2010年2月14日日曜日

Solidality challenged by Alienation.

EU=European Union=欧州連合の屋台骨が揺らいでいます。

以前、ユーロとは攻めに強くて守りに弱い通貨であるという話を書いたことがありますが、過去数ヶ月のユーロの下落はこの守りに弱い部分が如実に出てしまっていると言えます。

PIGS( ポルトガル、アイルランド、ギリシャ、スペイン)或いはこれにイタリアを加えたPIIGSという名称でグルーピングされた国々が経済的にも財政的にもEU全体の足を引っ張り始めたのです。統一通貨ユーロが誕生していなければこれらの国々の通貨は暴落していた筈ですが、今回はその軋みは国債のスプレッド拡大と言う形でマグマを吹きます。欧州内でこれらの国々の債権を売却してより安全なドイツ国債に逃避する動きからドイツ国債の利回りは低下し、上記の国々の国債利回りが急騰する訳です。

今のIssueは、これらの国々、取り立ててギリシャをどう救済するかです。IMFによる財政支援による救済ということになると、何のための欧州連合なのかということになります。Solidality(連帯)を強調しておきながらいざ問題が起きると何も出来ないのでは仲間ではないじゃないか・・・結局IMFのお世話になるのならあまりにも冷たいということになります。
 一方でEUで対応するには全くその仕組みがないのです。悪く言ってしまえば、こういう問題が起きた時の対処を全く想定しておらず、その仕組み作りもしてこなかったと言うことになります。ここが守りに弱い原因でもあります。ギリシャ支援にはまとまった資金が必要ですが、EUにはIMFのような資金のプールも調達手段もありません。連帯だ、仲間だと強調しながら先立つものがないのです。

ではEU内で最も余裕のあるドイツによる二国間救済スキームが検討されることになりますが、実は今後かなりの確率でこの問題がギリシャ救済では終わらないとすると、今回ギリシャを救済したスキームが今後の国々にも適用される事になり、それはドイツの財政をも破綻させてしまうことになりかねません。今為替市場でユーロが売られ続けているのはこのようなEU内の困難な状況が背景にあり、投機筋もこの欧州内のDilenmaを突いてきているわけです。

米国の有権者が同胞であるWall街の米銀を救済するのに国家から税金を注入したことに対してあれだけの反発をしていることを考えればドイツの有権者が他国を救済するために自国の税金を投入することに対してどう思うかは明らかだと思います。

ここに最近のドイツの世論調査の結果があるのですが、実に71%の有権者が自分たちの税金でギリシャを救済することに反対を表明しています。米国政府がWall街を破綻させないことが米国経済を守ることだと言う論点で突っ走ったように、ギリシャを救済してEUを守ることがドイツの利益を守ることにもなると言う主張をメルケル首相がどこまで強弁出来るかは非常に疑問でもあります。一部にはこの問題への対処を誤れば彼女の政治生命は致命的な打撃を被る事になると言う指摘も出ています。

Solidality=連合、は機能しなければAlienation=疎外が残ります。まさかこの問題の向こう側でマルクスが笑っている・・・?という事はないでしょうが、欧州連合のコンセプトそのものが問われている中でのユーロ売りというトレンドは引き続き注目していきましょう。