週は旧正月明けの中国市場が1週間振りに取引再開となりますが、こちらも預金準備率引き上げ後の初取引となりますのでその動向は大きな影響力を持つでしょう。

2010年2月14日日曜日

Fell from Grace?

Fall from Graceと言うことで書いたばかりなのですが、カルガリーオリンピックの開会式(中々良かったですね・・)を見ていて複雑な気持ちになりました。

各国選手団の入場式を見ていたのですが、入場行進の順番は基本的にアルファベット順(北京五輪では国名の漢字表記の画数順だったそうです)なのですが、例外として開催国の選手団は一番最後ということになり、今回もカナダの選手団が一段と大きな声援に包まれていました。

もう一つの例外がオリンピック発祥の地としてギリシャが先頭で入場してくるということです。考えてみればギリシャは長く政治、芸術、スポーツ、学問、総合的国力とあらゆる意味で世界最高峰であり、世界の中心であった訳ですね。

そのギリシャが今破綻の危機に直面しており、ドイツからの直接援助、或いはドイツを中心としたグループからの援助をがなければ存続が難しくなっていると言う現状との比較は強烈なコントラストではないでしょうか。しかもドイツと言えばかつては欧州の中の最も野蛮な国と民族であった訳で、欧州内では”ゲルマン民族のように野蛮な”と言うような慣用表現もあったそうです。

欧州連合の本当の目的は戦争を無くすためだったと言われていますが、実際にお互いに征服と殺戮を繰り返してきた欧州の歴史を考えると戦争を無くすために最も野蛮なゲルマン民族をいかに取り込んでContain出来るかが重要だったと言う説は説得力を持ちます。

今はそのゲルマン民族が欧州経済の中心として如何に全体を救済、サポート出来るかが焦点となっている訳ですね。

栄枯盛衰と言ってしまえばそれまでですが、悠久の時空の推移の中で歴史はダイナミックに動いていると言うことを痛感します。

そもそもがGraceという単語もGreekと同一語源である可能性すらあるのではないでしょうか。

ギリシャ頑張れ! という気持ちになりますね。

Fall from Grace.

金融市場とて大きな意味での社会の一部です。社会現象として大きなトレンドが出ている時には金融市場もそれに呼応した波動が発生します。

逆に言えば、金融市場で起きているトレンドのポテンシャルの強さを計る際には、同様の現象が社会全体で起きているか、起き易くなっているかという視点も必要なのかもしれません。

そういう意味では、もう何ヶ月も頭の中に鳴り響いているのが今日の表題でもある Fall from Graceです。これはかなりの高みにまで上り詰めた人や勢力が唐突に紙の寵愛を失ったかのごとく転落するという意味の慣用句です。

既に起きている事で言えば、①自民党政権の崩壊、②タイガーウッズのスキャンダル発覚と名誉失墜、③朝青龍の復活優勝一転引退、④ユーロの最強通貨から最弱通貨への転落、⑤JALの失墜、⑥トヨタのリコール騒動・・・等があります。

またこれから起こる可能性があることとしては①中国経済のバブル崩壊⇒アジア全体の失速、②金価格の暴落、③危機を脱して大復活したかにGoldman Sachsの弱体化・・等があり、政治では小沢一郎氏の大幅な影響力低下などのリスクもあるのではないでしょうか。

今後も相当期間に渡り、社会全体で番狂わせや想定外の展開が待ち受けていることでしょう。

デリバティブの世界にいる人々は、Volatilityは安い時には確実に買っておくという戦略をメインに据えつつ機動力を保っていくと言うことが肝要ですね。

Solidality challenged by Alienation.

EU=European Union=欧州連合の屋台骨が揺らいでいます。

以前、ユーロとは攻めに強くて守りに弱い通貨であるという話を書いたことがありますが、過去数ヶ月のユーロの下落はこの守りに弱い部分が如実に出てしまっていると言えます。

PIGS( ポルトガル、アイルランド、ギリシャ、スペイン)或いはこれにイタリアを加えたPIIGSという名称でグルーピングされた国々が経済的にも財政的にもEU全体の足を引っ張り始めたのです。統一通貨ユーロが誕生していなければこれらの国々の通貨は暴落していた筈ですが、今回はその軋みは国債のスプレッド拡大と言う形でマグマを吹きます。欧州内でこれらの国々の債権を売却してより安全なドイツ国債に逃避する動きからドイツ国債の利回りは低下し、上記の国々の国債利回りが急騰する訳です。

今のIssueは、これらの国々、取り立ててギリシャをどう救済するかです。IMFによる財政支援による救済ということになると、何のための欧州連合なのかということになります。Solidality(連帯)を強調しておきながらいざ問題が起きると何も出来ないのでは仲間ではないじゃないか・・・結局IMFのお世話になるのならあまりにも冷たいということになります。
 一方でEUで対応するには全くその仕組みがないのです。悪く言ってしまえば、こういう問題が起きた時の対処を全く想定しておらず、その仕組み作りもしてこなかったと言うことになります。ここが守りに弱い原因でもあります。ギリシャ支援にはまとまった資金が必要ですが、EUにはIMFのような資金のプールも調達手段もありません。連帯だ、仲間だと強調しながら先立つものがないのです。

ではEU内で最も余裕のあるドイツによる二国間救済スキームが検討されることになりますが、実は今後かなりの確率でこの問題がギリシャ救済では終わらないとすると、今回ギリシャを救済したスキームが今後の国々にも適用される事になり、それはドイツの財政をも破綻させてしまうことになりかねません。今為替市場でユーロが売られ続けているのはこのようなEU内の困難な状況が背景にあり、投機筋もこの欧州内のDilenmaを突いてきているわけです。

米国の有権者が同胞であるWall街の米銀を救済するのに国家から税金を注入したことに対してあれだけの反発をしていることを考えればドイツの有権者が他国を救済するために自国の税金を投入することに対してどう思うかは明らかだと思います。

ここに最近のドイツの世論調査の結果があるのですが、実に71%の有権者が自分たちの税金でギリシャを救済することに反対を表明しています。米国政府がWall街を破綻させないことが米国経済を守ることだと言う論点で突っ走ったように、ギリシャを救済してEUを守ることがドイツの利益を守ることにもなると言う主張をメルケル首相がどこまで強弁出来るかは非常に疑問でもあります。一部にはこの問題への対処を誤れば彼女の政治生命は致命的な打撃を被る事になると言う指摘も出ています。

Solidality=連合、は機能しなければAlienation=疎外が残ります。まさかこの問題の向こう側でマルクスが笑っている・・・?という事はないでしょうが、欧州連合のコンセプトそのものが問われている中でのユーロ売りというトレンドは引き続き注目していきましょう。

Confirmed trend with waning momentum.

先週も寒い日が多かったですね。

金融市場の方は寒波と言う程ではないのですが、投資マインドに積極性が戻ってきたかと思うと何度か冷や水を浴びるという動きが目立ちました。

単発的な事象としては前週末に米国の1月雇用統計に振り回された後で豪州の雇用統計が5ヶ月連続でエコノミストの事前予想上限をも上回る強い内容だったことから資産市場が活気を取り戻す流れが先行したものの、週末からの旧正月入りを控えた中国が突然金曜日に今年に入って2度目となるBank Reserve rateの引き上げを断行したために金融市場が再度冷や水を浴びた格好で越週しています。

この単発的な事象以前にギリシャ救済問題などで揺れる欧州の屋台骨に対する不信感は継続的に相場の底流を澱ませており、株式市場や中国、アジア、コモディティなどの議論とは関係なく欧州からの資金流出が観測されています。

足元の市場のイメージとしては以下のようになっています。上段の右上がりの緑の線がドルインデックス、右下がりの赤い線が株式のS&P500、下段の重なり合うような右下がりの線は紫の線が金価格オレンジの線が原油価格です。

底流のトレンドはこの方向で相当期間継続するものと思っています。リスク資産から断続的に資本流出が加速して米国に還流。ただし米株市場は迂回して債券市場や純粋なドルキャッシュが受益者になると言う図式です。

ただ米国も依然として大きな不透明感に包まれている状態なので、このトレンドの道程は滑らかであるはずもなくかなりのSWING相場を消化しながらという事になるでしょう。

先週の終了時点でも米ドルのモメンタムは減少、欧州通貨やコモディティ通貨のモメンタムは改善しているので一旦このトレンドは調整波動に飲み込まれてリスク資産が息を吹き返す可能性もありそうです。

市場参加者としては底流のトレンドが加速する際には相応の順張りポジションを持っている必要があると意識しながらも調整時には逆張りのポジション保有も考えていかないと中々安定したパフォーマンスが残し難いという悩ましい状況と言うことになりますね。

2010年2月7日日曜日

Anyway the wind blows and water flows...maybe.

金曜日は1月の雇用統計の発表がありました。結論から言えば解釈の仕様が十人十色という内容だったと思います。それが市場の反応にも出ていましたね。


1 注目のNFP(非農業部門就業者数)は5千人増加の予想に対して2万人の減少。

2 失業率は10.1%の予想に対して9.7%に改善。

3 12月分の改定値は下方修正、11月は上方修正、ただし合計では10万2千人の減少


失業率の改善や製造業部門だけを見れば雇用増となったことなどもあって解釈は分かれそうです。ただ雇用はバラ色という解釈は無理なので、解釈が分かれたといってもかなり悪いと見るかそこそこ踏みとどまっている無難な線と見るかという違いだと思います。


市場は一旦ドル売りに反応した後で強烈なドル買いに反転しました。

ドルロングだったので助かったのですが、この時の私の頭の中には突然もう10年以上は前に目撃した光景が蘇ってきました。

当時の職場で、ある女性(従業員ではなく顧客のようでした)が男子トイレに入ってしまったのを目撃したのですが、すぐに「うわっ」と言うような声がしたかと思うと彼女が凄い勢いで飛び出してきて壁にぶつかりながら横の女子トイレに突入していきました。

認知工学的に(?)、人間は今経験していることを自分の知識や経験の蓄積の中の類似のものにグルーピングするとされていますが、金曜日の指標直後の市場の動きはまさにそんな感じだったのです。

トイレの間違いは文字通り水に流せばよいとして、相場の動きは水の流れのようなスムーズなものではなかったというお話でした。

What happens now.......

金融市場にトレンドがあるように、社会全般を貫くトレンドというものが存在すると思うのですが、その両者の動向がVolatilityの上昇に向かっているという気がしてなりません。

人間的にも高潔で、理想的な人生を謳歌していると思われたタイガーウッズの転落、オバマ政権の支持率急低下と諸施策における迷走振り、ケネディ家地元のマサチューセッツ州における民主党の大敗北(しかもエドワードケネディ議員の死去に伴う補欠選挙、つまりは故エドワードケネディ議員の弔い選挙でもありました)、金融混乱を沈静化させた功労者と言う評価だったはずのバーナンキ議長の辛うじての再任などはどれも数ヶ月前の様相とは様変わりしています。

日本でも鳩山政権の支持率急落と迷走振りは顕著ですが、藤井財務相の辞任や民主党の小沢幹事長が逮捕寸前まで追い詰められたり、大相撲では横綱朝青龍の唐突な引退、理事選における貴乃花親方の造反と当選など、これまた数ヶ月前には誰も想像していなかった様な出来事が多数起きています。

金融市場の様相もほとんど同じですね。新興国市場、商品市場の失速、失業や財政懸念に揺れる欧州経済(これは米国の問題を丸ごと引き取ってしまったかのようです)などを背景とした市場の混乱振りは日々の動きをフォローするのも大変と言う状況になっています。

次のチャートは上段が金価格(黒)、ユーロ(赤)下段がドルインデックス(緑)で表示されています。

積極的な投資活動や外貨準備の分散により金やユーロが上昇し、調達通貨に格下げされたドルはひたすら値を下げると言う図式は明らかに反転し始めていることがわかります。

2009年の4月以来の金融ユーフォリアはいよいよ終焉を迎えるのでしょうか。

そもそも過剰流動性が招いた金融バブルが弾けた事による金融危機を更なる過剰流動性の強制注入により沈静化させて市場と景気を回復軌道に乗せてきた一種のモルヒネ政策にはやはり無理があったと言う事なのかもしれません。ドバイショックは沈静化すると見せかけて欧州に飛び火し、ギリシャだけなら規模も小さいという楽観論を嘲笑するかのようにポルトガルやスペインにも飛び火しています。

ギリシャ国債CDS⇒急拡大

債券暴落のポルトガル2年債利回りが急騰

資本回帰が続く米国市場ですが、ここでもリスク資産の株式市場からは資本が流出中です。以下のチャートは黒線がSP500赤字がドルインデックスです。

冒頭に書いたとおり、金融市場を含む社会全体のUNRESTUNCERTAINTYというものが暫く我々を支配することになりそうです。

節分が終わって暦の上では春になりましたが、面白いことに東京も寒いですが、この週末はNY,東北,九州の友人達から雪の便りが届きました。

気温は下落、Volatilityは上昇と言うのがトレンドになりそうですね。