2009年10月18日日曜日

Two sides of the same coin.

先週の金融市場も色々見せてくれました。

1 ドルインデックスが14ヶ月安値を更新。

2 NYダウが約1年ぶりに1万ドルを回復。

3 注目の米企業決算は概ね事前予想比良好。

4 GBPの大反発。

5 円の大幅失速。

等の動きが特に印象に残っています。

米ドルに関しては中々反発出来ません。はっきり言えばファンダメンタルズ的にドル上昇を支持する材料に乏しい以上、時折発生するテクニカルな買いサインもせいぜい偏りすぎたポジション調整がいいところで時間的には短命、価格的にも浅い反発となっています。

 ずばりドル以外の主要通貨に現在は認識されていない明確な売り材料が顕在化しない限りドルの上値は限定的と思わざるを得ないでしょう。

ダウの1万ドル回復は昨年の10月3日以来ほぼ1年ぶりで、水曜日、木曜日と1万ドル台で推移した後金曜日は1万ドルを若干割り込んだ水準で終了しました。

株価堅調の背景の一つが企業決算の回復傾向ですが、注目された米系金融機関の決算評価に関して少し面白い現象が指摘されています。CITIグループの決算についてなのですが、メディアの報道の仕方が割れているのです。例を挙げるとこういう感じです。

CITI本部のある地元ニューヨークタイムス紙は同社決算が赤字決算となったことを伝えています。

Citigroup's Struggles Continue in Third Quarter... After pulling off two consecutive quarterly profits, spiraling consumer losses overwhelmed Citigroup's strong trading results in the third quarter.

一方で金融専門誌ウォールストリートジャーナル紙は最後は損失計上となったものの一部では黒字になっていることを評価しています。

Citi Swings to Narrow Profit... Citigroup reported a narrow profit on a gain from its securities-exchange efforts, but had a per-share loss of 27 cents in the latest quarter.

この現象は今の金融市場を理解する上で非常に重要なポイントをついていると思います。

どちらも事実を報道しているのですが、どちらを読むかで一般大衆や投資家の受ける印象はかなり違ってくる事になります。NYT紙は有力紙ですが金融専門誌たるWSJ紙を読む投資家が圧倒的に多い訳で、そのこととダウの1万ドル回復がリンクしていると私は思っています。

現在の世界経済は新興国経済の勃興に支えられつつ先進国経済の病状は実は一進一退というところかと思います。そのような状況下では投資家の行動は与えられる情報次第で大きく変わってくる事になるのですが、これまでは明らかに主要メディアや金融機関のリサーチレポートなどが事実の中の明るい部分をことさら強調してきたという側面があるのではないでしょうか。

ある意味ではこれは壮大な試みとも言えるものであり、高めに誘導された投資家の投資意欲、リスク許容度と言うものが実体経済のカンフル剤となり実態低財の回復その物を可能にしたり、速度を速めたりということは十分に起こりうることだと思います。

世の中全体が良くなる、明るくなる方向ですので個人的にもこの壮大な試みの成功を願うのみですが、同時に投資家の端くれとしてはこの試みに綻びが生じてくるケースへの監視と備えも怠らないようにしようと思っています。

一つのコインをどちらから眺めるか。世間にはどちらを見せるか。或いは見る側がどちらを、どう見たいのか。

ちょっとしたヒューマンドラマでもあるのかもしれませんね。