金曜日にオフィスで残業をしていたら中国が人民元の変動幅を0.5%拡大するという発表がありました。米ドルにPegしていたことへの批判が高まり変動バンド性に移行した後は絶妙のタイミングで小刻みなバンドの拡大を発表するとともに政治や経済の当局者たちが自ら一層の通貨改革と市場開放の必要性を強調し、それに取り組む姿勢を表明することで国際社会からの批判を抑制し続けています。
今回の措置も米中戦略会議やG8サミット直前の発表であり、欧米各国から強い注文が付く事を予想した先制攻撃であると同時に国内保守層などから具体的な成果を求められる欧米当局者たちへの手土産でもあるわけです。特に今回はG8サミットを欠席してまで対中交渉の準備に背念すると言う米国財務省のPaulson長官へのGiftであることは明白ですね。
4千年の歴史で培われ、蓄積された中国の知恵や交渉術は恐るべしの一言に尽きます。
既に経済力と軍事力では世界屈指の水準にありながら地球温暖化などの環境問題などでは発展途上国という立場で二酸化炭素排出削減義務も負わないし、世界最強の経済発展を謳歌するようになる前は日本からも多額のODA援助などを得続けていました。天文学的水準の財政赤字を抱えながら日本も援助を続けていたのは両国間に”辛い歴史”があったことや核開発疑惑や拉致問題などで世界を震撼させてきた究極のならず者国家である北朝鮮への影響力が絶大な中国を敵に回すことは国策的にも致命傷となりかねないという背景もありました。
中国経済の勢いについては今更説明は不要で、資源と中国の時代の到来を予言する米国のカリスマ投資家のJim Rogers氏(かつてGeorge SorosとQuantum Fundを作ったおじさんです)は、子供を英語と中国語のバイリンガルにするべく数年間中国で子育てをしたほどですし、2007年度も既に+50%水準の驚異的な上昇を見せている中国株式市場に特化したファンドにお金を預けるのは最早Waiting List状態になっており、運用方針に注文などつけようものならお金を返されてしまう状態となっています。悪名高い”管理手数料”をゼロとして収益インセンティブのみでお金を集めるファンドも出てきた欧米とは全く違う状況なのです。
最近日本のメディアでも偽DisneyLandが取り上げられて縮れ毛キティちゃんや劇痩せドラエモンなどが笑いを誘った中国の知的所有権問題にしても当局による管理や規制のスタンスは全く消極的で日本や欧米先進国の神経を逆なでしているのですが、これにも実に興味深い背景がある可能性が在るようです。
中国でビジネスを展開する人物から聞いたのですが、いわゆる”コピー商品”の氾濫は思わぬ経済効果をも実現しているのだそうで、例えば普通は設計事務所などにしかないはずの高価なCADシステム用の作画ソフトなども安価なコピーが出回っていることで就職後の研修や教育が不要なくらいアプリケーションに習熟した即戦力スタッフが採用出来ちゃったりするので実業界も大助かりだとか・・・・
悠久の歴史で蓄積された戦略の中では、欧米などからどんなに強硬な批判を受けても、黄河の流れに小石を投げ込まれた程度なのかもしれません。表面の小波は立てられますが、大河の流れは決して方向も速度も変わる事は無いと言う所でしょうか。
We have only to take our hats off. まさに脱帽、文字通り”ハット”する話ですね。
金曜日のバンド拡大発表も見事なタイミングでした。