日本の会計年度は3月が年度末になりますが、当然ながら海外は12月が年度末になりますのでこの時期にはそれを意識して相場を見ていく必要があります。
基本的には、
①基本的には積極的にリスク量を増やす事は無い
②ただし必ずしも機械的なポジション手仕舞いのフローが出るほど単純でもない
③しかし実際にリスク縮小を余儀なくさせる材料があれば少しでも流動性のあるうちに集中的な手仕舞いを仕掛けてくる場合もある
④どこかが痛むと利が乗ったもので益出し⇒損失補填という動きとなるので直接関係の無いアセットもダメージを受ける傾向がある
等の注意点がありますが、特に③、④のような動きが拡大していくと一部の痛みが全体に広がっていく事になり、市場参加者の間では PAIN TRADEと言われるような動きとなります。
前項では為替市場で順調だったAUDやNZDが一転して売り込まれていると言う現象を見ましたが、これは別のところで出ているダメージを補填する益出しの動きであった可能性が高く、明らかにPAIN TRADEと位置付けてよい動きだったのではないでしょうか。
では、PAIN TRADEの根源はどこにあるのかと言えば、間違いなく長期債市場ということになるでしょう。
とにかく長期金利の急騰(=長期債の大幅下落)は今の金融市場の台風の目となっており、先週は中盤に欧米の債券市場が暴落=金利の急騰が起こり、週末にはJGB市場(円債市場)が暴落して円金利も急騰しています。
米日の未曾有の規模での量的緩和に中央銀行による国債購入という政策も実施されている訳ですので、これを先取りした世界中の機関投資家や金融機関が日米欧の国債を大量購入している状態でしたのでここが崩される事のPAIN TRADEのダメージは計り知れないものがあります。
PAIN TRADEの怖いところは、本来であれば大丈夫そうだったものまでおかしくなってしまう事です。どこかの債券が国債でも社債でも暴落すると、次に市場は誰がそれを沢山保有していたかを探し出してその保有者の信用不安を喧伝して株や社債を空売りすると言うのはよくあることです。
もうすぐ12月。PAIN TRADEの動向には十分な注意が必要です。特にその台風の目となっている各国の国債市場(=長期金利動向)からは目が離せません。
2010年11月29日月曜日
Top FX movers last week.
先週も色々ありましたね。
①アイルランド危機がポルトガルなどに波及するリスクの上昇
②北朝鮮の韓国に対する砲撃
がコアとなり、そこから派生した材料が色々と相場を動かしていました。どちらの材料も非常に根が深いものであり、個人的にも考えるところがありますが先週は木曜日が米国のThanksgiving休暇があった為に金曜日の北米市場も半日営業となり、もともと主要なプレーヤーはここも休んで月曜日から出てくると言う状態だったので結構相場が一方向に動き易かったと思います。
では先週の主要通貨の変動率ランキングを見てみましょう。
通貨ペア 先週終値 前週終値 値幅(pips) 値幅(%)
①NZDCAD 0.7647 0.7912 -265 -3.47%
②EURUSD 1.3239 1.3671 -432 -3.26%
③NZDJPY 63.00 65.00 -200 -3.17%
④EURCAD 1.3515 1.3898 -383 -2.83%
⑤NZDCHF 0.7514 0.7721 -207 -2.75%
⑥EURJPY 111.30 114.21 -291 -2.61%
⑦GBPUSD 1.5588 1.5977 -389 -2.50%
⑧AUDUSD 0.9643 0.9864 -221 -2.29%
⑨EURCHF 1.3279 1.3565 -286 -2.15%
⑩GBPCAD 1.5913 1.6242 -329 -2.07%
⑪GBPJPY 131.04 133.47 -243 -1.85%
⑫AUDCAD 0.9847 1.0029 -182 -1.85%
⑬AUDJPY 81.05 82.38 -133 -1.64%
今回は欧州通貨とともにAUD,NZDが大きく下げている事を強調するために13位まで掲載してみました。
先週末に同じ分析をした時には上位10ペアの中で実に7ペアがAUDかNZDの上昇という図式でした。イメージで言えば欧米日が下落して資源国が上昇していると言うような図式になっていた訳です。それが今回は上位10ペアの内訳はEURの下落が4回、NZDの下落が3回、GBP下落が2回でAUDの下落が1回です。
上昇サイドはUSD,CADの北米コンビで6回、CHF,JPYの安全通貨コンビで4回となっており、前週のRisk-on的な展開が先週はRisk-off方向に転換している事がわかります。
それにしても・・・・What a turn on event!! 1週間で様変わりです。
①アイルランド危機がポルトガルなどに波及するリスクの上昇
②北朝鮮の韓国に対する砲撃
がコアとなり、そこから派生した材料が色々と相場を動かしていました。どちらの材料も非常に根が深いものであり、個人的にも考えるところがありますが先週は木曜日が米国のThanksgiving休暇があった為に金曜日の北米市場も半日営業となり、もともと主要なプレーヤーはここも休んで月曜日から出てくると言う状態だったので結構相場が一方向に動き易かったと思います。
では先週の主要通貨の変動率ランキングを見てみましょう。
通貨ペア 先週終値 前週終値 値幅(pips) 値幅(%)
①NZDCAD 0.7647 0.7912 -265 -3.47%
②EURUSD 1.3239 1.3671 -432 -3.26%
③NZDJPY 63.00 65.00 -200 -3.17%
④EURCAD 1.3515 1.3898 -383 -2.83%
⑤NZDCHF 0.7514 0.7721 -207 -2.75%
⑥EURJPY 111.30 114.21 -291 -2.61%
⑦GBPUSD 1.5588 1.5977 -389 -2.50%
⑧AUDUSD 0.9643 0.9864 -221 -2.29%
⑨EURCHF 1.3279 1.3565 -286 -2.15%
⑩GBPCAD 1.5913 1.6242 -329 -2.07%
⑪GBPJPY 131.04 133.47 -243 -1.85%
⑫AUDCAD 0.9847 1.0029 -182 -1.85%
⑬AUDJPY 81.05 82.38 -133 -1.64%
今回は欧州通貨とともにAUD,NZDが大きく下げている事を強調するために13位まで掲載してみました。
先週末に同じ分析をした時には上位10ペアの中で実に7ペアがAUDかNZDの上昇という図式でした。イメージで言えば欧米日が下落して資源国が上昇していると言うような図式になっていた訳です。それが今回は上位10ペアの内訳はEURの下落が4回、NZDの下落が3回、GBP下落が2回でAUDの下落が1回です。
上昇サイドはUSD,CADの北米コンビで6回、CHF,JPYの安全通貨コンビで4回となっており、前週のRisk-on的な展開が先週はRisk-off方向に転換している事がわかります。
それにしても・・・・What a turn on event!! 1週間で様変わりです。
2010年11月22日月曜日
Taking the core concept of QE2 to heart.
今回の米国のQE2の凄いところは単なる流動性の大量供給と言うコンセプトを凌駕した大規模なリスク資産価格の押し上げを意図したところにあります。
QE2=LSAP(Large Scale Asset Purchase)というコンセプトなのですが、基本的に新規に発行される米国債をFRBが買い占めてしまう事で従来この市場に流入してきた投資家の資金を締め出してしまうのです。締め出された資金は利回りを求めて広範なリスク資産への投資に回る訳ですが、言葉を変えれば当局お墨付きのグローバル資産市場の壮大なReflation政策と言う事が言えるでしょう。
これまでにも書いてきたように実際の市場はかなり複雑な動きをしているのですが、それでもよく見るとかなりの市場が当局の意を汲んだ動きをしてきているのも事実です。
11月第一週のQE2の発表を受けて様々なリスク資産が2010年の最高値を更新しているのですがざっと拾うだけでも以下のような状況です。
11月5日に高値を更新したもの
Dow、S&P500、インド株、アルゼンチン株
11月8日に高値を更新したもの
香港株
11月9日に高値を更新したもの
Gold、CRB Index、Silver、Nasdaq、FTSE100、Platinum、Singapore株、Corn、
11月10日に高値を更新したもの
Coffee
11月11日に高値を更新したもの
Oil、Copper、Sugar
11月12日に高値を更新したもの
Soybean
色々と内外からの批判が噴出してFRBも反論に躍起になっている感じのするQE2ですが、これだけ見ると、リスク資産のReflationという役割は果たしているじゃないかと言う気にもなりますね。
ここに来てやっと日経平均の1万円台回復が注目されたりしていますが、これは円高の一服と円債(JGB)市場からの資金シフトが主要因であり必ずしも企業業績や経済全体のファンダメンタルズによるものではないでしょう。でもどうせなら一発年初来高値でも目指して欲しいものです。
金融市場はQE2の意図を一応重く受け止めてはいるようだと言うお話でした。
QE2=LSAP(Large Scale Asset Purchase)というコンセプトなのですが、基本的に新規に発行される米国債をFRBが買い占めてしまう事で従来この市場に流入してきた投資家の資金を締め出してしまうのです。締め出された資金は利回りを求めて広範なリスク資産への投資に回る訳ですが、言葉を変えれば当局お墨付きのグローバル資産市場の壮大なReflation政策と言う事が言えるでしょう。
これまでにも書いてきたように実際の市場はかなり複雑な動きをしているのですが、それでもよく見るとかなりの市場が当局の意を汲んだ動きをしてきているのも事実です。
11月第一週のQE2の発表を受けて様々なリスク資産が2010年の最高値を更新しているのですがざっと拾うだけでも以下のような状況です。
11月5日に高値を更新したもの
Dow、S&P500、インド株、アルゼンチン株
11月8日に高値を更新したもの
香港株
11月9日に高値を更新したもの
Gold、CRB Index、Silver、Nasdaq、FTSE100、Platinum、Singapore株、Corn、
11月10日に高値を更新したもの
Coffee
11月11日に高値を更新したもの
Oil、Copper、Sugar
11月12日に高値を更新したもの
Soybean
色々と内外からの批判が噴出してFRBも反論に躍起になっている感じのするQE2ですが、これだけ見ると、リスク資産のReflationという役割は果たしているじゃないかと言う気にもなりますね。
ここに来てやっと日経平均の1万円台回復が注目されたりしていますが、これは円高の一服と円債(JGB)市場からの資金シフトが主要因であり必ずしも企業業績や経済全体のファンダメンタルズによるものではないでしょう。でもどうせなら一発年初来高値でも目指して欲しいものです。
金融市場はQE2の意図を一応重く受け止めてはいるようだと言うお話でした。
2010年11月21日日曜日
Top FX movers last week.
先週も金融市場では色々な動きがありました。
11月という季節要因に米国のQE2という前例の無い壮大な冒険的金融政策が実施され、市場が素直にドル売り+リスク資産買いに反応したのも束の間欧州でポルトガル、アイルランドといった周辺国不安が再燃して市場はリスク回避方向にFLIPしてしまいました。
しかしQE2に向けて買い進まれてきた米国債券市場から持続的な資金流出が起きている為に債券売り+金利上昇という流れが米国から日本、欧州などにも波及する流れも出てきて新興国市場をも巻き込むPain Trade(参加者にダメージが残る方向の動き)がMain Stream化し始めているようです。大分投資家コミュニティにも浮き足立ったような動きも出てきました。
さて、為替市場はどうだったのかを見てみましょう。いつもの週次の分析は以下のようになりました。
通貨ペア 先週終値 前週終値 値幅(pips) 値幅(%)
①NZDJPY 65.00 63.78 +122 +1.88%
②NZDCHF 0.7721 0.7582 +139 +1.80%
③GBPNZD 2.0511 2.0824 -313 -1.53%
④AUDJPY 82.38 81.23 +115 +1.40%
⑤AUDCHF 0.9784 0.9655 +129 +1.32%
⑥USDJPY 83.54 82.51 +103 +1.23%
⑦USDCHF 0.9921 0.9807 +114 +1.15%
⑧NZDCAD 0.7912 0.7823 +89 +1.12%
⑨EURJPY 114.21 112.99 +122 +1.07%
⑩GBPAUD 1.6192 1.6359 -167 -1.03%
先週はリスク回避のドル買戻しが先行しましたが、後半は寧ろ誇り高きアイルランドが当初拒否していたECB等からの支援準備を受け入れる方向に話が進んでいると言う報道を受けて流れが反転しています。
それにしても上位5位までを含めてTop10のうちの7つのペアの上昇通貨がAUDとNZDの上昇と言うのは見事と言えますね。
しかしながら週末には再び中国の預金準備率引き上げの動きを受けてAUDが失速する場面も見られており、Pain Tradeが中心の11月相場だけにまだまだ予断は許さない展開が続きそうです。
11月という季節要因に米国のQE2という前例の無い壮大な冒険的金融政策が実施され、市場が素直にドル売り+リスク資産買いに反応したのも束の間欧州でポルトガル、アイルランドといった周辺国不安が再燃して市場はリスク回避方向にFLIPしてしまいました。
しかしQE2に向けて買い進まれてきた米国債券市場から持続的な資金流出が起きている為に債券売り+金利上昇という流れが米国から日本、欧州などにも波及する流れも出てきて新興国市場をも巻き込むPain Trade(参加者にダメージが残る方向の動き)がMain Stream化し始めているようです。大分投資家コミュニティにも浮き足立ったような動きも出てきました。
さて、為替市場はどうだったのかを見てみましょう。いつもの週次の分析は以下のようになりました。
通貨ペア 先週終値 前週終値 値幅(pips) 値幅(%)
①NZDJPY 65.00 63.78 +122 +1.88%
②NZDCHF 0.7721 0.7582 +139 +1.80%
③GBPNZD 2.0511 2.0824 -313 -1.53%
④AUDJPY 82.38 81.23 +115 +1.40%
⑤AUDCHF 0.9784 0.9655 +129 +1.32%
⑥USDJPY 83.54 82.51 +103 +1.23%
⑦USDCHF 0.9921 0.9807 +114 +1.15%
⑧NZDCAD 0.7912 0.7823 +89 +1.12%
⑨EURJPY 114.21 112.99 +122 +1.07%
⑩GBPAUD 1.6192 1.6359 -167 -1.03%
先週はリスク回避のドル買戻しが先行しましたが、後半は寧ろ誇り高きアイルランドが当初拒否していたECB等からの支援準備を受け入れる方向に話が進んでいると言う報道を受けて流れが反転しています。
それにしても上位5位までを含めてTop10のうちの7つのペアの上昇通貨がAUDとNZDの上昇と言うのは見事と言えますね。
しかしながら週末には再び中国の預金準備率引き上げの動きを受けてAUDが失速する場面も見られており、Pain Tradeが中心の11月相場だけにまだまだ予断は許さない展開が続きそうです。
2010年11月14日日曜日
Top FX Movers Last Week.
前項で整理したとおり、11月は第一週に密集していた重要イベントを消化して流れはRisk-on方向に大きく傾いたかに見えましたが、第二週を消化した時点でリスク資産買いへの楽観論にはかなりの向い風が吹いてきた格好です。いつものように主要通貨市場がどう動いたのかを整理してみましょう。
通貨ペア 先週終値 前週終値 変動幅(pips) 変動率(%)
①NZDUSD 0.7731 0.7951 -220 -2.85%
②GBPAUD 1.6359 1.5920 +439 +2.68%
③EURUSD 1.3691 1.4031 -340 -2.48%
④GBPNZD 2.0824 2.0367 +457 +2.19%
⑤EURGBP 0.8495 0.8669 -174 -2.05%
⑥USDCHF 0.9807 0.9612 +195 +1.99%
⑦AUDCAD 0.9964 1.0158 -194 -1.95%
⑧AUDJPY 81.23 82.54 -131 -1.61%
⑨NZDCAD 0.7823 0.7949 -126 -1.61%
⑩GBPCHF 1.5801 1.5554 +247 +1.56%
⑪USDJPY 82.51 81.26 +125 +1.51%
いつもは上位10ペアなのですが、ドル円の反発が11番目につけているので掲載しておく事にしました。かなりの潮流変化を感じる内容になっていますね。
上昇通貨としての登場回数⇒USD4回、GBP4回、CAD2回、円1回
下落通貨としての登場回数⇒NZD3回、AUD3回、EURO2回、CHF2回、円1回
なんと米ドルが下落サイドに一度も登場していません。円は両方に一度ずつ顔を出しているのでスッキリしない状況がよくわかります。またGBPの強さも際立っており、実は私個人も今月に入ってから手を出した投資でGBPを売りサイドに持ってきた物は悉く失敗して撤退済みです(涙)。
AUD,NZDの失速は中国への懸念の裏返しとなっており、急加熱を冷ますべく利上げや人民元切上げ速度を速めてきた中国の動きが他の資源国通貨にも大きな影響を与えている事がわかります。
資源国市場や新興国市場への投資の縮小はリスクマネーの里帰り(Repatriation)と言う事でドル買いになっていると言う背景ですね。
11月の通貨市場はちょっとざわついて来ました。
通貨ペア 先週終値 前週終値 変動幅(pips) 変動率(%)
①NZDUSD 0.7731 0.7951 -220 -2.85%
②GBPAUD 1.6359 1.5920 +439 +2.68%
③EURUSD 1.3691 1.4031 -340 -2.48%
④GBPNZD 2.0824 2.0367 +457 +2.19%
⑤EURGBP 0.8495 0.8669 -174 -2.05%
⑥USDCHF 0.9807 0.9612 +195 +1.99%
⑦AUDCAD 0.9964 1.0158 -194 -1.95%
⑧AUDJPY 81.23 82.54 -131 -1.61%
⑨NZDCAD 0.7823 0.7949 -126 -1.61%
⑩GBPCHF 1.5801 1.5554 +247 +1.56%
⑪USDJPY 82.51 81.26 +125 +1.51%
いつもは上位10ペアなのですが、ドル円の反発が11番目につけているので掲載しておく事にしました。かなりの潮流変化を感じる内容になっていますね。
上昇通貨としての登場回数⇒USD4回、GBP4回、CAD2回、円1回
下落通貨としての登場回数⇒NZD3回、AUD3回、EURO2回、CHF2回、円1回
なんと米ドルが下落サイドに一度も登場していません。円は両方に一度ずつ顔を出しているのでスッキリしない状況がよくわかります。またGBPの強さも際立っており、実は私個人も今月に入ってから手を出した投資でGBPを売りサイドに持ってきた物は悉く失敗して撤退済みです(涙)。
AUD,NZDの失速は中国への懸念の裏返しとなっており、急加熱を冷ますべく利上げや人民元切上げ速度を速めてきた中国の動きが他の資源国通貨にも大きな影響を与えている事がわかります。
資源国市場や新興国市場への投資の縮小はリスクマネーの里帰り(Repatriation)と言う事でドル買いになっていると言う背景ですね。
11月の通貨市場はちょっとざわついて来ました。
So...what do we see now?
先週も金融市場全般で結構な変動がありました。
1 米国 : 皮肉な事にFOMC後でQE2の詳細が示された後に米国長期金利は上昇に転じており、米株には反落の兆候が増えて来ました。通貨では米ドルに底打ち⇒反発の兆候が増えてきました。
2 欧州 : ポルトガルやアイルランド等の所謂”周辺国”の債務不履行懸念が再上昇しています。その他の要因とも相まって欧州市場も荒れていますが、こちらでも金利上昇、株式反落の圧力が強まっています。通貨ではユーロに下落圧力が強まっており11月4日(木)につけた1.4283が戻り高値となってユーロが反落過程に入った可能性が高そうです。
3 日本 : この週末の海外メディアの報道を見ていて意外に感じている事の一つが週末にかけて行われていたG20サミットから手ぶらで(収穫無く)帰ることになる唯一の可哀想な主要国が日本だと言う内容が複数見られる事でしょうか。だから円安なのか、円高圧力再燃が不可避なのかは定見が無い印象ですが日本の株価に強気材料が少ない状況は変わっていません。先週後半はドルの反発を受けてドル円も素直に上昇(円安)していますが円債には売り圧力が強まっており円の長期金利上昇はいつ円高再燃の引き金を引いても不思議ではないという微妙な状況が続いています。
4 新興国 : 経済成長目覚しいアジアを中心とした新興国ですが、従来のG7諸国から見れば新興国勢力が従来のG7型ルールには従わずに新たな自分達で秩序を醸成していこうと言うベクトルを垣間見せる事が懸念材料になってきました。中国にはその中心になろうと言う思惑がありますが、実は他の新興国と中国の間にも微妙な歴史や距離感があるのも事実であり、どうやら世界は多極化に向けた複雑怪奇な過程の初期段階にあるのかなと思わせる状況です。
市場としては新興国市場にも調整圧力が強まる中で流入過多状態だった海外資本の流出による株式市場や通貨の下落圧力が注目されます。これが加速するなら今週以降の市場動乱の中心になるでしょう。
5 中国 : 特に中国ですが、良い意味でも悪い意味でも”未成熟な大国”と言う状態なので発表される経済指標の信憑性を疑問視される事が少なくない中で、最近では経済実態は指標以上に加熱していた可能性があると言う従来とは逆のリスクを指摘するレポートも出始めています。事実中国はここへ来て人民元の決済レートの切り上げ速度を如実に加速させており、金融機関に課す準備預金のリザーブ義務を強化するなどインフレの暴走を食い止めるのに躍起になっている節があります。上海市場の大幅調整と言う事態になれば世界中の投資資本が結構痛む事は不可避でしょう。
6 商品市場 : 世界景気に強気な見方からも、インフレリスクに悲観的な勢力からもとにかく資本流入が継続してきた商品市場ですが、どうやら調整色が強まってきました。Gold以上のパフォーマンスを誇示してきたSilverに始まり、Cottonなどのソフトコモディティにも拡大の動きを見せる必要証拠金の引き上げなどの措置を受けて資本の流出が始まった格好です。
全般的にRISK-OFFバイアスが強まっている事になりますが、週初の11月15日(月)は今年の年末時点で投資元本を解約したい投資家がその旨を申し出る期限(45日前通知義務)ですので、最近の動きは迷っている投資家の背中を押す方向に動いている事にも留意する必要があるでしょう。当然ながら解約される分はファンドの資産売り、ドルの買い戻しとなる訳ですが年末までの45日間で行えばよいにも拘らず、今年は解約申し出が多いなどと言う噂が流れると市場が先んじて資産売りに動くと言う事も起こり得ます。
QE2直後にかなり売り込まれたオプション市場のVolatilityもここへ来て買戻しが目立っており、多くの市場参加者はちょっとフェイントを食らった格好となっているようですね。
1 米国 : 皮肉な事にFOMC後でQE2の詳細が示された後に米国長期金利は上昇に転じており、米株には反落の兆候が増えて来ました。通貨では米ドルに底打ち⇒反発の兆候が増えてきました。
2 欧州 : ポルトガルやアイルランド等の所謂”周辺国”の債務不履行懸念が再上昇しています。その他の要因とも相まって欧州市場も荒れていますが、こちらでも金利上昇、株式反落の圧力が強まっています。通貨ではユーロに下落圧力が強まっており11月4日(木)につけた1.4283が戻り高値となってユーロが反落過程に入った可能性が高そうです。
3 日本 : この週末の海外メディアの報道を見ていて意外に感じている事の一つが週末にかけて行われていたG20サミットから手ぶらで(収穫無く)帰ることになる唯一の可哀想な主要国が日本だと言う内容が複数見られる事でしょうか。だから円安なのか、円高圧力再燃が不可避なのかは定見が無い印象ですが日本の株価に強気材料が少ない状況は変わっていません。先週後半はドルの反発を受けてドル円も素直に上昇(円安)していますが円債には売り圧力が強まっており円の長期金利上昇はいつ円高再燃の引き金を引いても不思議ではないという微妙な状況が続いています。
4 新興国 : 経済成長目覚しいアジアを中心とした新興国ですが、従来のG7諸国から見れば新興国勢力が従来のG7型ルールには従わずに新たな自分達で秩序を醸成していこうと言うベクトルを垣間見せる事が懸念材料になってきました。中国にはその中心になろうと言う思惑がありますが、実は他の新興国と中国の間にも微妙な歴史や距離感があるのも事実であり、どうやら世界は多極化に向けた複雑怪奇な過程の初期段階にあるのかなと思わせる状況です。
市場としては新興国市場にも調整圧力が強まる中で流入過多状態だった海外資本の流出による株式市場や通貨の下落圧力が注目されます。これが加速するなら今週以降の市場動乱の中心になるでしょう。
5 中国 : 特に中国ですが、良い意味でも悪い意味でも”未成熟な大国”と言う状態なので発表される経済指標の信憑性を疑問視される事が少なくない中で、最近では経済実態は指標以上に加熱していた可能性があると言う従来とは逆のリスクを指摘するレポートも出始めています。事実中国はここへ来て人民元の決済レートの切り上げ速度を如実に加速させており、金融機関に課す準備預金のリザーブ義務を強化するなどインフレの暴走を食い止めるのに躍起になっている節があります。上海市場の大幅調整と言う事態になれば世界中の投資資本が結構痛む事は不可避でしょう。
6 商品市場 : 世界景気に強気な見方からも、インフレリスクに悲観的な勢力からもとにかく資本流入が継続してきた商品市場ですが、どうやら調整色が強まってきました。Gold以上のパフォーマンスを誇示してきたSilverに始まり、Cottonなどのソフトコモディティにも拡大の動きを見せる必要証拠金の引き上げなどの措置を受けて資本の流出が始まった格好です。
全般的にRISK-OFFバイアスが強まっている事になりますが、週初の11月15日(月)は今年の年末時点で投資元本を解約したい投資家がその旨を申し出る期限(45日前通知義務)ですので、最近の動きは迷っている投資家の背中を押す方向に動いている事にも留意する必要があるでしょう。当然ながら解約される分はファンドの資産売り、ドルの買い戻しとなる訳ですが年末までの45日間で行えばよいにも拘らず、今年は解約申し出が多いなどと言う噂が流れると市場が先んじて資産売りに動くと言う事も起こり得ます。
QE2直後にかなり売り込まれたオプション市場のVolatilityもここへ来て買戻しが目立っており、多くの市場参加者はちょっとフェイントを食らった格好となっているようですね。
2010年11月8日月曜日
Dancing between Goldilocks and Gridlock.
それにしても今回の米国の追加量的緩和の狙いは凄いと思います。
FOMCの発表内容は雇用増と物価安定という連銀マンデートの達成と政策措置を直接リンクさせており、事実上のインフレターゲット導入を打ち出したと読めます。そしてこのマンデート達成に向け、新たに6000億ドルの財務省債購入プログラムを導入することを発表したのですが、金融市場では5000億ドル程度はやるだろうと思われていたので規模的には上回った格好です。ただし期間は6ヶ月ではなく8ヶ月と言う事なので長期化した分単月の債券購入額は減少する事になります。
ただし、もともと予定されているエージェンシー債から財務省債への再投資が同期間で2500~3000億ドルの予定なので今回の6000億ドルと併せると合計が8500億ドル~9000億ドルとなり、月間で1100億ドルと言う規模になるのが味噌でしょう。
政府の新規再発行が月間1000億ドルというペースなので今後8ヶ月間はFRBが事実上新規発行債券を全て吸収することになります。これにより締め出された格好となる投資家達はイールドを求めて他のリスク資産を購入するしかなくなるのです。
今回の追加量的緩和(QE2)が量そのものよりもこうした強制的な投資資本の再配分にあると言う事は凄い事ですね。LSAP(Large Scale Asset Purchase)という名の下に強制的な資本のRe-allocationを起こすというのですから世界中の株式市場や商品市場が極めてBullishな反応をしているのも無理からぬ事でしょう。
まさに中央銀行がGoldilocks経済を演出しているのですが、前例のない壮大な試みだけに失敗すると米ドル暴落、ハイパーインフレーションと言った暴風雨を世界中にばら撒く事にもなりかねません。非常に微妙な舵取りが求められる事は間違いないでしょう。
USDをDebaseしているとか、Currency WarではなくCurrency Crisisだとか、Anything but USD(USDだけはやめとけ)等と言う批判や不安も一部ではFOMC直後から噴出していますが、全体的にはUSDの売られ方もパニック的なものではなく株価上昇、コモディティも上昇、オプション市場のVolatilityは急低下という流れになっているので So far, so good という評価になるのかなと思います。
インフレ無き程よい成長(Goldilocks)とにっちもさっちも行かない状態(Gridlock)の狭間でFRBが打ち出した大勝負の行方を注視しないではいられませんね。
FOMCの発表内容は雇用増と物価安定という連銀マンデートの達成と政策措置を直接リンクさせており、事実上のインフレターゲット導入を打ち出したと読めます。そしてこのマンデート達成に向け、新たに6000億ドルの財務省債購入プログラムを導入することを発表したのですが、金融市場では5000億ドル程度はやるだろうと思われていたので規模的には上回った格好です。ただし期間は6ヶ月ではなく8ヶ月と言う事なので長期化した分単月の債券購入額は減少する事になります。
ただし、もともと予定されているエージェンシー債から財務省債への再投資が同期間で2500~3000億ドルの予定なので今回の6000億ドルと併せると合計が8500億ドル~9000億ドルとなり、月間で1100億ドルと言う規模になるのが味噌でしょう。
政府の新規再発行が月間1000億ドルというペースなので今後8ヶ月間はFRBが事実上新規発行債券を全て吸収することになります。これにより締め出された格好となる投資家達はイールドを求めて他のリスク資産を購入するしかなくなるのです。
今回の追加量的緩和(QE2)が量そのものよりもこうした強制的な投資資本の再配分にあると言う事は凄い事ですね。LSAP(Large Scale Asset Purchase)という名の下に強制的な資本のRe-allocationを起こすというのですから世界中の株式市場や商品市場が極めてBullishな反応をしているのも無理からぬ事でしょう。
まさに中央銀行がGoldilocks経済を演出しているのですが、前例のない壮大な試みだけに失敗すると米ドル暴落、ハイパーインフレーションと言った暴風雨を世界中にばら撒く事にもなりかねません。非常に微妙な舵取りが求められる事は間違いないでしょう。
USDをDebaseしているとか、Currency WarではなくCurrency Crisisだとか、Anything but USD(USDだけはやめとけ)等と言う批判や不安も一部ではFOMC直後から噴出していますが、全体的にはUSDの売られ方もパニック的なものではなく株価上昇、コモディティも上昇、オプション市場のVolatilityは急低下という流れになっているので So far, so good という評価になるのかなと思います。
インフレ無き程よい成長(Goldilocks)とにっちもさっちも行かない状態(Gridlock)の狭間でFRBが打ち出した大勝負の行方を注視しないではいられませんね。
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2010年11月7日日曜日
Top Fx Mover Last Week.
先週はまさにあり過ぎる位に注目イベントが凝縮された週でした。
1 米中間選挙 ⇒ 共和党圧勝。茶会革命(Tea Party Revolution)と評される保守勢力が急進。
2 FOMC ⇒ 市場の織込みを裏切らない規模の追加量的緩和を決定
3 ECB政策決定会合 ⇒ 欧州は緩和バイアスゼロ。緊急的に供給していた流動性の吸収姿勢 を示す。
4 日銀政策決定会合 ⇒ FOMC直後に日程を前倒ししての実施に様々な憶測が流れましたが、結局はFOMC後に市場が落ち着いていたせいか新たな決定事項は無し。
と言う具合に大きなものだけでも次から次にこれだけの材料がありました。
で・・・毎週の事ながら為替市場がどう動いたかを見てみましょう。
通貨ペア 先週終値 前週終値 値幅(pips) 値幅(%)
①NZDJPY 64.66 61.58 +308 +4.76%
②AUDJPY 82.51 79.04 +347 +4.21%
③NZDUSD 0.7952 0.7660 +292 +3.67%
④CHFJPY 84.53 81.83 +270 +3.19%
⑤EURNZD 1.7636 1.8186 -550 -3.12%
⑥AUDUSD 1.0147 0.9834 +313 +3.08%
⑦CADJPY 81.30 78.83 +247 +3.04%
⑧GBPNZD 2.0360 2.0911 -551 -2.71%
⑨EURAUD 1.3825 1.4177 -352 -2.55%
⑩GBPAUD 1.5960 1.6305 -345 -2.16%
大きな総括図としては米FOMCの大規模な追加量的緩和(QE2)の内容が固まった事で株式市場、商品市場が上伸し、全体的に所謂RISK-ONと言われる動きが再浮上してきました。
為替市場ではAUDが対USDで等価(Parity=1.0)を至言するなどドル売りの流れが進みました。その中で史上最安値を意識したのかUSDJPYだけは80円割れを視野に入れながらもドル売り円買いが進まなかったために上記の通り先週のTop10通貨ペアにはNZDJPY,AUDJPY,CHFJPY,CADJPYという4つのクロス円の上昇が入っています。先週はドル安、円安だったと言う事になります。
また資源国通貨の強さも圧巻で、先週の上位10通貨ペアは上記の通り9ペアでAUD,NZD,CADが上昇したと言う組合せになっています。対価はJPY,USD,GBP,EURですね。ここにはアジア通貨や中南米通貨は出していませんが、それらを含めたより大きな絵としてはG7通貨が弱く、アジア通貨、新興国通貨、資源国通貨が強いと言う流れが確認できます。
そんな中で、11日からはG20首脳会合(サミット)が始まるのですが、通貨安競争に歯止めをかける方向の議論が上手くまとまるのかどうかに注目していきましょう。
1 米中間選挙 ⇒ 共和党圧勝。茶会革命(Tea Party Revolution)と評される保守勢力が急進。
2 FOMC ⇒ 市場の織込みを裏切らない規模の追加量的緩和を決定
3 ECB政策決定会合 ⇒ 欧州は緩和バイアスゼロ。緊急的に供給していた流動性の吸収姿勢 を示す。
4 日銀政策決定会合 ⇒ FOMC直後に日程を前倒ししての実施に様々な憶測が流れましたが、結局はFOMC後に市場が落ち着いていたせいか新たな決定事項は無し。
と言う具合に大きなものだけでも次から次にこれだけの材料がありました。
で・・・毎週の事ながら為替市場がどう動いたかを見てみましょう。
通貨ペア 先週終値 前週終値 値幅(pips) 値幅(%)
①NZDJPY 64.66 61.58 +308 +4.76%
②AUDJPY 82.51 79.04 +347 +4.21%
③NZDUSD 0.7952 0.7660 +292 +3.67%
④CHFJPY 84.53 81.83 +270 +3.19%
⑤EURNZD 1.7636 1.8186 -550 -3.12%
⑥AUDUSD 1.0147 0.9834 +313 +3.08%
⑦CADJPY 81.30 78.83 +247 +3.04%
⑧GBPNZD 2.0360 2.0911 -551 -2.71%
⑨EURAUD 1.3825 1.4177 -352 -2.55%
⑩GBPAUD 1.5960 1.6305 -345 -2.16%
大きな総括図としては米FOMCの大規模な追加量的緩和(QE2)の内容が固まった事で株式市場、商品市場が上伸し、全体的に所謂RISK-ONと言われる動きが再浮上してきました。
為替市場ではAUDが対USDで等価(Parity=1.0)を至言するなどドル売りの流れが進みました。その中で史上最安値を意識したのかUSDJPYだけは80円割れを視野に入れながらもドル売り円買いが進まなかったために上記の通り先週のTop10通貨ペアにはNZDJPY,AUDJPY,CHFJPY,CADJPYという4つのクロス円の上昇が入っています。先週はドル安、円安だったと言う事になります。
また資源国通貨の強さも圧巻で、先週の上位10通貨ペアは上記の通り9ペアでAUD,NZD,CADが上昇したと言う組合せになっています。対価はJPY,USD,GBP,EURですね。ここにはアジア通貨や中南米通貨は出していませんが、それらを含めたより大きな絵としてはG7通貨が弱く、アジア通貨、新興国通貨、資源国通貨が強いと言う流れが確認できます。
そんな中で、11日からはG20首脳会合(サミット)が始まるのですが、通貨安競争に歯止めをかける方向の議論が上手くまとまるのかどうかに注目していきましょう。
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