株式市場には、"Sell in May and go away."と言う格言があります。一種の季節的なアノマリーとでも言いますか、例年株価は春先から上昇し、5月に一端の高値をつける傾向があるという事です。
投資業界では、アベノミクス相場の勢いや復調著しい米国経済を目の当たりにして、2013年の5月は売り逃げしてはいけないのではないかと言う雰囲気が充満していました。
特に世界中からの投資資本の流入のみならず国内投資家の資金流入も続いていた日本株市場では少し前までの円安で上昇、円高への調整が入ると下落と言う為替相場との相関も崩れ始めており、円高でも円安でも株価は上昇と言う驚きの強気相場が示現していました。
”Hindsight is always 20/20”(後講釈はいつでも正しい)と言いますが、今回の株価急落は、やはり今年もアノマリーには逆らえなかったと言う事になるのでしょうか。
確かにこのアノマリーには裏付けもあります。ヘッジファンド業界を筆頭にやはり年末の12月と中間の6月にはパフォーマンスを残しておく必要があり、手仕舞いの集中し易い6月に入る前の5月に株価が高値を付け易いという背景があるのです。
今回の相場に関して考察すると、相変わらず何時までたっても未熟な自分を感じるのですが、今思えば「あれが危険信号だった」と思う事があります。それはお世話になっている方からのメールだったのですが、「REIT市場(Real Estate Investment Trust)が急落しているけど何か見えているか?」と言う照会メールでした。5月13日の週でしたので、今回の株価や為替に乱暴な調整が入る前週の事でした。
日本経済新聞より |
本邦REIT市場は、アベノミクスの最大の受益者とも言える市場であると同時に株式や為替と比較しても圧倒的に市場規模や流動性が小さい市場なので、この流動性の無いものからクローズしていくと言う鉄則に沿った動きを軽視するべきではありませんでした。
このREIT市場の翌週に株式市場、為替市場に激震が走ったと言うのが足元の(先週)の動きですので、恐らくは苦し紛れにFRBの出口戦略(資産買入れ規模の縮小)懸念や中国の成長予測の引下げなどの材料で説明されている先週の動きは、寧ろこのアノマリーに沿った季節要因がメインドライバーだったのではないかと推察します。