2008年7月6日日曜日

"No Mas" & "No Bias"

“No Mas” “ No Bias”


先々週にFRBが先行き不透明感を残した後で迎えた先週は金曜日が米国の独立記念日で北米市場が休場となる実働4日間という週でした。

金融市場のほうではECBの金融政策決定会合と米国の6月雇用統計の発表が重なるBig Thursdayに向けて世界中の株式市場が下落傾向を強めると共に債券市場が上昇し、長期金利が低下するという流れとなりましたが、最後は週末連休を控えた北米勢を中心にリスク量を落とすオペレーションが中心となり、前半のドル売りを主導したユーロは対ドルで1.5910から1.57割れまで反落し、1バレル当り$145台まで上昇し、まさに無尽の野を行く感のある原油市場も小休止して週の取引を終えています。

為替市場では、ユーロ、GBP 、CHF、AUD,NZDなどが一旦は上昇しましたが最後は反落。円は多くの新興国通貨と共に前半のドル安地合いでも波に乗れず、月曜日の104円99銭を最高値に木曜日には106円93銭までほぼ2円もの反落を見せて越週しています。

終わってみれば、揺ぎ無かったのは原油高と株安、それに次ぐのが債券上昇=長期金利低下という流れでしたが、それにしても木曜日にECBが予想通りの0.25%の利上げを発表して政策金利を4.00%から4.25%に引き上げた後に前週のFRBに付き合うかのように今後の事を"No Bias"であると宣言した後の市場の急ブレーキには少々驚かされました。

1980年の5月にスパースターSugar Ray leonardを圧倒してウェルター級王座を奪取したパナマの英雄、Roberto Duran が11月の再戦で、ペースを掴めず(私には互角の展開に見えましたが)、8回途中で突然試合を放棄して世の中を凍り付かせた時の有名な言葉が"No Mas"(⇒英語のNo Moreですね)ですが、何だか今回のTrichet総裁の"No Bias"発言もこれに準ずる発言かのような印象ですね。

そこに待ち構えていたかのような猛暑日到来・・・・連日の30℃越えはきついですね・・・・。

まさか金融市場はこのまま夏枯れの様相を呈していくのでしょうか? トレンドを維持する原油市場と株式市場がその答えを握っていると言う事になりそうです。

2008年6月30日月曜日

Plague of Dragonfly in Tokyo & Two faces of JPY



日本円の方向感についてはこの2ヶ月くらい随分と相場観が割れていた印象がありますが、金融市場における米ドルの反落バイアスと投資家のリスク回避バイアスの上昇を背景に再び円高方向の芽が膨らんできたようです。

3月17日の95円77銭で底を打ったドル円は6月の初めには104円台でしたが、引き続き円高方向を予想する参加者の希望を打ち砕きながら6月16日には108円59銭まで上昇しました。

JGB市場も随分と売りが出て円金利も上昇していましたが、他国の金利の上昇速度が速かったことから円は負け組みに入っていたと言うところでしょうか。

6月後半は、海外のヘッジファンド勢等も円でのポジションテイクはかなり限定的だったと思いますが、ECBトリシェ総裁が7月の利上げを示唆してからは、ユーロ円を筆頭にクロス円での円安傾向が注目を集め始める展開となり、モデル系ファンドなどの円売りも手伝って6月26日にはユーロ円が169円47銭の史上最高値を更新する局面もありました。実は私はFOMC後の混乱が小規模なら、このクロスは170円を超えていくと言う確信すら抱いたほどです。

ところが・・・どっこい大作。

週末にかけて加速したドル売りと株売りは、Volatilityの上昇と市場参加者のリスク回避バイアスを急上昇させたために市場のリスクパラメータと位置付けられるCHFと日本円が急上昇。170円を超えていくとも思われたユーロ円も週の終値は167円台後半というトンボ返りで越週。上述の通り16日には108円59銭だったドル円でも週末は一時105円台後半まで下落した後辛うじて106円台で越週しています。
奇しくも先週は、週の前半で東京市場の中心地とも言える東京は丸の内、大手町地区の一部で季節外れのトンボの異常発生があったのですが、これはまさに日本円のトンボ返り的な反転⇒円高転換への序曲であったというのは・・・・ちょっと苦しいかな・・・

実は長い目で見た場合の日本円には、更なるトンボ返りのリスクもあるのですが、オプション市場でVolatilityも急上昇の日本円・・・・・・ 上手く入れば収益上昇(=トンボ)、失敗すれば水中生活(ヤゴ)というトレーダー泣かせの展開となるかもしれませんね。

2008年6月29日日曜日

Been FED up with FED?

先週は6月24日の火曜日~6月25日の水曜日までFOMC会合が開催されていました。

金利据え置きは既定路線で注目は声明文と言うのが市場のコンセンサスでしたが、市場の先手を取る格好でのサプライズ利上げなどがあればかなり相場が動くと言う期待もありました。

月曜日のドイツのIFOが弱く、更に6月のユーロ圏PMIが2003年7月以来初の減速と好敵手の欧州が失速すると言うお膳立てもあったのですが、火曜日のFOMC会合の開始に合わせて発表された米国の6月の消費者信頼感指数が1967年以来5番目に悪い数字となり、同じく住宅価格は▲15.3%と単月では史上最大の下落幅となり、FRBの足元にも火がついてしまいました。これでは金利を下げないのが精一杯という感じですね。

25日の結果発表は、金利据え置きと相変わらずバランスの取れた中庸な声明文と言う事でしたが、効果はせいぜい24時間という感じで、26日の海外市場からは米ドル、米株に集中砲火的な売りが集まりました。

結局はFOMC後の週後半に米ドル、米株が大幅下落、米債券価格が急上昇(金利が低下)するという米国にとっては試練の週となりました。

金融セクターが先導する形で下落した米株ですが、金融大恐慌の1930年以来最悪の6月という結果となり、3月の安値も下回って2008年度の安値も更新してしまいました。

手を拱いていては攻撃を受ける事は分っていたはずの米当局。それを受けて行った最近の米ドル安牽制発言が功を奏していただけに、今回のFOMCの"無策"はちょっとヤバイ後味を残したと思います。

マクロテーマは、3月までの金融混乱から4月以降は世界インフレにシフト。金利上昇を背景に米ドルに復活の兆しが出ていましたが、これで金利が再び低下バイアスを強める形で金融混乱第二章の足音すら聞こえてきました。

このBernenke議長率いる今のFEDというのは、本当に梯子を外してくれますね・・・・・・

Have you been FED up with him, too?

Great to see a small pound waving big.

金曜日に90年代後半に米国で同じ職場にいた後輩達と飲みに行きました。

参加者は私を入れて6名でしたが、この6名の今の勤務先は4つに分かれており、そのうちの1つはサブプライム関連で特に大きいダメージがあったと報道された多くの金融機関の1つです。

そこに勤務している後輩とは中々会う機会も無かったのですが、数年前に一度本人から当時の上司との人間関係で大いに悩んでいると言う話を聞いた事があり、私も心を痛めていました。

小細工はせず、小事に惑うことなく、犀の角のように真っ直ぐ進め・・・・ そんな釈迦の教えを絵に描いたような真っ直ぐな男なので当時の上司とは怒鳴りあいのような状態になる事も多く、賞与査定などでも如実に冷遇されていたようでした。

一昨年の年度末にその上司が異動した後は、長い嵐が過ぎ去ったかのように仕事がやり易くなったとの事だったのですが、タイミング悪くサブプライム問題で会社が多額の評価損を計上してしまった訳です。

同社は人員削減なども進行中で表向きは希望退職を募る方式なのですが、内実は事実上の"指名+呼び出し説得"なども進行中との事で、今年の賞与も大幅な減額と言う事だったようです。

この後輩は業務の関係上偶然会社の賞与資金総額を目にしたのですが、確かにそれは昨年度のほぼ半分と言う水準だったそうで、月初の支給日には周囲から20%減だ40%減という失望の声が上がり、彼も周囲から減額幅を随分と質問されたとの事でした。

「でも実は、僕・・・・20%ほど増えていたんです」

帰りの電車で二人きりになった時に、彼は恥ずかしそうに教えてくれました。環境が変わり、失っていたものを取り返すように仕事に打ち込めた昨年度は自分でも納得のいく成果が出せたとの事で、賞与の事も会社の状態から減額は仕方ないと思っていたら、支給総額がほぼ半減し、周囲も数十%減額と言う声が渦巻く中で彼は20%も増えていたのです。おまけに経営から直々に昨年度は良くやってくれたとの感謝の言葉もあったそうです。

「腐らずに励めば必ず誰かが見ていてくれるんだと本当に報われた気持ちになりました」

晴れ晴れとした表情でそう言う彼の手を強く握り、背中を叩きながら、混み合って来た電車の中で私は小声で彼をねぎらい、祝福と賞賛の言葉を掛けて彼のことを誇りに思う事を伝えました。

周囲への配慮もあって社内ではどのくらい減ったかと言う質問を受けても「思ったほどは減っていなかった」という控え目な回答しかしていないというのも彼らしいのですが、私は彼が一層好きになりました。

この話に関して考える事は沢山ありますが、もしサブプライム問題が無くて彼の賞与が30%増えていたとしても今回ほど彼が自信を取り戻す事は無かったと思うのです。やはりお金はとても重要ですが全てではないのだと改めて思いました。

"これだけ払っているんだから文句無いよね" と言い切れる位の処遇を与えていないのであれば組織の経営陣が考えるべき事は沢山あるのだとつくづく思うエピソードだと思いました。

え? 私の会社? 勿論もっと考えて欲しいですね(笑)

2008年6月23日月曜日

Could it be the writing on the wall ?

日本では金融ビッグバンの一環としての所謂ペイオフの解禁と言うやつで、金融機関が破綻した場合に預金保険機構から保障される金額の上限が2002年4月以降1千万円とその利息のみという形で預金者の自己リスクが明確化されていますが、米国にはFDIC⇒Federal Deposit Insurance Corporation(連邦預金保険会社)と言うものがあり、一口座当たり10万ドルまでの預金が保護される仕組みとなっています。

このFDICですが、今年が設立75周年と言う事のようで多くの主要紙に"お陰様で75周年"と言うようなフルページの広告を出しているのですが、金融市場にリスク回避バイアスが復活し始めている中で様々な憶測を呼んでいます。

“FDIC protects depositors up to the basic insurance amount of $100,000 per account and retirement accounts, such as IRAs, to $250,000.”

FDICは、預金者の皆様を口座当り10万ドルまで、非課税の老後年金運用口座なら25万ドルまでを保護します・・・・と再確認をした後に、つまり全てを保護するということではないですからね・・・という念押しを太字で掲載しているのです。

昨年のサブプライム問題発生以降の大規模な連続利下げと流動性の供給は明らかに金融機関救済に軸足を置いた応急措置だったわけですが、ここへ来てドル安と原油高等によるインフレの弊害が国民生活を過度に圧迫し始めたと言う認識が当局者の間でも強まる中で、ここからはドル安の是正と金融緩和姿勢の見直しを行いますよと言うシグナルのようにも思えないでしょうか?

ただしこれを断行すると・・・実は中小の地銀レベルも多い米国では結構な金融機関が収益性を圧迫されて資金繰りなどにも問題をきたし、業界再編が加速すると言う可能性があるので、このタイミングで国民に保護の上限と自己責任の原則を再確認させているのではないかという憶測が持たれているという訳です。

ただの75周年のアナウンスなのか・・・・方針転換の憶測もあるFRB直前のシグナルか・・・・

旧約聖書ダニエル書のバビロニア王国の滅亡の章で、王国の滅亡を予言する不思議な文字が壁に現れたという件があることから、"The writing on the wall" は不吉な前兆と言う意味で使用されるのですが、私もこのタイミングでのFDICの75周年広告には少々深読みをしたくなってしまいます。

"I saw the writing on the wall" というチープトリックの曲がありましたが、もしこの広告が実際に庶民への警告の意味で出されたものだとしたら・・・・それこそチープなトリックのような気もしますね。

どういう決断をしても、市場のほぼ半分を裏切る、失望させるのならば・・・・・FRBは本当に難しい舵取りを求められているのでしょう。

2008年6月22日日曜日

Talk the talk or walk the walk.

先週の木曜日(6月19日)で水星の逆行期間も終了し、世界インフレシナリオと先進国経済減速シナリオの間で月初来乱暴に揺れ続けた金融市場は極めて重要な週に突入する事になります。

世界インフレシナリオは、米国に口先だけではない本物のドル安警戒姿勢を呼び起こし、ユーロ高を声高に牽制してきた欧州当局にも強い通貨による輸入物価抑制効果を再認識させるという変化をもたらしました。

一方で顕著な物価上昇の中で実体経済の弱体懸念も強まっており、特に金融不安まで再燃してきた米国は本当に利上を断行出来るのか、また利上げ姿勢を米国以上に鮮明にしている欧州では内部から予想以上の反対論が噴出しています。

そんな中で今週米国で行われるFOMCは従来以上に重要なイベントであり、25日に発表される結果が金融市場にもたらすインパクトは絶大な物となりそうです。

市場を混乱させないために一部メディアなどを使って市場にシグナルを発し、事前に結果を織り込ませる事で市場の安定を図る事はよくあることですが、先週もPPI,住宅着工、経常収支などが実体経済の脆弱さを浮き彫りにする中で複数の主要紙(ワシントンポスト、ウォールストリートジャーナルなど)を通して発せられた金融市場はFRBの引き締め可能性を織り込み過ぎているというメッセージは非常に気になるところです。確かに市場は一時この先1年でFRBの利上げを150bp織り込む水準にまでオバーシュートしていましたので、あれは行き過ぎだったとは思うのですが・・・

利上げの有無以上に声明文で示される今後のスタンスが注目される今週のFOMCですが、依然評価の大きく分かれるBernanke議長が、有限実行の人なのか、口先男という汚名を着せられるのかと言う岐路に立っているという事も言えるのでしょう。

Will he walk the walk or....just talk the talk.

1913年の設立以来、FRBは失業率が上昇する局面で利上げをしたことはありません。今週25日にBernenkeが動くなら・・・・それは歴史的な出来事と言う事になるのですが・・・・・・

綴りも一字違いのWALKとTALKですが、実態は似て非なるものの代表かもしれませんね。