金曜日に90年代後半に米国で同じ職場にいた後輩達と飲みに行きました。
参加者は私を入れて6名でしたが、この6名の今の勤務先は4つに分かれており、そのうちの1つはサブプライム関連で特に大きいダメージがあったと報道された多くの金融機関の1つです。
そこに勤務している後輩とは中々会う機会も無かったのですが、数年前に一度本人から当時の上司との人間関係で大いに悩んでいると言う話を聞いた事があり、私も心を痛めていました。
小細工はせず、小事に惑うことなく、犀の角のように真っ直ぐ進め・・・・ そんな釈迦の教えを絵に描いたような真っ直ぐな男なので当時の上司とは怒鳴りあいのような状態になる事も多く、賞与査定などでも如実に冷遇されていたようでした。
一昨年の年度末にその上司が異動した後は、長い嵐が過ぎ去ったかのように仕事がやり易くなったとの事だったのですが、タイミング悪くサブプライム問題で会社が多額の評価損を計上してしまった訳です。
同社は人員削減なども進行中で表向きは希望退職を募る方式なのですが、内実は事実上の"指名+呼び出し説得"なども進行中との事で、今年の賞与も大幅な減額と言う事だったようです。
この後輩は業務の関係上偶然会社の賞与資金総額を目にしたのですが、確かにそれは昨年度のほぼ半分と言う水準だったそうで、月初の支給日には周囲から20%減だ40%減という失望の声が上がり、彼も周囲から減額幅を随分と質問されたとの事でした。
「でも実は、僕・・・・20%ほど増えていたんです」
帰りの電車で二人きりになった時に、彼は恥ずかしそうに教えてくれました。環境が変わり、失っていたものを取り返すように仕事に打ち込めた昨年度は自分でも納得のいく成果が出せたとの事で、賞与の事も会社の状態から減額は仕方ないと思っていたら、支給総額がほぼ半減し、周囲も数十%減額と言う声が渦巻く中で彼は20%も増えていたのです。おまけに経営から直々に昨年度は良くやってくれたとの感謝の言葉もあったそうです。
「腐らずに励めば必ず誰かが見ていてくれるんだと本当に報われた気持ちになりました」
晴れ晴れとした表情でそう言う彼の手を強く握り、背中を叩きながら、混み合って来た電車の中で私は小声で彼をねぎらい、祝福と賞賛の言葉を掛けて彼のことを誇りに思う事を伝えました。
周囲への配慮もあって社内ではどのくらい減ったかと言う質問を受けても「思ったほどは減っていなかった」という控え目な回答しかしていないというのも彼らしいのですが、私は彼が一層好きになりました。
この話に関して考える事は沢山ありますが、もしサブプライム問題が無くて彼の賞与が30%増えていたとしても今回ほど彼が自信を取り戻す事は無かったと思うのです。やはりお金はとても重要ですが全てではないのだと改めて思いました。
"これだけ払っているんだから文句無いよね" と言い切れる位の処遇を与えていないのであれば組織の経営陣が考えるべき事は沢山あるのだとつくづく思うエピソードだと思いました。
え? 私の会社? 勿論もっと考えて欲しいですね(笑)