丁度1年ほど前に英国のDarling財務大臣が打ち出した賞与課税が業界で賛否両論を巻き起こした事がありました。金融危機の反省から主要国政府が様々な金融規制を打ち出していた頃で、米国ではVolckerルール、欧州でも様々な金融規制が活発に議論されていた頃です。
この英国の賞与課税は、従業員に2万5千GBP(1GBP=130円で計算すると325万円)以上の賞与を支払う金融機関はその50%を納税する義務を負う事や従業員本人にも40%が課税されるという大胆な内容でした。これにより高額賞与が支給されるとその90%が支給者と受給者から国庫に収められると言う内容です。
一見べらぼうな内容に見えますが、多くの金融機関において金融バブル期の幹部職員の処遇は一部でスポーツ界のスーパースター並みになっていた事や”Too big to fail"である事を理由に税金で保護されたり、預金者を犠牲にした政策金利=(短期金利)の低金利維持により必ず儲かる状態に置かれてきたにも拘らず、その収益を企業融資などの投資に回さずに安易且つ過剰に従業員に還元してしまう金融機関が多かったという事も事実ですので結構な支持も集めたと言う訳です。
英国はロンドン金融街(=シティ街などと言われますね)を整備して金融立国としてかつての不況を脱したと言う経緯もあるのでそこを潰しに行くような規制は自殺行為だという批判もありましたが、事実これを機にシティ街からスイスなどに本拠地を移すヘッジファンドなどが増えてきました。
事情通の友人によると当初は登記上の拠点移動が先行していましたが、ここへ来てフィジカルな実体的移動が起きているとのことで、先週はこれを裏付けるようなGBPCHFというクロス取引の売り切りオーダーの執行が相次いだようです。12月の最終週は流動性が極端に低下する可能性がありますので少なくとも大口の取引執行はクリスマスまでに終了させるのが無難だと思われるため、今週もこの手のフローが出続ける可能性がありそうです。
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