2012年5月21日月曜日

Mark-To-Reality


・Fitch downgraded Greece's long-term credit rating from B- to CCC and cited that it "reflects the heightened risk that Greece may not be able to sustain its membership of Economic and Monetary Union".

  There were reports that Bankia, the Spanish bank that was nationalized recently, received more than EUR 1b withdrawal since last week.

・Moody's downgraded credit rating of 16 Spanish banks, citing that "banks will continue to face highly adverse operating and market funding conditions that pose a threat to their creditworthiness". The rating agency believed "the Spanish economy has fallen back into recession in first-quarter 2012" and it does not expect conditions to improve this year.

Moody's downgraded 26 Italian banks to "amongst the lowest within advanced European countries" on "susceptibility to the adverse operating environments in Italy and Europe".

この手の報道が後を絶たない事が欧州問題の根幹を成している訳ですが、ここには実に難しい問題が立ちはだかっています。
 上記のニュースは、Fitchと言う格付機関がギリシャの長期信用格付をB-からCCCに格下げした事や、Moody'sと言う別の格付機関が16ものスペインの金融機関と26ものイタリアの金融機関を格下げした事を報道するものですが、今更ながら過去のストレステストを含むいかなる形態の自己申告は全く出鱈目だったと言う事を証明しているのと同じです。

そしてこれは、例のあれに良く似た話であり、事実根っこは同じ問題なのだと言ってよいのです。

例のあれ・・・と言うのは米銀の筆頭格JPMorganChase銀行のCIOチームによるデリバティブブックの巨額損失の話です。

当初の損失額は$2bioとされていましたが、現時点でこの数字は$5bioとも言われるようになっています。CDS,CDOなどのクレジット物のデリバティブ取引が中心との事ですが、要するに実際の損失は固めて見るまでわからないのです。
 
私も相応にデリバティブ取引には関わってきていますが、原資産が株や為替であれば、最低限の時価評価は可能です。市場実勢で値洗いをする方法をMark-To-Market(MTM)と言いますが、文字通りこれはMarketが存在する事とそのMarket価格に一定の公示性がある事が大前提です。

ところが原資産がクレジットだったり天候だったりと言うケースでは全くこの条件が満たされず、結果として気配値なる物で評価をしたり、自社の理論に基づいてクォンツに作らせた評価モデルが認識する価格にぶつける形での評価して出来ていないケースが太宗なのです。イメージはMark-To-Marketではなくて、Mark-To-Modelと言う事です。

元々流動性の無い市場は、問題が起こると乏しいけど存在した流動性すら消滅しますので、自社モデルがどう評価しようと市場で処分しようとするととんでもない損失が出ると言う事になるのです。

この金融工学におけるモデルの失敗、モデルの限界と言うのが欧米の金融機関を中心に定期的に露呈する問題と言う事になります。

そして、後はもうHonestyでしょうね。

欧米の国家、政府、金融機関が"自己申告"して来た財政状況や収益状況は後日著しく下方修正されるケースが恒常化して来ている訳です。そして同じようにもともと欧米先進国よりは相当精度が落ちると言う認識の新興国や発表される経済指標の信憑性が問題視されてきた中国に対する懸念がここに来て再台頭していると言うのが中国を中心とした新興国市場の全般的な不調の背景だと考えて間違いないでしょう。

こういう問題は一旦悪循環になると負の連鎖は中々断ち切れないものですね。モデルベースのバーチャルな繁栄がリアルな現実によって厳しく値洗いされていると言う事でしょう。